著者
大石 和徳 山領 豪 森田 公一 井上 真吾 熊取 厚志
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

フィリピン、マニラ市において78例のデングウイルス二次感染症患者(DF40症例、DHF38症例)の急性期と回復期の末梢血血小板数とPAIgGおよびPAIgMを測定し、血小板数のみならず重症度との相関を検討した。急性期に血小板数は減少するのに対し、PAIgG,PAIgMは増加し、それぞれは血小板数と有意な逆相関を示した。また、PAIgMの増加はDHF進展と有意に相関することが判明した。一方、急性期患者の末梢血血小板の溶出液中には健常者と比較して高い抗デングウイルス活性を検出した。デングウイルス二次感染症において、抗デングウイルス結合活性を有する血小板に付随した免疫グロブリンはその血小板減少機序と重症度に重要な役割を果たすことが推察された。また、血漿中thrombopoetin(TPO)は急性期に増加することから、デングウイルス二次感染症において、デングウイルス感染に伴う巨核球減少が関与することが示唆された。次に、顕著な血小板減少を伴うデングウイルス感染症患者34例(DF18例、DHF16例)を対象として、高用量静注用ヒト免疫グロブリン(IVIG)を0.49/kg/日を3日間投与し、血小板減少の進行阻止あるいは回復促進効果が認められるか否かを前向き比較試験として実施した。入院直後にウイルス学的診断の確定した34症例を封筒法により無作為にA群(IVIG投与+輸液療法)17例、B群(輸液療法のみ)17例の2群に分類した。2群の性別、年齢(平均15歳)、重症度、末梢血血小板数に有意差は認められなかった。A群において、IVIG投与に伴う明らかな副反応は認められなかった。これらの結果から、急性デングウイルス感染症は、ITPとは異なり網内系細胞のFcレセプターを介した血小板クリアランスは主要な血小板減少機序でないことが示唆された。さらに、分化したTHP-1細胞を用いてin vitroの血小板貪食能測定法をフローサイトメトリーを用いて確立した。
著者
塩崎 万起 宮井 信行 森岡 郁晴 内海 みよ子 小池 廣昭 有田 幹雄 宮下 和久
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
産業衛生学雑誌 = Journal of occupational health (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.115-124, 2013-07-20
参考文献数
29
被引用文献数
6

<b>目的:</b>警察官は他の公務員と比べて心疾患による休業率が高く,在職死亡においても常に心疾患は死因の上位を占めることから重要な課題となっている.本研究では,A県の男性警察官を対象に,近年増加傾向にある虚血性心疾患に焦点をあて,各種危険因子の保有状況とその背景要因としての勤務状況や生活様式の特徴を明らかにすることを目的として検討を行った.<b>対象と方法:</b> 症例対照研究により,虚血性心疾患の発症に関連する危険因子について検討した.対象はA県警察の男性警察官で,1996–2011年に新規に虚血性心疾患を発症した58名を症例群,脳・心血管疾患の既往がない者の中から年齢と階級をマッチさせて抽出した116名を対照群とした.虚血性心疾患の発症5年前の健診データを用いて,肥満,高血圧,脂質異常症,耐糖能障害,高尿酸血症,喫煙の有無を両群で比較するとともに,多重ロジスティック回帰分析を用いて調整オッズ比を算出した.続いて,男性警察官1,539名と一般職員153名を対象に,横断的な資料に基づいて,各種危険因子の保有率およびメタボリックシンドローム (MetS) の有所見率,勤務状況および生活様式の特徴を年齢階層別に比較検討した.<b>結果: </b>虚血性心疾患を発症した症例群では,対照群に比べて発症5年前での高血圧,耐糖能障害,高LDL-C血症,高尿酸血症の保有率が有意に高かった.多重ロジスティック回帰分析では高血圧(オッズ比 [95%信頼区間]:3.96 [1.82–8.59]),耐糖能異常 (3.28 [1.34–8.03]),低HDL-C血症 (2.26 [1.03–4.97]),高LDL-C血症 (2.18 [1.03–4.61]) が有意な独立の危険因子となった(モデルχ<sup>2</sup>:<i>p<</i>0.001,判別的中率:77.0%).また,警察官は一般職員に比べて腹部肥満者 (腹囲85 cm以上)の割合が有意に高く(57.3% vs. 35.3%, <i>p<</i>0.001),年齢階層の上昇に伴う脂質異常症や耐糖能障害の有所見率の増加もより顕著であった.45–59歳の年齢階層では個人における危険因子の集積数(1.8個 vs. 1.4個, <i>p<</i>0.01)が有意に高く,MetS該当者の割合も高率であった(25.0% vs. 15.5%, <i>p<</i>0.1).さらに,MetS該当者では,交替制勤務者が多く (33.6% vs. 25.4%, <i>p<</i>0.01),熟睡感の不足を訴える者 (42.5% vs. 33.7%, <i>p</i><0.01),多量飲酒者 (12.8% vs. 6.3%, <i>p</i><0.01)の割合が高くなっていた.<b>結論:</b>警察官においても高血圧,耐糖能障害,脂質異常症などの既知の危険因子が虚血性心疾患の発症と関連することが示された.また,警察官は加齢による各種危険因子の保有率およびMetS該当者の割合の増加が一般職員よりも顕著であり,その背景要因として,交替制勤務や長時間労働などの勤務形態と,飲酒や睡眠の状態などの生活様式の影響が示唆された.
著者
上條 美和子 大森 隆司
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.45-48, 2014 (Released:2014-02-10)
参考文献数
5

This research aims to verify the influence of EOAE (essential oil aroma environment) through a behavioral and ERP(event related potential) study. By this we hope to undercover the brain activity which assists sense, learning and knowledge of aroma. EFL (English as a foreign language) class was performed with an EOAE blend of rosemary cineole 1,8 and lemon. As a result, the target group which learned under EOAE did not have significant difference in result. The survey followed with an ERP evaluation using an odd ball task to measure the degree of attention. As a result, a possible P3a and MMN (Mismatch negativity) amplitude was found to differ between the target and control group. P3a is a subcomponent of P300 which is an attention related component, and MMN is a component that detects auditory deviance in an even sequence of tones. Two other unknown EOAE components that assist only with EOAE were also found.
著者
井田 守 森本 義晴
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.119-124, 2016-01
著者
実森 仁志
出版者
日経BP社
雑誌
日経インタ-ネットテクノロジ- (ISSN:13431676)
巻号頁・発行日
no.47, pp.182-185, 2001-06

インフォマートは5月14日,食品食材業界向けの会員制情報提供サイト「FOODS Info Mart」のシステムをリニューアルした。アクセス増加時にパフォーマンスを低下させないため,容易にマシンを増設(スケール・アウト)できる構成を採用。3階層システムを採用し,各層の役割が明確になるようにプログラムを再構成した。ボトルネックを判別し,的確にスケール・アウトするためである。
著者
光森 達博
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-51, 1998-06-24 (Released:2009-06-12)
参考文献数
11

インターネットは,個人でも容易に利用できる環境が整ってきたが,応用統計に関わるものにとってインターネットはどのように活用できるだろうか.情報を受ける立場と情報を発信する立場に分けて,インターネットを応用統計に活用する場合の課題と問題点を考察した.情報を受ける立場からは,どのような考え方で情報収集活動を行うべきかについて議論し,そのためにはどのような方法があるかをわれわれの事例に基づいて紹介した.情報を発信する立場からは,何をどのようにして発信していくかという問題を,公開されているWebページを紹介しながら議論した.最近では,例数設計や簡単な統計解析ができるWebページもいくつか出てきており,応用統計に特有のインターネットの活用方法も考えられるようになってきた.そのひとつとして,Java Scriptを用いて簡単な統計計算を含むWebページを作成する方法を紹介し,応用統計への活用について議論した.
著者
大森 正子 和田 雅子 吉山 崇 内村 和広
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.435-442, 2003-06-15
参考文献数
19
被引用文献数
6

老人保健施設における結核の早期発見方策を検討する目的で, 1都4県358の老人保健施設にアンケート調査を実施し, 169 (47.2%) から回答を得た. 施設は併設病院あり36.1%, 診療所あり12.4%, どちらもなし51.5%で, 平均年齢は入所者83.2歳, 通所者79.6歳, 平均利用期間は入所者7ヵ月, 通所者13ヵ月だった. 施設利用時に胸部X線検査を実施していた施設は入所者42.6%, 通所者23.7%, 利用期間中に結核検診を実施していた施設は入所者45.6%, 通所者15.4%だった. 職員への定期結核検診は94.7%の施設で実施していた. 入所者の食欲低下や全身倦怠といった症状は, 67.5%の施設で毎日点検していると答えたが, 呼吸器症状は18.9%と少なかった. 2週間以上続く呼吸器症状で病院を受診させる際, 入所者では93.5%の施設が文書を持たせ, 63.9%が胸部X線と喀痰検査を依頼すると答えたが, 通所者では医療機関受診を勧めるだけで特に症状を説明する文書を持たせず結果を確認することもしないと答えた. 結核患者発生率は, 施設利用者10万対104.6で, 調査地域の一般住民 (同年齢) の結核発生率よりやや高かったが有意の差は見られなかった. 老人保健施設は医療機関とみなされ結核予防法で健診の対象にはなっていない. 法的措置の基に効果的な患者発見方策を確立する必要がある.
著者
田中 尚 藤森 裕二 貝戸 清之 小林 潔司 安野 貴人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.329-341, 2010

浄水場施設のアセットマネジメントにおいて,コンクリート版に対する維持管理が重要な課題となっている.短・中期間を対象とした中性化速度式では,中性化深さが経過年数の平方根に比例するという仮定(以下,「ルート<i>t</i>則」と略す)が採用されている.しかし,アセットマネジメントの対象となる長期間に及ぶ中性化過程に関しては十分な知見が蓄積されていない.本研究では,浄水場施設のコンクリート構造物を対象に,長期にわたって蓄積された中性化深さの測定データに基づいて,長期的な中性化過程を解析するための加速劣化ハザードモデルを提案する.さらに,ルート<i>t</i>則に関する統計的仮説検定の結果,少なくとも対象とした長期間のデータに関してルート<i>t</i>則は棄却され,現実の中性化過程はルート<i>t</i>則より,加速して進行することが判明した.
著者
齊藤 美奈子 加賀谷 〓彦 森井 秀樹 中川 喜直 木村 直人 吉田 博幸 広田 公一
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.31-40, 1991

大学の男子競歩選手5名 (選手群) と体育専攻男子大学生5名 (対照群) を被検者とし, 競歩と普通歩行におけるスピードと酸素需要量・歩長, 歩数の関係から, 競歩の特性, 競歩の健康の維持・増進のための運動としての有用性について検討を行ったが, その結果, 次のように要約された.<BR>1.本研究における競歩の限界スピードは, 選手群が200~220m/min, 対照群が160m/minであった.普通歩行の限界スピードは両群とも140m/minであった.<BR>2.競歩と普通歩行の境界スピードは, 両群とも約130m/minにみることができ, 普通歩行はその直後に限界に達しているが, 約130m/minより低スピードにおいて, 競歩は普通歩行より効率が悪いが, それ以上のスピードでは効率が良いということがわかった.<BR>3.選手群の普通歩行, 対照群の両歩行のoptimal speedは60m/minであった.これに対し, 選手群の競歩におけるoptimal speedは60~80m/minであり, やや高いスピードまでみることができた.<BR>4.選手群は, 両歩行とも対照群のそれより同一スピードにおいて小さい酸素需要量を示しており効率よく歩くことができた.<BR>5.選手群は, 競歩において歩行の限界まで歩長, 歩数とも増加を示したが, 選手群の普通歩行と対照群の両歩行は, 歩幅が80cm付近で, 歩長が限界に達し, その後のスピードの増加は, 歩数の増加によって得ているが, やがて歩数の増加も限界に達し, 歩行困難になるということがわかった.<BR>6.競歩における選手群と対照群の歩長と歩数の差を比較すると, 歩数より歩長に大きな違いをみることができ, 速いスピードまで歩くには, 歩長を大きくできることが条件になると考えられる.<BR>7.対照群に競歩を行わせた場合, 選手群ほど歩長を伸ばすことはできず, 歩行スピードを高めることはできないが, 普通歩行よりは速いスピードの160m/minまで歩行を可能とし, この時, 77.5%Vo<SUB>2</SUB>maxの強度に相当する運動を行うことができた.これにより, 競歩は呼吸循環器系の改善に十分効果的な強度の運動法であることが示唆された.
著者
佐藤 倫広 松本 章裕 原 梓 岩森 紗希 小原 拓 菊谷 昌浩 目時 弘仁 保坂 実樹 淺山 敬 高橋 信行 佐藤 博 眞野 成康 今井 潤 大久保 孝義
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.134, no.12, pp.1347-1355, 2014 (Released:2014-12-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1 5

Encouraging self-medication is expected to reduce healthcare costs. To assess the current situation of self-medication practices in the general population, we conducted a questionnaire survey regarding the use of over-the-counter (OTC) medications or dietary supplements in 1008 participants (37% men; mean age, 64±13 years) from Ohasama, a rural Japanese community. A total of 519 (52%) participants used OTC medications or dietary supplements, with common cold medication (36%) and supplements (28%) such as shark cartilage products representing the most common choices. Stepwise logistic regression showed female gender, a higher frequency of visits from a household medicine kit distributor, dyslipidemia, and lower home systolic blood pressure levels as predictors for the use of such materials (chi-square values: 25.3, 12.6, 7.0, and 4.6, respectively; all p<0.03). Stratifying the participants according to the use of antihypertensive treatment showed a negative association between systolic blood pressure and the use of OTC medications or supplements only in participants being treated for hypertension. These results suggest that although the adoption rate of self-medication in Japan can be increased in rural areas, it may remain lower in urban areas. The present study clarifies the factors associated with the use of OTC medications or dietary supplements and indicates that appropriate self-medication practices might improve the control of hypertension, particularly in patients undergoing antihypertensive treatment.
著者
筒井 幸 神林 崇 田中 恵子 朴 秀賢 伊東 若子 徳永 純 森 朱音 菱川 泰夫 清水 徹男 西野 精治
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-50, 2012-01-15 (Released:2015-08-26)
参考文献数
42

近年,統合失調症の初発を想定させる精神症状やジスキネジア,けいれん発作,自律神経症状や中枢性の呼吸抑制,意識障害などの多彩な症状を呈する抗NMDA(N-メチルD-アスパラギン酸)受容体抗体に関連した脳炎(以下,抗NMDA受容体脳炎と略する)の存在が広く認められるようになってきている。若年女性に多く,卵巣奇形腫を伴う頻度が比較的高いとされている。われわれは合計10例の抗NMDA受容体抗体陽性例を経験し,これを3群に分類した。3例は比較的典型的な抗NMDA受容体脳炎の経過をたどり,免疫治療が奏効した。他の7例のうち3例は,オレキシン欠損型のナルコレプシーに難治性の精神症状を合併しており,抗精神病薬を使用されていた。また,残り4例に関しては,身体症状はほとんど目立たず,ほぼ精神症状のみを呈しており,病像が非定型であったり薬剤抵抗性と判断されm-ECTが施行され,これが奏効した。
著者
中山 隆盛 白石 好 西海 孝男 森 俊治 磯部 潔 古田 凱亮
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.3052-3056, 2002

前立腺癌は,日本において死亡増加率が最も高く,今後の動向は重要である.われわれは,直腸狭窄により発見された稀な前立腺癌を報告する.<br> 症例は, 73歳の男性.主訴は排便困難であり,直腸癌疑いにて紹介入院となった.大腸内視鏡および注腸にて,直腸の全周性狭窄像を認めた.尿路症状を認めないものの, PSA (prostate specific antigen)が高値であり,骨転移が認められた.前立腺生検により,原発前立腺癌の確定診断となった.内分泌療法および放射線療法が奏効し,直腸狭窄は解除され,外来で内分泌療法中である.