著者
森杉 壽芳 小池 淳司 佐藤 博信
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-140, 1995

近年、国会・中央省庁等の首都機能移転に関心がもたれ、政府をはじめとする各種研究機関等で多数の提言, 提案がなされてきた。このような首都機能移転の社会的意味を判断するためには、その効果を把握する必要がある。そのため、本研究では、首都機能移転によって影響を受ける主体を東京, 新首都, その他の地域及び移転する政府自身に分類し、それぞれの主体に帰着する効果を一覧表にして示す「地域間帰着便益構成表」を提案する。この表では、東京だけでなく、新首都や他の地域を便益を享受する主体としてとりあげることで、首都機能移転に関する個別の効果を国土及び国民全体の観点から総合的に見ることができる。また、必要に応じて、さらに細かい便益の帰着構造を把握し、表の中に位置づけることができる。
著者
鈴木 みずえ 金森 雅夫
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.3-9, 2015-03-10 (Released:2015-07-07)
参考文献数
19

認知症高齢者の転倒は,認知症の進行に伴って脳神経障害に関連した歩行障害・バランス障害から引き起こされるだけではなく,認知症による失行,失認などの中核症状,認知症の行動・心理症状など多様な要因が複雑に絡まっている。最新の認知症高齢者の転倒予防のシステマティックレビューやランダム化比較試験(RCT)の検討をした結果,介入方法の基準や標準化が明確ではなく,結果の再現性が乏しいということが考えられた。それらを踏まえてケアスタッフの多職種連携や転倒予防に関する教育プログラムを明確化したRCTも報告され,ケアスタッフが最大限に機能を果たしてエビデンスに基づいた効果的なアセスメントや介入が展開できれば転倒予防につながる可能性が高い。以上から認知症高齢者を対象とする転倒予防の効果的な介入のポイントとして多職種連携や転倒予防教育を重視した介入プログラムの必要性が示唆された。
著者
長島 渉 崎山 奈津子 鈴木 大吾 渡邉 啓介 水野 るみ子 鈴木 利恵 森本 優子 望月 寿人 會津 恵司
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.282-288, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
22

【目的】春日井市民病院では,症状緩和と療養場所の意向に関する意思決定支援を中心とした緩和ケアクリニカルパスを導入している.本研究では,自宅退院の意向を持つがん入院患者の自宅退院を困難にする要因をクリニカルパスの情報を基に探索した.【方法】2014年6月〜2015年8月の期間で緩和ケアチームが介入したがん入院患者のうち今後の療養先の意向が自宅である患者を対象とし,診療録を後方視的に調査した.自宅退院を困難にする要因についてロジスティック回帰分析を行った.【結果】解析対象43名の内,自宅退院された患者は25名(58.1%)であった.多変量解析の結果,せん妄の存在と独居が自宅退院に影響する因子として選択された.【結論】自宅退院の意向を持つがん患者の自宅退院を困難にする要因として,せん妄の存在と独居であることが示唆された.せん妄については早期発見・早期治療が,介護者の問題は早期から退院支援部門との連携が必要である.
著者
奥村 信夫 森 康夫
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
vol.31, pp.32-35, 2015-08

2014年11月6日・7日の2日間にわたり第47回全国中学校社会科教育研究大会(滋賀大会)が開催された。大会2日日(7日)には,守山市立守山南中学校において社会科3年(公民的分野)の授業を公開した。単元「くらしを支える地方自治」のなかで,タブレット端末(SHARP「10.1型手書き学習端末」)と電子黒板(SHARP「BIG PAD Campus」),リモコン型レスポンスアナライザ(内田洋行「EduClick HE」)を使って,グループ・学級討議を行い,討論の活性化を図ろうと試みた。本授業を通して,生徒がどのように積極的に討論し,生徒の思考が深まったのかを検証し,携帯情報端末や電子黒板を活用した授業の効果や課題等について考察を深める。
著者
阿部 広和 大須田 祐亮 井上 和広 森 鉄矢 古川 章子 石岡 卓 中島 久三子 小塚 直樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb1176-Bb1176, 2012

【はじめに、目的】 脳性麻痺児の移動手段は個々により多種多様にも関わらず,移動に関する研究の多くは歩行に焦点を当てたものである.移動時のエネルギー効率に関しても,歩行時のエネルギー効率を算出している報告が多くみられる.しかし,障害の重症度を表すGross Motor Function Classification System(GMFCS)レベル3-4の脳性麻痺児の多くは学校や地域で車いすを用いて移動している.そのため,GMFCSレベル3-4の脳性麻痺児においては,歩行によるエネルギー効率の把握が日常生活における移動方法のエネルギー効率をみているとは必ずしも言えない.本研究の目的は,脳性麻痺児における手動車いす駆動時のエネルギー効率と歩行時のエネルギー効率をGMFCSレベルごとに分け,比較し検討することである.【方法】 対象は,痙直型脳性麻痺児21名(男性11名,女性10名,平均年齢13.5±3.4歳)とした.内訳は,GMFCSレベル2-4の児が各レベルごと7名であった.移動方法は,GMFCSレベル2の児は独歩,レベル3-4の児は手動車いすであった.エネルギー効率の測定は5分間の安静座位後,1辺10mの正方形のコース上を5分間,対象児の最も快適と感じる速度で歩行・手動車いす駆動させた.歩行時・手動車いす駆動時のエネルギー効率は,Total Heart Beat Index(THBI)を用いて求めた.THBI(beats/m)は,5分間総心拍数(beats)/5分間総移動距離(m)で算出した.心拍数の測定には,Polar RS800CX (Polar Electro社,日本)を使用した.統計処理は,GMFCSレベルごとのエネルギー効率を比較するために一元配置分散分析と多重比較検定を行った(有意水準5%).また,群間の差の大きさをみるために効果量(Cohen's d)を算出した.効果量は,0.2≦d<0.5で軽度,0.5≦d<0.8で中等度,0.8≦dで高度と効果量が高くなるほど群間の差が大きいとされている.一元配置分散分析と多重比較検定はSPSS version 19.0,効果量はG Power3.1を用いて算出した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て,保護者・対象者に説明を行い,同意書を得て行った.【結果】 THBI(beats/m)は,GMFCSレベル2で2.75±0.75,レベル3で1.99±0.21,レベル4で3.0±0.87であった.GMFCSレベルごとのエネルギー効率を比較するために一元配置分散分析を行ったところ,有意な主効果が得られた(F<sub>2,18</sub>=4.254,p=0.031).Games-Howellの方法でpost-hocテストを行ったところ,GMFCS レベル3と4で有意な差が見出された(P=0.049).GMFCSレベル2と3,3と4間の効果量はd=1.37,1.60と大きかったが,レベル2と4間の効果量はd=0.32と小さかった.【考察】 GMFCSレベルが低下するにつれて,歩行時のエネルギー効率は低下するとされている.しかし,GMFCSレベル3の児は車いす駆動で移動することにより,GMFCSレベル2の児における歩行時のエネルギー効率よりも効率よく移動できた.GMFCSレベル2と4間では,効果量が小さいためエネルギー効率にあまり差がないと言える.GMFCSレベル4の児における歩行時のエネルギー効率はレベル1-3の児よりも大きく低下するため,手動車いす駆動で移動することで効率よく移動できることが示唆された.また,有意差はなかったがGMFCSレベル3と4間では,効果量が大きくサンプルサイズを増やせば有意差が生じる可能性がある.つまり,車いす駆動時のエネルギー効率も粗大運動能力により変化する可能性が示唆された.しかし,GMFCSレベル4の児はばらつきが大きいため,手指の操作性を評価するManual Ability Classification System(MACS)などで詳細に評価していく必要があると考える.【理学療法学研究としての意義】 日常生活の移動方法として用いられている手動車いす駆動時のエネルギー効率を把握することで,エネルギー効率の改善を目的とした理学療法介入の一助となると考える.
著者
森 日出樹
出版者
広島大学現代インド研究センター
雑誌
広島大学現代インド研究 : 空間と社会 (ISSN:21858721)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.75-88, 2012-03

インドの西ベンガル州では2011年の州議会選挙において34年間におよび政権を担っていた左翼戦線(=LF)政権が崩壊した。本稿では,LF政党が長期政権を維持できた要因ならびに2011年の選挙での敗北に至るまでの経緯を述べ,その選挙結果を分析する。2011年の選挙では,農地買収問題などによる世論の批判の高まりからLF 政党は惨敗した。しかし,長期政権下で作り出された政党が支配する社会に対する人々の不満は既に蓄積されており,農地買収問題はその不満を一気に噴出させたと言える。選挙結果では,貧困層のLF政党支持率は他の階層と比べ依然高い傾向にあり,貧困層からの信頼をある程度保持していることがうかがえる。LF政権の長期にわたる支持の安定性を支えていた要因として,不安定な経済状況から生み出される人々の政党への依存や政党との縁故による便益供与の恩恵が指摘されてもいる。しかし,2006年度と比較すると,貧困層の間での支持率の低下は決して小さくはない。農地買収問題を機に党や政治のあり方そのものに対する不満が高まったと考えられる。左翼政党にとって党の組織改革や意識改革が必要であろう。After 34 years in power, the Communist Party of India [Marxist] (CPM)-led Left Front (LF) was soundly defeated in the West Bengal Assembly election held in 2011. What made the LF government stable for such a long period, and what were the causes of the electoral rout in 2011? What challenges is the Left facing going forward? With attention to these questions, this paper reviews the West Bengal Assembly election in 2011.Despite an unsatisfactory performance on the economy and social development, the LF gained broad support from voters, particularly the rural poor, in the years since it first came to power in 1977. As some scholars point out, its electoral success can be attributed to the people's dependence on the parties under conditions of economic stagnation, so-called clientelism between the parties and the people, which seemed to create a party-controlled society.Although the LF again won an overwhelming victory in the 2006 election due to its drive for industrialization under the leadership of the Chief Minister Buddhadeb Bhattacharya, it soon faced stiff protest from local people against land acquisitions for big industrial projects in Singur and Nandigram. It can be said that these incidents unleashed the people's resentment against oppressive party control of the society. The All India Trinamool Congress (TMC), the main opposition party in West Bengal, led by Mamata Banerjee, successfully spearheaded the people's campaign against the government. This brought about a big political gain for TMC.The election results show that even though the LF could retain, to some extent, its support base among the rural poor, compared with the result of 2006 elections, its share of votes among the poor has considerably decreased.The election review report of the CPM stressed the difficulties of working under the overall neo-liberal setup and dealing with widespread violence against the party. However, it does not seem to make clear how they will tackle such problems as abuse of authority, corruption, and other wrongdoing among the party members, even though they recognize these problems.Due to increasing criticism against party control of society among the rural poor, organizational reform is the main challenge for the Left.
著者
山口 佳寿博 大森 久光
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.59-65, 2012

喫煙に起因する疾患として最も重要なものはCOPDと肺癌である.近年施行された網羅的ゲノム解析(GWAS:genome-wide association study)の結果,両疾患には共通の疾患感受性遺伝子(促進,抑制)が存在することが明らかにされた.これらの事実は,FEV1.0を中心とする肺機能の測定は喫煙関連COPDの診断/管理に不可欠であるばかりではなく,COPDに合併する喫煙関連肺癌の発生を予測する臨床的に重要な指標を求めていることを意味する.しかしながら,肺機能の測定値をそのまま提示しても一般市民あるいは患者の理解を得ることが難しいことが指摘されている.この問題を解決するため,肺機能をわかりやすい年齢に変換して提示する"肺年齢"なる指標が導入された.しかしながら,現在使用されている肺年齢はFEV1.0の正常基準値を与える回帰式にFEV1.0(肺機能因子)と身長(体型因子)を代入し年齢を逆算するものであり,この方法には種々の問題が存在し肺機能の情報を正しく患者に伝達しているとはいいがたい.本稿では肺年齢がなぜ必要であるかの背景(COPDと肺癌の関連),その基礎的概念ならびに正しい評価法について理論的検討を加えた.
著者
森 楙 七木田 敦 青井 倫子 廿日出 里美
出版者
広島大学
雑誌
広島大学教育学部紀要. 第一部, 教育学 (ISSN:09198660)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.181-186, 1992-03-27

本研究の目的は, 行事場面における保育者の行動特性を組織的観察法を用いて明らかにすることにあった。結果から, 次の3点が明らかとなった。(1)自由遊び場面に比較して, 行事場面では保育者の働きかけは「支配的」になりやすく, 幼児の「依存的」な反応も多くなる。(2)保育形態として設定保育を取り入れている園は, 自由保育を取り入れている園よりも行事場面ではより「支配的」になりやすい。(3)行事場面にも, 幼児の創意工夫が生かされるような保育者の配慮があれば幼児の自立性が出てくるので, 行事の内容及び進め方を工夫する必要がある。行事の教育的意義を保育に生かすために, 親との提携は必要不可欠である。そのため親の行事に対する考え方を明らかにすることは, 従来の幼稚園・保育所主導の行事を再考するうえで有効であると考えられる。今後, この点を実証的に検討していく予定である。The purpose of this study was to analyze the mutual interactions between teachers and children in annual events activities of nursery school (y#ochien) comparing with play activities.A systematic observation method was adopted in this research. The authors especially devised two kinds of observation categories to check (1) active behaviors of a teacher on young children, (2) responsive behaviors of the teacher to their active behaviors. Annual events, including with "the short trip", "Onigiri (rice ball) party", "Mochitsuki (rice-cake making)", "Yakiimo (baked sweet potatoes)", and "presentation of singing songs, dancing, and operetta. etc.", were conducted to observe the behaviors of the teacher and children.The following are the main results;1. Compared with play activities, the teacher's behaviors were inclined to directive in events activities. In some events activities that had less strict in schedule, the teachers behaviors were inclined to supportive.2. Supportive behaviors of teacher, such as praise, suggestion, approval, etc, fostered the independent, supportive behaviors and active interactions among children in events activities.3. Some modifications of the content of events activities, such as less restricted environment and more freedom in schedule, will draw out and develop children's independent and spontaneous behaviors.
著者
大森 房吉
出版者
東京大学
雑誌
震災豫防調査會報告
巻号頁・発行日
vol.57, pp.33-34, 1907-02-15
著者
森保 尚美 圓城寺 佐知子 権藤 敦子 寺内 大輔
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.42, pp.67-76, 2014-03-24

本研究の目的は,児童一人ひとりの自発的な音楽表現を起点として音楽科の特性に応じた思考を発展させ,さまざまな音楽文化に能動的・主体的にかかわっていけるような,音楽科における次世代のカリキュラムの開発を行うことにある。小学校低学年を対象に「児童の音楽的思考を育む」ことを目標に授業を行い,今年度は音楽的思考の範囲の拡大に向けて学びのあり方を再考した。母語を出発点とした個の表現を引き出す活動が中心であった昨年度に対して,今年度は,個の身体的・視覚的なイメージ,言葉の表現を出発点とした鑑賞・歌唱・音楽づくりに活動の分野を拡大した。授業では,友だちと自分の表現を重ねる活動や,他者(作詞者・作曲者・他の鑑賞者・友だち)のイメージや解釈との出会いや共感を学習過程に位置づけることによって,静止画から動画へと展開するような解釈の深まり,表現の変容が認められた。考察を通して,個の感受・表現から出発し,他者と出会い共感して,再び自らの感受へと戻るプロセスの重要性,低学年児童の発達段階における想像的な思考の位置づけ,伝達=習得型ではない音楽文化の学習観に立つカリキュラム開発の重要性が確認された。This study develops a new music curriculum for lower elementary school grades, to foster students' thinking ability regarding music through self-expression (physical, visual, and verbal) and to broaden the range of their experience of musical culture through the activities of listening, singing, and music making. As a result, we found that the students tended to change their interpretation of musical images through interaction with other classmates and teachers, and with exposure to the music of songwriters and composers. We realized the importance of the students' learning process in which initial self-confidence returned through empathetic contact with others. We confirmed the importance of developing a musical curriculum beyond the standard teaching-learning model (teacher to student transmission), which takes into account the significant effect of human interaction on the development of young children's imagination and creativity.
著者
森村 壮志
出版者
医学系研究科外科学専攻
巻号頁・発行日
2014-03-24

学位の種別: 課程博士
著者
森俊二 大津展之
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.34(1977-CVIM-015), pp.1-12, 1977-11-22

対象とするパターンの持つ情報がその形にあり、濃度の微妙な変化にはないような比較的単純な場合には、画面全体をまず二値化することが、それに続く処理の簡略化ばかりでなく、対象を切り出す又は強調するという意味においても、非常に重要である。実際、文字読取装置では、二値化が必ずといってよいほど行なわれている。しかし、この問題は最っとも良く利用している文字認識技術の分野では、Bartzの論文以外ほとんど正面から取り上げて議論されていない。一方画像のほうでは、この問題は比較的良く取り上げられて、今まで種々の方法が発表されてきている。多分この様な状況は、文字の場合には、濃淡がはっきりしている対象を選べる事と、第一義的に認識アルゴリズムに研究の興味があるということ、それに実用装置を作る立場からすれば二値化の前処理はできるだけ単純にすませる必要のあった事が原因になっていると思われる。勿論上述の事は一般的傾向を示すもので、郵便番号読取機などは例外である。一方画像のほうは自然に与えられるものが多く、しかも、まず認識の第一ステップとして対象を切り出すということが重要課題となるので、二値化問題は技術的にも学問的にも取り上げられてきたと思われる。しかし文字認識技術の分野でも、認識アルゴリズムがかなりの水準に達してきて、それと共に必然的にかなり自由な対象を処理する事が要求されるようになった。また使用用紙にしても必ずしもOCR用紙でなく上質紙の使用がユーザーから要求されるようになってきた。この様な背景から、一番最初に問題になった二値化の問題に回帰する必要に迫られたのである。しかし再びこの問題に帰って見ると、それは認識の本質的問題と深いかかわりあいを持ち困難な問題である事があらためて認識させられる。以下、文字、画像データ(線図形)を対象として、二値化問題を認識問題として見直し、今まで開発された手法を含めて、二値化手法の総括的な検討を試みる。
著者
狩野 豊 高橋 英幸 森丘 保典 秋間 広 宮下 憲 久野 譜也 勝田 茂
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.352-359, 1997-01-10
被引用文献数
3

The relationship between the thigh muscle composition and the sprinting performance was investigated in 11 male adult sprinters (age/20.8±0.9 yrs, 100 m sprint time/11.20±0.33 sec). Axial images of the thigh muscle were taken by magnetic resonance imaging (MRI) at upper (70%) and middle (50%) position in femur. From these images, cross-sectional areas (CSA) of the quadriceps femoris, the hamstring and the adductor muscles were measured. The results of the regression analysis showed significant correlations between 100 m sprint time and both CSA of adductor and hamstring muscles at 70% position (r=-0.72 and r=-0.67, respectively). There were no significant correlations between 100 m sprint time and CSA of adductor or hamstring muscles at 50% position, and neither quadriceps femoris mudcles at 70 nor 50% positions. These results suggest that greater muscle volume of hamstring and adductor at upper position affect sprinting performance.
著者
村上 祐一 倉西 森大 CHAMSAI Sawitree 岡本 純一郎
出版者
北海道大学大学院水産科学研究科
雑誌
北海道大学水産科学研究彙報 (ISSN:13461842)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.51-61, 2012-12

我が国の漁業管理は,許可制度と漁業権制度によって組み立てられている。いずれも漁業管理当局の許可又は免許という形で漁業を営む権利が確立するが,漁業権制度は,所謂許可制度とは異なった由来と性格をもつ。漁業権制度は,沿岸地域の漁業者集団による特定の漁業を目的とした沿岸地先水域の共同使用権的性格を有している。漁業権制度の起源を歴史的に辿れば,江戸時代の幕府の沿岸漁業統治の指針とされた律令要略の所謂「磯は地先,沖は入会」に由来し,それが明治漁業法により近代法制国家の下で漁業権の法的権利として確立されたものである。その後,戦後の沿岸漁業民主化のための制度変更を経て,漁業権制度は沿岸漁業者集団による沿岸漁業の自主管理枠組みとして我が国の漁業管理制度の骨格を成してきた。戦後,沿岸漁業の稠密化への対応として我が国の外延的漁業発展過程の中で企業経営が中心の沖合,遠洋漁業が漁獲量,漁獲金額において我が国の漁業の主役となるなかで沿岸漁業の漁業権制度は我が国漁業界においてある種,自明な制度として定着してきた。しかしながら近年,沿岸漁業の外部から漁業権制度について,その閉鎖性,非効率性を批判し,漁業権制度の改革ということが議論されるようになってきた。このような議論に対して漁業協同組合を中心に強い反発が起きている。2007年2月,経済団体連合会,日本商工会議所,経済同友会,日本貿易会の経済4団体の支援を受けた日本経済調査協議会は,規制改革議論の一環として水産業の戦略的な抜本改革を求める緊急提言を行った。この提言の背景には日本の水産業の低迷(水産資源減少,漁業経営の悪化など)があり,議論は漁業の活性化のための制度改革論として主導されたものであるが,その中で漁業の活性化のための漁業資源の科学的管理(許容漁獲量による管理),漁業経営の改善(許容漁獲量の漁業者への譲渡可能な個別割当)とともに漁業制度の規制緩和策として漁業協同組合員の資格要件の緩和と漁業権の中の定置漁業権,養殖のための特定区画漁業権を漁業協同組合以外の個別経営体にも免許を認めるべきとの提言が行われている。日本経済調査協議会の緊急提言は,現在の水産資源管理に不満を有する資源研究者を含め水産関係研究者をも巻き込み大きな議論となった。特に,漁業権制度の改革提言に対して沿岸漁業者の団体であり,漁業権制度の当事者である漁業協同組合は日本経済調査協議会の緊急提言に強く反発した。日本経済調査協議会の緊急提言をめぐる議論は,政権交代や政府の規制改革会議の終了により一旦は沈静化したものの,2011年3月11日に起きた東日本大震災という未曾有の災害からの水産復興対策議論の中で養殖のための特定区画漁業権の免許資格の規制緩和論が再び浮上することとなった。
著者
山田 剛一 森 辰則 中川 裕志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.2431-2439, 1998-08-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

情報検索においては, 検索対象の規模が拡大するにつれ, 検索精度の向上がより強く求められてきている.そこで本論文では, 複合語をまとまりとして扱う手法と, 単語の共起情報を用いる手法を統合することにより, 探索システムの精度向上を図ることを提案する.複合語は全体で1つの概念を表現しており, まとまりとして扱うことが望ましいが, 複合語どうしマッチさせる場合には部分的なマッチングを考慮する必要が生じる.このマッチングを行い文書をスコア付けする手法を考案した.さらに, 単語が複合語を構成せず共起する場合もスコアに反映させるため, 共起情報を利用する手法と組み合わせ, 評価実験を行ったところ, 単語の重みに基づく手法, およびそれに共起情報を加える手法のいずれよりも良い探索精度が得られることが確認できた.