著者
瀧下 謙一 米田 篤彦 清水 康夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.81, no.827, pp.15-00101-15-00101, 2015 (Released:2015-07-25)
参考文献数
4

In this paper, we focused on the fact that the ease of driving changed according to torsional rigidity of the electric power steering system for the purpose of the improvement in control performance of vehicle. First, the influence on transfer characteristics from a steering angle(steering wheel) to front wheel angle(front tires) by torsional rigidity was considered theoretically. As a result, it turned out that a front wheel angle was determined by not only a steering angle but also the influence of the dynamic state of vehicle, and it was shown that the influence of the dynamic state of vehicle can be shut by making steering torsional rigidity into high torsional rigidity. Next, the validity of a theoretical verification was confirmed through numerical simulation of steering correction at the time of a disturbance input. Finally, the lower limit value of torsional rigidity for practical use of a high torsional rigidity steering was determined.
著者
辻 貴介 清水 明宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OIS, オフィスインフォメーションシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.225, pp.11-16, 2003-07-18
被引用文献数
3

インターネットやモバイル端末を利用した通信技術が普及し,お金や個人情報を扱うサービスも増加している.そのようなサービスでは,第3者による秘匿情報の傍受や悪用を防ぐために認証の技術が必要不可欠である.ネットワークを介した個人認証における脅威を防ぐ方法として,認証情報が毎回変わるワンタイムパスワード認証方式がある.しかしこのような方式ではサーバに認証情報等を蓄積しているため,stolen-verifie problemのような問題がある.我々は,安全なパスワード認証方式として提案されているROSI (RObust and SImple password authentication procotol)に対する攻撃法を考案し,さらに,処理コストを増やすことなくそれらの攻撃を解決する方法を提案する.この方式は,認証情報更新の必要がなく,S/Keyのように高いセキュリティを有する.
著者
山田 幸男 大石 正夫 清水 美知子 小島 紀代子 岩原 由美子 石川 充英 渡辺 栄吉
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第10回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.80, 2009 (Released:2009-12-17)

【目的】視覚障害者は転倒しやすく、骨折の危険も大きいため、転倒・骨折予防は視覚障害者には極めて重要である。そのため外出を控える人も多いものと思われる。そこで、視覚障害者の転倒の頻度、運動量などについて検討した。【対象と方法】当院視覚障害リハビリ外来受診者81名に、転倒の不安、運動量、骨粗鬆症予防の有無などについてアンケート調査した。また、一部の人には骨密度、片足立ち時間などの測定も行った。【結果】視覚障害発症後、バランス感覚の低下(61.3%)、転倒回数(20.0%)や転倒の不安(66.7%)が増し、運動量は減少し(81.0%)、80.2%の人が運動不足と感じていた。片足立ちでは、ほとんどの人が11秒未満であった。 運動としては、外を歩く(58.0%)、自己流の体操(29.6%)、家の中を歩く(27.2%)、ストレッチ体操(24.7%)、階段の昇降(22.2%)などが上位を占めた。骨密度の減少を認める人が少なくないが、Vit.DやCaの摂取に気をつけている人はそれぞれ34.2%、51.9%に過ぎない。【考按】視覚障害者の転倒の不安は大きく、運動不足の解消、カルシウム摂取など食事に対する意識の向上、陽にあたること、などが必要と思われる。そこで我々のパソコン教室では棒を用いた体操や片足立ちなどを行ったところ、日常生活動作の向上を認めることが多くなった。
著者
長崎 栄三 国宗 進 太田 伸也 五十嵐 一博 滝井 章 近藤 裕 熊倉 啓之 長尾 篤志 吉川 成夫 久保 良宏 上田 雅也 牛場 正則 日下 勝豊 塩野 友美 島崎 晃 島田 功 榛葉 伸吾 西村 圭一 早川 健 藤森 章弘 牧野 宏 松元 新一郎 望月 美樹 森 照明 藤村 和男 半田 進 家田 晴行 松田 泉 浅沼 健一 小俣 弘子 清水 壽典 村越 新 安部 浩一 飯嶌 一博 久永 靖史 山根 浩孝 山口 啓
出版者
公益社団法人日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.11-21, 2008-04-01
被引用文献数
5

算数・数学教育における新たな目標として「算数・数学の力」を考えた.算数・数学の力とは,算数・数学のあらゆる活動に関わるはたらきで,大きく「算数・数学を生み出す力」,「算数・数学を使う力」,「算数・数学で表す力」,「算数・数学で考え合う力」の4つの力で構成される.初めに,我が国の算数・数学科の教育課程の史的分析,算数・数学のカリキュラムの国際比較,算数・数学教科書の研究,数学的な考え方・問題解法の史的分析,社会の算数・数学教育に関する意識の分析を行った.その上で,算数・数学教育の目的・目標に算数・数学の力を位置付けた.そこでは,算数・数学教育の目標を概念理解と能力習得とで均衡を図った.そして,算数・数学の力を,算数・数学的内容との一体化,算数的活動・数学的活動の重視などの原則の下で構造化し,その質の高まりを具体化するための算数・数学の力の水準の重要性を指摘した.
著者
野崎 博路 清水 將之 作野 誠
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.15-20, 2009 (Released:2010-08-10)
参考文献数
2

スピンあるいはドリフトコーナリング挙動等の限界時のコーナリングフィーリングが感じられるシミュレータを構築した。次にドリフトコーナリング時の操縦特性の検討を行った結果、ドライバは主としてヨーイングを、加えて横加速度をモーションフィードバックしたカウンタステアコントロールを行っていることを明らかとした。
著者
立松 和彦 荒井 正直 岩清水 隆 木村 芳幹 浦野 英男 今本 啓一 元木 亮
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.66, no.549, pp.1-6, 2001
被引用文献数
8 12

In order to consider countermeasures against concrete cracks caused by drying shrinkage, properties and pore size distribution of raw ore of aggregate which were used usually in Kansai area were measured at the first step. As a result, the following was found. There was a big difference at drying shrinkage ratio of each raw ore and there was a difference by core boring direction, too. But, even if same kind of raw ore, some have a big difference at drying shrinkage ratio by core boring direction, but the other doesn't have. High young's modulus of raw ore decreases its drying shrinkage. Low pore volume under 15nm radius of raw ore tends to decrease its drying shrinkage.
著者
清水 智子
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.127-133, 1984-03-31

島根県における保育所保母のヘルス・ケアのあり方を研究する立場から,今回は,保母に多発し医学上問題となっている頸肩腕障害と日常生活の不便,苦痛の実態について調査を行った。本調査対象者は,市部62.1%(公立53.8%,私立66.1%),農山村52.3%(公立51.0%,私立52.3%),離島68.8%(公立57.9%,私立88%),へき地40.0%(公立のみ)であった。対象者は年令構成では20代が全体の53.4%,経験年数では10年未満が62.1%,未・既婚別では既婚者が60.2%,平均労働時間では8~9時間が93.6%を占めた。頸肩腕障害の症状では,「物忘れ」や感覚器,とくに「目の疲労」,「視力がおちた気がする」,さらに「肩こり」,「腰痛」など頸肩腕障害の典型的なパターンがみられた。日常生活の不便・苦痛の訴えでは,精神神経系に関する症状が中年層に最も多くあらわれていた。業務の実態では,「休憩時間が十分とれない」あるいは「家庭への仕事のもち帰り」など日常生活への影響も明らかになった。本調査結果から,今後,保母の労働条件,職場の環境条件,作業および保育内容,一日の生活時間配分などを具体的に考慮したプライマリ・ヘルス・ケア対策や,適切な健康教育あるいは生活指導の展開が緊要な課題と考えられる。本研究の要旨は,第27回日本小児保健学会(1983,埼玉)ならびに第30回日本公衆衛生学会(1983,横浜)において発表したものである。なお,本研究にあたり御指導を賜わりました本学名誉教授大久保英子氏ならびに,島根医科大学第2環境保健医学教室教授山根洋右氏,同助教授吉田暢夫氏,また,調査に御協力いただきました島根県各保育所長,ならびに保母の方々,島根県および関連市町村の社会福祉関係の方々に厚く御礼申しあげます。
著者
田辺 仁志 中山 忠三 浅山 哲 内海 進 栗栖 弍彦 市川 吉夫 河合 孝 鮎沢 千尋 河原畑 勇 福原 敏彦 橋本 陽子 久保 正太郎 楠野 正夫 中村 二郎 宮沢 左門 有賀 久雄 宮島 成寿 今井 退 小田 常治 川森 郁郎 川瀬 茂実 石川 義文 沖野 英男 山口 孝根 三好 健勝 倉田 啓而 鮎沢 啓夫 山口 定次郎 小林 勝 岩下 嘉光 細田 茂和 松沢 則子 山崎 寿 小林 あつ子 山田 たけを 市岡 正道 丸山 長治 高須 敏夫 佐藤 清 山崎 昭治 酒井 英卿 片岡 平 梅村 義雄 村上 昭雄 田島 弥太郎 鬼丸 喜美治 佐渡 敏彦 広部 達道 沓掛 久雄 渡部 仁 長野 ヒロ 小林 悦雄 佐伯 佳之 阿相 敏雄 佐藤 正市 平田 保夫 武井 隆三 長島 栄一 高沼 重義 蒲生 卓磨 一場 静夫 宮川 千三郎 清水 滋 堀内 彬明 波島 千恵子 安江 昇 辻田 光雄 真野 保久 板垣 正男 田中 義麿 中山 光育 筑紫 春生 土井 良宏 山下 興亜 長谷川 金作 小林 勝利 石戸谷 幸雄 楠木園 正雄 橋口 勉 吉武 成美 赤井 弘 森 精 有本 肇 小西 孝 小野 四郎 荒井 三雄 加藤 康雄 土橋 俊人 後藤田 さっき 吉田 勝 進士 安治 青木 一三 小松 計一 鳥居 礼子 橋本 嘉男 清水 正徳 坂口 育三 小笠原 真次 中川 房吉 北村 愛夫 佐藤 歌子 大野 巌 原田 泰介 関 文夫 石垣 隆謌 嶋崎 昭典 大沢 定敏 小島 哲雄 布目 順郎 小川 敬之 松田 和夫 大工原 建
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.207-221, 1965

126) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第1報) 発生実態調査と多角体の性状について<BR>127) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第2報) ウイルスのキンケムシに対する感染力とウイルス伝播の-知見<BR>128) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第3報) ウイルスの交差感染について<BR>129) 野外昆虫多角体病と家蚕多角体病に関する研究 (VIII) 家蚕, サクサンなどに感染性を示す核多角体病ウイルス
著者
新保 健次 清水 啓史
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】上腕骨近位端骨折の保存療法はその自動運動が行われるまでほぼ8週を要し、その点で日常生活活動(以下ADL)の改善について大きな負担になっていると考えられる。しかし、上腕骨近位端骨折の保存療法例に関するADL獲得時期についての詳細な報告は少ない。そこで、今回受傷後2、3ヶ月のADLについて調査したので報告する。<BR>【方法】可能な限り詳細にそのADLを調査するために40項目(身辺動作6、更衣7、入浴4、整容6、トイレ動作1、支持4、挙上2、筋力2、生活関連動作8)を独自に作成し、各項目を「できる」、「少しできる」、「できにくい」、「全くできない」の4段階で評価した(以下、「できる」、「少しできる」をできる群とする)。動作時痛をVisual Analog Scale(以下VAS)で評価した。上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に直接アンケート記入を依頼し、受傷後2、3ヶ月の計2回実施した。対象は全例女性で、受傷時年齢は60.8歳(43歳~79歳)であった。Neer分類による骨折型はminimal displacement骨折が3例、2part外科頚骨折が2例、3part外科頚、大結節骨折が1例であった。<BR>【結果】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数は全例で増加した。1例が30項目(75%)であり、他5例は35~40項目(87.5%~100%)であった。VASは平均48.8mmから14.3mmであり全例で改善した。受傷後3ヶ月で全例が改善した動作は、「更衣動作」、「反対側の脇、肩を洗う」、「ズボンの後ろポケットに手をいれる」、「起きる際に患肢を支えにする」、「目の高さより上の物をとる」、「前の物に手を伸ばす」、「重い物を下げる」であった。改善が低かった動作は「ブラジャーを後ろで留める」、「エプロンのひもを後ろで結ぶ」、「背中を洗う」、「結髪動作」、「ネックレスを後ろで留める」、「患側を下にして寝る」、「手枕をする」、「重い物を目の高さまで挙げる」、「洗濯物を干す」、「自転車に乗る」であった。<BR>【考察】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数が増加したこと、VASが改善したことから、ADL拡大に動作時痛の軽減は一つの要素になっていると考えた。他より改善が低かった1例は3part骨折で、75歳以上の高齢者であった。ADLで改善された群から、肩関節部に大きな力が加わると考えられる「目の高さより上の物をとる」、「重い物を下げる」など問題はなかった。しかし、上腕骨に回旋の加わる動作は改善が低い傾向があった。固定期間中に制限される動作に改善が低い傾向があると考えられた。上腕骨近位端骨折の保存療法に影響を及ぼす因子については骨折型、年齢が影響するとの報告がある。後療法では各症例のゴールを踏まえ、機能改善だけでなく骨折型や骨癒合の状態を確認する、できない動作に代償動作の指導を行うなどの必要があると考えられた。<BR>【まとめ】上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に受傷後2、3ケ月のADLに関するアンケート調査を行った。全例で受傷後2~3ヶ月でADLの改善が見られた。
著者
新保 健次 清水 啓史
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0563, 2008

【目的】上腕骨近位端骨折の保存療法はその自動運動が行われるまでほぼ8週を要し、その点で日常生活活動(以下ADL)の改善について大きな負担になっていると考えられる。しかし、上腕骨近位端骨折の保存療法例に関するADL獲得時期についての詳細な報告は少ない。そこで、今回受傷後2、3ヶ月のADLについて調査したので報告する。<BR>【方法】可能な限り詳細にそのADLを調査するために40項目(身辺動作6、更衣7、入浴4、整容6、トイレ動作1、支持4、挙上2、筋力2、生活関連動作8)を独自に作成し、各項目を「できる」、「少しできる」、「できにくい」、「全くできない」の4段階で評価した(以下、「できる」、「少しできる」をできる群とする)。動作時痛をVisual Analog Scale(以下VAS)で評価した。上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に直接アンケート記入を依頼し、受傷後2、3ヶ月の計2回実施した。対象は全例女性で、受傷時年齢は60.8歳(43歳~79歳)であった。Neer分類による骨折型はminimal displacement骨折が3例、2part外科頚骨折が2例、3part外科頚、大結節骨折が1例であった。<BR>【結果】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数は全例で増加した。1例が30項目(75%)であり、他5例は35~40項目(87.5%~100%)であった。VASは平均48.8mmから14.3mmであり全例で改善した。受傷後3ヶ月で全例が改善した動作は、「更衣動作」、「反対側の脇、肩を洗う」、「ズボンの後ろポケットに手をいれる」、「起きる際に患肢を支えにする」、「目の高さより上の物をとる」、「前の物に手を伸ばす」、「重い物を下げる」であった。改善が低かった動作は「ブラジャーを後ろで留める」、「エプロンのひもを後ろで結ぶ」、「背中を洗う」、「結髪動作」、「ネックレスを後ろで留める」、「患側を下にして寝る」、「手枕をする」、「重い物を目の高さまで挙げる」、「洗濯物を干す」、「自転車に乗る」であった。<BR>【考察】受傷後3ヶ月で、できる群の項目数が増加したこと、VASが改善したことから、ADL拡大に動作時痛の軽減は一つの要素になっていると考えた。他より改善が低かった1例は3part骨折で、75歳以上の高齢者であった。ADLで改善された群から、肩関節部に大きな力が加わると考えられる「目の高さより上の物をとる」、「重い物を下げる」など問題はなかった。しかし、上腕骨に回旋の加わる動作は改善が低い傾向があった。固定期間中に制限される動作に改善が低い傾向があると考えられた。上腕骨近位端骨折の保存療法に影響を及ぼす因子については骨折型、年齢が影響するとの報告がある。後療法では各症例のゴールを踏まえ、機能改善だけでなく骨折型や骨癒合の状態を確認する、できない動作に代償動作の指導を行うなどの必要があると考えられた。<BR>【まとめ】上腕骨近位端骨折の保存療法例6例に受傷後2、3ケ月のADLに関するアンケート調査を行った。全例で受傷後2~3ヶ月でADLの改善が見られた。
著者
清水 善和
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤地理 (ISSN:0454241X)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.17-68, 1994-03
被引用文献数
1

(1)小笠原諸島母島列島の主要5属島を対象に調査区(姪島:7ヵ所,妹島:8ヵ所,姉島:7ヵ所,平島:6ヵ所,向島:7ヵ所)を設け,100本法による植生調査を行った。これに母島本島南部丘陵地の既存の10調査区のデータをくわえて,属島部の植物相と植生の特徴について解析した。(2)属島部に記録のある高等植物は158種であり,母島本島の約2分の1,個々の属島では3分の1以下でしかない。母島本島中央部で優勢な湿性高木林や湿性型媛低木林の主要構成種や稀産随伴種を欠いていること,母島本島の二次林の優占種ムニンヒメツバキがないこと,ラン類やシダ植物が質・量ともに貧弱であること,帰化雑草類や帰化樹種の侵入が限られていることなどが特徴として挙げられる。(3)一方で,母島列島の乾性低木林にのみ現れる列島固有種ハハジマトベラは平島以外の各属島に分布し,同じくムニンクロキは小笠原群島中で向島だけにしか生育していない。また,現在野生化ヤギがいないために,父島列島ではほとんど壊滅状態のオオハマギキョウが各属島で群落を形成している。(4)属島部の自然植生を海岸植生(テリハボク・モモタマナ林,クサトベラ群落)と乾性低木林(シマシャリンバイ型低木林,シマイスノキ型低木林,タチテンノウメ型矮低木林)に区分し,シマシャリンバイ型低木林はさらに優占樹種の違いにより10の優勢林(シマシャリンバイ優勢林,アカテツ優勢林,アデク優勢林,モンテンボク優勢林,ムニンアオガンピ優勢林,ヤロード優勢林,オガサワラビロウ優勢林,テリハボク優勢林,オオバシロテツ優勢林,タコノキ優勢林)に細区分した。二次植生としてはリュウキュウマツ・モクマオウ林,アオノリュウゼツラン・サイザルアサ群落,オガサワラススキ・ハチジョウススキ群落の3型を区分した。以上の植生区分に従い,各島の植生図を作成した。(5)各島の植生の特徴は次の通り。姪島:低標高で丘陵状の地形のため全体に乾燥しており,シマシャリンバイ型低木林が広がる。岩場にはタチテンノウメ型矮低木林があり,アオノリュウゼツラン群落が目立つ。戦前の耕作地の周囲にはテリハボク防風林が残る。妹島:属島の中ではもっとも標高が高く,山頂付近には時々雲霧がかかる。シマシャリンバイ型低木林が広がり,岩場にはタチテンノウメ型綾低木林が現れる。主稜線部にはシマイスノキ型低木林も点在する。林床のシマオオタニワタリが目立つ。姉島:全体に平坦な島で,北端には海岸林がある。やや湿性な沢沿いの平坦地にはリュウキュウマツ・モクマオウ林が成立し,尾根筋の岩場にはサイザルアサ群落が目立つ。南部丘陵地にはシマシャリンバイ型低木林が分布する。平島:低平な小島で,テリハボク・モモタマナ海岸林(戦前の植林を含む)とモクマオウ林が広く分布している。シマシャリンバイ型低木林はわずかで,属島部で唯一のアカギ植栽樹がある。向島:属島部最大の島であり,上部丘陵地をハハジマトベラやムニンクロキのあるシマシャリンバイ型低木林が覆う。オガサワラビロウが目立ち,ノヤシの個体も多い。二次植生としてモクマオウ林が見られる。(6)母島本島南部丘陵地と属島部の植生は,その組成・構造からみて共通の乾性低木林(とくにシマシャリンバイ型低木林とシマイスノキ型低木林)で特徴づけられる。両地域は最終氷河期の海水面低下時(100m以上)には地続きであったと考えられ,その植生は一体のものとしてとらえることができる。(7)属島部のシマイスノキ型低木林は,過去により広い分布をもち組成も多様であったが,その後の長期的な乾燥傾向(数万年〜数十万年オーダー)のなかで衰退し,より耐乾性のあるシマシャリンバイ型低木林に置き替わりつつあることを論じた。(8)戦前の人為の影響として,農耕地の開拓や家畜の放牧,野生化家畜類による食害,軍隊の活動などが知られているが,いずれも一時的なものであった。戦後は無人島となって人為の影響から解放されたので,属島部の乾性低木林は本来の姿に近い状態をとどめている。また,ここは小笠原諸島全体の植生の成立過程を考える上でも重要な内容を含んでいるので,このまま人手を加えず自然の推移にまかせるのが望ましい。
著者
清水 晶平 望月 翔太 山本 麻希
出版者
Japan Association for Landscape Ecology
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.173-182, 2013
被引用文献数
3

イノシシ(<i>Sus scrofa</i>)による農業被害が近年深刻な社会問題となっている.被害の地理的発生要因を解き明かすことは,被害対策を効率的に実施するうえで重要である.本研究の調査地である新潟県上越市柿崎地区では,被害地域が大きく拡大した後,電気柵を設置したことにより,被害地域の縮小に成功している.そこで本研究では,新潟県上越市柿崎地区におけるイノシシ由来の農業被害に対し,被害の拡大前期(2004年~2007年),拡大期(2008年),そして,減少期(2009年~2010年)の3期に分け,3つの期間における被害地点とその周辺の地理的要因との関係を明らかにすることを目的とした.本研究では,「水稲共済損害評価に係る獣害(イノシシ)申告データ」と,現地踏査により作成した土地利用図を使用して分析した.被害地点と被害のない地点について,林縁や河川からの距離など,被害地点の景観構造を示す変数を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った.また,電気柵を張る前と後の被害地点についても,同様にロジスティック回帰分析を行った.この結果,林縁,沢,耕作放棄地に近いほど被害が増加する傾向が認められた.河川,道路,都市部に関しては距離が遠いほど被害が増加する傾向が認められた.また,電気柵を設置したことにより,被害の分布が都市部に近づいていることが判明した.イノシシによる被害は見通しの悪い林縁や耕作放棄地の周辺で発生していることが明らかになり,イノシシによる被害対策には,林縁の刈払いや耕作放棄地の管理と個体数調整を同時に考慮した対策を見出す必要性があることを示した.電気柵を設置する場合は,十分な捕獲計画と併用するか,被害がまだ起きていないエリアも全体的に電気柵で一気に囲ってしまうなどの配慮が必要であろう.
著者
清水 長正
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.126-135, 1994-07-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
4 2

北上山地最高峰の早池峰山 (1,914m) では, 森林限界は高度1,700~1,300mの間で著しく上下している。このような森林限界を決めた条件として, 斜面地形に注目し考察した。早池峰山の森林限界は, 最終氷期に形成された岩塊斜面末端, 完新世に形成された雪食凹地末端や崩壊斜面上端などの斜面地形境界にほぼ一致している。これらの斜面地形の表層地質や残雪などが樹木の生育に直接影響し, 森林の成立を拒否した結果,斜面地形の境界部に森林限界を成立させたと考えた。
著者
三橋 博 佐々木 希吉 清水 譲
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical & pharmaceutical bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.11, no.11, pp.1452-1455, 1963-11-25

The whole plant of Perugularia extensa N. E. Br. was proved to contain a glycoside mixture which showed strong Keller-Kiliani reaction, suggesting the presence of a 2-deoxy-sugars in the sugar part. The sugar fraction obtained by acid hydrolysis was found to contain D-cymarose, D-sarmentose, L-oleandrose, and D-glucose by a paper chromatographic comparison with authentic specimens. Uzarigenin and a new glycoside (m.p. 244〜248°) were found.
著者
清水 新二
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.368-370, 2001-09-30 (Released:2009-10-19)