著者
上田 泰之 田中 洋 亀田 淳 立花 孝 信原 克哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】投球障害肩の治療・予防を考える上で,投球動作中の肩関節に加わる力学的ストレスを3次元的に求め,それに関連する運動学的・動力学的因子を検討することが重要である。これまで投球動作中の肩関節に加わる圧縮力については検討されているが,それ以外の前後方向・上下方向への力学的ストレスついてもそれらに関連する因子を検討する必要がある。本研究の目的は,投球動作中の肩関節に加わる圧縮力,前後方向および上下方向の力学的ストレスに影響を与える運動学的・動力学的因子について明らかにすることである。【方法】対象は次の条件を満たす中学・高校生の野球投手81名とした(年齢15.0±1.4歳,身長172.0±9.8 cm,体重63.2±9.8 kg,右63名・左18名)。1)投球動作の測定時に疼痛がない,2)肩・肘関節の手術経験がない,3)測定より6カ月以内に肩・肘関節の疼痛や障害のために投球動作を禁止された期間がない。投球動作の測定にはモーションキャプチャ・システムを用いた。解剖学的骨特徴点の皮膚上に36個の赤外光反射マーカーを貼付し,投球マウンド周辺に設置した7台の高速CCDカメラ(ProReflex MCU-500+,Qualisys Inc., Sweden)と2台のハイスピードビデオカメラ(HSV500C<sup>3</sup>,nac Image Technology,Japan)を用いて測定を行った。運動学的・動力学的パラメータを算出するために,胸部,上腕及び前腕座標系を設定し,胸部に対する上腕座標系の回転,上腕に対する前腕座標系の回転をオイラー角で示し,それぞれを肩関節,肘関節角度とした。また,水平面上での両肩峰を結ぶベクトルV<sub>s</sub>,両上前腸骨棘を結ぶベクトルV<sub>p</sub>それぞれとマウンドプレートとの成す角度を肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度とした。さらにV<sub>s</sub>とV<sub>p</sub>との成す角度を体幹回旋角度とした。肩関節,肘関節に加わる関節間力ならびにトルクはニュートン・オイラー法を用いて推定した。統計学的解析には,SPSS 12.0J(エス・ピー・エス・エス社,日本)を使用し,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。投球動作時の肩関節に加わる最大圧縮力,最大前方関節間力および最大上方関節間力を従属変数とした。独立変数はトップ・ポジション(TOP),非投球側足部接地(FP),肩関節最大外旋位(MER),ボール・リリース(BR)時の肩関節および肘関節の関節角度,肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度,体幹回旋角度,肩関節および肘関節へ加わるトルクの最大値とした。【結果】最大肩関節圧縮力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.67であった。標準偏回帰係数はBRでの肩関節水平内転角度が0.60,BRでの体幹回旋角度が-0.51,MERでの骨盤回旋角度が-0.40,最大肩関節外旋トルクが-0.33,最大肘関節外反トルクが0.31,TOPでの肩関節水平内転角度が-0.23,最大肩関節内転トルクが-0.22,BRでの肘関節屈曲角度が-0.20,FPでの体幹回旋角度が0.17であった。肩関節最大前方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.63であった。標準偏回帰係数はFPでの肩関節水平内転角度が-0.84,最大肩関節水平内転トルクが0.41,FPでの肘屈曲角度が0.25,最大肩関節外旋トルクが-0.18,最大肩関節内転トルクが-0.16であった。肩関節最大上方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01であり,R<sup>2</sup>=0.69であった。標準偏回帰係数は最大肩関節外転トルクが0.59,FPでの肩関節内転角度が0.55,FPでの肩関節外旋角度が-0.51,TOPでの肩関節内転角度が-0.36,BRでの肩関節内転角度が0.32,FPでの肘関節屈曲角度が0.32,FPでの骨盤回旋角度が-0.20,最大肩関節外旋トルクが-0.19,BRでの肩関節外旋角度が0.14であった。【考察】投球動作時に加わる力学的ストレスに影響する因子は,そのストレスの加わる方向により異なることが示された。肩関節の圧縮力にはBRでの肩関節水平内転やBRでの体幹回旋角度,肩関節最大前方関節間力にはFPでの肩関節水平外転や最大肩関節水平内転トルク,肩関節上方関節間力には,最大肩関節外転トルクやFPでの肩関節内転角度が影響を与える因子であった。また,それぞれの肩関節に加わるストレスに影響する因子として,FPでの肩・肘関節の関節角度が挙げられることから,この時点での投球動作に着目することは肩関節に加わる力学的ストレスを軽減させるために重要であることが定量的に確認された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,投球障害肩の疼痛部位や病態に応じた理学療法の一助となると考える。また,投球動作を詳細に分析することで,今後起こりうる投球障害肩を予測し,予防するためにも有用である。
著者
船田中 著
出版者
昭和書房
巻号頁・発行日
1940
著者
熊本 忠彦 河合 由起子 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.540-548, 2011-03-01
被引用文献数
6

筆者らは,コンテンツを見たり聞いたりしたときに人々が感じる印象をコンテンツそのものから抽出する手法の研究開発を行っている.本論文では,新聞記事を例として取り上げ,記事を読んだ人々が感じる印象を記事そのものから抽出するテキスト印象マイニング手法を提案する.具体的には,新聞記事データベースを解析し,記事に現れる各単語が記事の印象に及ぼす影響を数値化した印象辞書を構築するとともに,この印象辞書を用いて記事の印象値を算出する手法(算出法)を開発する.更に,この算出法が記事から算出する印象値と人々がその記事を読んだときに感じる印象値との対応関係を回帰分析により調べ,その結果得られる回帰式を用いて算出した印象値を補正するという方法で高精度なテキスト印象マイニングを実現する.ただし,提案手法により抽出される印象は,「楽しい⇔悲しい」,「うれしい⇔怒り」,「のどか⇔緊迫」の3種類であり,それぞれの印象に対し7段階の評価尺度(印象尺度)を設定している.提案手法の有効性を検証するために行った被験者実験では,それぞれの印象尺度における平均誤差が0.69, 0.49, 0.64となり,特に「うれしい⇔怒り」に対しては高い精度を得ている.
著者
藤川 正毅 石川 清貴 真壁 朝敏 田中 真人 笹川 崇 表 竜二
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
pp.15-00454, (Released:2016-01-15)
参考文献数
13
被引用文献数
6 5

This paper proposes a novel implementation scheme of geometrically nonlinear finite element programs, which automatically compute exact internal force vectors and element stiffness matrices by numerically differentiating a strain energy function at each element. This method can significantly simplify the complex implementation procedure which is often observed in conventional finite element implementations, since it never requires B matrices, stress tensors, and elastic tensors by hand. The proposed method is based on a highly accurate numerical derivatives which use hyper-dual numbers and never suffer from any round-off and truncation errors. Several numerical examples are performed to demonstrate the effectiveness and robustness of the proposed method.
著者
田中 榮一 山中 寿
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.251-259, 2014-12-30 (Released:2015-02-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

薬剤の医療経済性評価は高騰する医療費の適正化を考える上で重要であるが,医療経済的研究は臨床データを基に構築されたモデルシミュレーションにより解析するため,我々が慣れ親しんでいる臨床研究とは異なり,日常診療での薬剤の有効性や安全性との関連性が理解しにくい.そこで本総説では日本のリウマチ患者の前向きコホート研究であるIORRAの日常診療データを用いて筆者らが実施したトシリズマブの医療経済的研究結果とこれまで得られているトシリズマブの有効性や安全性の関係から,薬剤の医療経済学的評価に影響を与える代表的因子として薬価,薬剤の投与継続率および有害事象発現リスクが低く効果発現の可能性の高い患者の選択の3点について考察を加えた.その結果,日常診療における有効性および安全性のバランスは医療経済学的評価に強い影響を及ぼす可能性が推察されることが明らかとなった,また,今回はトシリズマブを題材とした考察であったが,他の生物学的製剤でも医療経済学的検討で得られた成績を日常診療での有効性および安全性の成績と照らし合わせて裏づけることは,日常診療において医療経済学的評価に基づいた適正使用の妥当性を理解する上で非常に重要であると思われた.
著者
田中 周平 高見 航 田淵 智弥 大西 広華 辻 直亨 松岡 知宏 西川 博章 藤井 滋穂
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.9-15, 2020 (Released:2020-01-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

2015年に琵琶湖岸の132の抽水植物群落を対象に, 単独測位携帯型GPSを用いたオオバナミズキンバイの植生分布調査を実施した。琵琶湖岸12か所の観測所における風速, 風向および有効吹送距離を元に群落ごとの有義波高を算出し, オオバナミズキンバイの生育地盤高との関係を検討した。その結果, 1) 有義波高18 cm以上の群落ではオオバナミズキンバイは確認されなかった。2) オオバナミズキンバイは55群落で確認され, 地盤高別の生育分布を整理すると, 琵琶湖標準水位B.S.L. -150 cm~-50 cmに分布する群落 (沖型) , B.S.L. -90 cm~-30 cmに概ね均等に生育する群落 (準沖型) , B.S.L. -50 cm~-30 cmに集中して生育する群落 (準陸型) , B.S.L. -30 cm~-10 cmに集中して生育する群落 (陸型) の4タイプに分類することができた。3) 平均有義波高は沖型, 準沖型, 準陸型の順に5.5 cm, 9.4 cm, 13.2 cmであり, 有義波高によりオオバナミズキンバイの生育地盤高をある程度説明することができた。
著者
田中 誠也 磯田 弦 桐村 喬
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100269, 2016 (Released:2016-04-08)

近年,新たな観光資源としてアニメ作品の背景として利用された地点をめぐる「アニメ聖地巡礼」が注目を集め,ファンに呼応する形で地域も様々な施策を行っている.本報告では,SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の1つであるツイッターの位置情報付きの投稿データを用いて,アニメ聖地と認められている地域内で巡礼者がどのような地点を訪れているのかを,時系列に見ていくことで地域の施策の動きと聖地巡礼者の動きの関係性を分析していく.
著者
波多江 崇 田中 智啓 猪野 彩 田内 義彦 竹下 治範 辰見 明俊 濵口 常男
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.289-294, 2017-02-28 (Released:2017-03-17)
参考文献数
24

Objective: We conducted a meta-analysis on the suppressive effect of resistant maltodextrin on post-prandial blood glucose elevation, which is approved in Japan as food for specified health use, and the following is allowed to be indicated on the label “it is suitable for consumption by those who are concerned about their post-prandial blood glucose levels because the absorption of sugars is abated by the action of dietary fiber (resistant maltodextrin).”Method: Our literature search covered Ichushi-Web (Japan Medical Abstracts Society), Japan Science and Technology Information Aggregator, Electronic (J-stage), Google Scholar, and PubMed databases and extracted English and Japanese publications on randomized, double-blind, controlled studies comparing resistant maltodextrin and a control in Japanese subjects for the reduction of areas under the blood glucose response curves at 30, 60, and 120 min after eating as an efficacy index.Result: Among these publications, four articles with a Jadad score (an assessment of the quality of randomized controlled studies) of ≥ 3 were included in the meta-analysis.  Significant inhibitory effects were confirmed from areas under the blood glucose response curves at 30, 60, and 120 min after eating in the meta-analysis that was performed to evaluate the effects of resistant maltodextrin on post-prandial blood glucose elevation in Japanese individuals.Conclusion: However, we were not able to test for publication bias because the number of extracted publications was small, and thus, additional research and case studies are warranted.
著者
田中 輝和 田中 恭子 高原 二郎 藤岡 譲 田村 敬博 山ノ井 康弘 北条 聰子 高橋 敏也 三木 茂裕 中村 之信
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.790-797, 1994-06-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
13

MRSAとその複数菌感染症に対し, Arbekacin (ABK), Fosfomycin (FOM) 投与30分後に Ceftazidime (CAZ) を投与する時間差併用療法を設定し, 基礎的, 臨床的検討を行い以下の成績を得た。臨床分離のMRSA 1727及びPseudomonas aeruginosa KIに対し, 1/4~1/8MICのABK, FOM, CAZの同時及び時間差処理を行い, 殺菌効果を比較したところ, 時間差処理群により優れた相乗的殺菌効果が認められた。両菌による複数菌感染にマクロファージを用いた系では, 三薬剤の時間差併用により, マクロファージによる著しい殺菌効果の増強が認められた。MRSA感染症を呈した15症例に対する臨床的検討では, 有効率は80.0%であった。MRSAに対する除菌率は60.0%であった。ABK, FOM, CAZを用いた時間差併用療法は, MRSAを含む複数菌感染症に対し, 非常に有効な治療法であると考えられる。
著者
田中 伸幸 菅村 和夫
出版者
地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

SARS-CoVの感染成立にはウイルスエンベロープのSpike(S)蛋白と標的細胞上のACE2との結合が必要である。一方、感染がACE2単独で惹起されるか否かは明らかではない。本研究では、分泌型Spike、Spikeをエンベロープとする偽ウイルス、を用いて細胞への吸着、取り込み、感染について検討した。分泌型Spikeを用いた化学架橋によって、ACE2とともにDC-SIGNおよびL-SIGNが共沈した。ACE2とDC-SIGN, ACE2とL-SIGNの会合は、Spike非存在下でも確認された。しかし、ウイルス吸着におけるDC-SIGNおよびL-SIGNの役割はほとんどなかった。細胞内へのウイルス取り込みにおいては、ACE2の細胞質内領域は不要であったが、DC-SIGNおよびL-SIGNの細胞内領域は必要であった。これらの結果から、SARS-CoV感染においてはDC-SIGN/L-SIGNの細胞内領域が重要であることが明らかとなった。
著者
田中 拓道
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.17-28, 2015-03-30

本稿では,フランスの社会政策を基礎づける規範的言説の歴史を検討し,二つの特徴を指摘する。第一は,フランス革命期の政治的秩序像によって,個人が伝統集団から析出され,国家と個人という二極構造が作られた点である。伝統集団から析出された個人の脆弱さが意識されてはじめて,工業化の下で生じる貧困が「社会問題」と認識された。第二に,フランスの社会政策は国家による公的扶助の拡張ではなく,「社会的」相互依存の中での個人の権利・義務関係から導かれた。そこでは社会の目的を問いなおす「自由検討の精神」の拡張と,産業社会への個人の統合という目的との緊張関係が内在していた。1980年代以降の改革では,「自由選択」の拡張という理念が浮上する。経済発展という目的に「社会的なもの」を従属させず,労働・家族・コミュニティ・文化・政治活動への参画の「自由選択」を保障するという点に,現代フランス社会政策の思想的な特徴が見いだせる。
著者
内田 真紀子 蜂須賀 研二 小林 昌之 堂園 浩一朗 田中 正一 緒方 甫 野田 昌作
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.326-329, 1996-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
15

We report a 19-year-old man suffering from acute poliomyelitis induced by the attenuated strain of type 3 polio virus. As he had severe muscular weakness in the right lower limb and slight weakness in the left lower limb, we prescribed the following rehabilitation program: active assistive or manual resistive exercises for his right lower limb, resistive exercises for his left lower limb, and gait training with a knee-ankle-foot orthosis. As only two or less than two cases of acute poliomyelitis a year have been reported in Japan, we are following up this patient from the standpoint of preventing post-polio syndrome.
著者
宇都 良大 小野田 哲也 愛下 由香里 田中 梨美子 大重 匡
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.59, 2016 (Released:2016-11-22)

【はじめに】糖尿病において,末梢神経障害は最も早期に発症する合併症であるが,特に痛みを伴う有痛性糖尿病神経障害は大きな問題となる.その中でも,軽い触覚刺激などで疼痛を生じるアロディニアは,不眠症や抑うつ症状を伴いQOLを低下させ,治療行動へのアドヒアランスも低下する.今回,アロディニアを発症した症例に対して,痛みに考慮しながら療養指導や運動療法を行うことで,QOLの改善と運動療法のアドヒアランスが改善した1例を経験したので報告する.【症例】糖尿病教育入院を経験している2型糖尿病の49歳男性.夜間帯の仕事によって食事と睡眠が極めて不規則となり,体重増加と血糖コントロールが不良となった.また,アロディニアによって,四肢末梢・右顔面や全身にnumerical rating scale(以下NRS):4~8の持続疼痛が生じ,抑うつ状態の進行と睡眠障害が悪化し,就業不能となり再教育入院となった.インスリン強化療法と内服による疼痛コントロールが開始された.発汗で掻痒感が出現すること,低血糖への恐怖から運動に対しての意欲は低く,行動変化ステージは熟考期であった.生活習慣改善と体重コントロール目的でリハビリテーション(以下リハ)依頼となり,抑うつ状態や希死念慮に対しては,臨床心理士のカウンセリングが開始された.【検査所見】身長181.7cm,体重101.5kg,BMI30.7kg/m2,体成分分析(BIOSPACE社,In Body720)において骨格筋量37.7kg,体脂肪量33.7kg.血糖状態は,空腹時血糖200~210mg/dl台,HbA1c(NGSP)8.2%,尿ケトン体陰性.アキレス腱反射-/-,足部振動覚 減弱/減弱,末梢神経障害+,網膜症-,腎症+,自律神経障害+.【経過】介入時,覚醒状態不安定で,動作による眩暈・ふらつきを伴うため臥床時間が延長し,食事摂取量は不安定であった.生活習慣の構築を目的に,食前の覚醒促しと食後1~2時間の運動療法介入を設定した.自己管理ノートに日々の体重と,運動療法前後の血糖値を記録し,低血糖対策の個別指導をした.非運動性熱産生(以下NEAT)の指導を行い,日中の活動量向上を促した.運動療法プログラムは,NRSから有痛症状を訴にくい部位を判断し,股関節周囲のストレッチと体幹のバランス訓練を開始した.介入4日目から下肢筋力訓練を追加実施可能となり,介入12日目に掻痒軽減が図れたタイミングで有酸素運動を開始した.【結果と考察】内服による疼痛コントロールと,インスリン強化療法による糖毒性解除により,空腹時血糖値が90~100mg/dl台と改善したことに伴い,NRS:1~2と疼痛が軽減した.また,眩暈やふらつきが軽減したことで日常生活に支障がなくなり,カウンセリングにより情緒面の安定が図れたことで3週間後退院となった.仕事の関係上,夜型のライフスタイル変更は図れなかったが,食事時間を規則的にすることや昼間の活動量を高めることを約束された.体重97.4kg,骨格筋量37.0kg,体脂肪量30.7kgとなった.筋力訓練やウォーキングを自主訓練として立案・実行するようになり,行動変化ステージは準備期となった.【まとめ】アロディニアは,通常痛みを起こさない非侵害刺激を痛みとして誤認する病態であり,QOLの低下,糖尿病療養に必要なセルフケア行動やアドヒアランスが低下し,運動療法の阻害因子となる.しかし,疼痛コントロールやインスリン治療について十分に把握する事に加えて,病態を理解して疼痛部位の詳細な評価を行い,適切な運動療法の介入を行うことで,アドヒアランスの改善が生じたと考えられる.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得た.対象者には研究内容についての説明と同意を得た上で実施した.
著者
田中 愛子 府川 俊彦 小林 眞司 山崎 安晴 鳥飼 勝行
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.103-112, 2002-12-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
16
被引用文献数
3

We present a case of Crouzon disease treated by two-jaw surgery after a Le Fort III osteotomy and bone distraction.The patient was a 17-year, 1-month-old male with facial malformation and malocclusion.At the age of 17 years and 2 months, a Le Fort III osteotomy and bone distraction were performed for midface advancement. After this distraction procedure, orthodontic treatment began for secondary surgery to correct severe openbite, bimaxillary protrusion, and spaced arch.After a partial glossectomy was carried out, preoperative orthodontic treatment commenced. At the age of 19 years and 7 months, a Le Fort I osteotomy and sagittal split ramus osteotomies (two-jaw surgery) were carried out.After postoperative orthodontic treatment, occlusion and the facial profile were improved. Although some spaces developed, the occlusal results were almost preserved throughout the 17 month retention period.