著者
西尾 正輝 田中 康博 新美 成二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.6-13, 2009-01-20
参考文献数
49
被引用文献数
7

健常成人発話者262例(青年群200例,老年群62例)を対象として,青年期以降の加齢に伴う音声の変化について音響学的に解析し,主に以下の結果を得た.男性では,基本周波数に関する計測ではT<SUB>0</SUB>が短くなりF<SUB>0</SUB>が上昇し,周期のゆらぎに関する計測ではJitt,RAP,PPQで上昇し,振幅のゆらぎに関する計測では,ShimとAPQを含めて全体的に上昇し,雑音に関する計測ではSPIで上昇し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.女性では,基本周波数に関する計測ではT<SUB>0</SUB>が延長しF<SUB>0</SUB>が低下し,周期と振幅のゆらぎに関する計測ではほぼ変動が乏しく,雑音に関する計測ではNHRで上昇しVTIで低下し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.今回得られた知見ならびに正常範囲に関するデータは,加齢による生理的変化の範囲内の音声と病的音声との識別上臨床的に意義のあるものと思われる.
著者
田中 真 小山内 隆生 加藤 拓彦 小笠原 寿子 和田 一丸
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.363-374, 2012-08-15

要旨:統合失調症患者57名と健常者30名を対象として,ぬりえ課題を用いて線画の呼称と塗った色の分析を行った.線画の呼称を正答し,かつ線画に対応した色を塗ることができた者が共に8割以上であった線画は,健常者群では12項目全てであったが,統合失調症群ではバナナとミカンの2項目であった.四つ葉のクローバーとピアノは,統合失調症群で判別できた者は健常者群よりも有意に少なかった.残りの8項目は,線画を正しく呼称していたにも関わらず対応した色を塗ることができない者が多かった.統合失調症群のぬりえの特徴は,線画を認知できるが健常者が選んだ色とは異なる色を塗る者が多いことであった.
著者
濱上 陽平 本田 祐一郎 片岡 英樹 佐々部 陵 後藤 響 福島 卓矢 大賀 智史 近藤 康隆 佐々木 遼 田中 なつみ 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0076, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】線維筋痛症は全身の激しい痛みと軟部組織のこわばりによって特徴づけられる難治性の慢性疾患であり,本邦における推定患者数は200万人以上といわれている。線維筋痛症に対する理学療法アプローチとしては,運動療法に加えて鎮痛を目的とした各種の物理療法が行われているが,線維筋痛症の原因・病態が明らかにされていないがゆえに,物理療法に効果があるのか否かは未だ議論が続いており,エビデンスも示されていない。そこで今回,これまでに発表された線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証したランダム化比較試験(Randomized controlled trial;RCT)を検索し,メタアナリシスを行ったので報告する。【方法】医学文献データベース(Medline,CINAHL Plus,Pedro;1988年~2016年8月に発表されたもの)に収録された学術論文の中から,線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証した論文を系統的に検索・抽出した。その中から,ヒトを対象としたもの,研究デザインがRCTであるもの,アウトカムとして痛みの程度(VSA),圧痛箇所数(Tender point),線維筋痛症質問票(Fibromyalgia Impact Questionnaire;FIQ)のいずれかを用いているもの,結果の数値が記載されているもの,適切な対照群が設定されているもの,言語が英語であるものを採用し,固定効果モデルのメタアナリシスにて統合した。なお,有意水準は5%未満とし,採用したRCT論文はPEDroスコアを用いて質の評価を行った。【結果】抽出された227編の論文のうち,採用条件のすべてを満たした論文は11編であり,PEDroスコアは平均5.82ポイントであった。検証された物理療法の内訳は,低出力レーザーが5編で最も多く,全身温熱療法が4編,電気刺激療法が1編,磁気刺激療法が1編であった。次に,メタアナリシスにおいて,物理療法による介入の有無によって痛み(VAS)の変化を比較した結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてで有意差を認め,効果が確認された。同様に,圧痛箇所数およびFIQの変化を比較した結果,低出力レーザーと全身温熱療法で有意差を認め,効果が確認された。なお,採用した論文の中に電気刺激療法,磁気刺激療法の効果を圧痛箇所数およびFIQで検証したものはなかった。【結論】今回の結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてにおいて線維筋痛症の痛みに対する効果が確認された。採用論文は多くはないが,線維筋痛症に対する物理療法の効果をメタアナリシスで検証した研究は国内外で他に見あたらず,本研究の結果は物理療法のエビデンスの確立に寄与するものと思われる。ただ,電気刺激療法と磁気刺激療法に関しては採用した論文はそれぞれ1編であったため,エビデンスが示されたとは言い難く,今後さらにRCTの発表と蓄積が求められる。
著者
高橋 洋平 田中 優 甲斐 由佳 平野 浩紀 中谷 貴美子 伊藤 悟志
雑誌
高知赤十字病院医学雑誌 = Medical Journal of Kochi Red Cross Hospital (ISSN:09197427)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.49-55, 2018-03

処女膜閉鎖症は,尿生殖洞の発生異常により生じる比較的稀な疾患として知られている.症例は11 歳女性.初経は未発来.持続する下腹部痛を主訴に来院し,MRI にて腟留血腫を認め,手術時に外陰部の視診で腟口の閉鎖と閉鎖部位に薄い膜が膨隆しており診断に至った.処女膜切開,貯留血の排出を行い,切開部位の縫合を行った.術後は子宮・腟形態の回復を認め,月経も発来しており順調に経過している.本邦での発生例184 例の文献的考察を加えて報告する.
著者
村井 雄司 青木 裕美 田中 睦 首藤 かい 近藤 有紀 倉重 圭史 疋田 一洋 安彦 善裕 齊藤 正人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.509-517, 2014-11-25 (Released:2015-11-25)
参考文献数
63

生体を覆う上皮は,重層や角化および上皮間の緊密な結合により病原体が生体に侵入することを防ぐ物理的防御機構と,抗菌ペプチドを発現することにより病原体の付着を抑制する化学的防御機構を有している。活性型ビタミンD3 の生理活性は,カルシウム代謝調節による骨リモデリングのみならず,上皮細胞の分化誘導や,免疫調節に関わっていることが明らかになっている。本研究では活性型ビタミンD3 をヒト角化上皮細胞株(HaCaT 細胞)に添加することによる,抗菌ペプチドの発現変化を明らかにすることを目的とした。HaCaT 細胞は,活性型ビタミンD3 添加により抗菌ペプチドであるhBD-1, hBD-2 およびLL-37 mRNA と,それぞれのペプチドの有意な発現上昇を認めた。しかしhBD-3 は変化を認めなかった。本結果から活性型ビタミンD3 は角化上皮の化学的防御機構に寄与し,これを増強すると考えられた。また発現上昇を認めた抗菌ペプチドは,齲蝕原因菌や歯周病菌に対しても抗菌作用を有するため,良好な口腔環境維持するうえで活性型ビタミンD3 の存在が重要である可能性が示唆された。
著者
田中 利幸
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、米陸軍航空軍が、1930年代からの伝統的な戦略爆撃論である「精密爆撃論」にもかかわらず、第2次大戦中の爆撃活動において、いかに公式論から乖離し、無差別爆撃へと急速に変容して行き、最終的には広島・長崎に対する原爆投下による無差別大量虐殺を犯すまでに至ったのかを分析することに目的をおいた。その変容を、米軍の軍事指導者、政治家のレベルでの戦略、政策の変化のみならず、国民の倫理観の変化という観点からも分析を試みた。
著者
宮川 愛由 田中 謙士朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.344-355, 2016

本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.
著者
田中 皓介 池端 菜摘 宮澤 拓也 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_33-I_42, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

わが国の経済は,1998年から長いデフレ不況の状態にある.デフレ脱却のために,財政政策による需要創出の有効性が示唆されているにも関わらず,1998年以降の公共事業費は削減され続けてきた.その背景として,経済政策の決定に多大な影響を及ぼすと考えられる内閣府の経済財政モデルが算出する乗数効果の小ささが挙げられる.そこで本稿では,内閣府モデルの妥当性の検証を行った.その結果,内閣府モデルには輸出入均衡値という概念が導入されており,輸出入を通じて均衡への調整が行なわれる構造が存在することを指摘した.その上で、マクロモデルに均衡値概念を導入することによって算出される乗数効果が大きく低下することを実証的に示すとともに,均衡値を導入することの不当性を明らかにした.
著者
田中 貴大 周藤 高 末永 潤 高瀬 創 佐藤 充 大竹 誠 立石 健祐 上野 龍 宮崎 良平 村田 英俊
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.58-64, 2018 (Released:2018-02-14)
参考文献数
17

We report herein five cases of symptomatic brainstem cavernous malformations (CM). Specific surgical approaches were designed to directly access each lesion. Neuronavigation and intraoperative monitoring were used. Four lesions underwent gross total resection, and one was subtotally partially removed. None of the patients developed new neurological deficits and all cases showed an improvement based on the modified Rankin Scale and the Karnofsky Performance Status. Although brainstem CM have a relatively high rate of re-bleeding, thus adversely affecting the neurological status of the patient, recent reports have demonstrated favorable outcomes after their resection. Hence, surgical removal can be recommended for cases of symptomatic brainstem CM, particularly those with re-bleeding. An optimal surgical approach, providing direct access to the lesion, is critical for successfully resecting brainstem CM.
著者
植田 育代 富田 誠 田中 香津生 工藤 拓也 有賀 雅奈
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.500-501, 2018 (Released:2018-06-21)

近年、研究者は市民など様々な人たちに対して、研究活動を伝達し、対話をしながら研究を進めることが求められている。しかし、高度で複雑な研究内容を研究者自身やデザイナーがわかりやすく視覚化することは容易ではない。 本研究は、研究者とデザイナーが協働で研究内容を視覚化する手法を目的に、研究組織における研究活動の視覚化をおこなった。 デザインの制作においては、研究者にとっても描くことが容易な等角投影図を基本図法として、研究者とデザイナー間でイラスト交換を繰り返し表現の正確性やデザインの質を段階的に高めていく手法を用いた。本稿ではそれらの制作過程の記述し、研究者からの評価を通して本手法の可能性を考察したい。
著者
田村 昌大 廣瀬 伸良 中村 充 齊藤 仁 山内 直人 田中 力 鈴木 桂治 菅波 盛雄
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.143-149, 2012

本研究では、2009年1月に改正されたIJF試合審判規定が柔道競技に及ぼした影響を分析・検証を行なった。その上で、試合審判規定改正の世界柔道の戦術内容に関する最新の動向を探ることを目的とした。<BR>研究方法は、収録された映像を基に2008年フランス国際柔道大会及び2009年グランドスラム・パリ国際柔道大会の競技内容を比較した。試合数は両年合わせて476試合であった。競技分析を行う上で、項目を作成した。作成した項目については、「競技分析シート2009」に競技内容を入力するものとした。<BR>組み手については、釣り手・引き手ともに持った状態で施技を行う「充分」が0.1%水準で有意な増加が認められた。また、「ズボンを直接握る」ことへの反則適用から、施技者及び相手も施技時に「脚」を持つという戦術は有意な減少が認められた。さらに、施技する際の姿勢も前傾姿勢状態からの施技は5%水準で有意な減少が認められた。<BR>ポイント取得の技術内容や組み手戦術において改正前と比較した結果では、「脚」を持つ戦術に依存しないことで「襟」「袖」を持った状態で施技可能な技術に移行するという望ましい傾向となった。<BR>今回の改正によって懸案事項となっていた点が改善される傾向にあり、IJF試合審判規定改正が影響のあるものであったと考えられたが、「肩車」にみられるような「脚」を持つ技に対する依存は未だ存在している。そのため、2010年にさらなる試合審判規定の改正につながったものと推察する。

2 0 0 0 OA 脳活動と鍼灸

著者
梅田 雅宏 下山 一郎 木村 友昭 田中 忠蔵
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.686-697, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
14

中枢神経を介した鍼灸の治療効果を調べることを目的に、鍼灸刺激により生じる中枢神経の局所活動を人の脳で調べる方法について紹介する。鍼灸刺激は感覚刺激として入力され、中枢神経で処理される。この時の脳の応答を調べる方法として脳波が広く用いられてきた。しかし、脳波を利用した方法は中枢神経の活動場所を特定する点で問題があった。この問題を解決するために、神経の電気活動に伴って発生する微弱な磁場を空間的に並べられた受信コイルで捉え、磁場発生源の位置を推定するMEG法、この神経活動に伴い変化する血液中のオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンのそれぞれを、近赤外光の吸収スペクトルの差から分離して捉える赤外分光法、さらに、血液中に生じたデオキシヘモグロビンが持つ磁化率変化を信号強度に反映させた脳機能核磁気共鳴画像 (fMRI) 法を取り上げ、中枢神経における局所活動について調べる方法を紹介する。
著者
川上 有光 河野 寛 田中 重陽
出版者
国士舘大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

先行研究において,反応時間は呼吸相による影響を受けることが明らかにされており,特に呼気相に局所的反応時間および全身反応時間が高まることが報告されている。つまり,この呼吸相と反応時間の関係は,反応時間がパフォーマンスに影響する競技においては重要な役割を担うことになる。剣道は局所および全身の反応時間を高める必要がある代表的な競技の1つである。全身反応時間は呼吸相のうち,呼気相に高まることが分かっている。しかしながら,剣道の打突反応時間における呼吸相の影響はいまだ明らかではない。これを明らかにすることで,剣道の試合中や練習中に呼吸をどのようンにコトロールすればよいのかが明確になり,剣道の競技力向上の一助になると考えられる。そこで、本年度は呼吸相が剣道における打突反応時間に影響を及ぼすかどうかを検討するために,剣道有段者の大学剣道部員を対象として,自由呼吸,統制呼吸および息止め中の打突反応時間を評価する実験を実施した。その結果,自由呼吸および統制呼吸において,呼気相と吸気相の打突の反応時間に有意な差は認められなかった。一方,膝が動き出す時間と剣先が動き出す時間のピーク値については,統制呼吸時と比較して息止め時で有意に低値を示した。このことは息を止めている状態がもっとも早く反応できる可能性があることを示している。しかしながら,実際に竹刀が目標に当たる時間については,試技間に有意な差は認められなかった。一方で,自由呼吸は,吸気相および呼気相いずれにおいても,統制呼吸よりも剣先の反応時間が早かった。これは呼吸の仕方が少なからず反応時間に影響を及ぼすことを示唆している。本研究では,呼吸相が剣道の打突反応時間へ明確に影響を及ぼすことを明らかにはできなかったが,少なくとも息を止めている状態において反応時間が早くなること,また呼吸の仕方が反応時間に影響を与えることを示唆する結果が得られた。
著者
銅島 裕子 田中 輝美
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.86-95, 2014

本事例は,夫から言われた過去の否定的発言を思い出しては「夫がゆるせない」と夫への恨みを訴え,さらに「自分はダメな人間だ」と抑うつを伴う自責的な反芻思考をする女性に,抑うつと怒りの軽減を目的とし,"ゆるし"に着目したカウンセリングを実施したものである。筆者はカウンセラーとして関わり,約11か月合計20回にわたる面接を行った。アプローチの概要は,否定的な気分になったときの状況・思考などを記録用紙に書く自己モニタリングや,気晴らしなどの注意転換による認知・感情面への心理的援助によって,夫への恨みや自責的な考えの反芻減少を試みたことである。また夫婦間交流を増やすために,夫婦の出会った頃のイメージを回想する,夫の趣味や仕事を妻も共有する,夫がいてありがたいと思えることの再確認,さらには自己主張訓練で夫に自分の主張や感謝を伝えるなどの具体的な課題を実施した。そのような夫婦関係の行動面への援助をした結果,クライエントは「夫のことが気にならなくなった」と話し,夫婦関係改善に至り,婚姻関係を継続した。相談終了時の心理テストの結果においてもネガティヴな反芻思考が軽減し,うつ気分も改善されたことが確認された。