著者
田近 洵一
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.2-15, 2012

<p>教育において、文学を教材とすることの意義は、それを通して人間如何に生きるべきかの道徳を身につけさせることにあるのではない。それを読むという行為自体に、言語の教育としての価値があるからだ。その文学を読むという行為の本質は、言語的資材である文章(第一次テキスト)に対する主体の意味作用(signification)によって、読者の内に第二次テキストとしての意味世界を生成し、さらにその意味について考察を深め、主体にとって「未見の他者」を追究していくことにある。すなわち、〈読み〉は、読者にとって意味世界の生成による自己創造の行為なのだ。では、その自己創造としての文学の〈読み〉は、如何にして成立するのだろうか。本稿は、そのような自己創造の〈読み〉原理について考察したものである。</p>
著者
田近 正洋 田中 努 石原 誠 水野 伸匡 原 和生 肱岡 範 今岡 大 小森 康司 木村 賢哉 木下 敬史 山雄 健次 丹羽 康正
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.900-907, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
34
被引用文献数
3 3

【目的】家族性大腸腺腫症(FAP)に対する大腸全摘術後に造設された回腸嚢における腺腫や癌の発生について解説する.【方法】FAP術後の回腸嚢に発生した腺腫あるいは癌に関する36論文をreviewし,その発生頻度,特徴,サーベイランスの方法について自験例も含めて検討した.【結果】回腸嚢における腺腫発生頻度は6.7%~73.9%で,回腸嚢造設から5年,10年,15年で,それぞれ7~16%,35~42%,75%と経時的に増加していた.癌の発生は22例の報告があり,発生までに術後中央値で10年(3~23.6年)を要していた.サーベイランスに関しては,術後6~12ヵ月ごとに内視鏡を行っている報告が多く,適切なサーベイランスを行う上では,最適な腸管洗浄とインジゴカルミンの使用が重要である.【結論】FAP術後の回腸嚢には,高率に腺腫,ときに癌が発生するため,術後早期からの定期的な内視鏡サーベイランスが重要である.
著者
田近 周 (2023) 田近 周 (2020-2022)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

海洋の酸性化は海洋生態系に大きな影響を与えるといわれており、近年盛んに研究されているテーマである。過去の大量絶滅事変は、海洋酸性化等の環境変動とそれが生態系に与えた影響を直接観察できる絶好の研究材料である。本研究では、特に良好に保存された化石試料を採取・分析することによって白亜紀末の大量絶滅事変における海洋酸性化を復元し、それが当時大繁栄していたアンモナイトの絶滅とどのように関連していたのか、について検証を行う。
著者
岡野 公禎 河内 由紀 上原 ひかり 田近 萌
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.e177-e182, 2023 (Released:2023-06-27)
参考文献数
32

卵巣子宮摘出術の術前にモルヒネを皮下投与した供試犬60頭を,マロピタントを経口投与した2群(MP2群:n=15,2mg/kg;MP8群:n=15,8mg/kg),皮下投与群(MS1群:n=15,1mg/kg)及び生理食塩水を皮下投与した対照群(Control群:n=15,0.1ml/kg)の4群に分類した.悪心や嘔吐を麻酔導入前と抜管後で,PONV(postoperative nausea and vomiting)スコアを抜管後で評価した.導入前の嘔吐はMP2群,MP8群,MS1群で,悪心はMP8群で有意に減少した(P<0.05).抜管後は,MP8群が有意な悪心抑制とPONVスコアの改善を示した(P<0.05).マロピタントの経口投与はモルヒネによる嘔吐に対し皮下投与と同様な制吐作用を有し,8mg/kgの経口投与では悪心及びPONVに対し十分な抑制効果を示した.
著者
田近 栄治 八塩 裕之
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.177-194, 2005 (Released:2022-07-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

アメリカでは税が個人事業者の事業形態選択に影響を及ぼしてきた。そこでは所得税と法人税の限界税率差が重要とされ,とくに1986年の所得税減税の効果は注目された。 一方,日本でも税と事業形態選択の問題は重要であったが,その原因はアメリカとは異なるものであったと考えられる。日本では個人形態と法人形態で適用される控除,具体的には給与所得控除の適用可否が異なることが重要であった。とくに1974年の控除引き上げは大きく,これが事業の法人化による節税を引き起こしたと考えられる。本稿では個人事業者のこうした節税行動を分析し,それを通じて日本の所得税の問題点を考察する。
著者
田近 肇 片桐 直人 上田 健介 重本 達哉
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、ドイツ、オーストリア、イギリス及びイタリアの墓地埋葬法制を比較法的な観点から分析した結果を踏まえて、①わが国においても憲法13条によって葬送の自由、すなわち「死後、自らの死体(遺骨)をどのように取り扱ってほしいか」についての故人の意思を尊重すべきことが要請されると考えることができる反面で、②死者は敬意をもって葬られるべきことはわが国でも変わらないところ、③わが国では国レベルでの法令、少なくとも墓地埋葬法上はその調整に係るルールに乏しいことを確認し、そうしたルールの法制化の必要を提唱した。
著者
田近 憲三
出版者
新潮社
雑誌
芸術新潮 (ISSN:04351657)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.268-270, 1956-01
著者
田近 敦子 井手 一茂 飯塚 玄明 辻 大士 横山 芽衣子 尾島 俊之 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.136-145, 2022-02-15 (Released:2022-03-02)
参考文献数
33

目的 厚生労働省は2014年の介護保険法改正を通じて,本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた取組も進めるとし,通いの場づくりを中心とした一般介護予防事業を設けた。しかし,通いの場への参加による介護予防の効果を複数の市町を対象に検証した報告は少ない。本研究の目的は通いの場参加による要支援・要介護リスクの抑制効果を10道県24市町のデータを用い検証することである。方法 日本老年学的評価研究(JAGES)が10道県24市町在住の要介護認定を受けていない65歳以上を対象に実施した,2013・2016年度の2時点の自記式郵送調査データを用いた。目的変数は要支援・要介護リスク評価尺度(Tsuji, et al., 2018)の合計点数(以下,要介護リスク点数)5点以上の悪化とし,説明変数は通いの場参加の有無とした。調整変数は2013年度の教育歴,等価所得,うつ,喫煙,飲酒,手段的日常生活動作,2013年度の要介護リスク点数(性・年齢を含む),さらに独居と就業状況を加えた9変数とした。統計学的分析は全対象者,および前期・後期高齢者で層別化したポアソン回帰分析(有意水準5%)を行った。感度分析として,要介護リスク点数を3点,7点以上の悪化とする分析も行った。結果 対象者3,760名のうち参加者は全体で472人(前期高齢者316人,後期高齢者156人),12.6%(11.8%,14.5%)であった。参加なしに対して参加あり群における要介護リスク点数5点以上の悪化の発生率比は全対象者で0.88(95%信頼区間:0.65-1.18),前期高齢者で1.13(0.80-1.60),後期高齢者で0.54(0.30-0.96)となり,後期高齢者で有意であった。また,要介護リスク点数3点や7点以上の悪化を目的変数とした感度分析でも同様の結果であった。結論 非参加者と比較し,通いの場参加者において,要介護リスク点数5点以上の悪化は,後期高齢者で46%抑制されていた。とくに後期高齢者が多い地域に対して通いの場づくりを進め参加者を増やすことが,介護予防を推進する上で有効である可能性が示唆された。
著者
田近 英一 家 正則 石津 守康 広報誌編集委員会 合田 圭介 横山 央明
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース (ISSN:21873070)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.9-11, 2017-07-20

理学部ガイダンス2017報告/小平桂一名誉教授が2017年春の叙勲 瑞宝重光章を受章/理学部合同防災訓練を実施/理学系研究科・理学部交歓会/化学専攻の木下川さんのチームが「製品アイデアコンテストUTokyo1000k」で優勝されました/「宇宙流体力学の基礎」

1 0 0 0 IR トピックス

著者
須藤 靖 山本 智 上田 正仁 田近 英一
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース (ISSN:21873070)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.18-19, 2019-01-20

物理学専攻 佐藤勝彦名誉教授が瑞宝重光章を受章/物理学専攻の大小田結貴さんが,英BBC「ことしの女性100 人」に選ばれました/物理学と人工知能を融合-知の物理学研究センター始動!/駒場1 年生向け理学部ガイダンス報告
著者
山本 博徳 阿部 孝 石黒 信吾 内田 恵一 川崎 優子 熊谷 秀規 斉田 芳久 佐野 寧 竹内 洋司 田近 正洋 中島 健 阪埜 浩司 船坂 陽子 堀 伸一郎 山口 達郎 吉田 輝彦 坂本 博次 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.59-78, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
88

Peutz-Jeghers症候群は,食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする希少疾患である.STK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とし,常染色体優性遺伝形式をとる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. 本症候群でみられる過誤腫性ポリープは小腸に好発し,ポリープが大きくなると出血,腸閉塞,腸重積の原因となる.初回の消化管サーベイランスは症状がなくても8歳頃を目安に行い,10〜15mm以上の小腸ポリープは内視鏡的ポリープ切除術を行う.消化管,乳房,膵,子宮,卵巣,肺,精巣などに悪性腫瘍の発生が認められ,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
加瀬 善洋 仁科 健二 川上 源太郎 林 圭一 髙清水 康博 廣瀬 亘 嵯峨山 積 高橋 良 渡邊 達也 輿水 健一 田近 淳 大津 直 卜部 厚志 岡崎 紀俊 深見 浩司 石丸 聡
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.11, pp.587-602, 2016-11-15 (Released:2017-02-20)
参考文献数
52
被引用文献数
3 4

北海道南西部奥尻島南端の低地における掘削調査から,泥炭層中に5枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の特徴は次の通りである; (1)陸方向および川から離れる方向へ薄層化・細粒化する,(2)級化層理を示す,(3)粒度組成の特徴は河床砂とは異なり,海浜砂に類似する,(4)粒子ファブリックおよび堆積構造から推定される古流向は概ね陸方向を示す,(5)渦鞭毛藻シストおよび底生有孔虫の有機質内膜が産出する,(6)海側前面に標高の高い沿岸砂丘が発達する閉塞した地形において,現海岸線から内陸へ最大450mほど離れた場所まで分布する.以上の地質・地形学的特徴に加え,過去に高潮が調査地域に浸水した記録は認められないことから,イベント堆積物は津波起源である可能性が極めて高い.14C年代測定結果と合わせて考えると,過去3000-4000年の間に1741年および1993年を含めて少なくとも6回の津波が発生しているものと考えられる.