- 著者
-
石井 良昌
上田 毅
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2012
近年,障害者スポーツはリハビリテーション分野のみならず学校教育やスポーツ現場において広がっており,様々な環境下で運動活動を行う機会が増えてきている.我々は,過去においてダウン症や自閉症などを有する知的障害児・者の運動様相の違いに関してバイオメカニクス的な手法を用いて科学的にとらえて検証を行ってきた.従来行われてきた知的障害児・者に対する研究は,研究室内で環境を一定にした状態で行われた研究や対象数の少ない事例報告が多かった.今回の研究では,軽量化で携帯が可能となった無線の測定器を対象者に装備させて,様々な環境下で行われる実際の集団スポーツ活動中の生体変化について測定を行うものである.本年度は知的障害児における夏期の体育活動時の心拍数について検討した.対象は,知的障害をもつ児童4名(男性2名、女1生2名:平均年齢9.0歳)であった.夏期(気温31.2℃、湿度68%)の屋内体育館で体育活動(約30分間)を行い,その間の心拍数(Polar社RS400)を経時的に計測した.体育活動の内容はウォーミングアップ(ストレッチ、ジャンプ、ランニング)3分,休憩1分,なわとび2分,休憩6分,バレーボール10分,クールダウン(ジョギンク)2分であった.運動指導は経験の多い指導者1名が,集団指導(7名)の形で行った.その結果,4名の平均心拍数は安静時では99.8±142bpmであったが,運動中ではそれぞれ準備運動147.3±8.8bpm,なわとび161.5±9.9bpm,バレーボール137.0±21.3bpm,ジョギング164.5±22.9bpmであった.また,最高心拍数4名ともにランニングおよびなわとびの際に187-205bpmの高値を示した.体育運動中に元気な活動をしているようにみえても,比較的高い心拍数を示していた.特に夏期の暑い時期には、休憩を多く取るなど十分な配慮を行いながら行うべきであると考えられた.