著者
赤間 由美 森鍵 祐子 大竹 まり子 鈴木 育子 叶谷 由佳 細谷 たき子 小林 淳子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.342-353, 2014 (Released:2014-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

目的 生活保護現業員のメンタルヘルスの実態を把握し,メンタルヘルスと関連が予測される労働状況,研修講習会の参加状況,生活習慣,疾病の有無,ソーシャルサポート,自己効力感との関連を明らかにする。方法 全国の福祉事務所(1,230か所)を,設置主体,地域別に降順に並び替え,等間隔抽出法により20%,246施設を抽出し,各施設 5 人ずつ計1,230人の生活保護現業員を調査対象とする無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,基本属性,労働状況,ソーシャルサポート(家族・友人,上司,同僚),研修会・講習会への参加,疾病の有無,生活習慣,生活保護現業員としての自己効力感,生活保護現業員のメンタルヘルス(GHQ28)とした。GHQ28得点を従属変数とし,区分点で GHQ 5 点以下を GHQ 低群,GHQ6 点以上を GHQ 高群として 2 群に分け,独立変数との関連を t 検定,χ2 検定または Fisher の直接確率法により確認した。 単変量分析の結果,性差が認められたことから,男女別に GHQ28得点の高群,低群の 2 群を従属変数とし,有意性が認められた変数を独立変数とする,多重ロジスティック回帰分析(変数増加法ステップワイズ尤度比)を行った。結果 有効回答数は506人,男性410人,女性96人で,GHQ 高群は66.0%,低群は34.0%とメンタルヘルス不調の者の割合が高かった。 分析の結果,生活保護現業員男女ともに,10時間以上の労働時間の者は 9 時間以下の者に比べて,また自己効力感の低い者は高い者に比べてメンタルヘルスが有意に不調であった。男性生活保護現業員では,適度な睡眠時間が取れている者,同僚および,家族・友人のサポートが得られている者,社会福祉士資格を有する者のメンタルヘルスが良好であった。女性生活保護現業員では,年齢が高くなるほどメンタルヘルスが悪化していた。また家庭訪問を最多業務としている者のメンタルヘルスが良好であった。結論 以上のことから,残業時間への配慮,サポート的なコミュニケーションや自己効力感を育む環境づくりが求められる。男性では,適度な睡眠時間の確保,女性ではワークライフバランスを意識した働き方等,性差を考慮したメンタルヘルス対策が示唆された。
著者
武藤(細谷) 照子
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.75-83, 1987-03-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
61

The sex of an individual is determined at fertilization by the combination of sex chromosomes, e.g., XX or XY in mammals. Morphological sex differences become evident during the organization of gonadal primordia into ovaries or testes. Consequently, fetal testes produce hormones which are responsible for the development of the male phenotype. The absence of male hormones results in the development of the females phenotype. It has been proposed that a male dominant, histocompatibility-Y (H-Y) antigendetermines testicular differentiation, based on the finding that individuals with testest are H-Y antigen positive regardless of their sex karyotype. Recently, this hypothesis has been challenged bý the finding of several exceptions, e.g., development of ovaries in the presence of H-Y antigen, and testes in its absence.A testis-determining gene (Tdy or TDF) has been thought to occur on the Y chromosome. Over 100 Y-specific DNA fragments have been examined with only one possible candidate for the Tdy gene. In addition to the Tdy gene, at least two autosomal genes (tda-1 and Tas) appear to be involved in testis determination. It has been suggested that gonadal sex determination may also be influenced by environmental factors.Fetal rat and mouse ovaries develop testicular structures (ovotestes) after transplantation into various sites of adult host animals. This finding suggests that XX gonadal primordial cells can differentiate into testicular cells. Electron microscopic examinations have revealed that testicular structures of mouse ovotestes are comparable to those of the genetic male. Furthermore, it has been shown that ovotestes produce hormones and glycoproteins characteristic of normal neontal testes. These results provide strong evidence for sex reversal by transplantation. The study of the factors involved in the induction of ovotestis development should aid better understanding of the mechanism of gonadal sex determination.
著者
高久 宏佑 細谷 和海
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.13-18, 2008-03-20
被引用文献数
2

カワバタモロコは、コイ科ラスボラ亜科に属する全長3-6cmの日本固有の淡水魚で、日本に生息する淡水魚類の中ではもっとも小さいコイ科魚類とされる。静岡県瀬戸川以西の本州太平洋側、四国瀬戸内海側および九州北西部に分布し、主に平野部の農業用ため池や用水路など里山の環境に生息している。本種には繁殖期に顕著な性的二型が見られ、雌は雄より大型化し、雄は鮮やかな黄金の婚姻色を呈する。このような特徴的な形態を持つため、キンモロコ、キンターなど地方名も多く残される馴染み深い魚であり、西日本では里山のシンボルフィッシュとなっている。しかし、近年ではブラックバス・ブルーギルなど肉食性外来魚による食害や、圃場整備などの水田開発、農地の放棄による生息地の荒廃により個体数は激減し、最新の環境省版レッドリストでは絶滅危惧IB類に指定されている。希少種では、生息地や野外個体の数が制限されることが多く、保全に必要な生態情報を得るには野外調査だけでは不十分な場合が多い。飼育実験により得られた生態情報を野外へ還元することは希少種の保全において重要であり、そのためには、まず供試魚を効率的に得るための人工繁殖方法の確立が必要となる。そこで本研究では、カワバタモロコの系統保存技術向上と、生息地保全のための基礎的研究を目的として、ホルモン投与による産卵誘発方法の確立、適した初期飼育条件の選定、基礎的な成長に関する実験を行なった。
著者
細谷 律子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.347-353, 2016

アトピー性皮膚炎の治療は, 薬剤による皮膚症状の治療, 悪化因子の検索とその除去, 保湿剤によるバリア機能の補完が基本となる. 悪化因子の一つである精神的ストレスは, かゆみを増加させ, 搔破に拍車をかける. 一方, 搔破がストレス対処行動になっていることもあり, 搔破行動が習慣化している場合, その離脱を図らないと本来の皮膚科治療の効果を十分発揮することができない. しかし難治化した患者の多くは, かゆみや搔破行動にとらわれており, やめようと意識するほどやめられないと訴える. そのような患者に「搔くな」と指導するより, 生き方や考え方の転換を目指し外来森田療法を行っている. 行動本位の生活を指導し, あるがままの生き方を体得させていく. 生き方の転換は, とらわれからの解放, ストレス状態の改善を促し, おのずと皮膚炎を軽快させることになる.
著者
鈴木 三也 細谷 久信
出版者
新潟県内水面水産試験場
雑誌
新潟県内水面水産試験場調査研究報告 (ISSN:03861643)
巻号頁・発行日
no.5, pp.101-102, 1977

ニシキゴイの肝臓,腎臓及び脾臓の組織標本においてヘマトキシリン-エオジン染色で黄褐色に見える粗大顆粒は消耗性色素の名で総称され,ニシキゴイにおいても消耗性色素の沈着が認められる場合,病理学的にはその沈着部位を中心に臓器の機能障害が起っていることは明らかである。筆者らはニシキゴイにおける消耗性色素が臓器を押しつぶしただけの無固定無染色の標本で確認されることに着目し,麻酔後のニシキゴイの右側胸鰭後方にシルバーマン針を挿入して約1mm3の肝膵臓組織を取り出し,スライドグラス上で押しつぶして検鏡し肝膵臓における消耗性色素沈着の有無及びその程度から魚の健康状態について考察し,内臓病変診断の一助とした。
著者
細谷 昌之 喜納 淳 ホソヤ マサユキ キノウ アツシ Masayuki HOSOYA Atsushi KINOU
雑誌
南極資料
巻号頁・発行日
vol.37, pp.65-75, 1970-03

From September 1968 to February 1969, the 9th JARE (Japanese Antarctic Research Expedition) traveled to the South Pole with the aid of snow vehicles and sledges. In order to ensure the mobility of the travel, the tractive effort of the snow vehicles on the crust surface of snow in Antarctica and the running resistance of the composed sledges were tested. The results of the tests revealed that the maximum tractive force of one vehicle on crusted surface in Antarctica is 15.4 tons, the static frictional resistance coefficient μ_s is 0.68, and the dynamic frictional resistance coefficient μ_d is 0.51 at 3 km/h vehicle speed. When the snow vehicle towed five composed sledges, or was loaded with 15.4 tons, behavior of the vehicle was considerably hampered, especially in the motions of turning or crossing a drift of snow. Therefore, 15.4 tons may be a critical value of load. Paying attention to this point, the movement of the traverse party became considerably easy.
著者
片野 修 細谷 和海 井口 恵一朗 青沼 佳方
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.19-25, 2001-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
31
被引用文献数
12

Freshwater fish in rice fields near the Chikuma River, Nagano Prefecture, were investigated by visual census and net sampling. The rice fields were classified into three types. Type 1-terraced and supplied with water from an upper pond; type 2-supplied with water from drainage ditches; and type 3-supplied and drained by separate irrigation ditches. Rhinogobius sp.OR (sensu Kawanabe and Mizuno, 1989), Misgurnus anguillicaudatus and Pseudorasbora parva were abundant in type 1 fields, whereas Tribolodon hakonensis, Carassius spp., M. anguillicaudatus and Gnathopogon elongatus elongatus were recorded in type 2 fields. Only M. anguillicaudatus was found in type 3 fields. The fish abundance and diversity did not differ significantly between type 1 and 2, but was extremely poor in type 3. The recent rearrangement of rice fields from types 1 and 2 to type 3 evidently reduced fish abundance and diversity.
著者
細谷 瑞枝 Mizue Hosoya
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
茨城キリスト教大学紀要. 1, 人文科学 (ISSN:13426362)
巻号頁・発行日
no.48, pp.133-146, 2014

In diesem Aufsatz wird das Verhaltnis zur unirdischen Welt in europaischen Marchen mit dem Beispiel vom Marchentyp ATU 710 behandelt.Die Marchen ATU710 werden in zwei Gruppen geteilt je nach der Figur,die der Hauptfigur verbietet,eine bestimmte Kammer zu betreten.Bei der einen Gruppe ist die Figur die Gottesmutter Maria,und bei der anderen ist sie eine ubernaturliche schwarze Frau.Dir Hauptfigur,ein Madchen aus einerarmen Familie,tritt jedoch in die verbotene Kammer ein.Es ist auch je nach der Gruppe sehr unterschiedlich,was sie in der verbotenen Kammer gesehen hat,und wie sie sich nach der Vertreibung aus dem Himmel bzw.aus dem Schloss der schwarzen Frau verhalten sollte,um zum glucklichen Ende zu kommen.Zuerst wird desser Unterschied mit dem christlichen Einfluss erklart und dann wird es Gruppe mit der Gottesmutter Maira als auch bei der mit der schwarzen Frau die erste Schritt zum Gluck ist,wahrend die Neugier bei den japanischen Marchen mit einer verbotenen Kammer meistens weder Gluck noch Ungluck bright.
著者
細谷 亨
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.149-171, 2014-08-25

本稿の課題は,戦時期に展開された満洲への分村移民を,農家の移住形態と母村の変容過程に着目しつつ検討することでその歴史的特質を明らかにすることである。農家戸数と耕地面積の調整を意図した適正規模論にもとづく分村移民では,農村労働力流出の型でいえば挙家離村(全戸移住)が重視されていた。だが,親戚管理を通じた耕地処分のあり方にみられるように帰村を予定していた農家が多く,実際は母村からの農家世帯の流出はあまりみられなかった。家の存続と家産の保全を目的とする農家にとって分村移民は非現実的な政策にほかならなかったが,その一方で農家の家族移住者が相当数に及んだことは,労力不足による農業生産力の低下を招くなど送出後の母村・集落に与える影響は決して小さなものではなかった。かかる事態に対応すべく政策側は送出後の母村整備に着手していく。農家の対応と母村の政策遂行が密接な連関をもっており,そのことが分村移民の展開を強く規定していたのである。
著者
阿蘓 広明 平中 幸雄 立花 和広 細谷 俊彦 竹林 聡 星 武史 嘉藤 雅文 高橋 良雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第55回, no.コンピュータと人間社会, pp.522-523, 1997-09-24

山形大学シラバスを96年度版作成からオンライン処理化している. データが入力された後は出力までを自動で処理するシステムの作成を目指しており, その中で利便性向上の為にデータベース化を図ることや, FAX返送によるプレビュー機能など付加している. 本システムの特微を述べる. ・入力から出力まで一貫した自動処理システムの実現. ・データの入力には基本的に電子メールを用いる. ・データの最終出力は, 印刷用版下とHTMLの2種類. ・執筆者に印刷見本をFAXで返送し, 内容を確認することができる. ・入力データをデータベース化. ・DB利用により項目毎の修正や, 登録データの呼び出しも可能.
著者
吉瀬 蘭エミリー 松山 博昭 細谷 知広 小川 哲弘 門岡 幸男
出版者
Japanese Dairy Science Association
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.93-101, 2010

現代,ストレスは大きな社会問題となっており,ストレスによって引き起こされる疲労や免疫力,感染抵抗性の低下が疾患の発症に繋がることも指摘されている。これまでに,ラットの腹腔内に投与したラクトフェリン(Lf)は,精神的なストレスを緩和することが報告されている。そこで本研究では,消化酵素に耐性を示す鉄・ラクトフェリン(FeLf)をヒトに経口投与し,精神ストレスに及ぼす影響について検証した。<br> ストレッサーとして用いた暗算作業負荷によりストレス反応が示された被験者24名を対象に,FeLf 833 mg を単回経口摂取するクロスオーバー試験を実施した。スーパークレペリンを用いた暗算作業負荷によるストレス反応は,心理調査,脳波,唾液中の各ストレスマーカーにより評価した。その結果,FeLf を摂取することにより中枢神経系および自律神経系における一時的な精神ストレス反応が軽減された。これらのことから,FeLf はストレス反応に影響を及ぼし,メンタル状態を改善することが示された。
著者
細谷 実
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 : 関東学院大学経済学部総合学術論叢 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-25, 2014-07

本稿では、絵画や写真などの視覚的表象が何らかの弊害をもたらす条件およびその弊害の査定について考察する。表現は、一方で、あれこれの弊害をもたらすとされ、批判や規制の対象になっている。他方で、表現の自由は、近代社会における大切な原理として尊重されている。J.S.ミルを代表とするリベラリズムの考え方では、「言論の自由市場」での批評や非難はともかく、法的禁止という強い措置をおこなうには他者危害の存在が要件となる。他者危害として、自然・社会環境の破壊のような社会への危害を主張する論者もいるが、本稿では、個人への、しかも心理的な危害に焦点化して論じる。また、特定個人を名宛人にする加害には名誉棄損や侮辱での刑罰があるが、「女性」や「韓国人」といった一般名詞あるいは広範囲の集合への加害については、数的考慮によって問題視しないのが、従来の司法判断である。この点についても批判的考察をおこない、視覚的表象による個人に対する危害とそれへの対応について論じる。
著者
小西 雅樹 朝井 俊亘 武内 啓明 細谷 和海
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.43, pp.105-110, 2010-03

干物から透明骨格標本を作製するため二重染色法を改良した。この方法が従来の方法と大きく異なる点は、1.塩抜きのために水戻しをすること、2.固定時のフォルマリン濃度を高くすること、3.透明化処理時の水酸化カリウム水溶液濃度を低くすることの3点である。この方法は、干物をきれいに透明化できる点で従来の方法よりも優れている。
著者
井藤 大樹 今田 彩乃 石田 孝信 水出 千尋 細谷 和海
出版者
近畿大学農学部
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
no.46, pp.81-89, 2013

近畿大学農学部キャンパス内に造成された棚田ビオトープにおいて水生生物相調査を行なった。その結果,18目34科37属39種の水生動物が確認された。本調査で確認された種の中にはレッドリストおよびレッドデータブックに記載されているシマヒレヨシノボリ(環境省版:準絶滅危惧),ミナミメダカ(環境省版:絶滅危惧II類,奈良県版:希少種),ニホンアカガエル(奈良県版:絶滅危惧種),トノサマガエル(環境省版:準絶滅危惧),コオイムシ(環境省版:準絶滅危惧,奈良県版:希少種)が含まれていた。一方で,国外外来種であるアメリカザリガニとサカマキガイも確認され,早急な駆除対策が求められる。一時的水域である水田,水路での出現種数は,1年を通して水量が安定している温水路,調整池での出現種数よりも少なかった。しかし,希少種であるコオイムシは水路でのみ確認されており,生物多様性の創出には生息場所の多様性が必要であると考えられた。また,本調査地で確認された魚類の種数と両生類の種構成は平地の田んぼと異なっていた。これは,樹林帯に囲まれている棚田と用水路や河川と連絡している平地田との周辺環境の差異に影響されているものと考えられた。
著者
細谷 律子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.332-338, 2014

難治化したアトピー性皮膚炎患者の中には,掻破が習慣性になっているものが少なくない.無意識に,イライラして,衝動的に,あるいは不安から逃避的に皮膚を掻破していることが多く,心理的依存状態を形成している患者もいる.掻破行動やかゆみ,あるいはアトピー性皮膚炎そのものにとらわれている(精神交互作用が生じている).そのような患者に筆者は単に「掻くな」と指導するのでなく,生き方や考え方の転換を目指し,外来森田療法を行っている.日記を介在させたり,患者同士が経験を話し合える場を提供しながらあるがままの態度の実践を指導する.その結果患者に気づきと意識の転換が生まれると,とらわれからの解放,症状を受容する心が生じる.さらに人生の受容につながっていくことも多い.勇気をもって自己実現に挑むようになり,これらの結果掻破行動は減少し,皮膚のバリア機能の回復が促進し皮膚症状はめざましく改善していく.