著者
瀬名波 出 小西 照子 平良 東紀 玉城 史郎 藤村 弘行 石川 正明 若井 謙介 大城 尚紀 小田 拓也 平岡 雅規 原田 周作
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では火力発電所や下水処理施設などから排出される二酸化炭素(CO2)を海藻を育てるための資源として再利用した。高濃度の CO2を海水に人工的に溶かし、それを海藻に与えることで藻類の光合成(成長速度)を飛躍的に高めた。通常の海水に比べて約 1.9 倍以上に成長が高まる結果を得た。また海藻を原料としたバイオエタノールの試作を成功させた。このようにCO2を減らし,また CO2を新たな資源として再利用する「炭素回生システム」研究開発を行った。
著者
堀込実岐 堀込実岐 山崎 恭平 若林 靖史
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1081-1086, 2010 (Released:2012-03-23)
参考文献数
11

拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy; DCM)で加療中の42歳, 男性. 38歳時に持続性心室頻拍を指摘され, 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)を挿入後, 同時期より塩酸アミオダロンの投与が開始された. その後, 定期的な内分泌学的検査にて, 甲状腺機能異常は認めていなかった. 2007年(42歳)7月より頸部圧迫感あり, 当院外来を受診. 甲状腺のび漫性腫大を認め, エコーでは内部不均一な甲状腺両葉の腫大を認めた. 血液検査ではTSH 5.5µIU/mL, fT3 3.7pg/mL, fT4 1.0ng/dLと正常で抗TSH受容体抗体(TRAb)や抗サイログロブリン抗体(TgAb), 抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)は正常範囲内であり巨大な単純性のび漫性甲状腺腫と診断した. アミオダロンによるものと考え, アミオダロンを中止したところ甲状腺腫は徐々に縮小傾向を認めた. しかし, その後アミオダロンを中止した約10カ月後より8kg/月程度の著明な体重減少を認めたため, 甲状腺機能を測定したところfT3 17.2pg/mL, TSH 0.003µIU/mLと著しい甲状腺中毒症を認めた. 破壊性甲状腺炎の診断でプレドニゾロンとチアマゾールを投与し約半年で甲状腺機能の改善を認めた. アミオダロンにより甲状腺中毒症や機能低下症を発症することは知られているが, 今回の症例では, アミオダロンによると思われる単純性甲状腺腫を認め, アミオダロン投与中止の10カ月後に甲状腺中毒症を呈した, 非常に稀な症例と考えられた.
著者
伊藤 徹 荻野 雄 昆野 伸幸 平子 友長 長妻 三佐雄 笠原 一人 平芳 幸浩 松隈 洋 西川 貴子 日比 嘉高 若林 雅哉 秋富 克哉 宮野 真生子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本語としての「主体性」の概念の成立と使用の歴史を、哲学、社会思想、文学、美術、演劇、建築など多様な分野において、追跡したものである。それによって、日本が近代化に伴って経験した人間理解の変化を、多様なアスペクトにおいて解明することができた。また海外の日本文化研究者との共同研究および出版事業を通じて、日本におけるテクノロジーの発展と文化との関係についての知見を国際的に発信することができた。
著者
若原 俊彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.494-506, 1998-08-25
被引用文献数
8

近年のマルチメディアの普及に伴い, ATM-LAN等が大学や企業等を中心にさかんに導入されている.本論文は, ATMネットワークをPVCモードにより遠隔の講師と受講生の間でリアルタイムの講義空間を実現するため, 予約ベースで講師端末と複数の受講端末間にポイント・ポイントVCコネクションおよびポイント・マルチポイントのVCコネクションを併用する質問者切換型遠隔講義システムを提案する.本システムは, あらかじめ予約した時刻に講師と複数の受講端末間にポイント・ポイントおよびマルチポイントのATM-PVCコネクションを同時に設定する回線設定サーバと, そのVCコネクション上に映像・音声・データのTCP/IP通信, MPEG2通信を実現しインタラクティブな講義空間を提供する講義サーバから構成され, 一人の受講者が順次, 講師に質問しながらリアルタイムの遠隔講義を進めることができる.本システムの構成法およびパラメータ設定法について述べると共に, ATMネットワークを用いて遠隔講義サービス実験を行い伝送特性等を測定してその有効性を確認した.
著者
中西 裕陽 富田 悦次 若月 光夫 西野 哲朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.14, pp.1-8, 2014-06-06

NP 完全である最大クリーク問題に対し,"節点数 n≧1 のグラフにおいて,グラフ中の任意の隣接 2 節点 vi,vj∈V, (vi,vj)∈E が min{deg(vi), deg(vj)}≦3.486d lg n (d ≧0: 定数) を満たすならば,最大クリーク問題は O(n2+max{d,1}) 時間で解決可能である." ことを示す.これは,先に発表した結果 (信学論 (D),vol.J97-D,no.6,June 2014) の定量的改良である.This paper presents a further improved extended result for polynomial-time solvability of the maximum clique problem, that is: for any adjacent pair of vertices p and q where the degree of p is less than or equal to that of q in a graph with n vertices, if the degree of p is less than or equal to 3.486d lg n (d≧0: a constant), then the maximum clique problem is solvable in the polynomial time of O(n2+max{d,1}). This result is obtained by more detailed analysis and the corresponding detailed algorithm.
著者
若杉 隆平 秋山 太郎 冨浦 英一 佐藤 仁志 椋 寛 伊藤 萬里
出版者
新潟県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究は、貿易・直接投資の自由化が貿易・直接投資の拡大・企業の技術水準や生産性の向上に与える影響、地域貿易協定の締結が域外国のアンチダンピング(AD)政策に与える影響等を理論面から明らかにしている。また日中のミクロデータを用いた実証研究によって、中国市場における制度的変化(WTO加盟に伴う市場開放、国有企業改革、知的財産権の保護の強化)が中国企業の輸出・研究開発・イノベーション、日本の労働市場や企業の雇用の変化に与える影響を明らかにしている。さらにTask content(業務)の輸出入の変化によって日本の貿易構造の変化を明らかにしている。
著者
若林 幹夫 RYCHLOWSKA Irena Weronika RYCHLOWSKA I.W RYCHLOWSKA I.W.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本研究は研究分担者がポーランドで着手していた後期資本主義の文化の論理に関する研究の継続として、西欧のポストモダンと日本の伝統思想の類似的な関係と並行現象を対象とするものである。最終年度の研究として、平成18年度にはこれまで継続してきたフィールドワーク、資料収集をさらに進めるとともに、そうした資料の具体的な分析や解釈の作業をおこなった。東京では建物だけでなく、文化的な仕掛けや記号、そして様々な人工物が都市イメージを形作り、さらには主要な建築を支配しており、その結果、都市の中を移動することは場所やランドマークの間を移動するというよりも、様々な経験と視覚の間を移動することになる。したがって得られたデータの分析や解釈も、東京における時間と空間の固有のパターンだけでなく、都市景観から消費財の細部にいたる様々なスケールにわたる事象や経験を対象としておこなわれた。具体的には、東京の現代の都市文化と空間的な秩序について、「かわいい」という擬人化的美学、原宿のコスプレーヤーたちとゴシック・ロリータ文化の広がり、秋葉原の再開発とオタク文化等を、人びとと物、そして空間や場所との相互依存関係という点から分析することを試み、さらに比較社会学的な分析を加えることで、一見すると特殊日本的にも見えるこうした現象が、世界的な規模で広がる後期資本主義的現象とそこでの意識のあり方の一つの現れであるという仮説を得た。東京の都市文化や空間文化のそうした諸側面は、日本の文化、宗教、民間信仰と東京の都市デザインや現代日本の消費財のデザインとの間の一貫性とパラレリズムを示している。それは後期資本主義の文化と、日本の文化、宗教、民間信仰との間に一貫性やパラレリズムが存在するという仮説を示唆するものである。上記の研究成果は研究分担者により1冊の著作としてまとめられ、公表される予定である。
著者
若崎 淳子 長崎 雅子
出版者
島根県立看護短期大学
雑誌
島根県立看護短期大学紀要 (ISSN:13419420)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.41-52, 2003

本研究は、看護短大生を対象に、IGF法を活用した「やる気」調査をもとに、グループ形式で卒業研究に取り組む学生の「やる気」の要因を明らかにすることを目的とした。卒業研究前期では、学生の「やる気」グラフは多峰型を示し、促進要因は、[卒業研究過程の理解]、[グループダイナミクス]、阻害要因は、[卒業研究過程のつまずき]、[グループダイナミクス]、[身体コンディション不良]であった。中期では、グラフは直線型を示し、促進要因は、[前向きな取り組み]、阻害要 因は、[関心の転化]、[身体コンディション不良]であった。後期では、グラフはサイン・コサイン型を示した。特徴的な促進要因は見出せなかった。阻害要因は、[身体コンディション不良]であった。
著者
酒井 英行 畑中 吉治 青井 考 民井 淳 若狭 智嗣 岡村 弘之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、β^+型ガモフテラー(GT)遷移強度を、中間エネルギー(n, p)反応の微分散乱断面積及び偏極移行係数の精密測定から抽出し、池田の和則との比較から核内におけるクオーク自由度の関与を定量的に明らかにするのが目的である。1.(n, p)反応測定施設を全国共同利用研究センターRCNPに建設した。主要装置は、クリアリング電磁石、標的箱(MWDCと標的ラダー)、フロントエンドチェンバー、焦点面偏極度計からなる。2.300MeVに於いて^<27>Al,^<90>Zr(n,p)反応の微分散乱断面積ならびに偏極分解能の測定を行った。3.250MeVに於いてn+d弾性散乱の微分散乱断面横ならびに偏極分解能測定を行った。これは三体力の研究が目的である。4.^<90>Zr(n,p)反応の結果を多重極展開法で解析し、ガモフテラー遷移強度がβ^+=3.0±0.4と求まった。この値と以前に我々が求めたβ^-ガモフテラー遷移強度と組み合わせて、スピン和則値がQ=0.83±0.06と決められた。これから、核子・Δ粒子の結合定数(クオークスピン反転確率に比例する量)が、g'_<NΔ>=0.28-0.35と得られた。この様に、研究は順調に進み当初予定した成果を挙げることができた。尚、ここで実験的に得られたスピン和則値は最も信頼度が高いものであり、それから導かれたg'_<NΔ>は世界で最初の結果である。これから中性子星でのパイ中間子凝縮や通常核でのその前駆現象についての定量的な予測が可能になった。
著者
若林 啓
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.61-69, 2014-06-30

チャンキングは,単語の系列から名詞句や前置詞句といった浅い統語構造を抽出する技術であり,固有表現抽出や機械翻訳などで重要な前処理であると考えられている.これまでに提案されている多くのチャンキング手法は教師あり学習に基づいており,教師データに現れない文章表現を多く含むWeb上の文書には適用が難しい.本研究では,依存構造解析モデルの平坦近似に基づいた平坦近似依存文法モデル(FADG)を用いることで,チャンク間の局所的な統語構造を考慮した教師なしチャンキング手法を提案する.FADGは線形鎖モデルを階層的に接続した階層型隠れマルコフモデル(HHMM)の枠組みで形式化するため,HHMMの効率的な教師なし学習アルゴリズムを適用できる.実験により,提案モデルが局所的な統語構造を効果的に推定し,これによって高い精度で教師なしチャンキングを行えることを示す.Chunking is a natural language processing task to extract shallow syntactic structures like noun phrases or prepositional phrase, and it plays an important role in various applications such as named entity extraction and machine translation. Most chunking algorithms proposed so far are based on supervised learning, but they depend on the domain of supervision documents that often consist of news articles and are not effective for analyzing Web documents or microblogs. In this paper, we propose an unsupervised chunking method based on the Flat Approximated Dependency Grammar model (FADG) to capture local syntactic dependency structures between chunks. The FADG is formalized as a Hierarchical Hidden Markov Model (HHMM) and we can conduct the unsupervised learning of FADG efficiently by using a sophisticated inference algorithm for HHMMs. The experimental results show the effectiveness of the proposed method in chunking accuracy comparison.
著者
山田 義行 加来 佳子 若林 久嗣
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-40, 2000-03-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
15
被引用文献数
7 9

非定型Aeromonas salmonicidaの系統解析を16S rDNAの塩基配列の解析により行った結果, 国内で分離された菌株は, キンギョ由来菌株, ウナギおよび海産魚(ムシガレイ, アイナメ, ヒラメ, クロソイ)由来菌株, ニシキゴイ由来菌株, マゴイ由来菌株の4グループに分類された。近年における本菌の宿主範囲の拡大はキンギョ由来菌株とは系統を別にする菌株群によると考えられた。
著者
若林 教裕
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

原因側と結果側の「変数」の関係に着目することや, 一つの関係を調べるためには多くの変数を適切に制御したり, データを統計的に評価したりすることが科学の世界では重要であることを学習内容に組み込むことで探究する能力・態度の育成に効果が見られた。また, 変数を意識しながら, 関係する条件を一つ一つ明確にしていく教材を開発したり, 変数に着目させるための教師の問いを工夫したりすることで, 条件制御することの意味を実感させたり, 生徒の誤概念を修正したりすることにも有効であることが検証された。以下にその内容(全18時間)を示す。<基礎編(6時間)>1 : 「科学者は何をしているか」→探究学習の視点を与え, 変数に着目する重要性を知る2 : 「変数を見付けるには」→変数を見付ける活動をさせ変数同士の関係を見極める3 : 「パイプ音の高さは何に関係するか」→制御制御の仕方を身に付ける4 : 「画鋲が上を向く確率は」→データを繰り返しとると数値が安定していくことを学ぶ5~6 : 「温泉卵のでき具合は何に関係するのか」→二つの変数が交互に関係して自然現象が起きる作用(交互作用)や失敗を経験させることで, データ取得の重要性を学ぶ<実践編 : 紙グライダーの探究(12時間)>1~2 : 入力(独立)変数と結果(従属)の変数を選出し探究テーマの決定3~8 : 探究 例)「紙の大きさと滞空時間の関係」「羽根の角度と飛距離の関係」など9~12 : 発表の準備と発表会→発表者には入力・結果の変数, データの回数を意識させる<事後アンケート>本プログラム実施生徒45人(肯定的に答えた生徒の%)Q1 : 自ら研究テーマを設定するのは苦にならない方だ? 学習前45%→学習後73%Q2 : 探究の方法は心得ている方だ? 学習前78%→学習後98%理由 : 自分で変数を見つけ多くの変数を制御しながら関係性を見つけられるようになったから理由 : 先生が決めた変数や課題じゃないから, 先生も結果が謎でわからないのが面白い
著者
若杉 三紀夫 山本 高広
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.40, no.457, pp.1372-1378, 1991-10-15

The effects of three types of polymer modification on both hydration characteristics and physical properties of the gypsum pastes and mortars originated from anhydrite plaster have been studied at various polymer-gypsum ratios. The polymer dispersions used were ethylene-vinyl acetate (EVA), polyacrylic ester and styrene-butadiene rubber. The degree of hydration of the gypsum pastes and mortars was examined by X-ray diffraction, scanning electron microscopy, differential scanning calorimetry and porosity measurement. The setting time of fresh gypsum mortars (polymer-modified and unmodified) as well as the physical properties of hardened gypsum mortars were also measured. The hydration was complete in about 3 days, and the degree of hydration of the polymer-modified gypsum mortars was smaller than that of unmodified mortar. The setting time of gypsum mortars was retarded by the addition of polymer, and was affected by the chemical structure of polymer. The flexural and tensile strengths of the EVA-modified mortar with a polymer-gypsum ratio of 5% were higher than those of unmodified mortar. Its elastic modulus was the smallest of all, and further EVA-modified mortars showed small linear expansion. From the above test results, the EVA-modified gypsum mortar with a polymer-gypsum ratio of 5% was shown to be one of the candidates of the better plastering materials for polystyrene and polyurethane foams.
著者
林 農 HIGUCHI H. KLICK Heiko LAMPARD D. LICHTAROWICZ エー CLAYTON B.R. CHOI KwingーS 田辺 征一 若 良二 河村 哲也 望月 信介 大坂 英雄 LAMPARD Desmond HIGUCHI Hiroshi
出版者
鳥取大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本国際共同研究は、イギリス、ドイツ、及びアメリカの研究グルプと、本年13周年を迎えた西日本乱流研究会の研究者達が協力して、それぞれが既に研究成果を挙げ十分なデータを蓄積している運動量、熱及び質量輸送に関する実験結果を相互に交換して、これらに共通する基本原理を明らかにすることを目的としたものである。本共同研究の開始に先立つ4年前、研究代表者の林は文部省在外派遣研究員として、1991年8月から4ヶ月間ドイツ・ルール大学ボフム校に滞在し、K.Gersten教授及びHeiko Klick氏と遷移境界層中に発達する温度境界層に関して共同研究を行った。引き続き、1991年12月から4ヶ月間イギリス・ノッチンガム大学に滞在して、Kwing-So Choi博士とリブレット平面上に発達する境界層内の伝熱促進に関して共同研究を行った。その際、ノッチンガム大学のB.R.Clayton教授及びルール大学のK.Gersten教授の勧めもあって、3国間での資料交換についての国際共同研究を申請することに合意し、国内外研究者の組織化を進めた。その結果、幸いにも、平成7年度文部省科学研究費補助金国際学術研究に採択いただき、国際共同研究を実施する運びとなった。国際学術研究・共同研究では、国内の研究者グループと国外の研究者グループの対等の立場での研究者交流が重要な柱となっているので、本共同研究においても、研究経費は各研究機関の負担によることとし、研究者の交流による討論及び外国研究機関での研究に主眼をおいて学術交流を推進した。本共同研究の目的である討論をより深めるためには、各々の研究者が国内外の各地に点在する大学や研究所を訪問し互いの実験結果を比較し検討するよりは、経費と時間を有効に使うためにワークショップなりセミナーの形式を採用して多くの研究者が一堂に会して、課題の本質について討議することの方が能率良く且つ実り多い結果が得られると感じられたので、共同研究の実施期間である平成7年度中に、2度の 「質量,熱,運動量輸送の乱流制御」 に関する国際会議を開催した。一つは、1995年10月6日に鳥取大学において開催した国際交流セミナー 「質量,熱,運動量輸送に関する乱流制御」 であり、B.R.CLAYTON教授、Kwing-So CHOI助教授及びHeiko KLICK博士の3名に加えて、国際的学者である東京大学・笠木伸英教授及び名古屋大学・中村育雄教授、国内の研究グループである西日本乱流研究会の多くの研究者達が討論に加われるように配慮して、検討を十分掘り下げることができた。他の一つは、1995年8月22日にイギリス・ノッチンガム大学において開催したOne-day Colloquium 「Techniques in Turbulence Management of Mass,Heat and Momentum Transfer」 であり、西日本乱流研究会からも特別講師として、研究代表者の林農教授、研究分担者の大坂英雄教授、河村哲也教授、田辺征一教授が招かれて、ノッチンガム大学のスタッフのみならず、イギリス各地の大学、研究所、企業から集まった乱流制御問題に関心のある研究者達及び別途日本から参加の岐阜大学・福島千尋助手及び日本原子力研究所の秋野詔夫主任研究員らを交えて活発な意見交換が成され,十分な成果をあげることができた。また、河村哲也教授は、短期間であるが共同研究の相手先であるノッチンガム大学工学部機械工学科に滞在して、リブレット付き平板上に発達する境界層の数値シミュレーションに関する研究を行った。研究分担者の鳥取大学・若 良二教授もノッチンガム大学短期滞在中に乱流計測技術の調査研究についての成果を得た。今回の共同研究の結果として、本研究に加わったイギリス・ノッチンガム大学及びアメリカ・シラキュース大学と鳥取大学との大学間交流協定を締結する準備が進展している。したがって、ノッチンガム大学とはリブレット付き平板上の境界層の発達と熱伝達促進に関する共同研究を、シラキュース大学とは円柱後流の干渉とウェーブレット解析に関する共同研究を、大学間協力研究として、近い将来の文部省科学研究費補助金国際学術研究に申請するよう計画しているところである。