著者
阿部 貴恵 近藤 美弥子 岡田 和隆 亀崎 良介 和田 麻友美 北川 善政 山崎 裕
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.127-131, 2014-03

口腔内セネストパチーは,口腔内の異常感を奇妙な表現で執拗に訴える病態で,難治性の疾患とされている.今回,口腔内にさまざまな異物の存在を訴え続けた75歳の女性に対し,心身医学的対応により症状の消失までには至らなかったものの,寛解が得られた症例を経験したので報告する. 主訴は,口の中から砂が出てきて口内全体に張り付くであった.カンジダ除菌後,口内には口腔乾燥以外の異常所見を認めなかったが,以後,「丸い塊」「フイルム」「六神丸」「セロハン」「ブドウ」様の異物が口内に出現すると感じるようになり,それを吐き出さずにはいられず,外出も困難になった.向精神薬や抗うつ薬を投与したが効果なく,精神科に紹介したが具体的な治療は行われなかった.当科での治療を引き続き希望したため,薬物療法は止め,発症の契機が疑われた長男の嫁との不仲を和解させ,好きなパチンコに行けるように生活指導を根気よく行ったことで,異物は完全には消失していないものの,症状は改善した.
著者
依田 直也 兼松 祥央 茂木 龍太 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.39, no.14, pp.111-114, 2015-03-07

ツンデレと呼ばれるキャラクターは、容姿だけではなく会話やしぐさ,ストーリーの展開といったさまざまな要素を介して表現される特徴をもつ。本研究はツンデレキャラクターのデザイン支援のためのディジタルスクラップブック構築を目的とする。このため既存のツンデレキャラクターを収集し、そのキャラクターの要素を分析した。そしてツンデレキャラクターが持つさまざまな要素をまとめたライブラリをもつ、ディジタルスクラップブックを開発した。
著者
平山 英夫 近藤 健次郎 海野 泰裕 松村 宏 岩瀬 広 柚木 彰 佐々木 慎一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.J14.048, (Released:2015-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

A rapid and simple method to measure the concentration of 90Sr in water by measuring β-rays from 90Y was presented. Under the situation that 90Sr/90Y, 134Cs and 137Cs are the main radionuclides included in the water sample, only β-rays from 90Y can transmit through 1.5-mm-thick polyethylene. From this fact, it is possible to measure β-rays from 90Y using a β-ray detector, such as the GM-counter, set beneath the 1.5-mm-thick bottom of the water bottle containing the sample with 90Sr/90Y. The acrylic resin collimator having 0 cm, 1.00 cm, 1.50 cm or 3.00 cm diameter was made to detect β-rays at the fixed region of the GM-counter used. Contributions from bremsstrahlung produced by β-rays and γ-rays from radionuclides such as 134Cs and 137Cs/137mBa are removed by subtracting the count rate measured with a 1.00 cm acrylic resin collimator without a hole as the background count rate. The developed method was studied using the bottle routinely used at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station. It was confirmed that the developed method can be applied to measure the 90Sr concentration in water to the order of several Bq/cm3 if 134Cs and 137Cs concentrations are less than or equal to the 90Sr/90Y concentration.
著者
近藤 久雄 谷口 薫 杉戸 信彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

糸魚川-静岡構造線活断層系(以下,糸静線活断層系)は,1980年代以降に精力的に実施された詳細な古地震学的調査によって,近い将来に内陸大地震を生じる断層系の1つと考えられている(例えば,奥村ほか,1994;地震調査研究推進本部地震調査委員会,2003).糸静線活断層系におけるトレンチ調査等の地点数は約44地点にわたり,日本の内陸活断層帯の中で最も高密度に古地震学的調査が実施されてきた(例えば,糸静線活断層系発掘調査研究グループ,1988など).これらの成果では,断層系最北端を構成する神城断層から下蔦木断層に至る区間(北部-中部区間:奥村ほか,1998)の最新活動時期が約1200年前と推定され,西暦841年もしくは西暦762年地震のいずれかに対比されるものと考えられてきた.甲府盆地の西縁付近を延びる南部区間では約1200年前とは異なり,より古い活動時期が推定されている(遠田ほか,1995;2000).一方,上述の神城断層から下蔦木断層に至る区間が連動型の1つの大地震であったのか,という点については課題が残されている.横ずれ成分を主体とする中部区間の中で,断層系のほぼ中央部に位置する諏訪湖周辺では盆地縁辺部を限る正断層群が発達し(例えば,今泉ほか,1997),同断層系で最も大規模な構造境界をなす.この盆地の成因については議論があるものの,最近検出された横ずれ地形(近藤・谷口,2013)等から判断して,藤森(1991)が指摘したように左横ずれ断層のステップ・オーバーに伴い形成されたプルアパート盆地である可能性が高い.すなわち,諏訪湖堆積盆地が断層セグメント境界をなすと考えられる.その一方では,糸静線活断層系の最新活動ではいずれかの歴史地震において諏訪湖セグメント境界を乗り越えて破壊が進展したとみなされてきた.しかし,例えば,諏訪湖堆積盆地の南東を延びる茅野断層におけるジオスライサー調査では最新活動時期は約2300年前であり,約1200年前のいずれの歴史地震でも活動していない(近藤ほか,2007).そこで,この諏訪湖セグメント境界周辺の最新活動時期をさらに高密度に復元することにより,諏訪湖セグメント境界の連動性を古地震学的に再検討した.諏訪湖セグメント境界の北西側付近に位置する岡谷断層・郷田地点では,トレンチ調査の結果,過去4-5回の活動時期が明らかとなり,最新活動時期が1660+-30 y.B.P.以降と推定された(近藤ほか,2013).さらに,諏訪湖セグメント境界の北東側に位置する諏訪湖北岸断層群・四賀桑原地点においてピット掘削調査を実施し,正断層運動に伴うとみられる傾斜不整合イベントをみいだした.この傾斜不整合の年代は2490±30から7710±40y.B.Pに限定され,少なくとも約1200年前の大地震に伴うものとは考えられない.さらに,下諏訪町下山田地点において実施したトレンチ・ボーリング調査では,沖積扇状地面を切る比高約2mの低断層崖が1790+-30から6750+-30y.B.P.に形成された可能性があり,現在さらに詳細を検討している.これらの諏訪湖セグメント境界とその周辺の最新活動時期からみて,諏訪湖北岸断層群および諏訪湖南岸断層群では最新活動時期が約1200年前よりも古く,西暦841年と西暦762年地震のいずれにおいても活動していない.したがって,約1200年前の歴史地震に伴い神城断層から下蔦木断層に至る区間が連動して1つの大地震を生じたとは考えられない.すなわち,神城断層から牛伏寺断層ないし岡谷断層までを含む区間と,釜無山断層群から下蔦木断層までを含む区間が約1200年前にそれぞれ別々の大地震を生じた可能性が高い.歴史史料の制約から現状では断定できないが,前者の区間が西暦841年地震,後者の区間が西暦762年地震を生じたという対比,あるいはその逆の組み合わせの可能性もある.今後,緻密な年代測定等を実施することで,両地震の対比をより厳密におこなうことも重要である.さらに,最新活動では諏訪湖セグメント境界を破壊が乗り越えなかったと考えられるものの,そのような連動型大地震が過去に生じなかったとは言えない.例えば,約2000-2300年前の古地震イベントでは,牛伏寺断層や岡谷断層,茅野断層においても共通して見いだされており,活動時期のみからは連動した可能性は考えられる.ただし,地層の欠落や年代測定の推定幅によって完全な同時性があるとは言えないため,このイベントに伴う地震時変位量を復元して検討することが必要である.さらに,数値シミュレーション等により物理的な背景をもった再現性を検討する必要があろう.謝辞:諏訪湖周辺の現地調査は(株)ダイヤコンサルタントのご協力を得ました.記して御礼申し上げます.
著者
千葉 壮太郎 近藤 秀樹 兼松 聡子 鈴木 信弘
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.163-176, 2010-12-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
105
被引用文献数
4 4

マイコウイルス(菌類ウイルス)は菌類の主要な分類群から広く報告されている.特に近年のウイルス探索の結果,新しいマイコウイルスが次々と報告され,新規のウイルスゲノム構造,遺伝子発現様式,粒子構造の発見を齎した.また,同時にウイルスの多様性,進化の理解へと繋がった.マイコウイルスの多くは2本鎖RNAをゲノムにもつ球形ウイルスであるが,粒子化されない1本鎖RNAウイルスも多く見つかっている.自然界では,マイコウイルスは宿主菌の細胞分裂,細胞融合,胞子形成により水平・垂直伝搬するが,細胞外からの伝搬・侵入経路は知られていない.マイコウイルスの多くは無病徴感染をするが,一部のウイルスは宿主菌に病徴を惹起し,巨視的表現型の変化を齎す.マイコウイルスが植物病原菌の病原力を低下させる場合は,ウイルスを利用した生物防除(ヴァイロコントロールと提唱)が試みられている.ヨーロッパではクリ胴枯病菌のヴァイロコントロールの成功例があり,一方,日本でも果樹の白紋羽病菌を標的としたヴァイロコントロールが試みられている.本稿では,マイコウイルスの一般的性状を概説し,ヴァイロコントロール,さらにはそれに関係するウイルスについて紹介する.
著者
時実 象一 井津井 豪 近藤 裕治 鶴貝 和樹 三上 修 野沢 孝一 堀内 和彦 大山 敬三 家入 千晶 小宮山 恒敏 稲田 隆 竹中 義朗 黒見 英利 亀井 賢二 楠 健一 中西 秀彦 林 和弘 佐藤 博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.555-567, 2011 (Released:2011-12-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2

現在海外では科学技術医学分野における主要学術雑誌の論文はほとんどPDFとともにHTMLでオンライン公開されている。これらは内部的には各種SGMLまたはXMLで編集されているが,外部に対しては,ほとんど米国医学図書館(National Library of Medicine: NLM)が策定したNLM DTD(NLM Journal Archiving and Interchange Tag Suite)にしたがったXMLで流通している。しかし日英混在の書誌・抄録・引用文献情報を持つわが国の多くの学術論文は,英語世界で生まれたNLM DTDで適切にXMLで表記することができなかった。筆者らはこのNLM DTDを,日本語を含む多言語に対応できるよう拡張するためのワーキング・グループSPJ(Scholarly Publishing Japan)を結成し,米国のNLM DTDワーキング・グループと連携しながら検討・提案を行った。その結果は2011年3月にNISO(National Information Standards Organization)のJATS(Journal Article Tag Suite)0.4(NLM DTD 3.1が移行)における多言語機能として公開された。本稿では,学術論文におけるSGML,XMLなどマークアップ言語の利用の歴史を振り返るとともに,SPJの活動の経緯,実現したJATS 0.4の概要について述べる。
著者
近藤 智善 石口 宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1621-1626, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

不随意運動は本人が意図しないで,あるいは本人の意図と反して身体の部分になんらかの運動や姿勢(肢位)の異常が生じることをいい,運動の態様によって既知の症候上の用語をあてはめて呼称する.薬剤によって誘発される不随意運動はジスキネジアと一括されるが,具体的な不随意運動のタイプは振戦,ミオクローヌス,舞踏病,チック,ジストニー,アテトーゼ,バリスム,アカシジア(静坐不能),など様々である.診断を考える際にはまず器質性病変をもった疾患を除外する立場が大切であるが,薬剤性不随意運動は様々な薬剤で生じるため,なんらかの薬剤を服用している場合には,薬剤性のものも鑑別に加える必要がある.
著者
遠藤 邦彦 千葉 達朗 杉中 佑輔 須貝 俊彦 鈴木 毅彦 上杉 陽 石綿 しげ子 中山 俊雄 舟津 太郎 大里 重人 鈴木 正章 野口 真利江 佐藤 明夫 近藤 玲介 堀 伸三郎
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.353-375, 2019-12-01 (Released:2019-12-24)
参考文献数
77
被引用文献数
2

国土地理院の5m数値標高モデルを用いて作成された武蔵野台地の各種地形図により,武蔵野台地の地形区分を1m等高線の精度で行った.同時にデジタル化された多数のボーリングデータから各地形面を構成する地下構造を検討した.その結果得られた地形面は11面で,従来の区分とは異なるものとなった.既知のテフラ情報に基づいて地形発達を編むと,従来の酸素同位体比編年による枠組み(町田,2008など)と矛盾がない.すなわち古い方からMIS 7のK面(金子台・所沢台等),MIS 5.5のS面,MIS 5.3のNs面,MIS 5.2-5.1のM1a面,M1b面,MIS 5.1からMIS 4の間にM2a面,M2b面,M2c面,M2d面,MIS 4にM3面,MIS 3-2にTc面の11面が形成された.武蔵野台地は古期武蔵野扇状地(K面)の時代,S面,Ns面の海成~河成デルタの時代を挟み,M1~M3面の新期武蔵野扇状地の時代,およびTc面の立川扇状地の時代に大区分される.M1~M3面の新期武蔵野扇状地が7面に細分されるのは,M1面形成後の海水準の段階的低下に応答した多摩川の下刻の波及による.
著者
近藤 淳
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.85-87, 2005-02-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
20
被引用文献数
1

40年前,私は電気抵抗極小の問題を解決しようと努力していた.その当時,電気抵抗極小に関する実験の状況はどんなであったか,理論屋からみて何が困難な点だったか,どんな実験事実が問題解決に重要だったか,ヒントは何だったか,などの経緯を述べてみたい.
著者
近藤 博之
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.164-169, 2017-07-28 (Released:2019-03-08)
著者
上田 真名美 多田 奏恵 長谷川 龍樹 近藤 洋史
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.93.22301, (Released:2022-11-01)
参考文献数
25

When we recognize self, it is necessary to integrate sensory information from the environment with information from inside the body. However, it is unclear whether all individuals have the same susceptibility to exteroception and interoception. The present study investigated relationships between sensory-processing sensitivity and interoceptive awareness through self-reporting measures. Two hundred and one healthy people (21–60 years old) completed the highly sensitive person (HSP) scale and the multidimensional assessment of interoceptive awareness (MAIA). Consistent with previous findings, a bifactor model provided a better fit to the HSP scale data. Latent profile analysis showed the existence of high and low HSP groups. Factor analysis revealed that two factors, “Environmental Sensitivity” and “Bodily Sensitivity,” were extracted from the HSP scale and MAIA. This suggests that sensitivity to exteroception is functionally separable from that of interoception within each individual.
著者
吉田 啓志 増田 裕里 近藤 駿 井戸田 弦 永井 宏達
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1275-1279, 2021-11-15

要旨 【目的】自立歩行が可能な脳卒中患者における日本語版Physical Activity Scale for the Elderly(PASE)を使用した身体活動量評価の妥当性および信頼性を検証することである.【方法】妥当性は,対象者27名に対し,入院環境と生活環境においてPASEと3軸加速度計にて評価した身体活動量の相関係数にて基準関連妥当性を評価した.信頼性は,対象者19名に対し,級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)にて検者内信頼性を評価した.【結果】妥当性は,生活環境において高い妥当性を認めた(ρ=−0.40〜−0.67).信頼性においても,高い信頼性を認めた(ICC=0.98).【結論】自立歩行が可能な脳卒中患者におけるPASEを使用した身体活動量評価は,妥当性および信頼性とも良好であり,生活環境での応用が今後期待される.
著者
Ling LING 辻 大士 長嶺 由衣子 宮國 康弘 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.800-810, 2020-11-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
41
被引用文献数
3

目的 超高齢社会において,認知症予防は重要な課題である。先行研究では,趣味を有する高齢者は認知症リスクが低く園芸,観光,スポーツ系の趣味を行っている者では認知症リスクが低いと報告されている。しかし,趣味の種類の数が増えれば効果も上乗せされるのか,またたとえばスポーツ系の中でも種類によって認知症の発症リスクが異なるのかは明らかでない。本研究の目的は,趣味の種類および数と認知症発症との関連を,約6年間の大規模縦断データを用いて明らかにすることである。方法 日本老年学的評価研究(JAGES)が2010年に実施した要介護認定を受けていない高齢者を対象とした調査の回答者で,年齢と性に欠損がない56,624人を6年間追跡した。趣味の質問に有効回答が得られた者のうち,追跡期間が365日未満の者を除く49,705人を分析対象者とした。アウトカムの認知症発症は,365日以降の認知症を伴う要介護認定の発生と定義した。実践者割合が5%以上の趣味の種類(男性14種類,女性11種類)およびその数(0~5種類以上)を説明変数とし,基本属性,疾患,健康行動,社会的サポート,心理・認知機能,手段的日常生活動作能力の計22変数を調整したCox比例ハザードモデルを用いハザード比(HR)を算出した。結果 追跡期間中に4,758人(9.6%)に認知症を伴う要介護認定が発生した。男女いずれも,認知症リスク(HR)はグラウンド・ゴルフ(男:0.80,女:0.80),旅行(男:0.80,女:0.76)を趣味としている者において,それらが趣味ではない者と比較して低かった。さらに男性ではゴルフ(0.61),パソコン(0.65),釣り(0.81),写真撮影(0.83),女性では手工芸(0.73),園芸・庭いじり(0.85)を趣味とする者で低かった。男女ともに趣味の種類の数が多くなるほど認知症発症リスクが低くなる有意なトレンドが確認された(男:0.84,女:0.78)。結論 男女ともグラウンド・ゴルフ,旅行が趣味の者では認知症リスクが低く,また趣味の種類の数が増えるほどリスクは低下することが示唆された。本研究で有意な関連が見られた趣味の種類を中心に,高齢者が多様な趣味を実践できる環境づくりが,認知症予防を効果的に進めるうえで重要であることが示唆された。