著者
巷岡 祐子 河野 達夫 近藤 睦子 野崎 太希 榎園 美香子 槙殿 文香理 下島 直樹 下高原 昭廣
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.147-155, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
26

乳幼児の乳び胸は,その多岐にわたる病態・病因の把握が容易ではなく,治療に難渋する症例が少なからずある.しかし近年,画像技術の向上により中枢リンパ管の評価が可能となり,これまで未知であった病態も一部解明されつつある.また,治療技術もめざましく進歩しており,乳び胸の背景に存在する病態を評価することの重要性は増している.病態と画像診断を中心に,乳幼児における乳び胸について述べる.
著者
近藤 克則
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.369-377, 2019-11-30 (Released:2019-11-30)
参考文献数
15

日本でも「健康日本21(第2次)」で「健康格差の縮小」が政策目標となった.しかし健康教育は,深く考えずに推し進めれば,健康格差をむしろ拡大しかねない.低学歴,非正規雇用,低所得で困窮している人たちほど,健診や健康教室に参加せず,健康情報を得る機会が少なく,知識はあっても処理能力に余裕がない傾向があるからである.ではどうしたら良いか.その手がかりは,ヘルスプロモーションのオタワ憲章などで示された「健康的な公共政策の確立」「支援的な環境の創造」「コミュニティの活動強化」など環境への介入である.それを進めるためには,その重要性を健康・医療政策に留まらない公共政策,環境・コミュニティづくりを担っている人・部門に対して伝えることが必要となる.従来型の健康教育から「健康格差の縮小」に寄与する21世紀型の「健康教育21」にしていくには 3つの見直しが必要である.1)生活習慣・行動変容を本人に迫る内容から,暮らしているだけで健康になる環境づくり「ゼロ次予防」への内容の拡大,2)ヘルスセクターや一般の人たちに留まらず,非ヘルスセクターや民間事業者への対象の拡大,3)教育方法の研究・開発・普及において,知識伝授型教育から行動経済学などの知見を踏まえた認知・処理能力を重視した方法への変革である.ヘルスプロモーションを実現するために,21世紀型「健康教育21」へのシフトが必要である.
著者
近藤 隆二郎
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.13, pp.48-70, 2007
被引用文献数
2

<p>参加型と称される計画づくりの現場では,「ワークショップ=正当な参加」という暗黙の了解があるため,ワークショップそのものが目的化してしまう危うさや,結果として,生活感と乖離した抽象的なビジョンが決められていく傾向がある。形式的な参加に行政も市民もが妥協しているとも言える。市民が何らかのかたちで継続的に「かかわる」ことができる計画が必要である。そのためには,決定と所有が必須となる。末石冨太郎が言うように,何をさせられているかがわからない=何が可能かがあいまいなことにも問題がある。その絡み合いを紐解くことが市民調査の必要性でもある。また,現場へのかかわり(実践)をいかに共有していくかが鍵となる。抽象的な指針を超えて,そこに具体的なかかわり方を導き,体験していかねばならない。</p><p>そこで,身体的参加を提起したい。身体が地域にどうかかわるかを捉えたい。正統的周辺参加として,「身体で覚える」学習プロセスを重視したい。身体パタンのデータベース化と,計画に基づく新しい身体パタンとがどう関係するか,どう体得されていくかによって,計画の実効性が左右される。民俗学や社会学が蓄積してきた,ライフヒストリー的あるいは文化生態学的な蓄積もあらためて身体パタンとして解釈すれば,この身体的参加データベースに寄与することができる。</p><p>ここで専門家に求められる役割は,(1)いかに現在のシステムが絡み合っているかをひもとく役割,(2)身体のパタン・ランゲージを見いだす役割,(3)創発する場をコーディネート/メディエートする役割,である。</p>
著者
近藤 龍哉
出版者
東京大学東洋文化研究所
雑誌
東洋文化研究所紀要 (ISSN:05638089)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.55-95, 2007-03

胡風就自己與日本進歩評論家矢崎彈的交流,寫過一篇回憶文章<憶矢崎彈―向摧殘文化的野蠻的日本政府抗議>,發表於1937年9月,即中日戰爭爆發後胡風創刊的《七月》(週刊)第三期(1937. 9. 25)。矢崎於同年5月訪問上海,並與胡風多次会談,當時通過文學暢談,相互留下了深刻印象。胡風接到強烈希望與中國文壇進行交流的矢崎卻因此而遭到日本官憲逮捕的消息後,寫下了這篇文章,如實地記述了與矢崎的交流,並證實其交流幾乎完全是與文學相關的,對在所謂"憲政"下的日本,濫用權利將其逮捕的日本政府的野蠻行為提出了強烈抗議。有關與矢崎的交流,胡風在名譽恢復後所寫的《回憶錄》中僅略微渉及,其眞實情况仍不太明確。造成這一現狀的原因主要有:矢崎彈的評論活動自1932年至1946年的15年主要集中於戰爭時期,戰後幾乎未能活躍即死去;由於矢崎無論是左還是右都不処於日本文壇的中心,而是從獨特的位置從事評論活動,其在戰後的日本並不怎麼受關注,因此對其的研究也無進展。另外加上同人雜誌《星座》又是極不易看到的資料。此次我想以胡風的這篇文章為綫索,並盡可能根據當時的資料,搞清其交流的眞實情况。這次我有幸看到了以下新資料胡風受矢崎之約所寫的、發表於矢崎主辧的《星座》雜誌上的日語文章〈我的心境〉、登載在《星座》上的矢崎彈的上海滯留日記、歸國後的矢崎發表於日本的雜誌等刊物上的文章、矢崎在上海與王統照交換《星座》和《文学》雜誌的特約關系、籌劃雜誌交換的詩人五城康雄(《星座》同人)謀求中日文學交流的文章等。我想根據這些新資料,闡明矢崎彈究竟是一個什麼樣的評論家?他是以何目的訪問上海的?訪問又是在怎樣的社会狀態下進行的?在上海進行了哪些活動?回國後的交流經過如何等問題,並試圖考察這種交流具有什麼樣的意義。
著者
上野 恵子 西岡 大輔 近藤 尚己
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-070, (Released:2021-10-29)
参考文献数
29

目的 近年,生活保護制度の被保護者への健康管理支援の重要性が指摘され,施策が打たれている。本研究は,2021(令和3)年に全国の福祉事務所で必須事業となった「被保護者健康管理支援事業」に対して福祉事務所が抱える期待や懸念,および国・都道府県への要望を明らかにすることを目的とした。方法 2019年11月,機縁法により選定された23か所の福祉事務所に,質問紙調査を依頼した。質問紙では,健康管理支援事業の実施に際して期待する点ならびに懸念する点,国・都道府県から受けたい支援を自由記述で回答を求めた。次いで2019年11月から2020年2月にかけて,福祉事務所でヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査では,質問紙項目に記載が不十分な回答,回答の補足事項や不明点を調査票の内容に沿って聞き取りを実施した。結果 16か所の福祉事務所から調査票の回答およびヒアリング調査の承諾を得た(同意割合69.6%)。福祉事務所担当者は健康管理支援事業が被保護者の健康意識・状態を改善し,被保護者のみならず他住民への取り組みとしても実施されることを期待していた。また,困難を感じている点として,実施体制の構築,事業の評価指標・対象者の設定,保健医療専門職の確保が示唆された。国・都道府県への要望としては,評価指標・基準の提示,標準様式の提供,参考となる事業事例の紹介,福祉事務所間や地域の他の関係機関との連絡調整,情報共有の場の提供,財源の確保などが挙げられた。結論 健康管理支援事業の円滑な実施を推進するためには,自治体と国ならびに都道府県が連携を深めるとともに,重層的な支援体制の構築が求められている。
著者
近藤 宏 藤井 亮輔 矢野 忠 福島 正也
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.49-55, 2019 (Released:2020-05-20)
参考文献数
26

【緒言】視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師がその技術を活かし、ヘルス キーパーとして企業に雇用されている。しかし、企業内に開設された施術所の状況、ヘルスキー パーの正確な人数や業務の詳細について全体を網羅した基礎的資料はみられない。本研究の目的 は、全国の保健所に登録された施術所情報から企業内に開設された施術所の所在地等を明らかす ることである。 【方法】全国の保健所から収集されたあはき業に係る都道府県ごとの施術所名簿データ(76,505 件) から名称、所在地、業務の種類を抽出し、データベースを作成した。データベースから法人企業 のみをスクリーニングした。さらにWeb 検索エンジンを用いて当該企業を照合し、企業内に開設 された施術所を有する企業名と産業分類を特定した。集計は、届出施術所数、企業数、都道府県 別数、企業の産業分類、業務の種類について行った。 【結果】届出された施術所数は、282 件であった。その内、53 件が異なる所在地で複数の届出をし ていた。そのため企業数は200 件であった。届出をした業務の種類は、あん摩マッサージ指圧の み135 件(47.9%)が最も多かった。都道府県別での所在地では、東京都147 件(52.1%)が最も 多く、次いで、大阪府48 件(17.0%)であった。産業分類別では、情報通信業92 件(32.6%)が 最も多く、次いで製造業19.1%であった。 【考察】大企業の本社が多い都道府県は東京都と大阪府である。大企業の本社数が多いために、企 業内に開設された施術所が大都市に集中しているのではないかと考える。 【結語】全国の保健所に登録されている施術所情報から、企業内に開設されたあん摩マッサージ指 圧・はり・きゅう施術所の開設数、所在地、企業の産業分類、業務の種類を明らかにし、基礎的 資料を資することができた。
著者
斉藤 勇樹 中村 陽介 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 37.17 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.167-168, 2013-03-08 (Released:2017-09-21)
参考文献数
5

本研究では、FPSにおけるプレイヤーのスキルを判断する新たな基準を提案する。上級者・初級者のプレイ動画を調査し、プレイスキルの差が検出できる要素を発見した。その要素で実際にプレイスキルの判別ができるか検証するため、制作したゲームに判別手法を組み込み、実験を行った。結果、提案した6種類の要素は一定の精度でプレイヤースキルの判定が可能であることがわかった。
著者
近藤 裕幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.111, 2004

【石橋の経歴】石橋五郎(1876‐1946)は千葉県出身で、東京帝国大学文科大学史学科を1901年7月に卒業後、1904年神戸高等商業学校に赴任し、商業地理等を教えた。1907年京都帝国大学文科大学に史学科が創設されるに際し,史学地理学第二講座(後の地理学講座)が開設され、小川琢治(1870_-_1941)のもとで、人文地理学を講じた。1921年に小川が他学部へ転出した後は,石橋が講座を担当し、時代変遷史的に地理を見る立場を鮮明にし,当初はラッツエル、後には「地人相関論」の立場にたって講義を行った。1927年からは多くの著作に携わり、『日本地理風俗大系』、中学校教科書を著し、地理学の成果普及に努めた。<br>【地理学の方法論の導入】石橋が活躍し始めた1910_から_20年代の中学校地理教育の現状は、啓蒙的に知識(地名物産地理)を下達するものが多かった。例えば石橋よりも先に活躍した山崎直方の教科書では、地人相関的な記述はなかなかみられず、地名が羅列的に並べられたものが多かった。そうした教科書ではなく、石橋は地理学の方法論をとりいれた教科書を執筆した。(石橋は教科書を1924_から_1943年にかけて約20冊著している。)<br>石橋の地理学方法論とは法則定立と地人相関論にあった。しかし石橋はこの両者を全て地理教育に取り入れずに、教育に役立つと思われる地人相関論のみを教育へとりいれた。それは、石橋が地理学と地理教育を別のものとして捉えていたからである。<br>【地人相関論導入過渡期としての位置付け】しかし、石橋が著した教科書の初期のものは、地名羅列的な記述のものだった。地人相関的記述をともなった教科書を書き始めたのは1931年以後であった。そうした記述がなされるようになった背景に、1931年の「中学校令施行規則改正」がある。このときに教育制度上ではじめて地人相関論を教えることの法的裏づけがなされたのであるが、石橋は地名の羅列的記述から、地人相関的記述へとうつりかわる動きを積極的に当局に働きかけた節があり、過渡期にあった人物といえる。<br>【教育全般(教育課程)における地理教育のいちづけ】一方で、石橋は教育全般(教育課程)における地理教育のいちづけを明確にしようとした。教育の目的を、「個人が一般的幸福のために自然的社会的環境にいかい適応すべきかを学ぶこと」と考えていたので、地理科は人間が環境にいかに適応すべきかを学ぶものだから、教育全般のなかで役立つものとした。<br>【地理教育の目的】教育全般の中での地理教育の役割を、石橋は著書『地理教育論』の中で体系的に論じた。生活に即した知識(職業に役立つ知識)、教養としての地理知識、祖国意識の強化、人類愛観念養成、国土美鑑賞のための情操の陶冶などを挙げている。要約すれば「情緒的な側面の陶冶」と「実用と教養の知識獲得」が地理教育の目的といえよう。実際に教科書をみても、二つの見解が生かされた記述となっている。<br> 同時代に地理教育を論じたものとして、田中啓爾の『地理教育に関する論文集』、佐藤保太郎(1933)の「小学校及び中等学校の地理教育」(『岩波講座教育科学16』)等があるが、いずれも教育大系全体を踏まえた地理教育を論ずることが少なく、局所的な論述で、体系的に論じるには至っていない。<br>【地理教育史における石橋の重要性】これまでのことから、地理教育史上、2つの点で、石橋は重要な存在と考えられる。第1は、地理の知識を上から下へと教授していた時代で、羅列的記述を避け、地理学の手法をとりいれた。そうしながらも、地理学と地理教育を混同しなかった点である。第2に、教育全般(教育課程)における地理教育の位置付けを論じ、目的を明確に論じたことである。すなわち、地理学と地理教育を分離した上で、次に教育全体の中で地理教育が果たしうることを目的論として体系的に打ち出したのである。石橋は「教育全般?地理教育?地理学」の構造を浮き彫りにした事実から、今後地理教育史においてさらに検討を加えられるべき人物であると考えられる。<br>
著者
近藤 孝晴 成瀬 達
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

身体運動が消化吸収に及ぼす影響について検討した。1)イヌを用いた実験では、イヌに慢性胃・大腸瘻を造設し、運動が食物の消化管通過時間,胃、小腸、大腸運動機能などに与える影響を検討した。牛乳は運動の有無に関係なく小腸ですべて吸収され、消化管通過時間の測定が不能であった。固型食(肉)の消化吸収は血中脂質を測定して検討した。固型食の消化吸収は運動により遅延した。運動によって固型食の胃排出が遅延するためと推定された。胃、小腸、大腸運動は身体運動により亢進した。これは空腹時でも食後でも同様であった。2)ヒトを対象とした実験は、運動によって食物の通過時間が変化するか否かを、消化管機能が低下していると考えられる高齢者9名(平均年齢71歳)を被験者として行った。一日平均3700歩の安静と、12800歩の運動をそれぞれ2週間続け、小腸、大腸、全消化管通過時間を測定した。小腸通過時間はラクツロ-スによる呼気中水素の測定(クイントロン社マイクロライザ-,新規購入)によった。大腸通過時間はX線非透過性のマ-カ-を服用させ,一定時間後に腹部のX線写真を撮影して、残存するマ-カ-の数から推定した。全消化管通過時間はカルミン服用後、便が着色するまでの時間とした。小腸通過時間は安静時、運動時とも差がなかった。大腸通過時間は、安静時19.5時間であったが運動により11時間と短縮した。全消化管通過時間は安静時26時間に対し、運動時22時間と短縮した。 3)運動が微量元素の吸収に与える影響を、血中亜鉛を測定して検討した。血中亜鉛は身体運動によって変動しなかったが、断眠下の身体運動という強いストレスでは低下した。以上、身体運動は消化管機能を変化させるとともに、種々の食物の消化吸収に影響を与えることがわかった。
著者
林田 一輝 水田 秀子 近藤 正樹
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
pp.17130, (Released:2021-12-08)
参考文献数
25

異常感覚に伴って左上肢の無意味な運動が出現した脳梗塞症例を報告した.頭部MRIでは右中心後回,頭頂間溝前部,頭頂弁蓋部,島皮質後部に病変を認めた.運動麻痺はなく,左上肢の表在・深部感覚は脱失していた.拮抗失行,道具の強迫的使用は認めなかった.また,左手への他者接触時や他動運動時に痛みやしびれ感ではない不快な異常感覚を認め,それに伴って自己が意図しない左上肢の無意味な運動が出現していた.一方で自ら左手で対象物に接触したり,右手で左手を触った時には異常感覚は軽度であった.受動的な感覚に誘発された異常感覚が無意味運動の発現機序に関与している可能性が示唆された.
著者
田代 敦志 相田 潤 菖蒲川 由郷 藤山 友紀 山本 龍生 齋藤 玲子 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.190-196, 2017

<p><b>目的</b> 高齢者における残存歯の実態と背景にある要因を明らかにすることを目的として,個人の所得や暮らしのゆとりといった経済的な状況で説明されるかどうか,それらを考慮しても高齢者の残存歯数がジニ係数により評価した居住地の所得の不平等と関連するか検討した。</p><p><b>方法</b> 介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象として2013年に全国で約20万人を対象に行われた健康と暮らしの調査(JAGES2013,回収率71.1%)において,新潟市データを分析対象とした。自記式調査票を用いて新潟市に住民票がある8,000人に郵送調査を実施し,4,983人(62.3%)より回答を得て,年齢と性別に欠損が無かった3,980人(49.8%)の有効回答を使用した。中学校区別の所得格差(ジニ係数)と残存歯数の地域相関を求め,ジニ係数別の残存歯数を比較した。次に,目的変数を残存歯数,説明変数を個人レベルの変数として,性別,年齢以外に,教育歴,等価所得,暮らしのゆとり,世帯人数,糖尿病治療の有無,喫煙状況を用い,地域レベルの変数として,中学校区ごとの平均等価所得とジニ係数とした順序ロジスティック回帰モデルによるマルチレベル分析を行った。</p><p><b>結果</b> 57中学校区別のジニ係数と残存歯数の地域相関は,相関係数−0.44(<i>P</i><0.01)の弱い負の相関を認め,ジニ係数が0.35以上の所得格差が大きい地域は他の地域と比較して有意(<i>P</i><0.001)に残存歯数が少なかった。残存歯数を目的変数とした順序ロジスティック回帰モデルにおいて,性別と年齢を調整後,個人レベルでは教育歴,等価所得,暮らしのゆとり,喫煙状況,地域レベルではジニ係数,平均等価所得が有意な変数であった。一方で,すべての変数を投入したモデルでは,個人レベルの教育歴と地域レベルの平均等価所得において有意な結果は得られなかった。</p><p><b>結論</b> 所得格差が比較的小さいと考えられる日本の地方都市においても,個人レベルの要因を調整後に地域レベルの所得格差と残存歯数の間に関連が認められた。高齢者の残存歯数は永久歯への生え変わり以降,長い時間をかけて形成されたものであり,機序は明らかではないが,所得分配の不平等が住民の健康状態を決めるとする相対所得仮説は,今回対象となった高齢者の残存歯数において支持される結果であった。</p>
著者
楠田 哲也 近藤 隆二郎 原田 秀樹 迫田 章義 澤田 浩介 Peter R. Kauticke Julino R. Zapata
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.365-371, 2001-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
7

The old civilization is a typical example of the sustainable society, which may provide us with much information on it. Machu Picchu, one of the towns in Inca, was surveyed in 1999 and 2000 on the system of water supply and drainage to investigate sustainable systems which it might own.Machu Picchu had two springs for water resources. Water distribution was done with open channels made by stone. Water distributed to the town was utilized at a series of 16 fountains in cascade use and probably in time sharing. The first to the third fountains would be for ritual and others for drinking and irrigation. Machu Picchu had neither drainage nor wastewater treatment systems. The population in Machu Picchu was estimated around 2400 from the water supply capacity. The society of Machu Picchu was under severe restriction on water supply, and not safe on drinking water.
著者
近藤 大生
出版者
大阪青山大学『大阪青山大学紀要』編集委員会
雑誌
大阪青山大学紀要 = Journal of Osaka Aoyama University (ISSN:18833543)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.49-69, 2014-03-31

Comparison was attempted between the free verse style haiku poets. Santohka Taneda and Hohsai Ozaki.1. Santohka published collections of his haiku poems during his life time while. Hohsai published none while he was alive.2. Santohka, like Bashoh Matsuo,wrote many of his poems on changeable Nature, landscapes, and human sentiments during his frequent journeys while Hohsai produced as many as nearly 3000 poems over the period of 8 months beforehis death as a solitary janitor of a Buddhist temple in his desperate effects to be regaeded as a poet.3. Many of Santohka's haiku poems are considered to be of a variation in style not far from the traditional haiku style of 5-7-5 syllables whereas Hohsai largely neglected the haiku rules in his so-called one-phrase poems.
著者
小松 正史 加藤 徹 桑野 園子 難波 精一郎 近藤 明 井上 義雄 山口 克人
出版者
The Institutew of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.268-276, 2000-08-01 (Released:2009-10-06)
参考文献数
26
被引用文献数
2

道路交通騒音の不快感緩和対策として, 本稿では樹木葉擦れ音のマスキング効果に着目し, 高木類6種が発生する葉擦れ音の周波数やレベル分析, 距離減衰に伴うレベル変化などの物理測定を実施した。その結果, 各樹種とも100Hzから1,000Hzにかけて平坦な成分をもち, 1,000Hz以上で樹種間に差が現れた。レベルの高い音を発生する樹種の特性は受風感度の高い形状をもつものであり, 高域の周波数成分を多く含む樹種の特性は葉縁部の硬度が高いことが示された。また, 距離減衰に伴って高域の周波数成分が減少することも確認された。3樹種については風速値とLAeq,10minの間に相関がみられた。最後に葉擦れ音を活かした沿道植栽計画の必要性を論じた。
著者
中口 拓真 石本 泰星 宮川 祐希 西村 淳 近藤 義剛
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12125, (Released:2021-11-10)
参考文献数
29

【目的】被殻・視床出血患者の急性期CT 画像から,発症3 ヵ月後の歩行自立を予測すること。【方法】回復期リハビリテーション病棟に入院していた被殻・視床出血患者134 名を対象とした。CT 画像は発症後12時間以内に撮影されたものを使用し,深層残差ネットワークにより発症3 ヵ月後の歩行自立を予測した。予測精度としてC 統計量,感度,特異度,F 値,Matthews Correlation Coefficient(以下,MCC)を算出した。【結果】予測精度[平均値(95%CI)]は,C 統計量0.89(0.70 – 0.94),感度0.91(0.76 – 0.95),特異度0.83(0.69 – 0.88),F 値0.87(0.80 – 0.92),MCC 0.82(0.76 – 0.89)であった。【結論】被殻・視床出血患者の急性期CT を用いて,発症3 ヵ月後の歩行自立を予測できる可能性がある。