著者
稲葉 豊 金澤 伸雄 古川 福実
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.26-30, 2013

34歳,女性。頭痛に対して鎮痛薬を使用したところ口唇の腫脹を生じた。数ヶ月後に別の鎮痛薬を使用したところ,上下口唇と手背の水疱および手指の紅斑を生じ,色素沈着を残した。両薬剤に共通な成分であるアリルイソプロピルアセチル尿素 (Allylisopropylacetylurea,AIAU),イブプロフェン,無水カフェインのいずれかによる固定薬疹を疑い,これらの成分に対して無疹部でのクローズドパッチテストを行ったがすべて陰性であった。そのため上下口唇の色素沈着部に AIAU とイブプロフェンをそれぞれ20%含有するワセリンを単純塗布すると,5分後に紅斑が出現した。また無水カフェインの口唇色素沈着部への,AIAU の手背色素沈着部への単純塗布はそれぞれ陰性であった。本症例は皮膚粘膜移行部の固定薬疹であり,同部でのオープンパッチテストは結果が早く得られ,安全で有用性の高い検査法であった。(皮膚の科学,12: 26-30, 2013)
著者
小金澤 正昭 田村 宜格 奥田 圭 福井 えみ子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.99-104, 2013-12-25

2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故は,広範な地域に放射性核種を飛散させ,原発から約160 km離れた栃木県奥日光および足尾地域においても低線量ではあるが,放射性セシウムの飛散が確認された。そこで,今後,森林生態系における放射性セシウムの動態と野生動物に及ぼす影響を明らかにしていく上での基礎資料を得るため,両地域において2012年の2月と3月に個体数調整で捕獲された計80個体のニホンジカの筋肉,臓器類および消化管内容物等の計9試料と,各地域における冬季のシカの餌植物8種の放射性セシウム濃度を調べた。9試料のセシウム濃度は,両地域ともに直腸内容物が最も高く,次いで第一胃内容物,筋肉,腎臓,肝臓,心臓,肺,胎児,羊水の順となっていた。このことから,放射性セシウムは,シカの体内全体に蓄積していることが明らかとなった。また,奥日光と足尾における放射性セシウムのシカへの蓄積傾向には,明瞭な差異が認められた。これは,両地域における放射性セシウムの沈着量と冬季の餌資源の違いが反映した結果と考えられた。さらに,直腸内容物の放射性セシウム濃度は,第一胃内容物および餌植物8種よりも高濃度であった。このことから,シカは採食,消化,吸収を通じて,放射性セシウムの濃縮を招いていることが示唆された。
著者
金澤 裕之
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.133-140, 2015-04

近代語研究の進展に貢献し得る比較的新しい資料に、いわゆるSP(平円盤)レコードを音源とする各種の録音資料がある。しかしこの資料に関しては、言語(特に、話しことば)の研究にとって重要な要素である「音声」を有しているという事実があるにも拘わらず、その活用という点では、必ずしも十分な成果がもたらされていないというのが、客観的に見た現在の状況である。そこで本稿では、録音資料に関するこれまでの経過、並びに、最新のニュースや試みの実態を詳しく伝えるとともに、録音資料のこれからの可能性について言及する。
著者
遊間 義一 金澤 雄一郎 遊間 千秋
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.115-130, 2010-10-01
被引用文献数
2

オイルショック後の日本における少年による殺人事件の発生率に対する完全失業率の効果については,これまで十分な検討がなされていない.この間日本社会には大規模な変化が生じている.完全失業率と少年による殺人事件発生率の間に長期的に安定した関係(共和分関係)が存在したのか,あるいは,いずれかの時点で両者の関係に構造変化が生じたのであろうか.Gregory and Hansen(1996a,1996b)の残差を用いた構造変化を許容する共和分関係の検定を実施したところ,16歳と17歳の中間少年にも,18歳と19歳の年長少年にも,完全失業率と殺人事件発生率の間に安定した正の長期的関係が存在する一方,構造変化は認められないことが分かった.この結果から,完全失業率の増加は殺人発生率の増加を引き起こすことが理解できる.考察では,これらの結果の含意と,構造変化の可能性について検討した.
著者
金澤 麻由子 Mayuko KANAZAWA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2015
巻号頁・発行日
2015-11-25

四季は、日本人にとって感情を写す対象として、多くの作品に登場している。その移ろいによって心のありようまで変わっていく。本作「うつろい いろは」は、日本の風景、こころのふるさとをテーマに京都の大覚寺『大沢池』を描いた50mの絵画に、四季によって体験が異なる4場面のインタラクションを備えたメディアアート作品である。「春」では、手を上げる動きにより、そこから花のアニメーションが生成する。「夏」では、鑑賞者は神話的動物へと変身し、動物と一体となるカナダ先住民の精神世界を体験する。「秋」では、鑑賞者の動き(ジャンプ)に応じて手描きアニメーションによる動物たちが登場し、多様な生きものたちのポリフォニー(多声)が響き合う。「冬」では鑑賞者の顔が映されるインスタレーションおよび、iPhoneアプリの作品である。アプリ『ゆきんこ』をダウンロードすることで、インスタレーション作品を持ち帰るという試みに挑戦した。2014年夏に東京都現代美術館で開催した「ワンダフルワールド」展での本作の展示風景とともに制作意図、制作方法など解説する。
著者
濱口 豊太 金澤 素 福土 審
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-5, 2007 (Released:2014-07-03)
参考文献数
42

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は脳腸相関の異常が病態の中心をなす疾患群である。IBSの病態は、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常で特徴づけられる。消化管知覚過敏の発生機序の解明に、脳腸ペプチド・免疫・粘膜微小炎症による消化管機能変化・遺伝子・学習・神経可塑性・脳内神経伝達物質およびヒトの心理社会的行動などから進歩が見られる。消化管への炎症や疼痛を伴う刺激が先行刺激となって内臓知覚過敏を発生させる機序の一つとしてあげられる一方で、腹痛や腹部不快感の二次的な増悪を心理ストレスが引き起こし、そのときの消化器症状が関連づけられている可能性がある。本稿は、消化管知覚過敏が発生するメカニズムとして考えられている消化管粘膜微小炎症後の消化管知覚過敏、繰り返される大腸伸展刺激後の内臓知覚と情動変化の視点から、ヒトの心理的背景と遺伝要因について概説する。
著者
泉山 若菜 金澤 奈津美 小濱 広子 篠木 千佳 摂待 詩織 千葉 さゆり 川崎 雅志
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-30, 2015-03

異なる種類の食餌摂取の血清および肝臓脂質レベルに対する影響をラットにおいて検討した。ラットには,実験食として日本料理,西洋料理,中華料理を,ヒトが一般に摂取している食事を組み合わせてメニューとし,カロリーを等価として与えた。副睾丸脂肪組織の絶対重量は,3 食の間で有意な違いはみられなかったが,相対重量が,日本食摂取に比べて洋食摂取によって有意に増加し,中華食摂取によって増加の傾向を示した。血清トリグリセリド濃度ならびに肝臓トリグリセリド含量が,洋食摂取によって日本食摂取に比べて有意に増加し,中華食摂取に比べて増加の傾向を示した。肝臓コレステロール含量が,洋食ならびに中華食摂取によって日本食摂取に比べて有意に増加した。日本料理,西洋料理,中華料理から調製した異なる種類の食餌摂取により血清および肝臓脂質レベルに対して異なる作用がみられ,こうした異なる作用は,少なくとも一部としてそれぞれの食餌の成分組成の違いによるものであることが示唆された。食品の作用は様々な成分の栄養的多様性により現れることが考えられ,バランスのとれた食事を摂ることが重要である。
著者
下畑 享良 金澤 雅人 川村 邦雄 高橋 哲哉 西澤 正豊
出版者
日本脳循環代謝学会
雑誌
脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.93-97, 2015 (Released:2015-08-07)
参考文献数
11

要旨 脳梗塞に対するtPA を用いた血栓溶解療法は,発症から4.5 時間を超えて行った場合,脳出血を合併するリスクが高くなる.脳出血合併症を防止する治療の開発は,予後の改善と,tPA 療法の治療可能時間域の延長をもたらす可能性がある.我々は,血管リモデリングに関与する血管内皮増殖因子(VEGF)やアンギオポイエチン1(Ang1)を標的とした血管保護療法の可能性について検討し,ラット脳塞栓モデルにおいて,① VEGF 抑制薬,および②組み換えAng1 の投与が脳出血合併症を防止し,予後を改善することを明らかにした.その後,知的財産権の確保,および米国ベンチャー企業との産学連携を行い,現在,臨床試験の実現を目指している.これまでの経験から,アカデミア研究者が,創薬研究の「死の谷」を乗り越えるためには,①動物実験の質の改善,②知的財産権の確保,③産学連携の推進が重要であると考えられた.
著者
石橋 勇人 岡部 寿男 櫻井 恒正 金澤 正憲
雑誌
分散システム運用技術シンポジウム'97論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, pp.87-92, 1997-02-06

京都大学では、全学をカバーするATMネットワークであるKUINS-II/ATMを1996年3月に導入した。このATMネットワークは、総計260台のATM交換機からなる大規模なものであり、交換機間を接続する回線容量は1.8Gbpsから311Mbpsとなっている。京都大学には、すでに全学をカバーするキャンパスネットワークであるKUINSが敷設されているが、 KUINS-II/ATMの基本的な考え方は、従来からあるキャンパスネットワークを置き換えてしまうのではなく、従来のネットワークを活かしつつ、これまでにはで
著者
永井 明子 松野 昌展 葛西 一貴 網干 博文 川村 全 佐竹 隆 金澤 英作
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.232-240, 1998-08-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
16

アジア太平洋モンゴロイド集団の下顎小臼歯についてその舌側咬頭数を調べ, 出現頻度を各集団ごとに比較した。第1小臼歯については舌側1咬頭性のものが日本で54.9%と半数以上を占めており, 2咬頭性のものは41.5%であった。1咬頭性の頻度を集団ごとに比較すると, モンゴルでは68.1%と高く, ついで日本が54.9%, ミクロネシアのキリバスは51.9%, 台湾のヤミでは半数以下の44.1%, 太平洋集団のサモア, フィジー, そしてオーストラリア先住民は40%以下の低い頻度であった。2咬頭性のものはモンゴルでは29.8%と低い頻度を示すが, サモア, フィジー, オーストラリア先住民は50%以上を占めていた。第2小臼歯では舌側2咬頭性のものがどの集団でも70%以上を占めている。1咬頭性のものはモンゴル, 日本, ヤミ, キリバスでは10%以上の頻度でみられるが, サモア, フィジー, オーストラリア先住民での頻度は低い。また3咬頭性のものがフィジー, オーストラリア先住民では20%以上の頻度であった。第1小臼歯と第2小臼歯を比較すると, 第2小臼歯の方が舌側咬頭数の変異は少ない。集団間では太平洋集団で第1・第2小臼歯ともに舌側咬頭数が多いものの頻度が高いことがわかった。
著者
高橋 康人 徳増 正 藤田 真史 若尾 真治 岩下 武史 金澤 正憲
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. B, 電力・エネルギー部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. B, A publication of Power and Energy Society (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.129, no.6, pp.791-798, 2009-06-01
被引用文献数
25 5

This paper proposes novel techniques for the improvement of the convergence characteristic of step-by-step time integrations in nonlinear transient eddy-current analyses. The proposed methods, which are based on the time-periodic finite-element method and the explicit error correction method, can extract poorly-converged error components corresponding to large time constants of an analyzed system. The correction of the extracted error components accelerates the convergence of transient calculation efficiently. Furthermore, we extend the performance of the proposed methods in nonlinear problems. Some numerical results that verify the effectiveness of the proposed methods are also presented.
著者
今野 海航 園田 潤 金澤 靖 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J98-C, no.5, pp.87-95, 2015-05-01

FDTD (Finite-Difference Time-Domain)法を用いた実環境における電波環境解析を実現するために,撮影した対象環境中の物体までの距離情報が直接得られる深度センサと,三次元点群処理のライブラリであるPCL (Point Cloud Library)による三次元復元技術を応用した実環境FDTD数値モデル構築システムを開発する.本システムは,(1)深度センサで測定された距離情報からPCLにより深度センサを基準にした相対座標を取得し,(2)得られた相対座標と対象環境中の基準平面から深度センサの傾き角を算出することで対象環境中の水平垂直面を基準にした絶対座標を計算し,(3)ポイントクラウドデータが存在する三次元セル上に電気定数を与えることでFDTD数値モデルを構築するものである.本論文では,実際に室内二つの対象環境でFDTD数値モデルを構築し,三次元座標の精度や処理時間を評価している.
著者
金澤 光
出版者
埼玉県水産試験場
巻号頁・発行日
no.57, pp.40-42, 1999 (Released:2011-03-05)
著者
金澤 清恵
出版者
成城大学
雑誌
成城美学美術史 (ISSN:13405861)
巻号頁・発行日
no.17, pp.49-69, 2012-03

Georges ROUAULT (1871-1958) was a French artist who became famous in the first half of the 20th century, such as Picasso and Matisse. He participated in Salon d'Automne, and changed his style, with a dynamic touch, arranging the original colors and dark colors in the influence of his teacher, Gustave Moreau. He continued to paint the same subjects, circus clowns, prostitutes, judges, religious scenes, and the anger and sorrow of social injustice. Indeed, such creative activity is similar to Fauvism, but Rouault is considered to be an expressionist with a spiritual mind. In Japan, he was introduced by some artists and critics in the 1920s, such as Jutaro KURODA, Katsuzo SATOMI. This introduction is later than other Impressionists and Post-Impressionists, but he was popular among many Japanese artists and connoisseurs in an instant by the collection of Shigetaro FUKUSHIMA. His collection was introduced in an article of Bijyutsu-Shinron in 1929 and exhibited in Tokyo in 1934. Parts of his collection were lost, but some works are stored at the Bridgestone Museum, the Shiodome Museum and so on. I have outlined the details of Rouault's introduction, among others reception in Japan from the 1920s to the present.Georges ROUAULT (1871-1958) was a French artist who became famous in the first half of the 20th century, such as Picasso and Matisse. He participated in Salon d'Automne, and changed his style, with a dynamic touch, arranging the original colors and dark colors in the influence of his teacher, Gustave Moreau. He continued to paint the same subjects, circus clowns, prostitutes, judges, religious scenes, and the anger and sorrow of social injustice. Indeed, such creative activity is similar to Fauvism, but Rouault is considered to be an expressionist with a spiritual mind. In Japan, he was introduced by some artists and critics in the 1920s, such as Jutaro KURODA, Katsuzo SATOMI. This introduction is later than other Impressionists and Post-Impressionists, but he was popular among many Japanese artists and connoisseurs in an instant by the collection of Shigetaro FUKUSHIMA. His collection was introduced in an article of Bijyutsu-Shinron in 1929 and exhibited in Tokyo in 1934. Parts of his collection were lost, but some works are stored at the Bridgestone Museum, the Shiodome Museum and so on. I have outlined the details of Rouault's introduction, among others reception in Japan from the 1920s to the present.