著者
坂上 裕子 金丸 智美 武田(六角) 洋子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.368-378, 2016

<p>本研究では,幼児期前半における自己の発達の遅延を示唆する証左が近年提出されていることに鑑み,2歳代の自己の発達の一指標として従順行動,不従順行動を取り上げ,その経年変化を検討した。2004・2005年度(I期)の2歳児111名,2010・2011年度(II期)の2歳児95名を対象に,母子での自由遊び後の玩具の片付け場面における行動を観察し,分析を行った。その結果,片付けを要請したストレンジャーに対して拒否を示した子どもの割合は,I期よりもII期において低かった。また,母子での片付け場面では,II期の子どもの方が母親に対して従順な行動をより多く示し,反抗や拒否を示した子どもの割合は,I期よりもII期で低かった。これより,自己と他者の意図の違いを意識化し,自身の意志を明示するという点において,最近の幼児の自己の発達には遅延が生じている可能性があることが示唆された。子どもの従順行動,不従順行動の経年変化の背景には,自己の発達を支える子どもの他の行動面での変化や親の対応の変化,親子を取り巻く環境の急速な変化がある可能性を指摘し,考察を行った。</p>
著者
金築 忠雄
出版者
島根農科大学
雑誌
島根農科大学研究報告 B 人文科学・社会科学・外国語・保健体育・教職教養 (ISSN:05598311)
巻号頁・発行日
no.7, 1959-07

国民の総意によつて,教育理想を明示したわが国教育史上画期的な法律である教育基本法は,昭和二十二年制定された。同法第一条に,教育目的をかかげているが、その前文には,民主的で文化的な国家を建設し,世界の平和と人類の福祉に貢献し幸うとの決意を述べ,その理想の達成は教育の力にまつべきであるとし,個人の尊厳を重んじ,真理と平和を希釆する人間の育成,普遍的にして個性的な文化の創造をめざす教育を期すると述べている。まことに美しい言葉の羅列である。このように美しい表現を,単なる1ip serviceにおわらせないために,基本法の正しい理解を必要とするであろう。ところが,これは案外むずかしいことである。まず考えられるのは,、条文の成立過程をせんさくすることだが,それには条文作成という切実な要求をみたそうとした結果,原理的な検討の不足が目立つように思われる。それよりも,そのような形で表明されている社会的要求を,もっと広い世界的視野において,教育文化史を背景として見ることが,より深い実質的な理解をするために大切であると思う。13; 教育目的論は,ある学者にとつては,恒常的普遍的な窮局目的論を意味し,他の学者には,歴史的社会的条件に左右される特殊な目的論と考えられる。前稿において,教育学におけるさまざまな学的態度について述べたが,教育目的についても,世界観的基礎が問われねばならず,さまざまな世界観に対応する教育目的論が可能であると私は考えている。本論は,窮局には,現にわれわれが掲げている教育目的の思想的系譜を明らかにしようとするものである。今日の教育が,特にアメリカの影響を強く受けている事情から,当然,アメリカの教育思潮を辿る必要があるが、同じ動機から,アメリカの教育思潮を追究したものは,甚だ多い。急ぎすぎた概括論になりそうだが,わたくしも、わたくしなりに事態を消化し,問題点を発見し,それらに適当な位置を与えておいて,一層の前進のための青写真にしたい。
著者
金井 寛
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.140-146, 1982-06-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
41
被引用文献数
1
著者
田中 一広 玉城 一 大久保 宏貴 赤嶺 良幸 大城 義竹 屋良 哲也 外間 浩 仲宗根 朝洋 金谷 文則
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.562-565, 2007-09-25
被引用文献数
1 1

比較的まれな特発性一過性大腿骨頭萎縮症の3例を経験したので報告する.【症例1】44歳男性.2週間前ジョギング後より左股関節痛出現,MRIより特発性一過性大腿骨頭萎縮症(以下TOH)と診断された.免荷とし外来にて経過観察していったところ6週後から疼痛は消失,3カ月後のMRIでは異常信号は認められなかった.【症例2】35歳女性.妊娠30週ころより右股関節痛出現,出産後当科外来受診した.MRIにてTOHの診断に至り現在免荷にて外来通院中である.【症例3】32歳男性.1カ月前より右股関節に荷重時疼痛認められ,近医にて加療を受けていたが,症状改善せず当科紹介受診した.可動時痛は認められなかった.MRIによりTOHの診断に至り,外来にて経過観察中である.
著者
金 恩一 藤井 英二郎 安藤 敏夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.139-144, 1994-03-31
被引用文献数
3 6

緑地の視覚心理的効果を明らかにするため,植物の視覚的要素の一つである色彩に着目し,それと眼球運動,脳波との関係について検討した。視覚対象としては,ペチュニアの6品種(紫,赤,ピンク,サーモンピンク,黄,白)と花のないペチュニアそれぞれを面的に広がる形で被験者の前に提示し,そのときの眼球運動をトークアイで,脳波を脳波計によって測定した。その結果,眼球運動と脳波の間にある種の関連性をみることができた。また,既報の色布を用いた実験と比較した結果,男女差については緑色を除いて他の色では類似した傾向を得ることができた。
著者
金 恩一 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.141-144, 1995-03-31
被引用文献数
4 6

植物の色彩が人間に与える生理・心理的効果を検討するため,ペチュニアの6品種(紫,赤,ピンク,サーモンピンク,黄,白)と花のないペチュニアを対象に脳波,血圧を測定した。さらに,それらとアンケート調査結果との関連性を検討した。また,これとほぼ同じ被験者によって進めているスギ林と満開状態のソメイヨシノ林(花の色はピンク)における同様の検討との比較も行った。その結果,ペチュニアの緑とピンクにおいてみられた結果と,スギ林とソメイヨシノ林の間でみられた結果には,類似した傾向がみられたことから,それらに対する印象評価とβ波が多く発生する部位との間には関連性があるものと考えられる。
著者
吉益 光一 大賀 英史 加賀谷 亮 北林 蒔子 金谷 由希
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.27-36, 2012 (Released:2012-03-07)
参考文献数
32
被引用文献数
1 3

Psychological approaches such as mindfulness-based stress reduction or mindfulness-based cognitive therapy could be effective for relieving a wide range of psychosocial stresses or frictions between parents and children. Several interventional approaches based on mindfulness have been shown to be useful for improving parent-child relationships not only among healthy families but also among those with difficult psychopathologies. Particularly in the relationships of parents with their children with developmental disorders such as autism or attention-deficit/hyperactivity disorders, these approaches may play an important role in that the motivations of both parents and children could be enhanced because they can actually feel that their mental condition improves through meaningful parent-child interactions that they experience in their daily lives. These approaches are also expected to improve communications between mothers and children through the development of a finely honed sensitivity. One practical example is shown for the mental growth of children by the mindfulness-based dietary education and the secondary effects of this education on the parents. We can also apply these effective methods to the improvement of general interpersonal relationships.
著者
金丸 英子 カナマル エイコ KANAMARU Eiko
出版者
西南学院
雑誌
西南学院史紀要
巻号頁・発行日
no.6, pp.49-59, 2015-05

アサ会は、1930年代、独立伝道者であった田中遵聖(たなか・じゅんせい、本名種助[1886-1958]、以後田中)によって始められたキリスト教運動で、現在の日本バプテスト連盟の前身にあたる日本浸礼派教会西部組合(以後西部組合)に大きな衝撃を与えた。西部組合とは、当時九州に点在していた南部バプテストの流れを汲む諸教会が伝道協力のために組織した団体である。アサ会の存在は、いわゆる「アサ会事件」として教会関係者の間で憶えられているが、その影響は実に西南学院にまで及び、第三代院長G.W.ボールデン(以後ボールデン)の解任を惹き起こした。これについて『西南学院七十年史』は「院長となったボールデンを決定的な窮地に追いこんだのは、『アサ会』事件である」と記し、ボールデンの院長辞任をアサ会との関係で伝えている(『西南学院七十年史』上巻612頁)。本学神学部卒業生のバプテスト史研究者枝光泉は、この「アサ会事件」を「1930年代の初頭にあって、『一教会の独立を認め、他の誰にも干渉されない(バプテスト派の)原則』からは離れていた西部組合が、ミッション依存の体質から抜け出し、歩み出そうとしたときに起った象徴的出来事」と説明している(『宣教の先駆者たち』、240頁)。枝光が指摘するように、「アサ会事件」が優れて教会関係の出来事であるならば、なぜそれが西南学院院長の辞職と結び付けて語られるのだろうか。アサ会に関する研究は、ほとんどなされていないと言っても過言ではない。関連文献も皆無に等しい。強いて挙げれば、田中の息子である直木賞作家田中小実昌(1925-2000)が、『アメン父』で田中とアサ会についてノンフィクション風にその様子を伝えている(因みに、小実昌はこの本で1979年の谷崎潤一郎賞を受賞した)。研究文献に値するものとしては、辛うじて、『日本バプテスト連盟史1889‐1959』(日本バプテスト連盟)、『西南学院七十年史』、枝光の『宣教の先駆者たち』(ヨルダン社、2001年)のみであろう。特に枝光の研究は、現存する唯一の邦文学術研究として貴重である。本稿ではこれら文献から学びつつ、ボールデンの自叙伝(英文、未刊行)、複数の宣教師による活動報告、個人書簡、日記、当時の高等学部教員波多野培根が残した文書を用いて、ボールデンの院長解任から見えてくる西南学院とアサ会の関係を探り、そこから透けて見える学院史の一端を見てみたい。
著者
神永 建二 武田 直樹 片貝 昭史 村田 義直 金岡 護 高橋 憲司
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.92-100, 1996-12-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
8

To evaluate the suitability of the DC withstand test for use as the after-laying test for extrahigh-voltage XLPE cable lines, especially 500-kV XLPE cable lines, we studied the effectiveness of the DC withstand test and the influence of DC voltage application on AC insulating performance, using XLPE cables with artificial defects. DC breakdown strength of the cable with defects does not decrease radically compared with AC breakdown strength due to space charge effects. The defects that are detected by the AC withstand test might not be detected by the DC withstand test and short-circuited trees may appear at earthing after the DC withstand test, degrading the AC insulating performance. The DC withstand test should therefore not be used as the after-laying test for 500-kV XLPE cable lines.
著者
木村 哲也 田村 淳一 渡部 諭 金田 憲明 吉楽 雅典
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2002, 2002

新潟県では2003年にジャパンオープンが開催される。これを契機に県内の幅広い層(高校, 大学等)からのロボカップ 参加を積極的に奨励して, 長期的なロボット教育, 開発の活性化を目指している。しかし, ロボカップる。そこで新潟県では産官学が一体となり, 手軽に, 安価に多くのチームが参加できるよう標準機の作成を試みた。ここでは, その取り組みを報告する。
著者
木下 一雄 伊東 知佳 中島 卓三 吉田 啓晃 金子 友里 樋口 謙次 中山 恭秀 大谷 卓也 安保 雅博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb1369, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 我々はこれまで後方進入法による人工股関節全置換術(THA)後の長座位および端座位における靴下着脱動作に関する研究を行ってきた。その先行研究においては靴下着脱能力と関係のある股関節屈曲、外転、外旋可動域、踵引き寄せ距離や体幹の前屈可動性の検討を重ねてきた。しかし、靴下着脱動作は四肢、体幹の複合的な関節運動であるため、少なからず罹患側の状態や術歴、加齢による関節可動域の低下などの影響を受けると考えられる。そこで本研究では、退院時の靴下着脱動作に関与する体幹および股関節可動域以外の因子を検討し、術後指導の一助とすることを目的とした。【方法】 対象は2010年の4月から2011年8月に本学附属病院にてTHAを施行した228例234股(男性54例、女性174例 平均年齢64.2±10.9歳)である。疾患の内訳は変形性股関節症192例、大腿骨頭壊死36例である。調査項目は年齢、身長、体重、罹患側(片側か両側)、術歴(初回THAか再置換)、術前の靴下着脱の可否、足関節背屈制限の有無、膝関節屈曲制限の有無をカルテより後方視的に収集した。術前の靴下着脱の可否の条件は長座位または端座位にて背もたれを使用せずに着脱可能な場合を可能とし、不可能をそれ以外の者とした。足関節背屈、膝関節屈曲可動域は標準可動域未満を制限ありとした。統計学的処理はロジスティック回帰分析を用いて目的変数を退院時における長座位または端座位での靴下着脱の可否とし、説明変数を年齢、BMI、罹患側(片側か両側)、術歴(初回THAか再置換)、術前の靴下着脱の可否とした。有意水準はいずれも危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究においてはヘルシンキ宣言に基づき、患者への説明と同意を得た上で測定を行った。測定データをカルテより後方視的に収集し、個人名が特定できないようにデータ処理した。【結果】 まず、長座位では、退院時の靴下着脱可能群は130例、不可能群は114例であった。可能群の平均年齢は62.8±10.6歳、不可能群は65.7±10.9歳であり、可能群の平均BMIは23.4±4.0、不可能群は24.1±3.8であった。可能群の罹患側は、片側70例、両側60例、不可能群は片側例、両側例は各57例であり、術歴は可能群の初回THAは102例、再置換は28例、不可能群の初回THAは101例、再置換は13例であった。術前の靴下着脱の可否は、可能群のうち術前着脱可能な者は74例、術前着脱不可能が56例であり、不可能群のうち術前着脱可能な者は24例、不可能な者は90例であった。また、可能群の足関節背屈制限は4例、不可能群は3例であり、可能群の膝関節屈曲制限は3例、不可能群は15例であった。一方、端座位では、退院時の靴下着脱可能群は110例、不可能群は134例であった。平均年齢は可能群62.2±10.9歳、不可能群65.8±10.7歳、可能群の平均BMIは23.2±4.1、不可能群は24.1±3.6であった。罹患側に関しては、可能群の片側59例、両側51例、不可能群は片側69例、両側65例であった。術歴に関しては可能群の初回THAは84例、再置換は26例、不可能群では初回THAは112例、再置換は22例であった。術前の靴下着脱の可否に関しては、可能群では79例が術前の着脱が可能、31例が着脱不可能であり、不可能群は術前の着脱可能な者は34例、不可能な者は100例であった。可能群の足関節背屈制限は3例、不可能群は4例であり、可能群の膝関節屈曲制限は2例、不可能群は16例であった。統計処理の結果、長座位での靴下着脱因子は術前の靴下着脱の可否が抽出され、端座位での靴下着脱因子には術前の靴下着脱の可否と年齢が抽出された。(p<0.01)。【考察】 本研究においては退院時における靴下着脱動作に関与する体幹および股関節可動域以外の因子を検討した。先行研究では本研究と同様に術前の着脱の可否が術後の可否に関与しているという報告があるが、いずれも症例数が少ない研究であった。本研究の結果より術前の着脱の可否は術後早期における着脱の可否に関与しており、術前患者指導の必要性を示唆するものである。端座位着脱における年齢の影響に関しては、加齢または長期の疾病期間に伴う関節可動域の低下、あるいは着脱時の筋力的な要因が考えられる。今後は症例数を増やして詳細な因子分析を行いながら、縦断的な検討も加えていきたい。【理学療法学研究としての意義】 THAを施行する症例は術前より手を足先に伸ばすような生活動作が制限され、術後もその制限は残存することが多い。本研究により靴下着脱動作に関与する因子を明らかにすることで術前後の患者指導の効率化や質の向上が図られると考える。
著者
金 榮哲
巻号頁・発行日
1998

筑波大学博士 (文学) 学位論文・平成10年2月28日授与 (乙第1354号)