著者
石黒 聡士 鈴木 康弘 杉村 俊郎 佐野 滋樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.76, 2007

<BR>1.はじめに<br> スマトラ沖地震に代表されるような大規模災害の直後には、迅速な状況把握が必要である。しかし、特に災害前の状況と災害直後の状況を把握できるデータは、通常限定される。その中で、高解像度衛星による画像は、広範囲にわたって均質で定量的な解析が可能である。特に、高解像度衛星によって撮影されるステレオペアの3次元計測によって、高精度に標高を計測できることが報告されている。このため、高解像度衛星画像は、地震性地殻変動量の計測など、変動地形解析において有効であることが期待される。<br> そこで本研究では、2004年スマトラ沖地震の直後に撮影されたIKONOSとQuickBirdによる単画像を複合して用い、地震性隆起量を計測する。また、異種の高解像度衛星画像を複合させる手法の有効性について論じる。<br><BR>2.IKONOSとQuickBirdを複合させた地震性地殻変動計測 <br> 2004年スマトラ沖地震の直後に撮影されたIKONOS(解像度1m)とQuickBird(同0.6m)による単画像を組み合わせて、地震時のAndaman諸島北西部における地震性地殻変動計測を行った。この地域では地震時に隆起が起きたことが報告されている。しかし、地震後の短期間に再び沈降する余効変動が観測されているため、地震直後における最大隆起量を計測することは、これまで困難であった。<br> 我々はまず、地震後15日目に撮影されたIKONOS画像と、9日目に撮影されたQuickBirdの画像を用いてステレオ計測し、隆起によって干上がった裾礁のDSMを作成した。このDSMの精度は、標準偏差で0.7m程度であった。<br> 次に、このDSMに、地震前に撮影されたQuickBird画像に写っている汀線をGIS上で重ねあわせ、旧汀線の地震直後の高度を計測した。この結果、Andaman諸島北西岸では、スマトラ地震後の10日前後では2.15m(±0.7m)隆起していたことを明らかにすることができた。<br><BR>3.異種の高解像度衛星画像を複合させる手法の有効性<br> 災害の発生直後において入手可能な衛星画像は、1.災害前に撮影された単画像、2.災害発生後に複数の衛星が集中的に繰り返し撮影した画像である。災害発生直後には需要が高まるため、各社の衛星による撮影頻度が急激に増加する。右図に、Andaman諸島において、スマトラ沖地震前後で新規に撮影されたQuickBird画像のアーカイブ総数の増加を示した。ただし、2の画像でも、ステレオ撮影は特別なリクエストがない限り撮影されない。実際に、図に示した例でも、この期間中にQuickBirdによるステレオ撮影は一度もなされなかった。<br> このような背景の中、災害直後の緊急調査においては、入手可能なデータを最大限に活用し、有意な情報を引き出すことが求められる。2の画像を使用するメリットは、各社の異なる種類の衛星が様々な角度から撮影しているため、これらを複合することでステレオペアを作成でき、従って地形モデルを作成できることである。さらに、短期間に繰り返し撮影されているために、比較的高頻度で時間的変化を把握できる。一方、1の画像は頻繁に撮影されていないため、ステレオペアの作成は多くの場合で不可能である。しかし、地殻変動前の汀線の位置など、地殻変動量の計測の際に基準となる地理的事象を把握することができる。<br> 上述の2の画像を用いて合成したステレオペアから作成した地震後の地形モデルに、1の画像から読み取った汀線などの地理的事象を重ねあわせて比較することで、地震性隆起量の計測が可能である。さらに、2の画像が頻繁に撮影されることを利用すれば、2の画像からも地理的事象を読み取ることで、地震後の余効変動による沈降量を、複数の時点で計測できる。<br> 以上のように、異種の衛星画像を複合させることが、地震性地殻変動の計測に有効であることを示した。しかし、本手法では1の画像を用いて地震前の地形モデルを作成できないため、沈降域において地震性沈降量を計測することができない。また、局所的に高い精度でDSMの作成が可能である一方で、絶対的な位置の精度は衛星の定位モデルに依存する。このため、たとえば他のソースから作成されたDSMの差し引きは、単純には行うことができないことなどが、本手法の限界として挙げられる。<br>
著者
鈴木 康夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.1897-1904, 2010-12-05
参考文献数
23
被引用文献数
2

抗生物質投与後に菌交代現象によって各種腸炎が引きおこされる.抗生物質起因性腸炎として,<i>Clostridium difficile</i>関連性腸炎,急性出血性大腸炎,そしてMRSA腸炎がある.急性出血性大腸炎は,比較的若年の女性に生じる特徴を有し,原因となる抗生物質を中止することにより比較的速やかに症状は改善し予後は良好である.偽膜性大腸炎を典型像とする<i>Clostridium difficile</i>関連性腸炎は,抗生物質投与後の菌交代現象によって感染した毒素産生株<i>Clostridium difficile</i>の増殖により発症する.MRSA腸炎は抗生物質投与後の菌交代現象により既感染MRSAが増殖し,腸管感染し発症する.ともに重篤な基礎疾患を有し長期入院中の高齢者に発生しやすい特徴を有し,発症後重篤な経過を辿る恐れがあり速やかな対応が必要である.<br>
著者
鈴木 康博
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.400, pp.24-26, 2015-10

──今年はオフコースのデビューから何と45年目だそうですね。 少し前までは「あっという間だったな」と思ってましたけど、45年の間には本当にいろんなことがあったので、改めて振り返ると「長かったなあ」という感…
著者
澤 祥 坂上 寛之 隈元 崇 渡辺 満久 鈴木 康弘 田力 正好 谷口 薫 廣内 大助 松多 信尚 安藤 俊人 佐藤 善輝 石黒 聡士 内田 主税
出版者
Japanese Society for Active Fault Studies
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.26, pp.121-136, 2006

We conducted a tectonic geomorphological survey along the northern part of the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line (ISTL) with support from the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology of Japan as one of the intensive survey on ISTL fault system. This survey aims to clarify the detailed distribution of the slip rates of this fault system, which provides the essential data set to predict the coseismic behavior and to estimate the strong ground motion simulation. In order to achieve this purpose, the active fault traces are newly mapped along the northern part of the ISTL through interpretations of aerial photographs archived in the 1940s and 1960s at scales of 1: 10,000 and 1: 20,000, respectively. This aerial photo analysis was also supplemented and reinforced by field observations.<BR>One of the remarkable results by using this data set is a large number of, here 84, photogrammetrically measured landform transections to quantify the tectonic deformations. We could calculate vertical slip rates of the faults at 74 points, based on the estimated ages of terraces (H: 120 kyrs, M: 50-100 kyrs, Ll: 10-20 kyrs, L2: 4-7 kyrs, L3: 1-2 kyrs). The vertical slip rates distributed in the northern part of the study area show 0.2-5.5 mm/yr on the L terraces (less than 20 kyrs) and 0.05-0.9 mm/yr on the M and H terraces (more than 50 kyrs). The vertical slip rates of the faults located in the central and southern part of the study area are 0.2-3.1 mm/yr.
著者
鈴木 康平 松縄 正登
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.123-133, 2013

By the development of the information-oriented society, it became very easy even for beginners to make collages out of photographs by means of computer software. In old days, those photograph collages could be simply distinguished from true photographs because the photograph collages was made by hand. However, it became very difficult to differentiate the true photograph from the photograph collage by digital Image processing. And then, that kind of collage has many problems concerning copyrights or social ethics etc. On the other hand, the photograph collages seem to be accepted as one of the art technique in the recent photograph world. We show three solutions. First, limit of the copyright use by having All rights reserved or not. Second, the detective technique of an unjust reproduction and modification develops. Third, media literacy education is strengthened.
著者
廣島 拓也 杉山 真理 武川 真弓 清宮 清美 鈴木 康子 河合 俊宏
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-29, 2015 (Released:2015-01-09)
参考文献数
5

【はじめに】車椅子処方の際の座位評価において,左右の坐骨の高低差を数値で表現することは困難である。本報では,左右の坐骨の高低差を,股関節屈曲角度または上前腸骨棘(ASIS)傾斜角度から,推測可能か検証した。【方法】対象は股関節屈曲角度の片側が90度以上(健側)で,対側が90度未満(患側)の,脊柱側弯のない12名とした。両側の股関節屈曲角度と坐骨間距離,ASIS間距離を計測した。測定姿勢は,足底を床に接地させ,骨盤前後傾中間位,健側膝関節90度屈曲位,健側腓骨が鉛直となる姿勢とした。ASISの傾斜角度と坐骨傾斜角度は,臀部の陰性モデルを作成し測定した。坐骨高低差とASIS高低差を算出し,坐骨高低差を従属変数,患側股関節屈曲角度・ASIS高低差を独立変数とした単回帰分析により回帰式を算出し,検討した。【結果】回帰式は[坐骨高低差=-0.276×患側股関節屈曲角度+28.146](回帰係数p=0.01)と,[坐骨高低差=0.261×ASIS高低差+4.469](回帰係数p=0.96)が算出された。【結論】股関節屈曲角度に左右差のあるものに対して,患側股関節屈曲角度から坐骨の高低差が推定可能であることが示唆された。身体機能評価に基づいた車椅子処方の一助となると考えられる。
著者
本間 憲治 八反田 葉月 篠原 悠人 鈴木 康太 杉原 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,脳血管疾患(以下,CVA)死亡数は減少傾向にあるが,要介護状態となる主原因疾患とされている。一方,心不全(以下,HF)は高齢化に伴い患者数は増加傾向にあり,今後はCVAとHFなど重複障害例の増加が予想される。</p><p></p><p>当院は脳神経外科に加えて循環器科,心臓血管外科を併設した141床の一般病院で,回復期病棟も併設しており,急性期から在宅まで一貫したリハビリテーションを提供している。当院の地域は脳卒中地域連携パスによる医療連携が積極的に行われており,生活期との連携については,退院時の申し送りを中心に行っている。</p><p></p><p>そこで今回,CVAとHFの重複障害例の申し送り内容に特徴がないか後方視的に検討する事を目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象はH26年9月からH28年9月に当院回復期病棟から自宅退院したCVA症例中,退院前に申し送りを行った者110例とし,既往にHF及び入院中にHFを併発したHFあり群29例とHFなし群81例の2群に分類し,申し送り書の内容について比較検討した。</p><p></p><p>分析方法は退院時申し送り書より抽出した年齢,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIMの2群間比較には対応のないt検定,性別,高次脳機能障害,及び認知機能の低下の有無の2群間比較にはχ二乗検定を用い有意水準を5%未満とした。また,退院時申し送り書の項目より,「予想される問題点」と「依頼事項」の記述内容を,計量テキスト分析ソフト「KH-Coder」を使用し,2群の上記各項目に対し共起ネットワーク分析(サブグラフ検出・媒介)を用いjaccard係数を0.2以上とした。共起ネットワーク抽出語数,線の数,グループ数を抽出した。なお,共起ネットワークとは,テキスト中の単語間の出現パターンが類似したものを線で結んだ図で,結びつきの強さをjaccard係数で表している。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>年齢,性別,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIM,高次脳機能障害の有無,認知面低下の有無の全てにおいて,両群で有意差を認めなかった。「予想される問題点」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり32,HFなし98,線の数はHFあり46,HFなし77,グループ数はHFあり8,HFなし11で,HFありで全てにおいて少なかった。「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり41,HFなし126,線の数はHFあり73,HFなし117,グループ数はHFあり12,HFなし11で,HFありでグループ数を除き少なかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>「予想される問題点」「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数,線の数はそれぞれHFありで少なく,障害が重複し,問題点の細分化が難しく,抽象的で個別性の低い内容となる傾向が示唆された。</p><p></p><p>HFありでは「予想される問題点」に比べ「依頼事項」のグループ数は増加しており,HFありの抽象的で個別性の低い内容から具体的な依頼事項を絞り込むことが困難なため,依頼事項が散在化した可能性が示唆された。</p><p></p><p>今後の展望として,重複障害例の申し送り時には身体活動の増加や予防を目的とした個別性の高い内容を伝え,生活期との連携を行いたいと考える。</p>
著者
今泉 有美子 杉原 俊一 鈴木 康太 市場 友梨 八反田 葉月 本間 憲治 篠原 悠人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺者において,一時的な移動手段として車いすを利用することは多い。その際,非麻痺側上肢ではハンドリムを回し,下肢では床面を蹴り駆動するため,非対称な動作を助長している場面を多く経験する。片麻痺者の車いす座位について,先行研究では殿部荷重パターンの報告は散見されるが,車いす駆動中の座圧の変化について言及している報告は少ない。本研究の目的は,健常成人にて片麻痺患者を模した環境を設定して片手片脚駆動を実施し,前額面上で座位姿勢の影響を明らかにすることである。【方法】対象は健常成人6名(性別:男性3名・女性3名,年齢:25.7±0.8歳)とした。計測にはモジュラー車いす(松下電工株式会社製)を使用し,前座高は下腿長+2cm,後座高・フットサポートの長さは下腿長,アームサポートの高さは肘頭高+2cmに調整した。課題は右上下肢での片手片脚駆動による直進走行とし,座クッションを外したシートの上にベニヤ板を水平に設置(以下,水平条件),ベニヤ板を右側が高くなるよう5°傾斜させて設置(以下,傾斜条件),座面の中心がたわむように調整した張り調整シートのみ(以下,たわみ条件)の3条件で,10秒間の安静座位を保持した後,任意のスピードで5メートル駆動するよう指示した。計測項目は,静止状態からの座圧中心の変化と,体幹の前額面上での傾斜角度とした。座圧中心には,3条件の座面にSRソフトビジョン数値版(東海ゴム工業製)を設置して測定した。体幹の傾斜角度は,胸骨部の高さで巻きつけた加速度センサーと,デジタルビデオカメラで撮影した正面画像から,両肩峰を結んだ線と水平面のなす角をImage Jを使用して測定した値を使用した。分析方法としては,右手でハンドリムを掴んだ瞬間からハンドリムから手を放した瞬間までを1駆動周期とし,1駆動周期中と安静状態の座圧中心の差の平均値と,1駆動周期の駆動開始時と駆動終了時の体幹傾斜角度の差(以下,体幹傾斜角度の変化)の平均値を各条件で比較した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究の実施にあたり,被験者に研究の趣旨と測定の方法について説明を行い,協力の同意を得た後に測定を行った。【結果】座圧中心の安静状態と1駆動周期中の差の平均は,水平条件で右方向へ6.9±2.2mm,傾斜条件で右方向へ9.6±2.2mm,たわみ条件で右方向へ3.5±1.0mmであり,傾斜条件で駆動側への偏倚が大きく,たわみ条件では小さかった。加速度センサーで測定した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右方向へ0.5±2.8°,傾斜条件で右方向へ1.1±1.0°,たわみ条件で左方向へ1.1±1.2°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では駆動側と反対側への傾斜がみられた。画像から計測した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右へ10.1±0.7°,傾斜条件で右へ11.7±1.0°,たわみ条件で右へ8.0±1.5°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では小さかった。【考察】水平条件と傾斜条件では,駆動中の座圧中心の駆動側への偏倚,体幹の駆動側への傾斜を認め,いずれも傾斜条件で大きかった。健常者であっても,片手片脚駆動では体幹の前額面上での非対称性が生じると考えられた。また,傾斜条件は片麻痺者に見られる麻痺側股関節周囲筋の筋緊張低下や股関節外旋などによる骨盤の麻痺側への傾斜を模擬的に設定していることから,片麻痺者の片手片脚駆動では,骨盤の傾斜角度により体幹の非対称性が増強することが示唆された。今回たわみ条件では,座圧中心の偏倚と体幹傾斜角度ともに他の2条件に比べ小さかった。座面がたわんでいる環境では,駆動方向の重心移動が困難であることが考えられた。【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺者では,将来的に歩行を獲得する場合においても一時的に車いすを移動手段として利用する症例は多い。歩行獲得に向けて理学療法を進めていく上でも,車いす駆動中の身体の非対称性を軽減していくことは重要であると考えられる。車いすの片手片脚駆動での体幹の非対称性を明らかにすることで,車いす駆動の指導方法を検討する一助となると考えられる。
著者
杉原 俊一 鈴木 康太 八反田 葉月 松村 亮 三浦 いずみ 田中 敏明 加藤 士雄 棚橋 嘉美 宮坂 智哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】今後の介護予防・日常生活支援総合事業では,元気な高齢者と二次予防事業対象者を分け隔てることなく,高齢者のニーズに応じた介護予防の取り組みが求められ,リハビリテーション専門職(以下リハ職)による互助活動を支援する仕組み作りが重要となる。そこで本研究では,二次予防事業終了者の自主体操グループにアセスメント訪問を実施し,今後の互助活動のリハ専門職の関与について検討することを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は,T区地域包括支援センターが後方支援している自主体操グループ参加者のうち(10グループ),リハ職によるアセスメントを実施した4グループ28名(平均年齢76.4±6.1歳,69~86歳)とした。調査項目は生活空間の評価としてLife space assessment(LSA),日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J,cut-off値26点),ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性膝伸展筋力の体重比(下肢筋力),Timed Up And Go Test(TUG),開眼片脚立位時間(片脚立位),CS-30とした。更に携帯型加速度計(AYUMIEYE,GE社製)により,垂直・側方・前後方向の体幹部の加速度の二条平均平方根(root mean square,以下RMS)を算出し,RMSを歩行速度の二乗値で除して正規化した後,TUG,片脚立位,CS-30との各指標の関連性についてピアソンの相関係数を求め,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】LSAは70.5±26.7点,MoCA-Jは20.7±4.4点,下肢筋力は31.9±12.4%BW,TUGは7.1±1.6秒,片脚立位は17.8±9.6秒,CS-30は16.5±4.2回で,MoCA-Jでは参加者の86%が,下肢筋力及び片脚立位では50%以上が転倒リスクのcut-off値以下であった。加速度との関連性は前後方向のRMSで相関を認めず,上下及び左右方向のRMSでTUG,CS-30,片脚立位時間で有意な相関を示した。</p><p></p><p></p><p>【考察】対象者の多くがMoCA-JによるMCIのスクリーニングでcut-off値以下を示し,生活機能において多面的な低下が危惧されることから,MCIの早期発見に向けたリハ職による関与の必要性が示唆された。LSAの結果より町内レベルの外出を行う対象者を含む場合,TUGやCS-30のみでは,転倒スクリーニングは困難な可能性が考えられた。一方,TUG等の各評価指標と歩行加速度については関連性を認めており,多様な参加者のアセスメントには,鋭敏に転倒リスクを捉えうる可能性がある加速度歩行指標の組み合わせが必要と考えられる。</p><p></p><p></p><p>【理学療法の意義】リハ専門職による互助活動の包括的な訪問アセスメントによる介護予防データの蓄積により,各地域における介護予防のスクリーニング法の確立に繋がる可能性がある。</p>
著者
鈴木 康文 丸山 仁司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0901, 2004

【目的】<BR> 筋肉系は持続的な運動負荷によって、筋細胞と関節や筋の結合組織の発達が促進される。その結果、筋の太さ、横断面積が増大し、最大筋力の増加をもたらす。そして、筋肉内毛細血管の増加をきたさせ、筋肉に対する循環血液量を増大させる。このことから、最大筋力が高ければ筋肉内毛細血管数は多く血液供給能力が高いと推定でき、自転車エルゴメーターのペダル踏み運動などで漸増負荷運動を行なわせると、最大筋力が高いほど相対心拍数における仕事率が大きいと考えられる。そこで、本研究では自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷運動を行い、目標心拍数(心拍数の増加率50%)に至ったときの作業強度(PWC <SUB>HR50%</SUB>)を測定し、PWC <SUB>HR50%</SUB>に影響を及ぼしている因子について検討した。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は地域情報誌にて体力測定の参加を募集し、体力測定によって悪化が予想される内科的・整形外科的問題がないと医師に判断された60歳以上の中高齢者11名(平均年齢71.9±4.2歳)とした。PWC <SUB>HR50%</SUB>と下肢筋力、酸素運搬能力との関係を検討するために、PWC <SUB>HR50%</SUB>と膝伸筋群の60deg/secにおける最大トルク、赤血球数およびヘモグロビン量とについてPearsonの相関係数を算出した。さらに、PWC <SUB>HR50%</SUB>に関与している因子の影響力を検討するために、目的変数をPWC <SUB>HR50%</SUB>とし、年齢、体重、身長、60deg/secにおける最大トルク、赤血球数、Hb量の6変数を説明変数として、変数増加法による重回帰分析を行った。<BR>【結果および考察】<BR> PWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルクとの間に有意な相関(r=0.76)がみられ、60deg/secにおける最大トルクが大きいほど、PWC <SUB>HR50%</SUB>が高くなる傾向を示した。PWC <SUB>HR50%</SUB>と赤血球数、Hb量とには有意な相関が認められなかった。また、重回帰分析の結果、negative変数として年齢、positive変数として60deg/secにおける最大トルク値が採択され、重相関係数は0.81(p&lt;0.05)であった。また、この2つの説明変数のうち、どちらがPWC <SUB>HR50%</SUB>により大きな影響を与えているのかを標準偏回帰係数の絶対値で比較すると、年齢(β=0.295)より60deg/secにおける最大トルク値(β=0.795)のほうが大きく、PWC <SUB>HR50%</SUB>に及ぼす影響の強さは、年齢より60deg/secにおける最大トルク値のほうが大きいことが示された。<BR>本研究からPWC <SUB>HR50%</SUB>と60deg/secにおける最大トルク値との関連性が強いことが明らかになり、下肢の最大筋力を推定するのにPWC <SUB>HR50%</SUB>の測定が有効である可能性が示された。
著者
真嶋 光 鈴木 康義 折笠 精一
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.114-124, 1986
被引用文献数
1

種々の毒素, 酵素等の細菌産生物のラット膀胱上皮に及ぼす影響を走査電顕で観察し, 又尿路感染症患者13人の尿中 endotoxin 濃度を測定した.<br>1) 急性膀胱炎患者尿中には0.01~1μg/ml, 複雑性尿路感染症患者尿中では0.1~10μg/mlと正常人尿中の0.001μg/ml以下に比してて高濃度の endotoxin が存在した.<br>2) 細菌浮遊液 (E. coli 07 10<sup>8</sup>/ml) 及び細菌培養濾液 (endotoxin 濃度1~5μg/ml) のラット膀胱内注入では, 表層細胞表面の microplicae の腫脹, 上皮細胞の膨化及び剥離, 赤血球及び白血球の出現等の所見が両者で同程度に認められ, 4時間後には膀胱の約半分を占める部で変化を認める激しいものであった. 細菌浮遊液注入時の細菌の上皮への付着は経時的な上皮の変性に伴って増加した. 4.4×10<sup>4</sup>/mlの細菌浮遊液注入での変化は軽微であり, endotoxin (5μg/ml) では中等度の変化を認めた.<br>以上の結果は細菌の存在なしに, 細菌培養濾液中の種・々の毒素, 酵素等の細菌産生物が膀胱上皮の変化を引き起こした事を示しており, またこの変化が細菌付着及びそれに続く細菌感染の引き金となる可能性が考えられる. この様に尿中の高濃度の毒素, 酵素は高濃度の細菌と協同して臨床的にも膀胱炎発症に重要な役割を果していると推定された.
著者
神事 努 桜井 伸二 清水 卓也 鈴木 康博 Tsutomu JINJI Shinji SAKURAI Takuya SHIMIZU Yasuhiro SUZUKI
雑誌
中京大学体育学論叢 = Research journal of physical education Chukyo University (ISSN:02887339)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-27, 2008-01-01

It has been reported that the spin axis of a pitched baseball differs between adult pitchers and youth pitchers (Tezuka and Himeno 2001). However, that information was based on visual observation, and has not been determined quantitatively. The purpose of this study was to investigate the ball spin orientation and spin rate of youth pitchers compared with those for adult pitchers. In addition, the development of the throwing motion and factors in the determination of spin rate were discussed. Fourteen youth baseball pitchers (13.9±1.2 years) and nine collegiate baseball pitchers (20.1± 0.8 years) were selected as subjects. All of them were classified as over-hand style pitchers. The baseball was filmed immediately after the ball release using a high-speed video camera (250 Hz). The direction of spin axis and the spin rate were calculated using positional changes of drawn marks on the ball surface. The direction of the spin axis was defined by two angles, θ(azimuth) and φ(elevation). The angle between spin axis and pitching direction (α) was also obtained (Jinji and Sakurai 2006). Mean values of the angles of the spin axis showed no significant differences between youth pitchers and collegiate pitchers. As for variations within each trial, however, youth pitchers were significantly more inconsistent than collegiate pitchers. Although youth pitchers have acquired similar pitching motion to adults on average, their motion was often unstable with large variations. There was a significant difference in the mean values of spin rate between the youth pitchers and collegiate pitchers (p<0.001). Moreover, the spin rate correlated significantly with the initial ball velocity (p<0.001). Pitchers with a higher initial velocity achieved a notably higher spin rate. It was concluded that a pitching motion that increased the ball velocity consequently increased spin rate.
著者
渡辺 満久 鈴木 康弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.390-393, 2011-07-01 (Released:2015-09-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1