著者
大野 彰久 鈴木 康生 高橋 真朗 向山 賢一郎 野島 洋 藤原 理彦 大山 まゆみ 山田 かやの 佐々 竜二
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.221-229, 1992
被引用文献数
11

小児歯科臨床における外傷症例の対応は, 予後管理も含めて, 近年ますますその重要性が高まってきている.これまで小児の歯の外傷に関しては, 症例や処置内容などの実態調査の報告は多いが, 受傷から来院までの経過を詳しく調査した報告は少なく, その実態を知ることは, 適切な処置を施す上でも大切なことといえる.今回, 当科来院までの経緯を把握すべく, 外傷の既往が比較的はっきりしている受傷後1週間以内に来院した者に限って, その内容を調査した・その結果, 当科来院状況では, 約10年前に比べ, 総来院者に対する外傷児の比率が高くなってきていた・年間の月別来院者数は, 8月がやや少なかった.受傷曜日と来院曜日をみると, 乳歯では木曜から土曜日の週後半の受傷者が若干少ないものの, ほぼ1週間変わりなく, また来院は圧倒的に月曜日が多かった.永久歯では火曜から土曜, 中でも金曜日に多く, 来院は週後半に漸増していた・受傷原因は, 乳歯・永久歯とも転倒が多くを占めた.受傷場所では乳歯で屋内が多いのに対し, 永久歯では屋外の事故も増加していた.受傷状態は, 乳歯では重度脱臼が最も多いのに対し, 永久歯では歯冠破折が多数を占めていた.受傷直後の受診医療機関をみると, 乳歯では近医 (歯科) と当科を受診した者で7割強と多かったが, 永久歯では直接当科を受診した者が半数を占めていた・当科来院までの日数は, 全体として24時間以内, あるいは2日以内の早期に来院する者が多く, 特に永久歯の場合に著明であった.これを受傷状態との関連でみると, 脱臼症例では乳歯・永久歯とも早期来院者が多く, 特に重度脱臼者では24時間以内の来院が7割を超えた.一方, 歯冠破折症例では, 乳歯ではやや来院が遅れる小児が増えるのに対し, 永久歯では24時間以内が8割程度と早期の来院が特徴的であった.受傷部位は上顎前歯部が圧倒的に多く, その処置は, 乳歯では固定処置, 永久歯では歯髄処置を含めた歯冠修復処置が多かった.以上のような調査結果から, 当科では外傷児の来院が増加傾向にあり, また受傷後, 早期の来院者が比較的多いことからも, 受け入れ側としての的確な対応と体制の整備が望まれることが判明した.
著者
宗村 佳子 木本 佳那 小田 真悠子 奥津 雄太 加藤 玲 鈴木 康規 齊木 大 平井 昭彦 秋場 哲哉 新開 敬行 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.260-267, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
35
被引用文献数
6

2017年2月,東京都内で食中毒が4事例発生した.患者は10の学校にわたり,このうち7校および1校では,それぞれ別の共同調理場で調理された給食を提供されており,2校では自校で調理した給食を喫食していた.全事例に共通して提供されていたものは,同一業者が2016年12月に製造した刻みのりであった.喫食者4,209名のうち,1,193名(28.3%)が胃腸炎症状を呈し,リアルタイムRT-PCRによる検査の結果,4事例の患者265名中207名(78.1%)からノロウイルス(NoV)GIIが検出された.刻みのり31検体が検査に供されたが,このうち7検体(22.6%)がNoVGII陽性となった.刻みのり7検体と4事例に由来する患者20検体のNoV ORF1/2ジャンクション領域302塩基の配列は一致し,その遺伝子型はGII.17であった.また,次世代シークエンサーによる解析により,患者検体からほぼ全長(7,420塩基)のNoV塩基配列が得られたが,同株は系統樹解析でHu/GII/JP/2015/GII.P17_GII.17/Kawasaki308株と同じクラスターに属した.これらの結果から,今回の4事例は同一刻みのりを感染源としたNoVGII.17によるものであると断定された.刻みのり検体の水分活性は0.119~0.129であり,NoVは乾燥状態でも2か月間は感染性を失わないことが疫学的に示された.本事例の解決を発端として,刻みのりが関連したNoVGII.17による大規模なdiffuse outbreakの国内発生が明らかとなった.
著者
佐藤 真樹 小山 一直 鈴木 康吏
出版者
一般社団法人 火力原子力発電技術協会
雑誌
火力原子力発電大会論文集 (ISSN:2187929X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-5, 2017 (Released:2017-06-12)
参考文献数
4

東北電力(株)新仙台火力発電所は,経年化が進んだ既設1・2号機を廃止し,新たに3号系列として高効率コンバインドサイクル発電設備へリプレースを行った。本工事では,当社がこれまで培ってきた技術を活かした更なる高効率化を図り,熱効率60.9%(LHV基準)を達成した。また,東日本大震災における被災経験を踏まえて自然災害に強い発電所づくりを進めた。
著者
鈴木 康男 宇田 裕 奥井 誠一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.72-76, 1965-01-25 (Released:2010-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
3

Lipid component, extracted from dried cells of Torulopsis utilis was examined by means of chromatography. It was found that lipid content in dried cells was 3% and this lipid consisted mainly of phospholipid (84%), which was largely composed of lecithin, phosphatidylethanolamine and lysolecithin, however neutral lipids are formed mainly of free fatty acid, triglyceride and sterol.Analysis of the fatty acid composition of the isolated lipid fractions by gas-liquid chromatography showed that acid neutral lipids and phospholipids contained mainly linoleic acid, oleic acid and palmitic acid, while free fatty acid fraction had a very low content of linoleic acid. The lysolecithin fraction contained considerably larger amounts of linoleic acid than the other lipid fractions.
著者
永野 久志 高田 安章 鈴木 康孝 杉山 益之 橋本 雄一郎 坂入 実
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1105-1110, 2013

駅や商業施設,スタジアムなどの,非常に人が多い場所で爆発物の検査を行うため,被験者の手元周辺の検査に特化した爆発物蒸気のサンプリング部を開発した.サンプリング部を駅の自動改札機のICカード認証部を模した形状とし,ICカードをICカード認証部にかざして通過する間に,手やICカードに付着している化学物質から発散する蒸気を質量分析計に吸引し検出する構成とした.ICカード認証部に沿って流す気流について検討した結果,ICカードに付着したtriacetone triperoxide(TATP)や2,4,6-trinitrotoluene(TNT)などの蒸気圧の高い爆薬成分を,約1秒で検出できることを確認した.これにより,駅などの人の往来の非常に多い場所において,人の流れを妨げずに爆発物の検査を実施できる見通しを得た.
著者
丸山 剛 鈴木 康裕 石川 公久 江口 清 正田 純一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Db0578, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 近年、肥満や運動不足に伴い非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が増加しており肝硬変から肝細胞がんへと進展し得ることが指摘されている。NAFLDに対する有効治療のひとつとして運動療法の効果はすでに実証されているが随意収縮と電気刺激を組み合わせたハイブリッド訓練法による治療効果も報告されている。治療効果の検証としてインスリン抵抗性(HOMA-R)の改善が肝機能の改善にもつながりえることが明らかになっている。一方、インスリン分泌能(HOMA-β)を指標とした検証はあまりみられていない。本研究の目的はNAFLD患者を対象としたハイブリッド訓練法の介入をHOMA-βを指標として検証することである。【方法】 対象は当院消化器内科に通院するNAFLD患者の中から空腹時血糖値130mg/dl以下で就労していない患者6名(男性1名、女性5名)、BMI 28.7±1.9、平均年齢59.3±10.3歳、HbA1c6.07±0.89である。電気刺激装置はハイブリッド訓練器(アクティブリンク株式会社)を使用し、両大腿前後面に各2枚電極を貼付し椅子座位で膝関節屈伸運動を実施。通電時間は1分間で拮抗筋に電気刺激を与え膝関節屈伸運動を休憩することなく15回(伸展2秒、屈曲2秒)、セット間の休憩は1分とする。一側ずつ3セットごとに左右交代し左右各6セット、計23分の訓練を週2回の頻度で計30回(15週間)の訓練を行った。電気刺激強度は耐えうる限りの最大電圧(訓練器最大電位50V)とした。評価項目はBIODEX system3(酒井医療株式会社製)で膝関節60度屈曲位での5秒間の最大等尺性筋力:最大トルク平均/体重(%)で大腿四頭筋、ハムストリングスそれぞれ左右の平均を採用。血液生化学検査はAST、ALT、HOMA-R:空腹時インスリン値×空腹時血糖値/405、HOMA-β:空腹時インスリン値×360/(空腹時血糖値-63)、HbA1cの5項目とし運動介入前後で比較を行った。介入前後の比較にはWilcoxonの符号付順位検定を用い、また有意差を認めた項目に関してはHOMA-βを従属変数とし各パラメータとの単相関をSpearmanの順位相関係数を用いて統計解析を行った。使用統計ソフトはSPSS(ver19)を用い、すべての統計的有意判定基準は5%未満とした。【説明と同意】 充分なインフォームド・コンセントを施行し文章にて同意が得られた症例のみを本研究の検討対象とする。【結果】 介入前後において生化学はAST(57.3±16.1vs 42.0±8.5,p<0.027)、ALT(64.2±21.7vs47.0±16.5,p<0.028)、HOMA-R(4.12 ±1.12vs3.15±0.69,p<0.046)、HOMA-β(120.71±43.08vs96.81±29.26,p<0.046)でいずれも有意に低下を認めた。HbA1cに関しては有意な差は認めなかった。一方、下肢筋力は大腿四頭筋(159.3±50.8vs186.4±55.5,p<0.028)は有意な改善を認めたがハムストリングスでは有意な差を認めなかった。またHOMA-βとALTの変化率の間には有意な相関(r=0.829、p=0.042)を認めた。【考察】 今回のハイブリッド訓練法の介入により肝機能(AST、ALT)、HOMA-R、HOMA-βにおいて有意な減少、大腿四頭筋で有意な改善が認められた。このことはハイブリッド訓練法による筋力トレーニングが有酸素運動で得られる効果と同等の効果が得られたものと考え、結果的にインスリン感受性が改善したことでインスリン分泌、すなわちHOMA-βの抑制が図られたと考えられた。また、HOMA-βとALTの変化率の間には有意に相関があることでインスリン分泌量が脂肪肝に影響を与えることが示唆された。一方、糖代謝の改善がみられるのにもかかわらずHbA1cに変化がみられなかったことに関しては、HOMA-R、HOMA-βの改善では食後血糖上昇に影響を与えず耐糖能の効果に対する限界を示唆するものであった。【理学療法学研究としての意義】 NAFLDに対する運動療法はジョギング・水中運動といった有酸素運動が代表的であるが肥満による関節負荷や運動時間を考えると長期的かつ継続的に行うには努力を要す。今回のハイブリッド訓練法では有酸素運動で得られる効果を座位で得られ、運動時間・頻度についての検討が必要と思われるが予防・改善の観点で有効な運動療法として有用である可能性が考えられる。
著者
鈴木 康弘 廣内 大助 渡辺 満久
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100262, 2015 (Released:2015-04-13)

2014年長野県北部の地震は糸魚川-静岡構造線(糸静線)の北部、神城断層が活動して起きたものである。長野県はこの地震を神城断層地震と命名した。政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は、110の「主要活断層」を定めて地震発生長期予測を行ってきたが、この地震は主要活断層が起こした初めての地震となった。震源断層面が浅かったために局地的に強い揺れが発生し、白馬村神城・堀之内地区では甚大な被害が生じた。気象庁は正式に認定していないが、震度7相当の揺れに見舞われていたと推定される。地表のずれ(地表地震断層)は、既存の活断層地図で示された場所に出現した。しかし、この地震は糸静線のごく一部が小規模に活動して起きたものであり、地震本部の予測とは異なっていた。地震規模が小さく死者は出なかったが、活断層地震の長期評価(発生確率)や強震動予測に再考を促す重要な地震であった。
著者
鈴木 康弘 岡田 篤正 竹村 恵二 慶 在福 金 幸隆 廣内 大助 伊藤 愛 大石 超 中村 洋介 成瀬 敏郎 北川 浩之 渡辺 満久
出版者
日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.25, pp.147-152, 2005

The Ulsan fault extends for 50 km along the NNW-SSE direction in the southeastern part of the Korean Peninsula; this is one of the most important active faults in Korea. Its paleoseismicity has recently attracted considerable attention. With the support of KOSEF (Korean Science and Engineering Foundation), excavation studies of this fault were conducted in 1999 as a part of the Korea-Japan cooperative research at Kalgok-ri in Kyongju city. The results obtained are summarized as follows. (1) The Ulsan fault plane has an eastward dip of approximately 30 degrees and exhibits typical reverse faulting. (2) It was reactivated three times in the past 30,000 years, in particular, twice after the age of AT tephra (approximately 25,000 years BP). (3) A vertical displacement of approximately 0.8 m occurred during the fault event, and the amount of net slip along the fault plane is calculated to be 1.6 m.
著者
江本 雅彦 鈴木 千尋 鈴木 康浩 横山 雅之 關 良輔 居田 克巳
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.562-567, 2014-09-25

実験データと理論計算データを融合した統合輸送解析システムを開発した.このシステムにより,従来,別物として取り扱われてきた,LHDの実験データと理論計算データを統合化し,ユーザは両者を区別することなくデータを取り扱うことができるようになった.このシステムにより,平衡計算および,その平衡に基づくNBI加熱分布評価,エネルギー・運動量バランス解析に至る一連の解析作業をパッケージ化することが可能となり,LHD実験適用型統合輸送解析コードTASK3Dの運用に大きな貢献を果たし,原理的にLHDの全放電,電子温度分布計測がなされた全てのタイミングに対してエネルギー・運動量バランス解析を実施することができるようになった.
著者
阿部 芳首 鈴木 康弘 郡司 天博 広沢 景 長尾 幸徳 御園生 堯久
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.643-649, 1997-10

新規な反応性錯体化合物として, アゾおよびアゾメチン化合物を配位子とする2-ヒドロキシ型チタンキレート錯体の合成とその熱分解を検討した。<BR>チタンテトライソプロポキシドは2当量の2-ヒドロキシアゾおよびアゾメチン化合物と定量的に反応し, チタンキレート錯体を生成した。これら錯体は, 分解点が102~115℃で熱安定性が低く, また容易に加水分解した。これらの性質は, これまでに報告している2, 2'-ジヒドロキシアゾおよびアゾメチン化合物を配位子とするキレート錯体がきわあて高い熱安定性と加水分解安定性を有しているのとは著しく異なっている。本実験で得られたキレート錯体を減圧下で熱分解した結果, 揮発成分として2-プロパノールとアセトンが生成し, 一方残渣として黒色の固体が得られた。この固体をTHFとヘキサン (1 : 10 (V/V)) で再沈殿して単離した熱分解生成物は, 配位子とチタンを構成成分とする分子量Mw2000~3700のポリマーであることがわかった。
著者
鈴木 康弘 池田 安隆 渡辺 満久 須貝 俊彦 米倉 伸之
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.151-159, 1989-06-24 (Released:2010-03-11)
参考文献数
17
被引用文献数
5 2

Many active faults trending N-S along basin-mountain boundaries are recognized in Northeast Japan, but only a few of them have experienced surface faulting in historical time; most of them seem to have been quiescent in the past several hundred years or more. Thus earthquakes are anticipated to occur from these active faults in the near future. To detect the recurrence intervals of faulting, which can be obtained by the excavation study, is indispensable for the long term prediction of earthquakes.We excavated a trench at Kitasakai, Sakata City, across the Kannonji fault, one of the eastern boundary faults of the Shonai plain, Northeast Japan, in order to reveal its late Holocene activity including a possible faulting event associated with the Shonai earthquake (M=7.0) of 1894 A. D., which caused severe damage along this fault.Our excavation has revealed that (1) the last surface faulting event on the Kannonji fault occurred in a period from 2, 500 years B. P. to 1894 A. D., and that (2) no surface faulting occurred (at least at the trenching site) in association with the Shonai earthquake of 1894. Careful examination of historical records, however, strongly suggests that the earthquake of 1894 was also generated from this fault; it is likely that thick, unconsolidated sediments prevented the rupture from propagating up-dip to the surface. These results indicate that the interval between the last two earthquakes originating from the Kannonji fault is less than 2, 500 years. It could be 1, 000 years, because the event revealed by excavation is possibly correlated to the historically-documented earthquake of 850 A. D..
著者
鈴木 康弘 杉戸 信彦 坂上 寛之 内田 主税 渡辺 満久 澤 祥 松多 信尚 田力 正好 廣内 大助 谷口 薫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.37-46, 2009 (Released:2010-02-24)
参考文献数
16

活断層の詳細位置・変位地形の形状・平均変位速度といった地理情報は,地震発生予測のみならず,土地利用上の配慮により被害軽減を計るためにも有効な情報である.筆者らは糸魚川-静岡構造線活断層帯に関する基礎データと,活断層と変位地形の関係をビジュアルに表現したグラフィクスとをwebGIS上に取りまとめ,「糸魚川-静岡構造線活断層情報ステーション」としてインターネット公開した.本論文は,被害軽減に資する活断層情報提供システムの構築方法を提示する.これまでに糸魚川-静岡構造線北部および中部について,平均変位速度の詳細な分布を明らかにした.この情報は,断層の地震時挙動の推定や強震動予測を可能にする可能性がある.さらに縮尺1.5万分の1の航空写真を用いた写真測量により,高密度・高解像度DEMを作成した.人工改変により消失している変位地形については,1940年代や1960年代に撮影された航空写真の写真測量により再現し,その形状を計測した.写真測量システムを用いた地形解析によって,断層変位地形に関する高密度な解析が可能となり,数値情報として整備された.
著者
嶋田 哲郎 呉地 正行 鈴木 康 宮林 泰彦 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.9-15, 2013 (Released:2013-05-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

東日本大震災が南三陸沿岸で越冬するコクガンに与えた影響を調べるため,岩手県陸前高田市の広田湾から宮城県石巻市の北上川河口にかけて,2011-2012年の冬期に調査を行った.2011年11月下旬~12月上旬,2012年1月上旬,2月下旬の3回,コクガンの分布を調べ,3回の調査でそれぞれ291羽,380羽,403羽のコクガンが記録され,観察されたコクガンの個体数は震災前のデータと大きな違いはなかった.群れが確認された環境をみると,11月下旬~12月上旬と1月上旬では漁港で59%,海上で35-41%と同様な傾向を示した.震災前には漁港でコクガンが観察されることは稀であったが,地盤沈下した岸壁や船揚場に付着した海藻類がコクガンの食物資源となったこと,震災後の漁港への人の出入りの減少に伴いコクガンが妨害を受けずに安定的に利用できるようになったことに加え,震災前の採食場所であったワカメやカキなどの養殖筏が津波によって消失したためと考えられた.一方で,2月下旬になるとそれまでより漁港を利用したコクガンの割合は減少し,海上や砂浜を利用したコクガンの割合が増加した.ワカメやカキの養殖筏の復興,それらに付着した海藻類の生長につれてコクガンの食物資源量が増加したと考えられる.震災によってコクガンの生息環境は大きく変化したが,採食場所をシフトすることでその変化に対応していると考えられる.
著者
鈴木 康弘 堤 浩之 渡辺 満久 植木 岳雪 奥村 晃史 後藤 秀昭 STREL'TSOV Mihail I. KOZHURIN Andrei I. BULGAKOV Rustam TERENTIEF Nikolai IVASHCHENKO Alexei I.
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.109, no.2, pp.311-317, 2000-04-25
被引用文献数
1 4

We have prepared a preliminary active fault map of Sakhalin, Russia, based on an interpretation of aerial photographs and satellite images. Major active structures include 110-km-long active faults along the western margin of the Yuzhno-Sakhalinsk Lowland in southern Sakhalin and 120-km-long active faults along the western margin of the Poronaysk Lowland in central Sakhalin. These active faults are parallel to but are located as far as 10 km east of the Tym-Poronaysk fault. Geomorphic surfaces on the upthrown side of the fault are tilting westward, therefore, the faults are considered to be west-dipping low-angle reverse faults. The vertical component of slip rates of these faults are >0.3 mm/yr in southern Sakhalin and 1.0-1.5 mm/yr in central Sakhalin. The net-slip rates could be much greater because the faults are low-angle reverse faults. If these faults rupture along their entire length during individual earthquakes, the earthquakes could be as great as M7.6-7.7. In northern Sakhalin, we have identified a series of right-lateral strike-slip faults, including the 1995 Neftegorsk earthquake fault. The slip rates for these faults are estimated at 4 mm/yr. The right-lateral shear in northern Sakhalin and east-west compression in central and southern Sakhalin may reflect relative plate motion in far-east Asian region.