著者
鈴木 雅博
出版者
常葉大学外国語学部
雑誌
常葉大学外国語学部紀要 = TOKOHA UNIVERSITY FACULTY OF FOREIGN STUDIES RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-24, 2017-12-31

本稿は,学校組織に関する社会学的アプローチによる諸研究への検討を通して,教師の実践を記述するエスノメソドロジー研究の可能性を展望することを試みる。これまでに,法社会学,教員文化,ミクロ・ポリティクス等の視点から社会学的アプローチによる学校組織研究が蓄積されてきたが,これらは制度・文化を教師の行為を規定する要因として捉えるものであった。エスノメソドロジーはこうした因果論的説明ではなく,組織や文化がそれとして成し遂げられる人びとの実践を描出することを試みる。
著者
猪股 正秋 照井 虎彦 遠藤 昌樹 久多良 徳彦 千葉 俊美 折居 正之 鈴木 一幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.1556-1567, 2005

内視鏡的十二指腸乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy;以下EST)において出血を避けるためには,切開方向,高周波の出力波形の問題に加え,切開線周囲の凝固層の範囲をコントロールすることが重要である.切開方向は11時から12時の間,出力波形は切開波を選択する.通電は断続的に行い,(1)初期凝固の形成→(2)火花放電による切開→(3)通電の休止による冷却の過程を繰り返す.この断続的切開により,切開波のみでも一定の凝固層を形成しながらの切開が可能となる.ハチマキ襞付近までは膵管口へのダメージの防止を優先し,迅速な切開で凝固層の範囲を最小限にとどめる.ハチマキ襞より口側への切開では径の太い動脈枝の存在する可能性があり,十分な凝固層を形成させつつゆっくりと切開する.切開の過程では「メスが走る」事態に注意する.「メスが走る」事態を避けるためには,ブレードを張りすぎず押しつけ過ぎないことに加え,(1)漏電を回避する,(2)ブレードと組織の接触面積を極力小さくする,(3)「counter traction」の3点に留意し,切開がスムーズに開始されるようにすることが重要である.
著者
鈴木 裕二 守川 恵助 乾 亮介 芳野 広和 田平 一行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Da0999, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 起立性低血圧は目眩や失神などの症状を引き起こし、日常生活の大きな妨げになる。この対策として下肢弾性ストッキングが有用とされており、血圧低下を軽減することができる。しかし使用すべき圧迫力に一致した見解は得られていない。今回、3種類のストッキングを使用し、起立時の血行動態の変化について比較、検討を行った。【方法】 対象は健常男性20名(年齢24.9±3.2歳)。足首に対してそれぞれ、弱圧(18-21mmHg)、中圧(23-32mmHg)、強圧(34-46mmHg)の圧迫力が加わる3種類の下肢弾性ストッキングを着用した状態と、着用しない状態(Control)の計4条件でそれぞれ起立負荷を行った。起立負荷は安静座位の後、4分間のスクワット姿勢となり、その後に起立を行う方法で行った。この際、非侵襲的連続血圧測定装置(portapres,FMS社)を使用し、SBP:収縮期血圧、DBP:拡張期血圧、SV:一回拍出量、HR:心拍数、CO:心拍出量、TPR:総末梢血管抵抗を測定し、血行動態指標とした。測定時期は安静座位をRest期、起立直前の10秒間のスクワット状態をSquat期、起立後10秒間をSt10期、11秒~20秒間をSt20期、21秒~30秒間をSt30期とした。また3種類のストッキング着用に対する不快感をVAS(Visual Analogue Scale:0=全く不快感を感じない、10=最大の不快感を感じる)にて評価した。統計方法は、各測定時期における4条件間における各血行動態指標及び、VASに対して反復測定分散分析を行い、多重比較にBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、協力していただいた施設の倫理委員会の承認を得ると同時に、ヘルシンキ宣言に基づいて被験者に本研究内容を説明し、署名によって同意を得た。【結果】 SBPではSquat期からSt10期にかけて、Control(150.9±15.3→112.5±11.4mmHg)、弱圧(153.0±16.5→119.5±14.8mmHg)、中圧(151.4±15.4→115.7±12.7)、強圧(151.9±16.0→120.2±13.8mmHg)とそれぞれ起立により低下がみられた。Squat期では4条件間に有意差はみられなかったが、St10期ではControlに比べて弱圧(p<0.05)と強圧(p<0.01)が有意に高値を示し、弱圧と強圧との間には有意差がみられなかった。このSt10期において、SVでは強圧(83.1±11.8ml)がControl(72.7±10.1ml)に比べて有意に高値を示し(p<0.01)、COでも強圧(7.9±1.2L/min) がControl(7.2±1.1L/min) に比べて有意に高値を示した(p<0.001)。弱圧はSt10においてControlに比べて、SV、HR、CO、TPRを高値に保つことができたが、有意差はみられなかった。VASでは強圧(3.9±0.5)が弱圧(2.4±0.4)、中圧(2.7±0.5)に比べてストッキング着用の不快感がそれぞれ有意に高値であり(p<0.01)、弱圧と中圧の間では有意差はみられなかった。【考察】 St10期に弱圧と強圧がControlに比べてSBPを有意に高値に保つことができたのは、ストッキングの圧迫により、起立時の下肢への血液貯留を軽減でき、SVが上昇し、COを高値に保てたことが大きな要因と考えられる。しかし、弱圧ではSV、COにおいてControlとの間に有意差がみられなかった。しかし、血圧の決定因子である、CO(SV×HR)、TPRのすべてが有意差はないものの、Controlに比べて高値を示していたことから、これらの因子の相乗効果により、SBPを有意に高値に保つことができたと考えられる。VASでは強圧の不快感が有意に高値であった。Rongらは本研究の弱圧レベルのストッキングの使用が最も快適であると報告している。このことから、強圧の過度の下肢への圧迫が被験者の不快感を増大させたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 下肢弾性ストッキング着用の不快感は日常生活の着用において大きな問題となる。今回の研究において起立性低血圧の予防に不快感の少ない弱圧のストッキングが十分に効果的であることが示唆された。これは使用者が快適な日常生活を送る上で大きな意義がある。
著者
中田 高 徳山 英一 隈元 崇 室井 翔太 渡辺 満久 鈴木 康弘 後藤 秀昭 西澤 あずさ 松浦 律子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.240, 2013 (Released:2013-09-04)

2011年東北地方太平洋沖地震以降,中央防災会議によって,南海トラフ沿いの巨大地震と津波の想定がなされているが,トラフ外れた海底活断層については詳しい検討は行われていない.縁者らは,詳細な数値標高モデルから作成した立体視可能な画像を判読し,南海トラフ東部の南方に位置する銭洲断層系活断層の位置・形状を明らかしたうえで.その特徴および歴史地震との関連を検討する.
著者
鈴木 一成 五十嵐 康人 土器屋 由紀子 赤木 右
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.318, 2008

東アジアのエアロゾルの水溶性成分は、Ca2+、SO42-、NH4+が主要成分となっているため、エアロゾルの化学の大部分をこの3成分で議論できる場合が多い。そこで、Ca2+, SO42-, NH4+の3成分による三角ダイアグラムを用いて大気エアロゾルの化学的特徴を考察した。三角ダイアグラムはH+を考慮する必要のある酸性領域とCO32-を考慮する必要のある炭酸領域に分けることができ、CaCO3とCaSO4、(NH4)2SO4の混合状態を簡単に知ることができる。2002年3月から9月までに富士山山頂の富士山測候所で1日ごとにサンプリングしたエアロゾル試料のデータ(Suzuki et al., in press)を用いた。富士山頂での観測結果から、春季の通常の黄砂時には、ほとんどのCa成分がCaSO4として存在することが特徴的に示された。気塊が汚染地域を通過する際に黄砂粒子と汚染大気由来のH2SO4が混合し反応したと考えられた。夏季には通常の黄砂期間と異なり、SO42-がNH4+と等量濃度でほぼ1:1であり、Ca成分がCaCO3として存在することが明らかとなった。
著者
海野 ひろ花 鈴木 馨
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.463-467, 2016

<p>ヨツユビハリネズミ(n=5)の全身麻酔に伴う低体温と危険な随伴症状の発生及び保温の効果について調べた.実験では,アトロピン(0.05mg/kg),ジアゼパム(4mg/kg),ケタミン(50mg/kg)の皮下注射による導入後,イソフルラン(2%)吸入で維持する場合と,高濃度イソフルランガス(5%)による導入後,同じく2%吸入で維持する場合で比較した.麻酔は60分間維持した.保温しないと,注射導入・高濃度ガス導入にかかわらず,全例で明らかな低体温(最低値:29.7±0.6℃)となり,著しい呼吸循環抑制からほぼ全例でチアノーゼが観察された.これに対して保温した場合には,注射導入・高濃度ガス導入のいずれでも体温低下は軽微(最低値:32.5±0.3℃)であり,チアノーゼの発生が大幅に抑制された.これらから,ヨツユビハリネズミの全身麻酔で保温は有効かつ必須であることが示された.</p>
著者
鈴木 章浩
出版者
国際ビジネス研究学会
雑誌
国際ビジネス研究 (ISSN:18835074)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.59-74, 2015 (Released:2016-02-05)
参考文献数
51

本稿の研究課題は、日系多国籍企業の海外研究開発 (R&D) 拠点が、R&D 活動に関わる知識・技術・情報を日本の本社や R&D 拠点へ移転させる要因を探ることである。海外拠点から本国へ知識・技術・情報を移転させることは、“Reverse Knowledge Transfer”と呼ばれ、グローバル・ビジネス研究分野では高い関心を集めている。本稿はこの知識逆移転についての実証研究である。具体的には 137 の海外 R&D拠点から集めたアンケート調査結果をもとに、日本への R&D 知識の逆移転を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。 本研究の特徴は知識逆移転を、拠点の役割、人材の国際移動、拠点の自律という 3 つの面から考察した点である。まず、拠点の役割については、先端的な研究・先行テーマに取り組んでいる拠点と、それ以外の役割の拠点とに分けて知識逆移転への影響のちがいを考察した。つぎに、人材の国際移動に関しては、日本から海外へ、反対に海外から日本へ、研究開発者の 3 ヶ月以上の派遣がどのくらい行われているかを調べ、知識伝達するうえでの人材移動の効果の有無を確かめた。さいごに、拠点の自律性については多くの企業で現地人材の裁量を広げていくなどの動きがみられ分析上重要なファクターであると考えられる。ところが、自律の知識逆移転への効果を探った研究では、逆移転を促進するという結果もあれば阻害するという結果もあり、両方が混在している。そこで、自律を単独ではなく、先端的研究に従事している拠点では自律度をどうすべきか、人材の国際移動を頻繁に行っている拠点では自律度をどうすべきか、というように他変数との兼ね合いの視座から検証した。 分析の結果、先端的な研究テーマに取り組んでいる拠点はそれ以外の拠点と比べ、日本へ多くの知識を逆移転していることが明らかになった。また、日本から海外へ研究開発者を密に派遣している拠点も知識逆移転が多い。さらに、先端的研究に従事している拠点ではその自律度を低くすることで、日本から海外への人材の国際移動を頻繁に行っている拠点ではその自律度を高くすることで、知識逆移転が促されることが見出された。
著者
鈴木 章浩
出版者
国際ビジネス研究学会
雑誌
国際ビジネス研究 (ISSN:18835074)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.59-74, 2015

本稿の研究課題は、日系多国籍企業の海外研究開発 (R&D) 拠点が、R&D 活動に関わる知識・技術・情報を日本の本社や R&D 拠点へ移転させる要因を探ることである。海外拠点から本国へ知識・技術・情報を移転させることは、&ldquo;Reverse Knowledge Transfer&rdquo;と呼ばれ、グローバル・ビジネス研究分野では高い関心を集めている。本稿はこの知識逆移転についての実証研究である。具体的には 137 の海外 R&D拠点から集めたアンケート調査結果をもとに、日本への R&D 知識の逆移転を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。<br> 本研究の特徴は知識逆移転を、拠点の役割、人材の国際移動、拠点の自律という 3 つの面から考察した点である。まず、拠点の役割については、先端的な研究・先行テーマに取り組んでいる拠点と、それ以外の役割の拠点とに分けて知識逆移転への影響のちがいを考察した。つぎに、人材の国際移動に関しては、日本から海外へ、反対に海外から日本へ、研究開発者の 3 ヶ月以上の派遣がどのくらい行われているかを調べ、知識伝達するうえでの人材移動の効果の有無を確かめた。さいごに、拠点の自律性については多くの企業で現地人材の裁量を広げていくなどの動きがみられ分析上重要なファクターであると考えられる。ところが、自律の知識逆移転への効果を探った研究では、逆移転を促進するという結果もあれば阻害するという結果もあり、両方が混在している。そこで、自律を単独ではなく、先端的研究に従事している拠点では自律度をどうすべきか、人材の国際移動を頻繁に行っている拠点では自律度をどうすべきか、というように他変数との兼ね合いの視座から検証した。<br> 分析の結果、先端的な研究テーマに取り組んでいる拠点はそれ以外の拠点と比べ、日本へ多くの知識を逆移転していることが明らかになった。また、日本から海外へ研究開発者を密に派遣している拠点も知識逆移転が多い。さらに、先端的研究に従事している拠点ではその自律度を低くすることで、日本から海外への人材の国際移動を頻繁に行っている拠点ではその自律度を高くすることで、知識逆移転が促されることが見出された。
著者
長沼 信治 高橋 和雄 鈴木 利昭 太田 和夫
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.1301-1305, 1986-06-15 (Released:2011-10-07)
参考文献数
6

血小板凝集抑制作用をもつPGI2誘導体(CS-570)を血液透析の抗凝固剤として使用し, その有用性について検討した。対象は安定した透析患者30名(男性18名, 女性12名, 平均年令46.6±11.6才)であった。投与方法はCS-570 50~150ng/kg/minを動脈側回路より接続注入し, 単独もしくはヘパリンと併用した。観察項目は回路内の残血凝血, 副作用であり, 測定項目は血中濃度, 血小板凝集能, 凝固系検査, 血液生化学, 血算などであった。同項目について対象患者でヘパリン使用時と比較検討した。その結果, CS-570使用時には血小板凝集が強く抑制され, 投与量の選択により, 残血凝血と副作用も少なく透析が維持できた。以上の結果からCS-570は血液透析の抗凝固剤として臨床応用が充分可能と思われた。