- 著者
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新井 正
鈴木 啓助
深石 一夫
水越 允治
- 出版者
- 立正大学
- 雑誌
- 総合研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1988
日本の冬の気候は,アジア大陸東部の影響を強く受けていることはいうまでもない。ところが,アジア大陸の地表面,水面などに関する情報は非常に不足しており,日本と大陸との水文気候の比較は充分にできない状況にある。これは,事情を異にする5か国が接するこの地域の特殊性を反影している。そこで,第一に日本・中国・韓国・ソ連の気候図より,最大積雪深,積雪期間の分布図を作成した。積雪時間は緯度と高度に支配されているが,最大積雪深は収束線の位置も関係するために、必ずしも緯度的な分布になるわけではない。隆雪域は「ひまわり」の赤外・可視画像の分析により推定し,上記の編集図の裏付けを行なった。河川の結氷は水面の熱収支より推定したほか,日平均最低最気温と実際の結氷分布とを対応させ、ともによい結果を得た。第二に水文気候の重要課題である融雪出水について,雪と河川水の水質分析により特性を把握した。融雪出水には直接融雪水が流出するのではなく,地中あるいは雪層中の古い水を押し出す,いわゆる押し出し型であることが分った。しかし,雪の化学成分から大陸諸国の工業活動などを推定する迄には至らなかった。水文気候の比較で特に注目されるのは、過去の記録である。日本,中国ともに古い記録があり,気候の復元が試みられている。本研究では19世紀を中心として気候の復元を行なった。その結果,小氷期においても温暖な期間を狭んでいたことが分った。しかし,中国との対応はまだ完全ではない。