著者
宮﨑 成生 関和 孝博 吉田 智彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.234-241, 2009 (Released:2009-05-22)
参考文献数
23

栃木県内の主要農業用用水85 地点および農業用排水6地点の水質を1996~1998年の3年間にわたり,水稲栽培期間を中心に調査した.その結果,農業用用水の水質基準値内の割合はpHが70%,ECが88%,CODが84%,T-Nが30%,SSが100%であった.調査時期による水質の変化は小さかった.水質汚濁は渡良瀬川流域と鬼怒川流域で進行していた.また,汚濁の激しい地点は県南部および西部の都市下流域で,人口,下水道普及率との関係が示唆された.農業用排水は用水に比較してSiO2を除き栄養塩類濃度が高かった.調査地が同一である53地点について10年前と比較したところ,栄養塩類の濃度は低下する傾向にあり,特にT-Nで顕著であった.
著者
土屋 智樹 関岡 東生 山下 詠子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 東京都における木炭産業の歴史について同業組合政策との関連で整理を行い、商人貸付により生産を行う,またはこれに類似する前期的な生産体系が主体であった近代日本における木炭生産の変化の要因を、流通組織の機能および発展段階から考察を試みた。 わが国における重要物産同業組合を核とする産業振興政策は1884年公布の「同業組合準則」、1897年公布の「重要輸出品同業組合法」、1900年公布の「重要物産同業組合法」等を根拠法として展開した。木炭については、「重要物産同業組合法」に準拠する同業組合によって過当競争の防止や製品検査による品質の向上が取り組まれた。 東京都における木炭の同業組合は1909年に設立されはじめ、1931年までに計6組合が設立された。しかし、1930年以降は農村恐慌を背景とする産業組合の拡充や1932年の「商業組合法」の公布により、同業組合以外の木炭関連の流通組織が推進された。そして1943年には「商工組合法」により燃料配給統制組合が東京都を含む主要消費都道府県に設立された。この組合は、第二次世界大戦後も統制経済の下で燃料林産組合として木炭の配給調整機関として機能したこと等が明らかになった。</p>
著者
関山 牧子 村山 伸子 石田 裕美 野末 みほ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インドネシアでは、教育省から学校給食の予算が捻出されることとなり、2016年から公立小学校において学童に対する給食提供を開始することとなった(PROGASプロジェクト)。2016年度は東ヌサ・トゥンガラ州の3県、計4万人の学童が、給食プロジェクトの対象者として選択された。2016年4月末にキックオフ会議が行われ、対象校の教員や調理者へのトレーニングが実施された。その上で、各小学校は給食提供に係る様々な準備を行い、7月から給食提供が開始された。給食は、24日間を1クールとして4クール、計96日間提供された。本研究では、各県のプロジェクト対象校7校と非対象校3校(コントロール群)を選択し、A)食費、B)健康的な食物選択に関する知識、C)学校での学習態度、D)栄養素摂取状況、E)身体計測値、F)ヘモグロビン値の面について、介入前後の変化を調査するとともに、対照群との差異を検証した。また、現地調査の際に、小学校教諭、調理者、保護者に対し聞き取り調査を実施し、給食提供の問題点等を明らかにした。今年度は、初年度に収集したデータ解析を中心に行った。また、インドネシアの学校給食の歴史に関して国際的に発表されている報告書や学術論文が限られているため、現地のカウンターパートの研究者とともに、インドネシア国内で公表されている情報をもとに、レビュー論文を執筆した(現在査読中)。インドネシアでは1991年以降、何度か国レベルでの学校給食プログラムが実施されてきたが、その人口規模と地理的広がりから統一的な政策が難しく、国際的にみても低い普及率の向上が優先課題であることが明らかになった。
著者
對東 俊介 堂面 彩加 高橋 真 関川 清一 稲水 惇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3O2017, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】運動は健康維持に重要な役割を果たしており,疾病予防や治療手段として有用である.しかしその一方で,高強度有酸素性運動負荷にて血中の酸化ストレスが増加することが報告されており,運動には負の側面も存在する.この酸化ストレスは,活性酸素の産生とその活性酸素を還元する抗酸化物質の量のバランスによって決定される.もし抗酸化物質による防御能が活性酸素の産生増加に適応できなかった場合,そのバランスが崩れ,活性酸素が高まった状態となり,この活性酸素は種々の疾患の病因と関連があると報告されている.運動という言葉は一般的に有酸素性運動を指すことが多いが,無酸素性運動もあり,スポーツや日常生活活動においては有酸素性運動と無酸素性運動の2つの側面を組み合わせた身体活動が行われている.先行研究では無酸素性運動後の酸化ストレスについて報告しているものは少なく,不明な点が多い.そこで本研究では,30秒間の無酸素性運動であるWingate Anaerobic Testを実施し,その前後で活性酸素の指標として血漿中ヒドロペルオキシド濃度を,抗酸化物質の指標として血漿中抗酸化力の変化を検討し,無酸素性運動負荷後に生体における酸化還元反応の全体像を明らかにすることを目的とした.【方法】健常若年者11名(年齢: 21.4±1.7歳,身長: 171.6±7.4歳,体重: 58.8±5.7kg)を対象とした.無酸素性運動負荷として,無酸素パワー測定用自転車エルゴメータ(POWERMAX-VII; Combi)を使用し,Wingate Anaerobic Testを実施した.対象者は体重の7.5%の負荷にて30秒間の全力ペダリング運動を行い,無酸素性運動能力の指標であるパワーとピーク回転数を測定した.対象者は,十分な安静の後に運動負荷前,運動負荷直後,運動負荷15分後に指尖より採血を行い,血中乳酸測定器(Lactate Pro; Arkray)にて血中乳酸濃度を測定した.また,フリーラジカル評価装置(Free Radical Elective Evaluator; Diacron)を使用して,derivatives of reactive oxygen metabolites テストにより血漿中ヒドロペルオキシド濃度を,biological anti-oxidant potential テストにより血漿中抗酸化力を測定した. 【説明と同意】測定の趣旨・方法について口頭および書面にて説明を行い同意を得た.本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座研究倫理委員会(承認番号:0906)の承諾を得て実施した.【結果】対象者の最大パワーは480.7±55.9 wattであり,最大回転数は139.0±13.5 rpmであった.また,安静時および運動負荷直後の血中乳酸濃度は,それぞれ2.0±1.3 mmol/L,14.6±2.3 mmol/Lであった.血漿中ヒドロペルオキシド濃度は運動負荷前後で有意な変化を認め(P = 0.024),運動負荷前と比べ運動負荷直後(P = 0.005)と運動負荷15分後に有意に増加した(P = 0.034).一方血漿中抗酸化力も運動負荷前後で有意な変化を認め(P < 0.001),運動負荷前と比べ運動負荷直後(P < 0.001)と運動負荷15分後に有意に増加した(P < 0.001).血漿中ヒドロペルオキシド濃度と血漿中抗酸化力の関連を検討した結果,いずれの測定時間においても有意な相関を認めなかった.【考察】本研究の結果から30秒の無酸素性運動負荷は運動直後の血漿中ヒドロペルオキシド濃度を増加させ,その増加は運動終了15分後も継続していることが明らかとなった.これは無酸素性運動負荷による血中乳酸濃度の上昇が一因となり,活性酸素の産生増加に影響したと考えられた.また,抗酸化力も同様に運動負荷直後に増加し,15分後も運動負荷前と比べ有意に高値を示した.これは,無酸素性運動負荷によって上昇した血漿中ヒドロペルオキシド濃度の増加に対応するため,抗酸化物質が増加した結果であると考えられた.一方,いずれの測定時間においても血漿中ヒドロペルオキシド濃度と抗酸化力に有意な相関関係を認めなかったことから,それぞれの指標の変化には運動負荷前の酸化ストレスの個体間差が影響している可能性が考えられた.【理学療法学研究としての意義】本研究により30秒間の無酸素性運動負荷は,活性酸素の産生と抗酸化物質を増加させることが明らかとなった.またその関係は運動負荷15分後も変化しないことが明らかとなった.この結果は運動負荷による酸化ストレスの変化の一端を明らかにし,酸化ストレスを増加させない運動療法を考案する一助となる研究である.
著者
安田 雅俊 関 伸一 亘 悠哉 齋藤 和彦 山田 文雄 小高 信彦
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.227-234, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2

現在沖縄島北部に局所的に分布する絶滅危惧種オキナワトゲネズミTokudaia muenninki(齧歯目ネズミ科)を対象として,過去の生息記録等を収集し,分布の変遷を検討した.本種は,有史以前には沖縄島の全域と伊江島に分布した可能性がある.1939年の発見時には,少なくとも現在の名護市北部から国頭村にいたる沖縄島北部に広く分布した.外来の食肉類の糞中にオキナワトゲネズミの体組織(刺毛等)が見つかる割合は,1970年代後半には75–80%であったが,1990年代後半までに大きく低下し,2016年1月の本調査では0%であった.トゲネズミの生息地面積は,有史以前から現在までに99.6%,種の発見時点から現在までに98.4%縮小したと見積もられた.
著者
金子 多喜子 森田 展彰 伊藤 まゆみ 関谷 大輝
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.45-53, 2019 (Released:2019-08-23)
参考文献数
33
被引用文献数
3

目的:本研究の目的は,看護師の感情対処育成のため認知再構成法によるWeb版教育プログラムを実施し,感情対処傾向の変容効果を検証することである.方法:看護経験年数10年未満の看護師26名を対象に,認知再構成法を用いたWeb版教育プログラムを実施した.介入評価は,看護師版感情対処傾向,STAI日本語版,首尾一貫感覚(SOC)の尺度を使用し,介入前・後,および介入後1ヵ月の3期に測定した.結果:メンタルヘルスに効果的な対処である,患者の感情と看護師自身の感情の折り合いをつけ調整する“両感情調整対処”が高まり(F(2, 48) = 3.61, p = .035),感情への対処自信も高まった(F(2, 48) = 5.02, p = .010).また,その効果は概ね介入直後よりも介入後1ヵ月において変容を認めた.結論:本研究のWeb版教育プログラムの実施により,看護師の感情対処傾向を変容させる可能性が示唆された.
著者
三隅 二不二 関 文恭 篠原 弘章
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.173-191, 1969-03-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
23

本研究は, 討議集団におけるPM機能を, 集団成員による, 他者評定にもとづいて, 評定尺度の項目作成を試みた。第1研究から第4研究までの一連の因子分析による尺度項目の検討を行なった。その結果, 本研究で用いた評定尺度項目は, 討議におする2つの次元, すなわち討議の目標達成次元 (P次元) と討議の過程維持次元 (M次元) を測定していることが明確にされた。本研究で用いた討議集団のPM評定尺度にBurk (1967) の研究結果を加えると, P次元の項目には17項目, M次元の項目には14項目が含まるものとして考察された。
著者
中村 仁彦 関口 暁宣
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.918-926, 1997-09-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

Chaos represents one of mysterious rich behaviors of nonlinear dynamical systems. A lot of research efforts have been done for mathematical theory behind chaos. In this paper, we develop a method to provide a mobile robot with the chaotic nature. The chaotic mobile robot implies a mobile robot with a controller that ensures chaotic motion. According to the phase tansitivity, one of the two basic features with the sharp dependence on initial condition that characterize chaos, the chaotic mobile robot is guaranteed to scan the whole connected work space. For scanning motion, the chaotic robot does not require the map of work space. It only requires to measure the normal of boundary when it comes close. A mobile robot with such characteristics may find its applications as a patrol robot or a cleaning robot in a closed floor or building. The sharp dependence on initial condition also yields a favourable nature as a patrol robot since the scanning trajectory becomes highly unpredictable. We design the controller such that the total dynamics of mobile robot is represented by the Arnold equation, which is known to show the behavior of non-compressive perfect fluid. Experimental results illustrate the usefulness of the proposed controller.
著者
岩尾 一生 小林 道也 及川 孝司 中駄 優作 藤崎 博子 室谷 光治 伊藤 昭英 辻 昌宏 井出 肇 遠藤 泰 関川 彬 齊藤 浩司
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.112-117, 2008 (Released:2009-09-04)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

A questionnaire survey was conducted to investigate the use of health foods among outpatients with diabetes mellitus (DM) at the Health Sciences University of Hokkaido Hospital.Responses were obtained from 69.2% of the patients (180 out of 260).The proportions of patients who had used health foods previously or were using them at the time of the survey were 16.7 and 37.2%,respectively,indicating that more than half of the patients had experience of taking health foods and this was irrespective of sex and age.The most frequently consumed health foods were Aojiru (n=25)followed by Kurozu (n=24)and blueberry extract (n=17).Among the health foods taken,those that influence blood sugar considerably were guava leaves polyphenol (n=16),Gymnema sylvestre extract (n=1),Gymnema sylvestre tea (n=1),and Aloe Vera (n=1).One patient was taking a Chinese health food that contained glibenclamide.Many patients took health foods to keep healthy and as a nutritional supplement,and most of them had not consulted their doctors or pharmacists about the use of health foods.More than 70% of the patients targeted by this study had complications such as hypertension.Since there is a possibility of health foods aggravating DM and its complications and of interactions between them and drugs used to treat DM,doctors,pharmacists and other co-medical workers should provide patients with information on the ingredients of health foods as well the adverse effects that they could have.
著者
原口 増穂 牧山 和也 千住 雅博 船津 史郎 長部 雅之 田中 俊郎 橘川 桂三 井手 孝 小森 宗治 福田 博英 森 理比古 村田 育夫 田中 義人 原 耕平 関根 一郎
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.45-49, 1987 (Released:2009-06-05)
参考文献数
11

高アミラーゼ血症を伴ったクローン病の1例を経験した.症例は27歳の男性で上腹部痛を主訴に受診高アミラーゼ血症がみられたため膵炎として治療したが約3カ月にわたって高アミラーゼ値は持続した.アミラーゼ値の正常化後も腹痛が続くためにさらに精査を進め,小腸造影での縦走潰瘍などの典型的な所見と生検によるサルコイド様肉芽腫の証明によりクローン病の確診を得た.高アミラーゼ血症については,ERP,CT,USにて膵炎を疑わせる膵管あるいは膵実質の器質的変化がみられないこと,高アミラーゼ値の持続期間が長いこと,腹痛とアミラーゼ値の相関が乏しいことなどより膵由来のものではないと考えられた.したがって本症例はクローン病に膵炎が合併したものではなく,高アミラーゼ血症を伴ったことについては他の機序,たとえば腸管アミラーゼの関与などが示唆され,興味ある症例と思われ,文献的考察を加え報告した.