著者
阿部 佑一 坂井 優美 鬼立 めぐみ 原 正 久保田 隆廣
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.85-91, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
10

要旨:皮膚疾患に多用されるステロイド外用剤は,著しい治療効果をもたらす重要な成分である.外用剤の混合による配合変化に関する情報は必須であるが,十分な検討は行われていない.本研究では,実臨床でもステロイド外用剤と混合されることのあるザーネ® 軟膏との配合変化について検討した.油脂性基剤であるステロイド軟膏はザーネ® 軟膏と混合すると高温になるほど基剤が不安定になり,ステロイドの種類によっては含量が著しく低下した.ザーネ® 軟膏とo/w 型ステロイドクリームの混合では基剤は安定していた.ステロイド含量は高温条件下で低下したが,ステロイド軟膏との配合変化より緩やかであった.そのためザーネ® 軟膏との混合はステロイドクリームのほうが好ましいと考えられる.しかし,ステロイドの種類や製品によっては配合変化する組み合わせがあるため,患者の症状や薬剤の保存状態,コンプライアンスに合わせた薬剤選択が重要である.
著者
本田 一陽 桜井 誠 千田 圭二 阿部 憲男 清水 博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.200-204, 2002-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

高齢者の肺炎を診療する場合, 濃厚な治療が行われたにも関わらず予後が必ずしも良くない症例に遭遇することがある. このような致死的細菌性肺炎について, 診療上どのような問題点があるか, 得られた文献を基に, 当院の症例についてそれぞれの問題点のスコア化を試み, 分析した. その結果, 致死的な細菌性肺炎においては, (1) 発症時起炎菌としてmethicillin resistant Staphylococcus aureusおよびPseudomonas aeruginosaが高率に検出されたこと, (2) 不顕性嚥下性肺炎の診断の遅れがあること, (3) 鬱血性心不全の合併率が高いごと, ならびに (4) 低栄養および高齢化による免疫不全が存在すること, などが臨床上の問題点としてあげられた. また, 他の致死的疾患と比較した場合, 高齢に加えて (1) 発熱, (2)膿性疲, (3) 白血球増多, (4) 画像所見改善の有無, (5) 臓器障害改善の有無および(6)酸素投与の中止の可否などが, 肺炎改善の臨床的指標としてあげられた.
著者
渡邉 真 阿部 浩明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11687, (Released:2020-03-30)
参考文献数
20

【目的】随意運動機能と歩行能力に乖離がみられた前頭葉内側面損傷例に対し,本現象の背景に運動開始困難例があると推察し外的刺激を用いたアプローチを試み,症状の改善を認め屋内歩行自立を獲得したため報告する。【対象】右前大脳動脈閉塞により左下肢の随意運動が著しく困難となったものの,移乗動作や歩行時には明らかな支持性の低下がみられなかった70 歳代の女性である。【方法】視覚情報や聴覚情報を活用した外的刺激を用いた理学療法を実施した。【結果】外的刺激の提供によって運動開始困難には改善がみられ,各種起居動作時の随意運動障害は改善し,歩行時の運動開始困難の改善が図れ,退院時には屋内歩行自立までに至った。【結論】前頭葉内側面損傷後に随意運動機能と歩行能力に乖離が生じた症例に対して,外的刺激を用いた理学療法を実践することは,運動機能を改善させるうえで有効な一治療手段となる可能性があるものと思われた。
著者
鈴木 みずえ 松井 陽子 大鷹 悦子 市川 智恵子 阿部 邦彦 古田 良江 内藤 智義 加藤 真由美 谷口 好美 平松 知子 丸岡 直子 小林 小百合 六角 僚子 関 由香里 泉 キヨ子 金森 雅夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.487-497, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
34

目的:本研究の目的は,パーソン・センタード・ケアを基盤とした視点から認知症高齢者の転倒の特徴を踏まえて開発した転倒予防プログラムの介護老人保健施設のケアスタッフに対する介入効果を明らかにすることである.方法:2016年5月~2017年1月まで介護老人保健施設で介入群・コントロール群を設定し,認知症高齢者に対する転倒予防プログラムを介入群に実施し,ケアスタッフは研修で学んだ知識を活用して転倒予防に取り組んだ.研究期間は,研修,実践,フォローアップの各3カ月間,合計9カ月間である.対象であるケアスタッフにベースライン(研修前),研修後,実践後,フォローアップ後の合計4回(コントロール群には同時期),転倒予防ケア質指標,学際的チームアプローチ実践評価尺度などのアンケートを実施し,割付条件(介入・コントロール)と時期を固定因子,対象者を変量因子,高齢者施設の経験年数,職種を共変量とする一般線形混合モデルを用いた共分散分析を行った.結果:本研究の対象者のケアスタッフは,介入群59名,コントロール群は70名である.転倒予防プログラム介入期間の共分散分析の結果,転倒予防ケア質指標ではベースライン63.82(±11.96)からフォローアップ後70.02(±9.88)と最も増加し,有意な差が認められた.介入効果では,認知症に関する知識尺度の効果量が0.243と有意に高かった(p<0.01).結論:介入群ではケアスタッフに対して転倒予防ケア質指標の有意な改善が得られたことから,転倒予防プログラムのケアスタッフに対する介入効果が得られたと言える.
著者
北條 彰 田角 勝 阿部 祥英 花岡 健太朗 小林 梢 板橋 家頭夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.598-606, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
20

特異的読字障害は学習障害の一つであり,知的障害がないにもかかわらず,読字を苦手とする.近年の研究では,文字の音声化や単語や語句をひとまとまりとして認識することの障害と考えられている.今回,特異的読字障害の児童が読字をする際の視線を分析し,読み方の特徴を評価した.対象は,読字障害群(17人),ADHD(注意欠陥多動障害)群(10人),コントロール群(12人)の児童である.対象の児童に音読検査課題を実施し,読み飛ばしと読み誤りの回数を測定した.同時に音読検査課題中の視線の動きをTobii社製の眼球運動計測・視線追跡装置(アイトラッカー)を用いて,注視点の数(視線を動かした数)や注視点の大きさ(視線が停滞した時間)を比較し検討した.1.読み飛ばし,読み誤りともに読字障害,ADHD,コントロールの順に回数が多い傾向があった.2.4種類の音読検査課題において,読字障害群の注視点数がコントロール群の注視点数よりも有意に多かった(p<0.01).読字障害の児童の視線の動きをアイトラッカーで可視化することは,読字障害の児童がどのように読字に困難を伴っているかを理解するために有用である.
著者
関口 靜雄 岡本 夏奈 阿部 美香
出版者
光葉会
雑誌
学苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
no.900, pp.60-69, 2015-10
著者
郡 修徳 小澤 武史 高崎 雅彦 江口 久恵 三輪 興三 沼 潤幸 阿部 信
出版者
公益社団法人 日本薬剤学会
雑誌
薬剤学 (ISSN:03727629)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.34-45, 2001 (Released:2019-05-18)
参考文献数
19

We prepared a troche containing camostat mesilate for the prevention of the mucositis in the mouth induced by cancer chemotherapy. The troche was formed by the direct compression of a powder mixture of camostat mesilate, a flavoring agent, hydroxypropylcellulose, and magnesium stearate. A troche containing 10% or 20% hydroxypropylcellulose and a flavoring agent of coffee or green apple diminished the bitterness of camostat mesilate. It was found that the metabolising rate of camostat in saliva was much slower than that in blood, although metabolites in saliva were the same kinds as those in blood. The amounts of camostat retained in the mouth after administration of the troche to healthy subjects were much larger than those after applying a gargle which had a bitter taste. Moreover, the troche containing the flavoring agent of green apple showed smaller amounts of camostat and its metabolites retained in the mouth compared to the troche containing the flavoring agent of coffee. It is considered that the increase in the secreting volume of saliva after administration of the troche containing the flavoring agent of green apple would prevent the retaining of camostat and its metabolites in the mouth. Moreover, the administration of a troche is more convenient than that of a gargle for patients. The troche prepared in this study would be a substitute dosage form for the gargle and promote the quality of life in patients.
著者
八幡 芳和 阿部 優子 角田 力彌
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.807-812, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

ペラグラは3D(dementia,diarrhea,dermatitis)と表現され,主としてビタミンの一種であるナイアシン(niacin)の欠乏により発症する疾患で,食糧事情の改善された現在では極めて稀な病態だが,本症例は単純糖質を主とした特殊な偏食による状態で発症した.診断,治療には精神神経症状や消化器症状など全身的な代謝障害の1つに,本症名称の皮膚科疾患が位置づけられていることの認識が重要である.
著者
近貞 直孝 鈴木 亘 三好 崇之 青井 真 根本 信 大嶋 健嗣 松山 尚典 高山 淳平 井上 拓也 村田 泰洋 佐竹 次郎 阿部 雄太 是永 眞理子 橋本 紀彦 赤木 翔
出版者
防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所研究資料 = Technical Note of the National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience (ISSN:1347748X)
巻号頁・発行日
no.430, pp.1-169, 2019-03-28

日本海溝海底地震津波観測網(S-net)などの稠密な沖合の海底水圧観測網によって得られる観測記録を用いて津波の浸水を即時に予測するための手法の開発を行った.この手法では,津波計算結果を用いて沖合の水圧変動と予測対象地域の沿岸水位分布,浸水深分布,到達時間を記録する津波シナリオバンク(Tsunami Scenario Bank; TSB)を予め用意する必要がある.理想的には,想定されるあらゆる地震による津波シナリオを登録すれば予測精度の向上が期待されるが,有限の時間と計算機資源では実現不可能である.そこで,本研究資料では,予測対象地域に対して効率的に津波シナリオバンクを構築するため の手順を千葉県九十九里・外房地域を対象とした場合の実例とともに示した.ここでは網羅性を担保するため,南海トラフや伊豆・小笠原海溝のように遠方の波源断層モデルを設定しているが,予測対象地域での沿岸水位分布の変化が大きくならないよう連続性が担保されるように波源断層モデルを間引いて計算コストを圧縮した.さらに,まずは比較的計算コストの小さい最小 90 m 格子の沖合津波計算を実施することで,沿岸に到達する津波を予め評価した上で計算コストの大きい最小 10 m 格子の陸域浸水計算を実施するようにした.陸域浸水計算においては,構造物条件の違いが与える浸水深分布への影響の評価を行った.ここでは,安全よりの「構造物が損傷しない場合」と危険よりの「構造物の損傷が大きい場合」に加えて,最も確からしい「構造物の損傷率を考慮する場合」について陸域浸水計算を実施し評価した.一方,津波浸水即時予測システムを構築する際には,情報の受け手である利用者のニーズに応じて予測に用いる構造物条件を決定する必要がある.最後に,構築した津波シナリオバンクの妥当性と予測手法(Multi-index 法)の検証のため既往津波を模擬データとして評価し,一定程度の精度が得られて いることを確認した.また,多層ニューラルネットワーク回帰をMulti-index 法と併用することで予測 精度を向上することが出来ることを確認した.We have developed a new algorithm for a real-time tsunami inundation forecast in the Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program (SIP) titled "Enhancement of societal resiliency against natural disasters" using ocean bottom pressure changes taken by the Seafloor Observation Network for Earthquakes and Tsunamis along the Japan Trench (S-net). In this algorithm, we need to prepare the Tsunami Scenario Bank (TSB), which contains offshore tsunami waveforms at the observatory locations and the maximum tsunami height distributions, inundation depths and arrival times along the target coastal region. Ideally, TSB should contain tsunami information for all possible tsunami sources that may affect the target region, but it is impossible to prepare them in a finite time and computer resources. This technical note provides how we designed TSB for real-time tsunami inundation forecast and constructed the TSB for the Pacific coast of Chiba prefecture. Furthermore, to evaluate the propriety of our algorithm called the Multi-index method, we investigate pseudo tsunami scenarios represented paleo-tsunamis.
著者
阿部永著
出版者
北海道大学出版会
巻号頁・発行日
2007
著者
平野 直人 阿部 なつ江 町田 嗣樹 山本 順司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.1-12, 2010 (Released:2010-05-29)
参考文献数
94
被引用文献数
8 6

太平洋プレートが沈み込む手前で活動するプチスポット火山は,プレート屈曲に起因し,各火山活動は単発に終わる特徴があり,様々な海域で活動している.つまりプレート屈曲場であればどこでも同様の火山が存在し得る.そのような沈み込む手前のプレート上のプチスポット火山体は,沈み込むプレート本体の海洋地殻や,海山等の古い火山体よりも選択的に陸側に付加されていることが容易に想像できる.プチスポット火山の検討により,このような地質学の新展開に加え,海洋リソスフェアの理解に関する新展開も期待される.プチスポット溶岩がもたらす捕獲岩や火道角礫岩は,これまで我々が手に入れることの出来なかった古い海洋プレートの断片として貴重な情報をもたらす.これら岩石に地質圧力計を適用し,近い将来行われる若いプレート上での21世紀モホール計画の成果と合わせ,四次元的に海洋プレートが理解されることが大いに期待される.
著者
柏木 健司 瀬之口 祥孝 阿部 勇治 吉田 勝次
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.521-526, 2012-08-15 (Released:2012-12-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

This paper describes Saru-ana Cave, located along Kurobe Gorge in the Kanetsuri area, eastern Toyama Prefecture, central Japan. Saru-ana Cave (total passage length, ca. 120 m; relative height, ca. 40 m) opens onto a steeply inclined cliff face, 75 m above the bed of the Kurobe River. The cave consists of horizontal to inclined rooms and vertical shafts. Speleothems in the cave, although not abundant, include cave corals, flowstones, soda straws, stalactites, and a stalagmite. Fossil specimens of six Japanese Macaque individuals (Macaca fuscata) were collected from the cave for paleontological investigation.