著者
村田 勇 阿部 景香 斉藤 美穂 井上 裕 金本 郁男
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.691-700, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
14

The influenza virus causes seasonal influenza epidemics and, from time to time, worldwide pandemics. Seasonal influenza epidemics in winter cause increased morbidity because vaccination is aimed at preventing influenza. However, influenza treatment is limited because oseltamivir cannot be used in children. Recently, Kampo medicine containing maoto was reported to have anti-viral and antipyretic effects. In Japan, maoto is generally administered as concentrated extract-granules. However, children do not like to take the maoto extract-granules because of their distinctive smell and bitter taste. Therefore, masking the smell and bitter taste is necessary for administration to children who are unable to take oral medications. In this study, we developed and characterized a new chocolate formulation for masking the maoto extract, using human sensory tests.The chocolate bases A to J (10 forms) were selected from commercial products. The total evaluation score for the maoto extract-containing chocolate formulation-D (Mao/nC) was the highest of the 10 forms according to the human sensory test results. The maoto extract-containing adjusted chocolate formulation (Mao/OrC) was based on an adjusted version of the Mao/nC formulation. The Mao/OrC exhibited improved smell and sweetness and overall evaluation scores compared with the Mao/nC, according to the human sensory test results. The results of a dissolution test, drug release test, and viscosity and osmotic pressure of the Mao/OrC were improved compared with those of the Mao/nC, and those of bioequivalence were similar. These results suggest that the Mao/OrC could be used as a new masking chocolate formulation for preparation in hospitals.
著者
阿部 雅紀
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.237-241, 2019-08-01 (Released:2019-09-20)
参考文献数
21

慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease: CKD) の食 事療法としてのエネルギー摂取量の設定にあたっては, 目標とする体重とともに,摂取たんぱく質との関係が重 要である.エネルギーは,性,年齢,身体活動レベルな どを考慮するが,25~35 kcal/kg 標準体重/日で指導し, 身体所見や検査所見などの推移により適時に変更する. 過剰なたんぱく質摂取は糸球体過剰濾過を促進し腎機能 に影響を与え,腎機能低下時にはたんぱく質の代謝産物 が尿毒症物質として蓄積する.標準的治療としてのたん ぱく質制限は,ステージ G3a では 0.8~1.0 g/kg 標準体 重/日,ステージ G3b 以降では 0.6~0.8 g/㎏標準体重/日 が推奨されている.たんぱく質制限とともに摂取エネル ギー量も過度に不足すると Protein-energy wasting (PEW) を引き起こす可能性があるため,十分なエネルギー摂取 量を確保することが重要である.CKD においては,高 血圧・尿蛋白の抑制と心血管疾患の予防のため,6 g/日 未満の食塩摂取制限が推奨されている.ただし,過度の 減塩は害となる可能性があるため,3 g を目安として個々 の症例に応じて下限を設定する.血清 K 値は 4.0 mEq/L 以上,5.4 mEq/L 以下で総死亡,心血管疾患の発症リス クが低下する.
著者
石田 芳子 石川 千鶴子 阿部 テル子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.151-161, 2011-06-20
参考文献数
17

本研究は,多床室における間仕切りカーテン使用に対する患者の認識と使用状況を明らかにすることを目的とした。方法は,質問紙による無記名自己記入式の調査である。一般病棟4床室に入院している成人患者278名を対象に,カーテンの使用状況,カーテンを閉める理由,カーテンの開閉を思い通りにできているか,看護者に望むことについて調査した。有効回答235名のデータを分析した結果,夜間は約90%,日中は約25%の患者がカーテンを閉めていた。カーテンの閉め方は,終日閉めている患者は時間帯で差異を認め,一方夜間はベッド位置により差異を認めた。カーテンを閉める理由は,夜間は6カテゴリー,日中は5カテゴリーに分類され,コード数が最も多かった理由は【プライバシー】保持であった。患者にとって他者からの介入を拒みつつ個人の尊厳を守ることができるのはカーテン一枚で仕切られた空間であり,患者の個人空間に配慮した看護の重要性が示唆された。
著者
石間 妙子 関島 恒夫 大石 麻美 阿部 聖哉 松木 吏弓 梨本 真 竹内 亨 井上 武亮 前田 琢 由井 正敏
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.118-125, 2007-11-30
被引用文献数
1

現在、ニホンイヌワシAquila chrysaetos japonicaは天然記念物および絶滅危惧IB類に指定されており、その繁殖成功率は最近30年間で急速に低下している。繁殖の失敗をもたらすと考えられる要因の中で、近年、鬱閉した針葉樹人工林の増加による採餌環境の悪化が注目されつつある。この対応策として、2002年、林野庁は岩手県北上高地に生息するイヌワシの繁殖成績を改善するため、列状間伐による森林ギャップの創出を試みた。イヌワシの採餌環境としての列状間伐の有効性を評価するため、林野庁が試験的に実施した列状間伐区、間伐区と環境が類似している非処理対照区および事前調査によりイヌワシの採餌行動が度々確認された採餌区の3調査区を設け、イヌワシの探餌頻度および北上高地に生息するイヌワシの主要な餌であるノウサギとヘビ類の個体数を比較した。ノウサギ生息密度の指標となる糞粒数は、間伐区において伐採翌年に著しく増加したが、伐採2年後には減少し、3年後には伐採前とほぼ同じ水準まで減少した。ヘビ類の発見個体数は、調査期間を通していずれの調査区においても少なかった。イヌワシの探餌頻度は、調査期間を通して間伐区よりも採餌区の方が高かった。このように、本研究で実施された列状間伐は、イヌワシの餌動物を一時的に増やすことに成功したものの、イヌワシの探餌行動を増加させることはできなかった。今後、イヌワシとの共存を可能にする実用的な森林管理方法を提唱するため、イヌワシの採餌環境を創出するための技術的な問題が早急に解決される必要がある。
著者
阿部 哲
出版者
Japan Association for Middle East Studies (JAMES)
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.35-62, 2018-07-15 (Released:2019-10-01)

本稿は、イラン都市部における環境問題に焦点を当て、近年同国で現出している環境をめぐる独自の環境言説およびその実践について人類学的考察を行うものである。具体的には、イランにおける近年の環境問題の傾向を明らかにするとともに、イラン人の環境問題へ対する多様なアプローチを検証することにより、現代イランの社会文化的様相を描き出すことを試みる。 イランはイスラーム革命(1979年)以後、米国との国交断絶、イラン・イラク戦争、欧米主導の経済制裁等により経済基盤を失い、1990年代以降は、経済の復興に傾注してきた。制裁下で、イラン政府は石油産業をはじめ、農業や製造業分野へ積極的な投資を行いながら一定の経済成長をおさめ、中東における軍事経済大国の地位を確立するに至った。経済発展は一方で、イラン国内でさまざまな二次的弊害を引き起こし、国民生活に多大な影響を及ぼしている。とりわけ、大気汚染や土壌汚染をはじめとする環境問題は近年深刻化の一途をたどり、環境対策の重要性が年々増している。 イラン政府による環境政策では、科学的手法で環境問題の原因を特定する環境科学が全国的に展開され、科学的アプローチが広く適用、実践されている。環境科学を通して拡張しているこの科学的パラダイムの興起は、イランにおける西洋近代科学知識の普及を意味する。特徴的であるのは、近代西洋の科学的パラダイムが同国の文化歴史的脈絡の中で独自に「翻訳(translation)」されている点である。すなわち、イラン人が環境問題に取り組む上で、科学的パラダイムとともに他の概念枠に基づいた環境アプローチが見られるのである。ナショナリスティックな情操を媒介させた環境言説や、昨今宗教指導者層によって奨励され始めたイスラーム教義に根ざした環境言説は、イランの環境運動における同国の文化歴史的脈絡をとくに反映させている。現代イランの環境問題をめぐる人類学的視座による考察は、同国の社会文化についての知見を深める上で示唆を与えるものである。
著者
光島 徹 永谷 京平 有馬 信之 横田 敏弘 南原 好和 井熊 仁 津田 純郎 大橋 茂樹 横内 敬二 阿部 陽介 野村 朋子 抱井 昌夫 吉田 美代子 浅野 幸宏 小久保 武
出版者
JAPAN SOCIETY OF NINGEN DOCK
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.23-27, 1989

4種類の免疫学的便潜血テストを,全大腸内視鏡所見を至適基準として評価した。一泊人間ドック受診者1,800名を対象として検討した結果,発見大腸癌6例に対する感度及び特異度はそれぞれ,イムディアヘムSPO.33,0.98,0Cヘモディア0.17,O.98,モノヘムO.33,0.99,チェックメイトヘモO.50,0.97であった。
著者
阿部 邦昭 阿部 勝征 都司 嘉宣
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.23-70, 1993

1992年9月2日に中米ニカラグア国太平洋側沖合い海域に発生したニカラグア地震と津波の野外調査を行い,ニカラグアの太平洋海岸での震度と津波浸水高の分布図などを得た.沿岸の各集落での改正メルカリ震度階では震度2または3であって,まったく地震動による被害も生じず,揺れは気がつかない人も多数いるほど小さかった.これに対して,津波の浸水高は,南部海岸で100kmの長さにわたって,平均海水面上6~7mにも達したことが明らかとなり,今回の地震が1896年の明治三陸津波の地震と同様の,地震動が小さかった割に津波規模が異常に大きな「津波地震」であることが判明した.本震発生の直後の余震分布から判断すると,震源の広がりは,ニカラグアの太平洋側海岸線に平行に西北西.東南東に走る海溝軸にそった長さ約200km,幅約100kmの海域と判断される.津波の被害を生じたのもほぼこの震源域と相応した海岸区域であった.また地震波の解析からこの地震は,ココスプレートがニカラグア本土を載せたカリブプレートに沈み込む際の,両プレートの境界面でのずれのよって生じた低角の逆断層型の地震であることが判明しているが,ニカラグアの2ヵ所で得られた検潮記録,および引き波から始まったと各地で証言されている津波初動の傾向はこの地震メカニズムと調和的である.検潮記録,証言,および津波伝播の数値計算結果によると,津波は地震が発生して44~70分後に,まず小さな引き波が来て,その直後に大きな押し波が押し寄せるという形で海岸を襲った.沿岸各地では15分周期で2ないし3波継続したと証言されている.また津波の被害に関しては,浸水高が4mを越すと急激に人的被害が増加すること,津波による建築物の被害の割に死者数が少なかったこと,死者数のうち子どもの占める割合が大きいことが今回の津波被害の特徴であった.A survey study of the Nicaragua Earthquake and Tsunami on September 2, 1992 was carried out on the Pacific coast of Nicaragua. Interviews of the residents and measurements of tsunami trace height revealed only a small seismic intensity in a sharp contrast with a large tsunami. Tsunami height of 2-10 meters above mean sea level was obtained along the whole Nicaraguan coast, although the seismic intensity was only 2 or 3 in the modified Mercalli scale. The small seismic intensity suggests that the present event was a tsunami earthquake characterized by small excitation of short period seismic wave in comparison with large excitation of the tsunami.
著者
宇賀 大祐 阿部 洋太 高橋 和宏 浅川 大地 遠藤 康裕 中川 和昌 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】群馬スポーツリハビリテーション研究会では,県内の各高校野球大会にて傷害に対するテーピングや応急処置,試合後のクーリングダウン等のメディカルサポートを実施している。筋痙攣は最も多い対応の一つであり,選手交代を余儀なくされることもある。本研究の目的は,メディカルサポートにおける筋痙攣の対応状況を明らかにし,適切な対応策について検討することである。【方法】対象は過去7年の全国高等学校野球選手権群馬大会とし,メディカルサポートの全対応人数・件数,筋痙攣の対応人数・件数,好発部位,各試合日の1試合当たりの発生件数(発生率),発生時間帯,発生イニング,プレー復帰状況を調査した。また,気候の影響を検討するため,気象庁発表の気象データを元に,気温及び湿度,日照時間と発生率について,ピアソンの積率相関係数を用いて検討した。【結果と考察】全対応数は199名・273件であり,そのうち筋痙攣は75名(37.7%)・146件(53.5%)であった。好発部位は下腿及び大腿後面であった。発生率は大会初期の1,2回戦が平均0.37件/試合と最多で,その後は徐々に減少した。時間帯による発生件数はほぼ同様で,イニングは各試合後半の7,8,9回が多かった。気象データと発生率は,いずれも相関は認められなかった。夏季大会の筋痙攣は熱中症症状の一つとして現れることが多いが,気象データとの関連はなく大会初期に多いことから,大会前の練習内容や体調管理等による体温調節能の調節不足が一要因として大きな影響を及ぼし,そこに疲労が加わることで試合後半に多発するのではないかと考えられる。また,プレー復帰状況は,36.8%の選手が選手交代を余儀なくされており,試合の勝敗に影響を与えかねない結果となった。発生予防が重要な課題であり,大会中の応急処置のみでなく,大会前のコンディショニングや試合前や試合中の水分補給方法等の暑さ対策を中心に指導することが重要と考える。
著者
常田 文彦 石川 正夫 渋谷 耕司 輿水 正樹 阿部 龍二
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.585-589, 1984
被引用文献数
8 14

銅クロロフィリンナトリウム(SCC)より消臭力が優れていて,口腔に利用できる消臭剤を探索するためにメチルメルカプタンを用いた消臭力試験法を設定し,生薬,スパイス等植物のメタノール抽出物の効果を測定した.その結果次の点が明らかになった.<br> (1)消臭作用を示した植物(消臭率60%以上のもの)は65科167種中23科40種,このうちシソ科に属する植物14種はすべてが有効であった.<br> (2) SCC程度以上の消臭力を示したものは6種あり,そのうちスナウ,ホオノキ,クコは過去に消臭作用をもつ植物として発表されたことはない.またセージ,ローズマリー,タイムはその精油に魚臭抑制作用があることが知られているが,本研究では非精油画分にメチルメルカプタン捕捉作用が認められ,新規の消臭成分め存在が示唆された.
著者
阿部 誠文
出版者
九州女子大学・九州女子短期大学
雑誌
九州女子大学紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:09162151)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.79-94, 1999-02

小稿は、旧ソ連抑留俳句のうち、第一方面軍軍医部長であり、細菌戦準備にかかわったとして矯正労働二五年の刑を受けた川島炬士と満州国交通部次長であった田倉八郎の俳句を取りあげる。両者の共通しているのは、要人・高官という身分の高さであり、高齢であったことである。抑留生活も身分によって、その待遇がことなり、収容所の環境や食事、労働の程度も違っていた。前稿「行方なき非道の旅路-旧ソ連俳句=船水以南・佐久間木耳郎」と比べれば、いっそうはっきりする。要人・高官・高齢者の抑留生活は、一般兵士や民間人の抑留生活と比べれば、俘虜の日溜まりのようにゆるやかであった。そのことを明らかにして、旧ソ連抑留俳句の一面を明らかにしたい。
著者
阿部 征次
出版者
東京女子体育大学・東京女子体育短期大学
雑誌
東京女子体育大学紀要 (ISSN:03898806)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.104-112, 1985-03

陸上競技のトレーニングの性差をどのようにとらえているかを知るために,高校指導者に質問紙により調査し,因子分析をし次のような結果を得た。1)練習意欲・研究心に男子はすぐれ,他の選手や本で研究し,テレビ,ラジオなどで関心をもち,自分で計画を立て実践すると見られている。2)練習や試合でコーチに依存する傾向は,女子の方に強く,男子に自主性があるとされている。3)女子の練習は質より量であり,練習を多く行い休養はそれほど必要ないと思われている。4)男子は強い選手への指向があるのに対し,女子はウェアや異性への関心が高く気分によって練習態度が変わることが多いとみなされている。これらのことは,女子が効果的に陸上競技のトレーニングを行っていくことの難しさを示しているように思われる。高校の指導者からよく耳にする「女子の指導は難しい」あるいは「面倒で手がかかる」という声を,そのまま表わしているように感じる。このような結果を,筆者の立場(女子を対象とする指導者)からみると,次のような見方をすることができる。女子競技者には,練習意欲をもたせるために,常に身近な目標をもたせ,練習課題を明確に示して研究するように指導する。練習計画の立案やその遂行に絶えずアドバイスを与えて,練習の進行,試合での力の発揮に精神的援助を与える。男子より多めの練習をくり返し行うようにし,練習に集中しにくい条件を取り除いてやる。このような配慮をすることによって女子の指導の効果を男子以上にあげることも可能であろう。今回の調査票の質問項目間の相関行列から,項目数を整理し5段階尺度を女子の特性をより明確にするよう工夫し,今後研究を続け,女子のトレーニングの効果をあげるための指導上の留意点を明らかにしていきたい。