著者
寺本 洋一 馬場 尊 才藤 栄一 太田 喜久夫
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, 2003-03-18

健常成人8人(平均35.6歳)を対象に,息こらえによる酸素分圧の低下が酸素飽和度に反映されるかを検証した.実測値の測定は最大吸気から約1,2,3l/呼気し息こらえを開始し,パルスオキシメーターにて安静時,20,40,60秒後,最低の酸素飽和度を測定,息止め時間も記録した.理論値の測定は,Borenの残気量予測式等を用い,肺胞内空気の酸素消費に着目し算出した.実測値と理論値の比較で最高(R=0.85)の相関を認めた.実測値と予測値には10〜20秒のタイムラグがあり,約10〜20秒後の実測値において,予測値とほぼ同値の酸素飽和度が認められた.肺胞壁内毛細血管から上肢末梢血管まで血液が循環するのに必要な時間を考慮する必要があった.予測値と20秒後の実測値の相関をみると最高R=0.81の相関を認めた.各症例の酸素飽和度低下度と各パラメーターとの相関では高年齢,肥満,低肺活量,低活動性,smoking index高値の症例において酸素飽和度低下の傾向が著しいことが示唆された.
著者
河野 光久 國森 拓也 馬場 俊典
出版者
山口県水産研究センター
雑誌
山口県水産研究センター研究報告 = Bulletin of Yamaguchi Prefectural Fisheries Research Center (ISSN:13472003)
巻号頁・発行日
no.15, pp.35-43, 2018-02

山口県瀬戸内海は,西から周防灘,伊予灘及び広島湾の一部で構成される。本海域の大部分の水深は50m以浅で,西部の山陽小野田市以西では広大な干潟が形成されている。本海域に出現する魚類については,藤岡が1952年~1980年代の採集記録に基づき294種を報告しているが,その後総括的な報告はなされていない。また,瀬戸内海では1994年以降水温上昇に伴い,新奇暖海性魚類が増加していることから,最新情報を含めて魚類相の現状を明らかにしておくことは,今後の水温変動が魚類相や分布に与える影響を予測するために重要であると考えられる。そこで,本研究では山口県瀬戸内海域で確認された魚類に関する既往の文献のほか,著者らの未発表の調査資料を網羅的に整理し,山口県瀬戸内海産魚類目録を予報として報告する。
著者
伊藤 剛 馬場 雅裕 奥村 治彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-6, 2002
参考文献数
3
被引用文献数
2

LCDの中間調応答を高精度に再現できる動画像シミュレータを開発した。本シミュレータは50Hzから540Hzのリフレッシュレートに対応可能な高速CRTと大量の画像データを高速且つフレキシブルに出力可能なフレームメモリを備えている。よって、LCDのように1/60秒間は同じ画像を表示し続けるホールド型表示をインパルス型表示である高速CRT(リフレッシュレート480Hz)で再現できる。今回はLCDの中間調応答に着目し、各中間調での応答特性を測定後、その実測データに基づいて1/480秒毎の画像を作成した。これにより、応答特性を指数近似した場合には見られなかった画質劣化までも正確に再現できるようになった。
著者
菅沼 岳史 螺澤 庸博 小野 康寛 伊東 令華 馬場 一美
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental medicine research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.111-116, 2012-07-31
参考文献数
2

本学では学生のコミュニケーション能力,自学自習能力,問題解決能力,臨床推論・判断能力などに代表される基礎的臨床能力を向上させるために,南カリフォルニア大学歯学部にて開発された仮想患者 Virtual Patient(以下VP)システムをべースにした VP システムを開発し,導入を進めている.このシステムは,学習者がいつでもどこからでもWebにより学内サーバにアクセスして学習することができ,テキストベースで行う医療面接,歯科基本セットから器具選択して行う診査部分と,検査法,診断,治療法の選択を行う5つのパートで構成されている.現在運用されているVP症例は,昭和大学教育研究推進事業として各講座,診療科に提出していただいた症例の中から,医療面接から治療法の選択までのフルバージョンの3症例と医療面接のみの5症例を作成,運用している.本稿では,最新版のシステムの概要と現在までの運用実績とその評価および今後の展開について紹介する.
著者
青木 康彦 丸瀬 里菜 河南 佐和呼 金 晶 馬場 千歳 藤本 夏美 伊 薇琳 松尾 祐希 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.249-261, 2020

本研究は,ASDの診断がある児童2名,定型発達児(対照児)1名に対して,シミュレーション訓練としてボードゲーム(野球盤)を使用したルール理解指導を実施し,ルール実施,ソーシャルスキルがキックベース場面へ般化するかを検討することを目的とした。その結果,2名中2名のASDのある児童において,野球盤でのルール指導期前よりも後でキックベース場面のルール実施率が高いことが明らかになった。また,ソーシャルスキルについては,2名中1名のASDのある児童にキックベース場面での生起率の上昇が認められた。対照児においては,キックベースの経験回数を重ねることで,キックベースのルール実施率の上昇傾向が認められたが,ソーシャルスキルの生起率については変動がなかった。考察では,野球盤を使用したキックベース指導の利点や,ソーシャルスキルについて指導効果が認められなかった児童に対する指導手続きの課題等について論じられた。
著者
四戸 隆基 佐藤 正夫 馬場 岳士 角田 恒
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1, 2007

【目的】高齢者大腿骨近位部骨折において医療費高騰の要因とされる「社会的入院」の実態を知る.【対象】2003~2005年に加療した60歳以上の大腿骨近位部骨折症例のうち解析可能であった75例(男24,女51例)を対象とした.年齢は平均81.2歳(60~97歳).骨折型の内訳は頚部骨折39例,転子部骨折36例.治療法は保存治療1例,人工骨頭置換29例,骨接合(頚部骨折)11例,骨接合(compression hip screw,以下CHS)21例,骨接合(ネイルタイプ)13例.在院日数は平均57.3日(15~163日).【方法】主治医より本人,家族に退院勧告した日以降の入院日数を「社会的入院日数」と定義し,社会的入院日数が2週間を越える「長期群」(46例),2週間以内の「標準群」(29例)に群別し各項目を比較した.【結果】1)年齢:長期群81.7歳(60~97歳),標準群83.4歳(64~94歳).有意な差は認めず.2)歩行能力:当施設のGrade分類を用い歩行能力をGrade1からGrade4までの4段階に分けた.退院時の歩行能力は,長期群でGrade1が21例(45.7%),Grade2が11例(23.9%),Grade3が14例(30.4%).標準群でGrade1が11例(37.9%)Grade2が4例(13.8%)Grade3が13例(44.9%),Grade4が1例(3.4%).長期群で退院時歩行能力が高い傾向にあった.3)治療:長期群は人工骨頭15例(32.6%),CHS15例(32.6%),ネイル9例(19.6%),骨接合(内側)7例(15.2%),標準群は人工骨頭14例(48.3%),CHS7例(24.1%),ネイル4例(13.8%),骨接合(内側)3例(10.3%),保存治療1例(3.4%)で治療されていた.治療による差は明らかでなかった.3)退院後の生活環境:長期群で,退院後自宅生活者35例(76.1%),施設入所11例(23.9%).標準群で自宅16例(55.2%),施設13例(44.8%).長期群で自宅退院が多かった.4)社会的入院日数と在院日数:社会的入院日数と在院日数は有意な強い正の相関を示した.5)社会的入院の理由:長期群46例の退院できない主因は, 疼痛の残存と日常生活動作の不安が入院継続希望の理由である「本人の希望」が15例(32.6%), 経済的な理由や家族関係の問題を理由とした「家族の希望」が9例(19.6%), 手すり増設や段差解消等の「自宅整備のため」12例(26.1%),「施設の空き待ち」10例(21.7%).であった.中には,永久的な入院を家族が希望する例や,本人と家族の施設入所に対する意志の相違が著しく紛糾した症例もあった.【考察】当院においては,高齢者の大腿骨近位部骨折症例の在院日数は社会的入院により長期化していた.社会的入院の長期化の要因としては,実際の歩行能力や治療法,骨折型等の純粋な医学的問題よりも本人や家族の意識の問題や経済的事情,後方施設との連携の方がより重要であった.入院が長期化することは国民医療費の増大に繋がり,病床稼働率の低下に伴う病院経営の悪化や空床不足による地域医療への悪影響といった弊害をも生み出す.社会的入院長期化の改善のため医療スタッフが適切な治療や効果的なリハビリ等の「狭義の医療」に力を注ぐのは当然だが,ソーシャルワーカーと本人および家族との相互理解を深め後方施設との風通しを良くするなど「広義の医療」を実践するべく大きな視野を持つ事が望ましい.また経済的な問題も決して少なくない.介護保険の適用や診療報酬の問題など行政の対応に依存する部分については,現場の状況を最もよく知る我々が声を発信し理解を求めていくことが必要であると改めて認識した.
著者
吉田 安規良 島田 悠那 馬場 壮太郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.355-358, 2020

<p>地学分野おける野外観察学習は,小中学校ともに学習指導要領で重要視されているものの実施率が低い.本研究では,理科の学習指導に授業者の視点でICTを身近なものとして活用するための在り方を検討するため,マーカーレス型ビジョンベースAR技術を用いて,沖縄で実際に観察可能な断層としゅう曲に注目した中学校向け地層観察代替教材を製作した.また,教材製作過程から「理科を教える教師教育」の在り方を展望した.学習内容に興味関心がある学生は,高度なICT活用能力が無くても大学での学びを生かして自らのアイデアを基盤にARを利用した地層観察代替教材が製作可能である.製作した教材は,現職教員からARと携帯情報端末を用いるという枠組みは肯定的に評価されたが,内容構成や使用のメリットに関しては十分には受け入れられなかった. </p>
著者
尾上 洋介 馬場 一貴 小山田 耕二
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.38, no.151, pp.23-27, 2018 (Released:2019-10-01)
参考文献数
19

近年,査読付き論文誌への科学論文の投稿件数が増加したことで,研究者の論文査読の負担が増大している.査読負担の増大は,論文掲載の遅れや査読の質の低下を招いており,これまで科学を支えてきた査読制度の崩壊も危惧されている.そのため,研究者の査読負担を軽減するための査読支援技術の開発は急務である.本研究では,人工知能技術を用いた査読支援について検討する。論文の採否を分ける要因として論文の文章構造に着目し,科学論文の文章構造を数値的に処理するために,Doc2Vecを用いた文章ベクトルを算出した.国際論文誌Journal of Visualizationに投稿された不再録も含めた591件の論文アブストラクトを対象に,再録・不再録論文の文章構造の差異を調査した.さらに,文章構造に基づいて論文の採否判定の分類モデルを作成し,論文のアブストラクトのみでも75%の精度で採否判定ができることが確認された.
著者
馬場 芳之 藤巻 裕蔵 吉井 亮一 小池 裕子
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.53-64,107, 2001-05-31 (Released:2007-09-28)
参考文献数
25
被引用文献数
21 21

ミトコンドリアDNAは母系遺伝で,組換えがおきないこと,および塩基置換頻度が高いことなどから,多型解析に適した遺伝子である.ミトコンドリアDNAの中でも特に塩基置換頻度が高いコントロール領域を用い,日本に生息するニホンライチョウに関して,個体群の遺伝的多型を調べた.生息地から採集した脱落羽毛を試料として用い,ライチョウ類に特異的なプライマーを作成し,2度のPCRを繰り返すことによって十分な量のDNAを増幅した.ニホンライチョウとエゾライチョウ各1サンプルに関してコントロール領域全領域の塩基配列を決定し,ニワトリ,ウズラの配列と比較したところ,ニホンライチョウとエゾライチョウのコントロール領域中央部,central domain,には CSB-1, F box, D box, C box 領域が認められ,両側の left domein と right domein に置換が多くみられた.コントロール領域left domainの441塩基対の配列を決定し,飛騨山脈の4地域から採集されたニホンライチョウ21サンプルは,すべてハプロタイプLM1であった.また赤石山脈で採集されたニホンライチョウ1サンプルからはハプロタイプLM2であった.同じ領域を分析した北海道のエゾライチョウ36サンプルでは21ヶ所の塩基置換が検出され,21個のハプロタイプに分別されたことに比べ,ニホンライチョウの遺伝的変異は非常に少ないことを示した.花粉分析によると,ニホンライチョウの主要な生息場所であるハイマツ帯がヒプシサーマル期の前半(6,000-9,000年前)にほとんど消失するほど縮小したことが示されている.このような生息環境の変遷がニホンライチョウ個体群にボトルネックを引き起こし,遺伝的変異が非常に低くなったと考えられる.
著者
馬場 存
出版者
日本音楽医療研究会
雑誌
音楽医療研究 (ISSN:18832547)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.13-37, 2008 (Released:2009-11-20)
参考文献数
56
被引用文献数
2

統合失調症の概略を、その歴史、症候学、病態、治療について解説した。特にシュナイダーの一級症状、自我障害、基本障害、陰性・陽性症状、認知障害、ストレス脆弱性モデル、器質力動論に力点を置いた。次に英語圏の統合失調症の音楽療法の報告を紹介し、筆者の担当した例を踏まえて統合失調症の音楽療法の奏効機序について仮説を議論した。さらに、今後望まれることとして、量的研究はむろん、その適応や技法の選択、精神病理学的モデルの構築を目指した研究の必要性を論じた。
著者
大前 麻理子 岩井 大 池田 耕士 八木 正夫 馬場 奨 金子 敏彦 島野 卓史 山下 敏夫
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.393-398, 2005-06-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1

耳下腺多形腺腫症例60例についてMRIT2強調画像の信号強度と病理像とを比較し, 検討を行った.MRIT2強調画像の信号強度を3タイプに分類したとき, 正常耳下腺組織より著明に高い信号を示すタイプは, 45例75%に認められた.軽度高信号から等信号を示すタイプは9例15%, 低信号のタイプは6例10%であった.これらの症例それぞれの病理像を見ると, 粘液腫様・軟骨腫様間質は高信号領域に相当し, 一方, 細胞の密な領域は軽度高信号から等信号領域に, 線維性結合織は低信号領域に一致した.耳下腺多形腺腫はMRIT2強調画像で一般に高信号を示すとされるが, 今回の検討では, 等信号からそれより信号の低いタイプが全体の25%に認められたことになる.耳下腺腫瘍で多数を占める本腫瘍の, MR所見における特徴の把握が, この腫瘍の診断と他の耳下腺腫瘍との鑑別に有用であると考える.
著者
馬場 真紀子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.2048, 2019-11-30 (Released:2019-12-24)

東京海洋大学附属図書館における, アーカイブズ宇田道隆文庫の保存整理の取り組みを紹介する。宇田道隆は, 元東京水産大学教授であり海洋学者である。アーカイブズ宇田道隆文庫は, 宇田が遺した研究資料・記録類の集合体とそのデジタルアーカイブの双方を指し, 研究業績集であるとともに一研究者の特殊コレクションであるといえる。資料類保存の経緯についてまとめ, 特徴ある資料の紹介, 整理方法, デジタル化・公開, 活用事例を紹介し, 今後の課題について述べる。
著者
馬場 紀寿
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.49-71, 2005-06-30 (Released:2017-07-14)

『清浄道論』は紀元後五世紀前半に活躍したブッダゴーサにより著された。先行研究によれば、ブッダゴーサは、『清浄道論』を著すに際して、ウパティッサ作『解脱道論』を参考にしたとされる。しかし、これまで顧みられなかったブッダゴーサの編集方法を調査することによって、次のことが明らかになる。ブッダゴーサは単に『解脱道論』を踏襲しただけではなく、『解脱道論』には存在しない「三種の完全知」という概念を『清浄道論』に導入し、「三種の完全知」の構造に沿って『解脱道論』を取捨・改変・増広して『清浄道論』の「智慧修習論」を編纂した。その結果、「四諦」観察を重視する『解脱道論』に対し、『清浄道論』は「無常・苦・無我」や「空」の観察を中心とすることとなった。ブッダゴーサの編集作業によって確立した「三種の完全知」がスリランカや東南アジアに広まる「テーラヴァーダ仏教」の正統的な修行方法を代表し、その思想的特質を端的に示すものとなったのである。