著者
高橋 幸一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.19-30, 2011
被引用文献数
2

In recent decades, much evidence for women's sports in the ancient world has been uncovered. In ancient Greece, men concentrated on politics, wars, athletics, and the like, whereas desirable womanly qualities were considered to be beauty, modesty and obedience. Accordingly, no women's events were included in the ancient Olympic Games. It is said that married women were not allowed to be present at Olympia during the games, although unmarried women were permitted to watch the games. Except in militaristic Sparta, athletics were usually for male citizens.<br> However, in the festivals of Hera, only girls could compete in foot-races. Like the boys, Spartan girls paraded naked in the presence of the men and participated in foot-races, wrestling, discus and javelin. Tryphosa, but also her two sisters, competed in and won foot-races in several major athletic festivals, but not at Olympia. Although married women could not compete in the Olympics, they could win Olympic victories in the equestrian events. Thus it is certain that women did participate in athletics. This paper examines the participation of women in sports at the Olympic Games and the festivals of Hera.<br> Except for the priestess of Demeter Chamyne, married women were forbidden to attend the Olympics as spectators. Unmarried women and girls were also excluded from watching the games. In order to prevent bribery, trainers had to present themselves naked and undergo physical examinations. Unmarried women competed every four years in foot-races at the festivals of Hera held at Olympia. Some have suggested that the Heraian games became Panhellenic, but there is no historic evidence for this. The local festivals in which only women and girls were able to participate took place separately from the Olympics.<br> Kyniska of Sparta was the first women's Olympic victor in the four-horse chariot race. Agesilaus persuaded his sister Kyniska to enter a chariot race at Olympia and showed that Olympic chariot victories could be won by wealth and not by manly courage. However, it is certain that Kyniska was exceedingly ambitious to enter the Olympic Games, winning twice in all. However Kyniska's victories did not lead to the spreading of women's sports or to improvement of women's rights.<br>
著者
角 能 高橋 幸裕 Yoku KADO Yukihiro TAKAHASHI 東京大学大学院人文社会系研究科 尚美学園大学総合政策学部 The University of Tokyo Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-16, 2017-06-30

本稿は認可保育所運営への株式会社の参入という保育の準市場化が、公立保育所と私立保育所との間の対自治体関係の違いに与える影響を、自治体の保育担当職員と私立(民営)保育所の園長に対する聞き取り調査の結果に基づいて分析した。株式会社が認可保育所運営に参入している自治体では、株式会社運営の保育所は、公立保育所や社会福祉法人運営保育所に比べて保育行政への参加において劣位に置かれている一方、障害児や処遇困難ケースは公立保育所と私立保育所とで等しく引き受けていることを明らかにした。対照的に、株式会社が認可保育所運営に参入していない自治体では、私立保育所の圧力団体の力が強く、障害児や処遇困難ケースの引き受け等の自治体からの負担の重い要請は公立保育所が優先的に引き受けていた。This paper analyzes how quasi-market, for-profit companies running authorized nursery schools, influences structural relations between public nursery schools and private ones against local authorities, based on interview for nursery staff at private schools and local government workers.At local authority, for-profit companies run nursery schools, they have more disadvantageous position than public ones and those run by shakai-fukushi-houjin on participating in government as nursery care. On one hand, they accept offer from local authorities about nursery care of child with disabilities or difficult cases at the same extent as public ones.In contrast, as local authority, with no nursery school run by for-profit company, as strong lobby group between private nursery schools against local authority, public nursery school mainly accept nursery care of child with disabilities or difficult cases.
著者
町澤 朗彦 青木 哲郎 岩間 司 鳥山 裕史 今村 國康 土屋 茂 金子 明弘 前野 英生 高橋 幸雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2308-2318, 2013-10-01

時刻情報は重要な社会基盤となっている.そこで,日本標準時システムに直結した信頼性の高い時刻配信システムを開発し,NTPサーバntp. nict. jpとしてインターネットを介して公開したので報告する.本システムは,インターネットにおける標準的な時刻同期プロトコルであるNTPを利用しているが,安定して時刻を配信するために,耐障害性,過負荷対策,将来にわたるサービスの維持,セキュリティ対策,Stratum 1の提供,GPS非依存などの特徴を有している.また,実運用から得られた利用統計情報を解析した.2012年末現在,1日当りのリクエスト数は約1億7千万,クライアントは約1500万IPアドレスであり,世界230の国と地域に広がっている.更に,ピーク時には1秒間に約13万リクエストの利用があることが明らかになった.一方,1日のポーリング頻度が1回以下のクライアントが約8割であること,並びに,1台の時刻サーバしか参照していないクライアントが約9割であることなど,クライアントの時刻維持が不十分であることが推測される.更に,クライアントのネットワーク距離分布から,インターネットの直径が従来の推定値よりも大きいことを示した.
著者
池川 隆司 高橋 幸雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.660, pp.11-16, 2004-02-12

ビット誤り率が極めて高い無線ネットワーク環境では、TCP、HDLCのような誤り回復機能を有する通信プロトコル(ここでは、信頼転送型ウインドウプロトコル:RWPと呼ぶ)によって、ビット誤りもしくは順序誤りにより廃棄されたフレーム(リンクレベルのデータ)の再送は頻繁に発生する。本論文では、Bernoulli無線リンクにより接続されたネットワーク環境において、RWPによるフレーム再送を考慮した平均フレーム長の解析手法を提案する。その解析手法を使って、実測値に基づきメッセージ長の分布を離散分布と一般化Erlang分布で近似した場合のビット誤り率に対する平均フレーム長の増加率を考察する。この数値例では、選択再送もしくはウインドウサイズが小さいgo-back-N再送において、ビット誤り率が高い場合、再送による平均フレーム長の増加率は無視できないことを示す。
著者
高橋 幸人
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電氣學會雜誌 (ISSN:00202878)
巻号頁・発行日
vol.51, no.521, pp.844-856, 1931

誘導電動機の二次に,直流或は交流を送つて同期化した場合の所謂誘導同期電動機の特性を研究して,凸極型の同期電動機との比較をなし,又最大廻轉力及び安定度を論じ,更に誘導電動機の速度及ひ力率調整の理論にも言及してゐる。
著者
藤井 正美 石丸 泰隆 高橋 幸広 惠上 博文 西田 秀樹 岡 紳爾 調 恒明
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.609-616, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

目的 てんかんは人口の約 1%を占める決して珍しくない病気であり,近年,高齢化とともにてんかん患者が増加している。また就学,就労,運転免許などの社会生活面や障がい者福祉などでも患者は多くの問題を抱えている。しかしてんかん患者の抱える問題が地域保健行政に十分理解されているとは言い難く,医療・介護・福祉の連携体制の不備も指摘されている。そこで,てんかんに関する地域保健活動の実態を把握し,今後の支援体制や啓発活動に活用することを目的に全国保健所を対象に実態調査を行なった。方法 全国490か所の保健所を対象にてんかんの地域保健支援体制に関するアンケートを実施した。方法は自記式調査票を保健所に郵送,担当保健師 1 人が代表して回答・返送する形式とし,平成26年 9~10月に実施した。調査内容は保健所で受けたてんかんに関する相談の有無および内容,研修会等実施の有無,保健所で扱う難病および感染性疾患の研修との対比等とした。結果 全国347保健所から回答を得た(回収率71%)。内訳は都道府県型保健所(県型)263か所(72%),指定都市・中核市・政令市・特別区保健所(市型)84か所(67%)であった。保健師がてんかんに関する相談を受けた経験は73%(県型69%,市型88%)であり,市型に多かったが(P<0.01),適切に対応できるという回答はわずか10%であった(県型,市型で差はなし)。相談の内容は医療機関,症状・将来の不安が多かった。保健師が把握している研修会の開催は専門職,住民対象がともに 8%であり,県型(専門職,住民ともに 5%)に比べ市型(専門職17%,住民18%)で多く開催されていた(P<0.01)。またこの割合は他の保健所が扱う疾患の研修会(21%~70%)と比べ有意に少なかった(P<0.01)。てんかんについての知識は保健師の76%が必要と考え,60%は研修会があれば参加したいと回答した。結論 多くの保健所保健師はてんかんに関する相談を受けている反面,適切には回答できていないと感じている。またてんかんの知識は必要と感じているが,研修等を通して知識の修得ができない境遇にある。これらの結果を踏まえ,今後はてんかん学会・協会,医師会,医療機関等が行政と恊働し,てんかんの啓発活動を地域保健に取り入れることが重要である。さらに都道府県単位に包括的高度専門てんかんセンター等を設置し,行政保健師や介護・福祉・教育等専門職が情報収集のできる環境整備が望まれる。
著者
高橋 幸雄 三好 直人 山田 孝子 藤本 衡
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

混雑システムを構成するインテリジェントな客の例として,本研究では最終的にa)交差点の歩行者,b)電車内の客,c)インターネットの利用者をとりあげ,それぞれについて,全くといってよいほど異なったアプローチからのモデル化およびシミュレーションプログラムの作成を行った.現在,それぞれ論文にとりまとめる作業を行っている.a)交差点の歩行者については,自分の速度によって決まる情報空間(視野)の中に入る対向者の速度と向きから,その対向者との衝突可能性を予測し,衝突を避けられる範囲で最も効用の高い速度と向きで歩く,という基本コンセプトでモデル化した.シミュレーションにより歩行者密度と平均歩行速度の関係を求めたところ,実際の歩行流に対して観測した従来の研究結果とよく合致することが確認された.b)電車内の客については,他人との近さおよび他人の視線を主に,他人から受ける影響をポテンシャル関数の形でとらえ,これに降りるときと乗るときのインセンティブを加え,各客が自分のポテンシャルを最小にするように振る舞うものとして,モデル化をし,シミュレーションプログラムを作成した.ここではa)のような行動予測は全く入っていない.このモデルにしたがって客の乗降に必要な時間を計測したところ,電車の混雑率と乗降客数によって.その時間が興味深い動きをすることが確認された.c)インターネット利用者については,http通信データをもとに,個人行動を考慮に入れたモデルを構築した.結果から見ると,ここでは個人の動向よりも,クライアントやサーバ側の事情というのが,ネットワークの混雑状況により大きく関係していることが観察された.
著者
橋口 浩之 山本 真之 森 修一 高橋 幸弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

降水メカニズムの解明には、降水量だけでなく、雨滴粒径分布(DSD)の計測による降水物理量の定量的把握が重要である。東西5000kmにわたり多様な地形を持つインドネシア海洋大陸では、インドネシア全体に跨る観測網が不可欠である。本研究では、コトタバン(スマトラ島)・ポンティアナ(カリマンタン島)・マナド(スラウェシ島)・ビアク(ニューギニア島近傍の小島)にディスドロメータを整備し、DSDの連続観測を実施した。経度・降水雲タイプ・MJO・雷活動などとDSD特性との関連について明らかにした。
著者
高橋 幸利 藤原 建樹 西村 成子 藤原 建樹 西村 成子 角替 央野 久保田 裕子 今井 克美 重松 秀夫 下村 次郎 池田 浩子 大谷 英之 山崎 悦子 大谷 早苗 高橋 宏佳 美根 潤 池上 真理子 向田 壮一 高山 留美子
出版者
独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

脳炎は感冒などの後に発病し後遺症を残す病気で、病態解明と治療法の開発が重要である。非ヘルペス性急性辺縁系脳炎では、グルタミン酸受容体(GluR)のひとつであるGluRε2分子の幅広い領域を抗原とする抗体が産生されていて、感染ウィルスに対する抗体がGluRε2に交差反応しているのではないことが分かった。ラスムッセン脳炎では抗GluRε2 抗体を含む髄液IgGがアポトーシスを誘導している可能性が示唆された。
著者
高橋 幸利
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.99-105, 2013 (Released:2014-10-11)
参考文献数
20
被引用文献数
7

非ヘルペス性急性辺縁系脳炎を代表とする神経細胞表面抗原に対する自己抗体の関与する脳炎では比較的予後が良いとされる. 非ヘルペス性急性辺縁系脳炎の抗NMDA型glutamate receptor (GluR) 抗体は, NMDA型GluRの内在化により脳炎症状を起こすと考えられているが, シナプス外NMDA型GluRの内在化により, グルタミン酸などによるGluR活性化—アポトーシス (興奮毒性) を抑制, 予後を改善している可能性がある. シナプスのNMDA型GluRは内在化されにくく, cAMP-response-element-binding-proteinリン酸化が保持され, 細胞生存が可能となっている可能性がある.
著者
高橋 幸
出版者
日本女性学会
雑誌
女性学 (ISSN:1343697X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.23-37, 2022-03-31 (Released:2023-04-01)
参考文献数
22

ネオリベラリズム政権によってフェミニズムが簒奪され、「官製フェミニズム」が進む社会状況のなかで見られるようになった、メディア上のポストフェミニスト的言説パターンについて報告する。 英米では、バックラッシュ後の1990年代から、現代を「フェミニズム」以後の時代と捉えるポストフェミニスト的言説パターンが登場した。それは、大きく次の二つの特徴を持つ。第一に、「現代では性別にかかわらず実力次第で誰でも活躍できる」というネオリベラリズム的・個人主義的主張。第二に、恋愛や結婚、性の場面をおもに念頭に置きつつ、性別らしさを重視する主張である。また、「ポストフェミニスト」という語が人口に膾炙するようになった90年代のアメリカでは、マクロレベルで見ても、性別役割意識の低下が停滞するという動向の変化が起こっている。日本でも、2000年代のバックラッシュと、その後の政府主導の女性労働力化の促進のなかで、ポストフェミニスト的な言説パターンが見られるようになっており、性別役割意識の低下の停滞も見られる。2000年代日本の「めちゃ♥モテ」ブームを分析すると、「モテ」を目指して性的魅力を向上させようとする営みやコミュニケーションのなかで、性別二元論的な性別役割が再生産されていることがわかる。 このようなポストフェミニスト的言説パターンは、アンチフェミニズムとは異なる形でフェミニズムを無効化するように働く可能性がある。そのため、これに対する新たな対抗言説を構築していくことがフェミニズムの喫緊の課題となっている。
著者
曽山 奉教 吉田 秀人 下村 大樹 高橋 幸博
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2013-04-08)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

体外循環時のヘパリン化血における血液凝集塊の原因としては、主に血小板凝集・血栓形成説と「いが状赤血球」凝集塊説の2説があるが、機序解明には至っていない。今回、体外循環で生じるアルカレミア環境下で出現する血液凝集塊が「いが状赤血球」に起因することを裏付けるため、体外循環でのヘパリン化血が、アルカレミア環境において血小板凝集能および血液凝固時間に与える影響を検討した。結果、ヘパリンナトリウム血で作製した血小板は、アルカリ負荷(pH9)で粒径25μm以下の小凝集塊を形成したものの、粒径50μm以上の大凝集塊の形成には至らなかった。また、PTおよびAPTTはともにアルカリ負荷(pH9)で有意に延長した。したがって、体外循環時のアルカレミア環境下での血液凝集塊形成に血小板凝集、血栓形成は関与せず、「いが状赤血球」に起因することが強く示唆された。
著者
齊藤 忠彦 田島 達也 岩﨑 博道 岡本 隆太 高橋 幸三 財満 健史 大脇 雅直
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.25-35, 2021 (Released:2022-08-31)
参考文献数
4

2019年12月に報告された新型コロナウイルスの影響は学校教育においても深刻である。特に音楽科では歌唱などの表現活動において飛沫拡散の可能性があるため, その対策を講じることが急務とされているが, 科学的な知見に基づく研究が遅れている。そこで, 本研究では, 飛沫可視化による検証実験を通して, 定量的なデータを得ながら, 歌唱の活動における飛沫感染対策に関わる検討を行うこととした。飛沫可視化によるマスク等の飛沫防護具の比較では, 「不織布マスク」「ガーゼマスク」「合唱用マスク」「マウスシールド」「フェイスシールド」の5種類の飛沫防護具を取り上げ, それらの中で最も飛沫抑制効果が高いのは「不織布マスク」であることを確認した。その他に, 「ハミング」「歌詞唱」「朗読」の比較検討, 「日本語」「ドイツ語」の比較検討なども行った。なお, 飛沫防護具着用による音響的な変化を捉えるために, 音声分析による検証実験を行った。
著者
桜林 耐 高江洲 義滋 萩野下 丞 竹田 徹朗 宮崎 滋 甲田 豊 湯浅 保子 酒井 信治 鈴木 正司 高橋 幸雄 平沢 由平
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.241-247, 1997-04-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
20
被引用文献数
2

目的: 血液透析の循環血液量 (BV) に対する影響を検索する第一歩として, 除水のない条件で検討した. 方法: クリットラインモニター (IN-LINE DIAGNOSTICS社製) で慢性血液透析10症例の無除水血液透析施行中のヘマトクリットを計測し, BVの変化を算定した. BVの変化 (ΔBV) を, mono-exponential関数: ΔBV(%)=A×〔1-exp(-B×t)〕-C×t, t: time (hour) で近似し, 各係数を臨床指標と比較検討した. 結果: 1) 全症例でBVの増加を認めた. BVの変化は上の近似式と良好に相関した (0.92<r<0.99, p<0.0001). 2) BVの増加率を表わす係数Aは8.66±2.92で, 体外循環充填量 (200ml) と回路回転血液量 (180から200ml/分) との和の全血液量に対する割合に相当した. また係数Aは胸部X写真の心胸比 (CTR) (r=0.88, p=0.0008), 透析開始前血清アルブミン濃度 (r=0.80, p=0.03) と有意に正相関した. 3) BVの増加速度を表わす係数Bは2.02±0.77で, BV増加は2時間で全増加量の99.9%に達した. 4) 係数Cは-1.64から1.06とばらつき, 臨床指標との相関はなかった. 結論: 無除水血液透析ではBVは経時的に増加した. この推移はmono-exponential関数に良好に近似され, その増加量が体外循環に必要な血液量にほぼ等しく, CTRや血清アルブミン濃度に正相関したため, BV増加の機転は体外循環に喪失する血液の補填であると考えられた. 近似式の係数Aは, BV増加の程度を表わし, hydrationやplasma refillingを反映する指標として有用であると考えられた.
著者
髙田 勝 田原 岳 天野 卓 野村 こう 高橋 幸水 古川 力 秋篠宮 文仁
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.12-20, 2018-03-09 (Released:2018-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

琉球豚は中国豚由来であり,黒色を有するアグーと白斑を有するアヨーがある。アグーはバークシャー種との交雑により改良されたと報告されているが,西洋系豚や中国系豚との分子遺伝学的類縁関係は明らかでない。そこで,アグー系とアヨー系を系統内交配により維持している今帰仁アグー集団の繁殖豚AG (B),AG (R),AG (W) とその交雑集団AG (O) およびこれらの祖先集団AG06,AY06,さらに西洋系豚,中国系豚について,マイクロサテライト30座位の遺伝子型を解析することにより,琉球豚の遺伝的多様性とともに西洋系豚,中国系豚との類縁関係および遺伝的構造を明らかにすることを目的とした。有効対立遺伝子数,アレリックリッチネス,多型情報量などの遺伝的多様性の指標値は,いずれもAG (W) が最も小さくAG (O) が最も大きく,AG (O) の多様性は西洋系と同程度であった。今帰仁アグー各系統は西洋系品種に比べてヘテロ接合度の観測値が期待値よりも大きい傾向にあり,FIS は負の値を示して,近親交配を避けた交配が行われていたことが示唆された。品種·系統間の遺伝的関係では,主座標分析から,琉球豚,中国系,西洋系が二次元上にそれぞれのクラスターを形成することが明らかとなった。遺伝的距離にもとづく系統樹からは,AG (B) はAG06と近縁であり,AG (W) はAY06と近縁であることが示され,これらを含む琉球豚は中国系とクラスターを形成した。遺伝的構造の解析からも,琉球豚は中国豚と共通する祖先に由来することが示されたが,AG (B) とAG (R) はバークシャー種と共通する祖先集団由来の遺伝子を有すると推察された。この結果はこれまでの琉球豚の由来の記述を裏付けるものであった。
著者
高橋 幸利
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1608-1613, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

抗てんかん薬による神経・筋障害は軽度のものを含めるとかなり高頻度に見られ,眠気のように共通したものから,抗てんかん薬ごとに特徴的な副作用まで多岐にわたる.バルプロ酸では,致死性肝毒性(意識障害,てんかん発作増悪)・催奇形性(神経菅閉鎖不全)・高アンモニア血症などが重要である.カルバマゼピンでは,中毒症状(眠気・複視・失調)・てんかん発作増悪(欠神発作・ミオクロニー発作など)が重要である.フェニトインでは,急性PHT中毒(水平性眼振,複視,失調)・進行性ミオクローヌスてんかんの悪化(失調,てんかん発作の悪化,退行)・精神障害(統合失調症様の症状)が重要である.ゾニサマイドでは,認知・精神症状(意欲の低下,幻覚,焦燥,うつ,不安)が重要である.ガバペンチンでは,眠気・部分発作の増悪が重要である.フェノバルビタールでは,行動変化(小児の行為障害,注意欠陥多動障害)・認知障害が重要である.トピラメートでは,精神症状(不安,焦燥,うつ)・認知障害・部分発作の増悪が重要である.
著者
細谷 実 海妻 径子 千田 有紀 高橋 幸 Lee Rosa
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

韓国では社会的地位を得た女性と草の根フェミニズムとの連携がうまくいかず、女性登用が保守主義・新自由主義への対抗となっていない。新自由主義の進展は、性役割やミソジニーを強化する一方、女性就業者を増加させ、就業機会をめぐる軍事主義と女性との新たな結びつき(ROTCなど)を生み出していた。軍事主義的保守団体の女性運動家へのインタビューにおいては、民族主義以上に反共主義が強調されていて、興味深い。他方英国では、プア・ホワイトとも結びつくと言われる排外主義勢力と、エスタブリッシュ層を基盤とする新保守主義勢力とは、必ずしも一致していないが、労働党勢力と多元主義的価値観支持層との結びつきは強固である。
著者
高橋 幸紀 杉山 滋郎
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.231, pp.138-149, 2004 (Released:2021-08-12)

This paper deals with a string of gravity measurements conducted by TANAKADATE Aikitu(1856-1952), one of the first graduates from the College of Science, University of Tokyo. These measurements were conducted with no substantial help from the Western scholars in the 1880s, when approximately only a decade had elapsed since the beginning of full introduction of Western sciences into Japan, and only a couple of years had passed since Tanakadate's graduation from the college. The aim of the measurements, the hypothesis considered prior to each measurement, and the manner of dealing with the data acquired are clarified to the maximum possible extent by careful examination of the existing documents. Some common features are found in their studies when compared with those conducted by the Western researchers at the same period. Tanakadate and other Japanese scientists, who worked with him, aimed at confirming their hypothesis that the gravity anomaly around the Japan islands should be positive. The gravity anomaly at Bonin island, in particular, was known to be the largest in the world and a geodesic or geophysical explanation for this was expected. When Tanakadate became aware of the anomaly, he considered that it could be caused by 'some failure in measurements', which led him to attempt a second measurement of the gravity at the same point. On the other hand, scholars in Europe had already acknowledged that gravity anomalies on isolated islands were generally larger than those observed on the continents and along the coasts, and no longer raised any doubt regarding the reliability of the data provided on isolated islands. They subsequently tried to determine the geophysical cause of the large anomalies and attempted to invent a suitable method for reducing the data, while Tanakadate and other Japanese researchers never applied the necessary reduction techniques to the data they had obtained.