著者
鹿村 恵明 高橋 淳一 大山 明子 根岸 健一 伊集院 一成 上村 直樹 青山 隆夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.10, pp.1509-1518, 2011 (Released:2011-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

Community pharmacists can provide effective pharmaceutical care by questioning the physicians about their prescriptions. The regulatory authority (Ministry of Health, Labour and Welfare or the like) has been issuing instructions/advice to health insurance-covered pharmacies about the nature of questions to be asked to physicians under the national health insurance system. However, this practice has been facing similar kind of problems almost every year. To identify the reasons for repetition of the problems and facilitate proper application of drug therapy at hospitals, we recently examined the nature of questions asked to physicians by conducting a survey of 165 health insurance-covered pharmacies belonging to 8 district branches of the Japan Pharmaceutical Association. When the pharmacists were asked to express their view whether each of the 18 sample questions included in the past surveys was actually necessary, the most frequent answer from the respondents (n=1980) was “neutral” (42.9%), followed by “unnecessary” (29.0%) and “necessary” (26.6%). Further, 55.5% respondents answered that it is necessary to refer to publications of the concerned fields (guidelines, etc.) when questioning the prescriptions. However, the responses about the possible reasons for judging the necessity of the questions suggested that sometimes the pharmacists failed to understand the details of such publications. The results from this study suggest that a high percentage of community pharmacists believed that there was little need to ask questions about prescriptions if the suggestions made by the regulatory authority about the relevant questions were taken into account. Further, our study findings suggested that pharmacists working at clinics cannot present a clear-cut rationale for their judgment about the necessity of asking questions about prescriptions under the current circumstances where sufficient information collection and the evaluation of need for asking questions about prescriptions are not possible.
著者
池田 研介 高橋 公也 首藤 啓 石井 豊
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

系の多次元性はトンネル効果に根底的影響をおよぼす。特に系が非可積分系の場合にはカオス集合の存在による極めて複雑なトンネル現象がおこり<カオス的トンネル効果>とよばれる。この研究では古典力学をフルに複素領域に拡張した<半古典理論>を用いて、カオス的トンネル効果の基本機構が研究された。(1)カオス存在下でのトンネル効果があるクラスの量子写像に対して研究された。精力的な数値的研究によってトンネル効果に本質的に寄与する軌道はその形状からラピュータ鎖とよばれる極めて限られた集合に属す事が示された。このような集合の数学的意味が複素力学系理論の結果と数値的に得られた主張を組み合わせる事によって研究された。主要な結果はラピュータ鎖の閉包が前方ジュリア集合J^+と前方充填ジュリア集合K^+に挟まれるという主張である。他方J^+=K^+と推論され、これが正しければ、ラピュータ鎖の外枠がJ^+である事を意味する。動的障壁をトンネルした波動関数はJ^-の実成分に沿って形成される。これらの事実はトンネル波動関数の主要成分はカオス集合に稠密なサドルの複素化安定多様体-不安定多様体に嚮導されてトンネルする事を意味する。(2)あるクラスの障壁トンネル過程に焦点をあて、多次元障壁トンネル過程に特徴的な複雑なトンネル効果を支配する不変的機構が解明された。先ず複素半古典理論が強相互作用領域においても純量子論の波動行列を再現できる事が確認された。強相互作用領域ではトンネル成分には複雑な干渉フリンジが現れる。更に、複素安定-不安定多様体に嚮導された複素トンネル軌道がフリンジトンネル効果を支配するが示された。このような機構は古典的なインスタントン機構に代わる、全く新しい描像を提供する。数学的にはこの機構は軌道の多価性を保証する<動く特異点>の発散的な移動と密接に関係づけられる事が判明した。極めて異なる上記トンネル過程が複素化安定-不安定多様体を使った共通の機構に支配されるのは驚くに値する。多次元トンネルを特徴づけるこのような機構の発見はこのプロジェクトの目覚しい成果である。
著者
高橋 仁美 本間 光信 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 栃木県理学療法士会
雑誌
理学療法とちぎ (ISSN:21864861)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.11-19, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
26

慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)では,フレイルおよびサルコペニアの有病率が高く,これらはCOPD 患者の予後を規定する重要な因子となる.COPDにおけるサルコペニア対策としては,従来,栄養療法が推奨されている.しかし,近年では,栄養療法のみでは限界があるとし,運動療法を併用した呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の有効性が報告されてきている.フレイルは身体的(physical),認知的(cognitive),社会的(social) の3 つの側面を持っている.このなかで,身体的フレイルに関しては,基本的な概念が国際的にほぼ共通しており,加齢による骨格筋量の減少や食欲不振による慢性的な低栄養などが相互に影響し合っているとされる.骨格筋量の減少,慢性的な低栄養などは,心身機能の低下を大きく加速させ,フレイル・サイクルと呼ばれる悪循環を形成する.このフレイル・サイクルの中心となるのが加齢性筋肉減弱現象であるサルコペニアである.フレイルは高齢者で多くみられるが,その特徴として身体予備能力の低下とストレスに対する脆弱性の増加がある.フレイルは,慢性疾患であるCOPD にも大きく影響を及ぼしており,近年のシステマテックレビューでは,COPD 患者とプレフレイルの合併は56%,フレイルの合併は20%と報告されている.また,3 つの縦断的研究では,COPD とフレイルには双方向性の関係にあり,COPD患者ではプレフレイル,フレイルの合併が多く,高齢COPD における合併頻度は2 倍となっている.このようなことから,臨床的はCOPD 患者に対してはフレイルやサルコペニアの評価と対策が重要となっている.サルコペニアは,その原因には多くの因子が関連しているが,加齢に伴った筋肉喪失の状態にある臨床症候群といえる.EWGSOP の診断基準では,筋肉量の減少と筋力低下が必須となっている.COPD 患者におけるサルコペニアの有病率は14.5%であり,年齢およびGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)分類とともに増加する.一般にCOPD 患者では,筋肉量の減少と筋力の低下が存在する.筋量や筋力に関するこれまでの研究では下肢における報告が多いが,大腿四頭筋の脆弱性や性別との関連は認められていない.COPD 患者でサルコペニアを合併する患者は,合併しない患者に比べると運動耐容能,身体活動性,健康関連QOL は低下するが,呼吸リハに対しての反応は良好で,43 人中12 人は,呼吸リハ後にサルコペニアが消失したという報告もある.また,安定期COPD 患者においては,15%がサルコペニアに罹患しているとされるが,COPD 患者の様々な症状を改善する呼吸リハは,サルコペニアの合併そのものはその効果に影響しないと考える.COPD における呼吸リハは,身体活動性を向上させる効果的な治療法として確立されてきている.呼吸リハの長期的な目標は,より活動的なライフスタイルを通じて,体力などを維持させることである.包括的な呼吸リハにおいて最も重要な種目は運動療法と栄養療法であり,自己効力の向上を通して行動変容を起こすことが課題となる.栄養療法と低強度運動療法のコンビネーションセラピーは,COPD 患者の運動耐容能と健康関連QOL の改善効果があり,フレイルとサルコペニアを合併する症例に対しての新しい治療手段となると期待される.
著者
鈴木 哲 平田 淳也 栗木 鮎美 富山 農 稙田 一輝 小田 佳奈枝 高橋 正弘 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.103-107, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
14
被引用文献数
15 4

〔目的〕本研究の目的は,片脚立位時の体幹筋活動の特徴を明らかにした上で,片脚立位時の体幹筋活動と重心動揺の関係を検討することである。〔方法〕健常者10名(25.1±4.4歳)を対象に,両脚立位,片脚立位時の体幹筋活動と重心動揺を測定した。〔結果〕片脚立位では,両脚立位と比べて,挙上側胸腰部脊柱起立と外腹斜筋活動増加率が有意に高かった。立脚側腰部多裂筋と内腹斜筋の筋活動増加率が高い傾向にあった。また挙上側体幹筋活動と重心動揺との間に有意な相関がみられた。〔結語〕片脚立位バランスには体幹筋活動が関与する可能性が示唆された。
著者
木下 央子 木下 正嘉 高橋 亜紀代 湯浅 慎介 福田 恵一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.427-431, 2012-08-01 (Released:2012-11-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1 6

皮膚老化は皮膚が人間の最も表面にある臓器ゆえに,経時的,遺伝的な内因的要因だけではなく,日光や大気などの外的要因も老化現象に影響を及ぼす。皮膚のたるみやしわの大きな原因は皮下組織の線維芽細胞の細胞数減少や結合組織構成タンパクの分泌能低下,日光などの外的ストレスが原因となるコラーゲン分解亢進などが主な原因となって起こることが知られている。フルボ酸は腐植物質より抽出される自然由来の物質であるが,キレート作用や pH 緩衝作用,細菌増殖抑制作用や,湿疹に対する有用性の報告がある。このフルボ酸が線維芽細胞やコラーゲン分解に直接的に関与する matrix metalloproteinase (MMP) に対してどのような効果をもたらすか調べた。細胞は正常人成人の皮膚線維芽細胞を使用し,細胞のバイアビリティは Calcein-AM を使用した細胞のエステラーゼ活性を測定することにより,MMP の阻害作用については FITC 標識コラーゲンの分解抑制試験にて観察した。フルボ酸1%では26.1% (P<0.01) 細胞バイアビリティ増加を認め5%でも細胞毒性を認めなかっ た MMP の抑制試験において MMP-8 0.25unit ではコントロールに比べフルボ酸1%は約47% (P<0.01),フルボ酸5%は約61% (P<0.01) の MMP 抑制効果を認め,MMP-8 0.5unit ではコントロールに比べフルボ酸1%は約23% (P<0.01),フルボ酸5%は約56% (P<0.01) の MMP 抑制効果を認めた。今回の実験よりフルボ酸は線維芽細胞のバイアビリティ増加と MMP によるコラーゲン分解を抑制するという二つの観点からアンチエイジングに対して有用である可能性が示唆された。
著者
高橋 孝治
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.189-196, 2015 (Released:2015-12-25)

日本における教育は文系と理系に区分されている。この区分に対して今まで多くの疑義が示されてきた。本稿は文系の代表的な分野である法学と理系の代表的な分野である数学が実はその本質は同じものなのではないかというアプローチから、文理区分に対して疑義を示すものである。本稿は、文系思考とは何か、理系思考とは何か、学説対立の有無、数学者と法律家は歴史的に一体性などを見る。その結果、法学も数学も共に人間の造ったものであり、共に論理であるがゆえ解釈の違いがあることを明らかにする。さらに、その問題解決法にも類似が見られ、歴史的にも法律家と数学者は同一人物であることが多く、両者には非常に密接な関係にあることも述べる。これらのことから法学と数学は一体的なものであり、単に「文系と理系であるために異なる学問である」とすることは、法学の発展、数学の発展の双方にとっても望ましいこととは言えないと述べる。
著者
佐々木 浩子 木下 教子 高橋 光彦 志渡 晃一
出版者
北翔大学
雑誌
北翔大学北方圏学術情報センター年報 (ISSN:21853096)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-16, 2013

大学生の睡眠の質と生活習慣及び精神的健康との関連を明らかにすることを目的として,北海道及び東北の大学生に「生活習慣と精神的健康状態に関する調査」を実施し,男女差及び睡眠障害の有無による比較及び検討を行った。 その結果,男子に比較して,女子では起床時刻が早く,食事の規則性などが良好で,喫煙や飲酒の習慣のある者や運動習慣のある者の割合が低いものの,ストレスの自覚の割合が高く,睡眠時間が短いなど男女の生活習慣に有意な差があることが明らかとなった。しかし,睡眠の質の評価としたPSQI-J の総得点および総得点により群分けした睡眠障害の有無の割合では男女差は認められなかった。 睡眠障害の有無による比較結果から,睡眠に関して問題をもつ者は,定期的運動習慣のある者の割合が低く,喫煙習慣のある者の割合が高く,遅い就床時刻,短い睡眠時間,長い入眠時間で,食生活に対する意識も低いなど,生活習慣においても良好な状態になく,同時に精神的な問題も抱えていることが示唆された。また,睡眠に関する問題は男女差なく,大学生の多くが共通して抱えている問題であることが明らかとなり,睡眠と生活のリズムに関する教育の必要性があるとの結論を得た。
著者
新井 智之 伊藤 健太 高橋 優太 丸谷 康平 細井 俊希 藤田 博暁
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.559-557, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
23

〔目的〕本研究は不安定面上での片脚立位時のライトタッチの効果を,足圧中心動揺と下肢筋の筋活動から検討することを目的とした.[対象と方法]対象は健常男子大学生13名とした.支持なし(フリー),ライトタッチ(1 N以下の接触),フォースタッチ(5 N以上の接触)の3条件で,足圧中心動揺と6つの筋の筋電図を測定した.〔結果〕総軌跡長,矩形面積,実効値面積は,フリー条件に比べ,ライトタッチとフォースタッチが有意に低値を示した.またライトタッチ条件に比べ,フォースタッチが有意に低値を示した.大殿筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,非腓腹筋の筋活動においては,フリーとライトタッチ時の%RMSに有意差はなかった.〔結論〕片脚立位中のライトタッチは,下肢筋の筋活動を減少させずに,足圧中心動揺を減少させる効果があることが示された.
著者
高橋 久美
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2012

制度:新 ; 報告番号:甲3699号 ; 学位の種類:博士(文学) ; 授与年月日:2012/7/25 ; 主論文の冊数:1 ; 早大学位記番号:新6067

4 0 0 0 OA 二宮金次郎

著者
高橋省三 編
出版者
学齢館
巻号頁・発行日
1894
著者
吉本 充宏 宝田 晋治 高橋 良
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.Supplement, pp.S81-S92, 2007 (Released:2009-01-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 6

国内でも有数の爆発的噴火を繰り返す北海道駒ヶ岳火山の最新活動期の噴出物を中心に,爆発的噴火の堆積物の特徴や構造,それらの織りなす地形を見学するとともに,日本で最初にハザードマップが作成された火山防災先進地域の活動を視察する.
著者
菊永 茂司 高橋 正侑
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.123-128, 1985 (Released:2009-11-16)
参考文献数
21
被引用文献数
1

野菜中のCaの利用性を知るために, Caの生体への吸収利用に密接に関与するシュウ酸を細管式等速電気泳動法により定量を試みた。また, 市販野菜13種類中のシュウ酸とCa量を測定した。1) IPには島津製のIP-1B, 検出器にPGD-1を使用した。泳動条件は, リーディング液にその各pHにおけるシュウ酸を含む8種有機酸のPU値から0.01N HCl-β-alanine (pH4.0), ターミナル液に0.01N n-capro-ic acid (pH 3.4), 泳動電流150μA (8分) →50μAとした。2) 上記1) の泳動条件でのシュウ酸の定量性については, 20nmol/μl以下でもY=0.988X+0.249の直線性が得られた。 また, この泳動条件でシュウ酸, オキザロ酢酸, α-ケトグルタル酸, クエン酸, コハク酸の分離が可能であった。3) 野菜のシュウ酸抽出液中のIPによるシュウ酸の分離ゾーンは, oxalate decarboxylaseを作用させると消失することから, シュウ酸の単一ゾーンであることを確認した。4) 分析した13種類の野菜中のシュウ酸量は, 100gあたり, ホウレン草, 1,339mg, ショウガ239mg, パセリで177mgなどであった。 またCa含量は, 100gあたり, ヨモギ307mg, クレソン256mg, フキ (葉) 243mg, ホウレン草150mgなどであった。5) ホウレン草の 「ゆで」 時間と沸騰水量は, ホウレン草重量の5~10倍量で2~3分間 「ゆで」 ることによって, 遊離型シュウ酸のほぼ全量を除去でき, また生体に最も吸収されやすいと考えられる遊離型Caの損失も少なかった。
著者
高橋 精之
出版者
法政大学社会学部学会
雑誌
社会労働研究 (ISSN:02874210)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.40-103, 1966-02
著者
石川 克知 高橋 吉文
出版者
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 = Research Faculty of Media and Communication, Hokkaido University
雑誌
メディア・コミュニケーション研究 (ISSN:18825303)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.1-57, 2014-03-31

本論は、グリム兄弟が『グリム童話集(KHM)』の個々のメルヘンを彫するに際して、数字もまた重要な役割をはたしていたのではないか、と考え、それを作品内在論理解析方法と、 デジタルデータの検索方法とを結合して、考察しようとしたものである。 第一章は、数字3と数字2が要となっているKHM 中の名高いメルヘンKHM55「ルンペルシュティルツヒェン」とKHM21「灰かぶり」の2篇を、作品内在分析によって構造解析し、そ の内在論理と数字との緊密な関係を証明する。 第二章は、一転してKHM の全ての版(草稿から第七版まで)における数字使用頻度を、それ用に特別に作成したKHM 全版のファイルに基づいてコンピュータによって検索し、その一 覧を作成した。その検索結果の中で特に注目すべきは、数字3の総体的減数と、それと反比例する数字2の圧倒的多数状況および版改訂に伴いふくれあがっていく数字2の激増事実である。 続く第三章は、数字2の覇権への動きというその検索結果を、KHM 中最も分量が多くかつグリムたちの最自信作であり、メルヘン史上およびグリムたちにとって『グリム童話集』の要といえるメルヘンで、題名にも数字2を冠しつつも、各種の数字が入り乱れるため数字的意味等の解読の著しく困難なKHM60「二人兄弟」において、内在分析の側から検証する。 だが、そこに現れる全ての数字と数字的事象(明示されないが、数字が意識されている現象)を順次列挙していく時、内在分析からは、数字2が諸数の乱数表的状態という森の中を冥界として経巡り、最終的には数字1へ、正確には2にして1である[2・1融合状態]へと収斂かつ帰還し蘇る、という「V字プロセス」(高橋)軌道の潜在が析出されてきた。 この時、第二章でのKHM 全体へのデジタル数字検索結果(数字2の覇権と拡大への傾向)と、第三章での詳細な内在分析が明らかにした数字2の冥府行およびその1との融合経緯とは、みごとな対応関係を見せる。その対応事実の確認からはさらに、KHM 全体において、またその双子たちのように親密なグリム兄弟やドイツ・ロマン派自身にとって、数字2に秘かに託されていた深甚な遍歴と融合の機能の潜在もまた、浮かびあがってくるように思われるのである。
著者
鈴木 幸一 御領 政信 品田 哲郎 寺山 靖夫 吉岡 芳親 高橋 智
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

カイコ冬虫夏草ハナサナギタケの熱水抽出物から同定した新規の生物活性分子は、マウス海馬に発生したアストログリオーシス(神経膠症)修復の最有力候補であり、その分子メカニズムを解明することでヒトへの応用開発を進めた。その結果、培養アストロサイトに新規生物活性因子を添加することで、神経成長因子と神経成長因子誘導体の遺伝子が発現し、さらに神経初代細胞への効果として神経突起形成を誘導した。このin vitroの分子機構に基づいて、老化促進マウスの脳機能は向上し、ヒトのアルツハイマー型認知症患者の前臨床試験でも改善効果が確認され、新しい機能性食品と医薬品候補を提案した。
著者
高橋 良輔 黒木 一央 坂本 和隆 村田 雅和 熊谷 謙治 河野 昌文 重松 和人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.148-151, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
10

組織学的にサルコイドーシスが疑われた抗酸菌症を経験した.症例)67歳男性.既往:糖尿病.右手背部腫瘤を主訴に来院した.右手背部に2.5×3.0×0.5cmの弾性軟の腫瘤を認め,軽度圧痛を除くと血液検査,X線検査上,有意な所見はみられなかった.MRIでは手背~手関節に伸筋腱腱鞘の腫瘍性肥大と液体貯留を認めた.軟部腫瘍,感染等による肉芽腫を疑い,切開生検を施行した.肉眼的には腱鞘周囲に腫瘍性病変がみられた.病理検査では壊死を伴わない類上皮細胞様の細胞増殖が主体をなしサルコイドーシスと診断された.手術後3週間でMycobacrerium marinumが検出され,抗菌薬治療を開始した.考察)本症例では病理組織学的に腫瘤内に乾酪壊死を検出できなかったので,積極的に抗酸菌症は診断されず,サルコイドーシスの所見と考えられた.しかし抗酸菌症とサルコイドーシスの治療法は全く異なるので鑑別は重要である.診断不確定な腫瘍では適切な病歴聴取,MRIや抗酸菌検査を含めた細菌培養が望まれる.