著者
三浦 昭 武井 悠人 山口 智宏 高橋 忠輝 佐伯 孝尚 Miura Akira Takei Yuto Yamaguchi Tomohiro Takahashi Tadateru Saiki Takanao
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 宇宙科学情報解析論文誌: 第8号 = JAXA Research and Development Report: Journal of Space Science Informatics Japan: Volume 8 (ISSN:24332216)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-18-008, pp.27-41, 2019-03-08

2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」 は, 2018年の夏から小惑星リュウグウ(162173, 1999 JU3)の探査を続けている.係る探査においては, 探査前に情報が得られないような状況下で, 様々なクリテイカル運用が予定されており, 係る事前訓練や検証等が欠かせないものとなった. 同様に関連する科学者も実際の観測に先立って訓練を積む必要があった. 来たる実運用に向けて, 信頼性を上げるための一助としてハードウェアシミュレータが開発された. その構成要素の一つとして, 画像生成装置が開発され, 「はやぶさ2」搭載の様々な光学機器の模擬データを生成することとなった. 本稿においては, 光学機器模擬の概要を記すと共に, そこで使われるレイトレーシング機能について, 性能評価の概要を述べる.
著者
一柳 昌義 笠原 稔 高橋 浩晃 岡崎 紀俊 高橋 良 大園 真子
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.5-13, 2014-03-19

An earthquake swarm begun at the end of January, 2012 and the activity reached a peak in middle February, then gradually decreased by the end of April, in the Nigorikawa caldera, Hokkaido. The largest earthquake was the MJMA3.6 event which occurred on 15 February 2012 with maximum intensity 3.Temporal seismic observation with two stations carried out from 20 February to 9 April in the caldera. Detailed hypocenter distribution estimated by using both data temporal and secular observations shows two clusters, one of them is aligned along the northern caldera wall and another is located at eastern outside of caldera. Strike of alignment epicenter of the north cluster shows NE-SW direction, which is in good agreement with one of the nodal plane of focal mechanism of the largest event.
著者
大迫 弘江 高橋 超
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.44-57, 1994-07-20 (Released:2010-06-04)
参考文献数
30
被引用文献数
5 3

本研究は, 男女大学生を被験者として甘え表出に及ぼす性差と出生順位の影響を検討するとともに (研究I), 対人的葛藤事態における対人感情及び葛藤処理方略に及ぼす甘えの影響を検討すること (研究II) を主たる目的として行われたものである。甘え表出における性差の影響に関しては, 部分的ではあるものの, 男子よりも女子の方が強くなることが示された。出生順位に関しては, 長子と末子のみについて比較したが, 性差ほどには顕著な差異は認められなかったが, 兄弟姉妹に対する甘え表出においては, 長子よりも末子の方が強くなる傾向が示された。対人的葛藤事態における対人感情, 及び葛藤処理方略には, 甘え表出の強い者と低い者とでは顕著な差異のあることが明らかにされた。対人感情に関しては, 甘え表出の高い者の方がより強い不快感情を示していた。また, 葛藤処理方略に関しては, 他譲志向, 自譲志向, 方向探索, 状況離脱志向の全ての方略において, 甘え表出の強 い者の方が用いやすいことが明らかにされた。これらの結果を, 土居 (1971) の提唱した甘え理論の枠組みで考察し, また, 甘え測定にかかわる問題点などを指摘した。
著者
高橋 良当 大和田 一博 森 浩子 川越 千恵美 古味 隆子 井上 幸子 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.23-29, 1991-01-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

当センターに入院した既婚女子糖尿病者で, 重症合併症を有さない患者79名に質問紙法調査を行い, 性障害の実態を調べ, 糖尿病病態や心理社会的要因との関連について検討した.その結果, 性欲の低下が38%, 局所湿潤の低下56%, 絶頂感の低下51%, 性交痛39%に認められた.そこで, 局所湿潤と絶頂感と性交痛の障害度を総合判定し, 性障害のない患者群, 軽度障害群, 高度障害群に分け3群間で比較したところ, 高度障害群では性欲や性交回数の低下, 日常生活上のストレス, 糖尿病発症以前から夫婦関係に問題のある患者が有意に多く, 患者は神経質, その夫は社交的な性格が目だった.一方, 年齢, 糖尿病罹病期間, HbAlc値, 糖尿病性合併症の進展度は3群間で有意な差は認められなかった.以上より, 糖尿病女子の4~6割に性障害が認められ, その性障害は糖尿病の病態より, 夫との関係や生活上のストレスなどの心理社会的要因との関連が強く認められた.
著者
奥山 睦 高橋 和勧 村瀬 博昭 前野 隆司
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2018年春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.47-50, 2018 (Released:2018-05-31)

従来型の映画は鑑賞して終わりとなりがちであり,その場での対話は想定されていなかった.そのため,鑑賞者間の「創意形成」が生まれにくかった.これに対し,NPO法人ワップフィルムが企画・製作した映画『未来シャッター』は, 鑑賞した多様なアクターが社会的課題の解決を主体的に解釈し, 自己概念と照らし合わせて反芻した後, フューチャーセッションを行っている.それによって多様なアクターの「創意形成」が生まれ,個人の強みの発見や連携の実現性への気づきを誘発し, 未来へ向けた行動変革に繋がっていく.本研究では, 映画『未来シャッター』について分析することにより, 対話型映画を使った新たな社会的課題解決の可能性について述べる.
著者
菅原憲一 内田 成男 石原 勉 高橋 秀寿 椿原 彰夫 赤星 和人
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.289-293, 1993
被引用文献数
22

脳卒中片麻痺患者39名を対象に歩行速度および歩行自立度に関与する因子を知る目的で, 上田による12段階片麻痺回復グレード法(以下グレード), 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力, 深部感覚障害, 身長, 体重, 罹病日数, 年齢を選びその関連性を検討した。その結果, 歩行速度・歩行自立度に対して高い相関を示したのはグレード, 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力であった。また, 三変数間の相関も高かった。さらに歩行能力の二つの指標を目的変数としたステップワイズ重回帰分析の結果では, 歩行速度の第一要因は患側下肢荷重率であるのに対し, 歩行自立度の第一要因はグレードとなっていた。以上の結果から片麻痺の歩行予後予測には運動機能評価における定性的評価に加えて, 定量的評価が重要であることが示唆された。
著者
高橋幾 齊藤勝 深沢和彦 河村茂雄
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

企画趣旨 日本が2014年に批准した「障害者の権利に関する条約」の第24条では,インクルーシブ教育について以下のように言及している。「インクルーシブ教育システム」とは,(中略)障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと,自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること,個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている」。つまり,具体的な状況を想定すると,障害児が居住している地域の小中学校で他の児童生徒と同じ教室で学ぶことを選択できる。その際に,障害児の障害特性に合わせて必要な合理的な配慮がなされたうえで,平等な評価基準の下に,障害児と定型発達児がともに学ぶ状況が,インクルーシブ教育が実践されている状況と考えられる。 しかし,現状の特別支援教育はインクルーシブ教育とは逆行している可能性が指摘されている。例えば,2007年以降,特別支援学校数と特別支援学級の在籍者数は増加の一途をたどっている。同じ教室で学ぶという「場」のインクルーシブに矛盾が生じている可能性があるだろう。 また,通常学級という同じ土俵に立ったとしても,必要な支援を受けることができなければ,十分なインクルーシブ教育とは言えないだろう。個人に必要な合理的配慮の提供が重要となる。バーンズ亀山(2015)は,アコモデーションは,「教師の厚意によって授けられるもの」ではなく,人権擁護の問題であることを指摘している。河村(2018)は多様性を包含しながら,すべての子どもの支援に対応するためには,適切にアセスメントを行い,学級での相互作用を促す必要性を指摘している。インクルーシブ教育では,児童生徒の学習・生活環境を保障するために,教師はアセスメントに基づいた適切な支援をすることが求められている。しかし,その方略は各現場の判断に任されており,各々の教師の努力によって支えられていることが指摘されている。 本シンポジウムでは,通常学級における特別支援対象児の権利擁護に対応し,インクルーシブ教育を推進していくために,学級の状態や個別の適応状態のアセスメントを行い,適切な支援や指導につなげることの重要性を,「教師間の共通認識を持った取り組み」,「授業での個々の特性に合った方略の取り組み」,「教師の児童に対する権利擁護の取り組み」の視点で紹介する。それぞれの視点から,通常学級におけるインクルーシブ教育の可能性を示したい。話題提供教師間の共通認識を持った取組み高橋 幾 2012年に文部科学省が行った調査において,発達障害の可能性がある児童生徒は6.5%と発表されている。河村(2018)は,これからの教育目標の達成のために必要な要素の一つとして「多様性を包含する『学級集団作り』」を示している。教員は発達障害児の障害特性の理解をし,環境との相互作用を考慮に入れることが求められるだろう。発達障害のある児童生徒は学級の状態により困難の度合いが変化するため,教師は,児童生徒への対応を一貫した視点で共有する必要があると考える。うまくいった支援を引き継ぎ,うまくいかなかった支援を繰り返さないことが,児童生徒の二次障害を防ぎ,発達障害児の適応を上げることにつながるだろう。同じ視点を共有し,教師間の指導行動を一致させることは,児童生徒への対応の矛盾を少なくし,指導の効果を上げることになると考える。 本シンポジウムでは,校内で統一のアセスメントを用いて研究を推進し,共通の指標から学級・学校の状況に合わせた「スタンダードな指導行動」を見出し実践している小学校の事例を通して,一貫した支援に向けた統一の指標の重要性を示したい。インクルーシブ教育を推進するための学級集団づくり 齋藤 勝 平成29年3月に改訂された新学習指導要領では,特別な配慮を必要とする子どもへの指導と教育課程の関係について,新たな項目が新設され明記されている。これは,インクルーシブ教育システムの構築を目指し,子どもたちの十分な学びを確保し,一人一人の発達を支える視点から,子どもの障害の状態や発達段階に応じた指導や支援を一層充実させていくことを趣旨としている。これを叶えるのが,学びのユニバーサルデザイン(以下UDL)の視点を取り入れた授業づくりであると考える。 現在,教育現場ではICT環境の整備が少しずつ進んでいる。ICT環境の充実は,UDLの視点を授業に生かしていくための大きな支えとなる。ICTの効果的な利活用によって,子どもたちの学び方そのものを変えることにもつながる。しかし,ICTを活用しさえすればUDLの視点を取り入れた授業につながるというわけではない。UDLのガイドラインに示された「取り組み」・「提示(理解)」・「行動と表出」の3つの視点を意識したICTの利活用が,これまでの授業の姿を変えるきっかけになる。 そこで,授業では,タブレット端末が使える環境を整備し,必要に応じて必要な児童が使えるようにする。各教科の学習では,個別学習,ペア学習,グループ学習とフレックスな学習形態を認め,自分に合った学習方法を児童が自分で選択できるようにする。いわゆる従来の学習形態にはうまくなじめない子も,ICTを利活用することによっていろいろな表現が可能になり,友達と協働しやすくなる。ICTの利活用は,子どもたち一人一人が自分のよさを生かした学びへのアプローチを拡げるツールとなりうる。その結果,発達障害のあるなしに関わらず,多くの子どもたちの「主体的,対話的で深い学び」が実現できるのではないだろうか。 本シンポジウムでは,具体的な実践事例とそれによる児童の変容について報告し,UDL推進における学級集団づくりの効果について考えてみたい。児童に対する教師のアドボカシー深沢和彦 インクルーシブな学級を構築する担任教師からの観察と聞き取り内容から,教師の対応に共通するものがあることがわかった。個別指導と集団指導の両立に懸命になっている教師は多いが,インクルーシブな学級を構築している教師は,それらを別々には行ってはいなかった。個別指導と集団指導が混然一体となっており,学級集団全体に指導するとき,特別支援対象のAくんに視線をやり,こちらに意識を向けさせてから話したり,見ればすぐに理解できる掲示物をさっと示したり,集団指導の中にAくんへの個別指導がさりげなく含まれていた。 また,Aくんに個別指導しているときも,他の児童がそのやりとりを見ていることを意識して対応していた。「ああ,そういうふうに対応すればいいのか」とか「Aくんって,そういうとらえ方をするんだな」とか,周りで見ている子どもたちが自然と,Aくんを理解したり,対応の仕方を学んだりできるようにしていた。「個」と「集団」の両方を意識しながら特別支援対象の子どもたちを学級の中に位置付かせるためのこうした対応を,「インクルーシブ指導行動」と呼ぶことにする。インクルーシブな学級を構築する3名の教師は,共通してこの「インクルーシブ指導行動」を行っていることが明らかとなり,この対応が,特別支援を特別にしないための重要な対応である可能性が示された。「インクルーシブ指導行動」の中心的な機能に,代弁者,通訳として,特別支援対象児と学級集団(小さな社会)をつなぐ機能がある。この代弁者,通訳としてつなぐ機能を「アドボカシー(advocacy)」という。アドボカシーとは人権を侵害されている当事者のために「声を上げる」という意味であり,教師も学級内でうまく周囲とつながれない子どもたちのためにアドボカシーの役割を担う立場にある。具体例を挙げると,「対象児が,苦手の克服に向けて努力している最中であることを学級全体に伝える」「対象児の不可解な行動の背景にある思いを周囲が納得できるように説明する」「対象児用の特別ルールには,周囲の児童が“ずるい”と思わないように,特別な支援を必要とする理由や必要性について納得できる説明をする」「最初に比べたらずいぶんよくなったよね。と,対象児のよき変容や成長を学級全体で分かち合う」等である。アドボカシーは耳慣れない言葉なので,「架け橋対応」と呼ぶことにするが,この「架け橋対応」を教師が行っているかどうかを調査し,受け持つ学級の状態との関連を検討したところ,「架け橋対応」をよく行っている教師は,周囲児の適応も対象児の適応も有意に高いという結果が得られた。つまり,個と学級集団をつなごうとする教師のアドボカシーは,インクルーシブ教育を成立させる上で重要な指導行動であることが,明らかになったのである。
著者
高橋 幸裕
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.23-41, 2016-06-30

2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、介護職が37.7万人不足すると予想されている。なぜ介護職のなり手がいないのか。いたとしてもなぜ働き続けられないのか。そこで介護職の職業的特性について検討し、マンパワーの確保を進めていくための論点を明らかにする。ここで明らかになったことは介護が職業として成立した当時の影響を受けていること、職業としての専門性が確立していないこと、介護職の養成制度間の関連付けがされていないこと、キャリアアップシステムがないこと、所属する法人による労働環境の未整備である。今後、更に増していく人材不足に対応するためには特効薬はなく、職業的課題を地道に解決することしかないのが現状である。
著者
高橋 正彦 河北 展生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.649-654, 1971-05

批評と紹介弔詞伊木寿一先生をしのびて伊木先生の想い出
著者
大澤 剛士 天野 達也 大澤 隆文 高橋 康夫 櫻井 玄 西田 貴明 江成 広斗
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.135-149, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
54

生物多様性に関わる様々な課題は、今や生物学者だけのものではなく、人類全てに関連しうる社会的な課題となった。防災・減災、社会経済資本、資源の持続的利用といった、人間生活により身近な社会問題についても、生物多様性が極めて重要な役割を持つことが認識されるようになりつつある。これら社会情勢の変化を受け、生物多様性に関わる研究者には、これまで以上に政策とのつながりが求められている。しかし現状では、研究成果が実社会において活用されないという問題が、生物多様性に関係する研究者、行政をはじめとする実務者の双方に認識されている。これを“研究と実践の隔たり(Research-implementation gap)”と呼ぶ。そもそも、社会的課題の解決のために研究者の誰もが実施できる最も重要なことは、解決に必要な科学的知見を研究によって得て、論文の形で公表することである。そのためには、社会的に重要な課題を把握し、それに関する研究成果を適切なタイミングで社会に提供できなくてはならない。これらが容易になることは、研究と実践の隔たりを埋めることに貢献するだろう。そこで本稿は、そのための取り組みの先駆的な実例として「legislative scan」を紹介する。これは、イギリス生態学会が実施している、生態学者や保全生物学者にとって重要な法的、政策的課題を概観する取り組みである。さらにlegislative scanを参考に、生態学の研究者が関わりうる政策トピックの概要を紹介することで、研究者が能動的に研究と実践の隔たりを埋めていくためのヒントを提供する。具体的な政策トピックとして、「生物多様性条約(CBD)」、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」、「地球温暖化適応(IPCCの主要課題)」、「グリーンインフラストラクチャー」、「鳥獣対策」について概要を紹介する。最後に、研究と実践の隔たりの解消に向けて、研究者及び研究者コミュニティが積極的に働きかける重要性と意義について議論する。
著者
横関 隆 岡野 裕之 並木 美太郎 高橋 延匡
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.49, pp.1-8, 1990-06-08

本報告では,我々が研究・開発を行っているOS/omicron第3版のファイルシステム内部アーキテクチャ「ソフトウェアバス」について述べる.ソフトウェアバスはハードウェアのコモンバスシステムを参考に考案したもので,OS内部をモジュール化し各モジュールの呼び出しを,バスと呼ばれる仲介手続きを通して行うものである.この結果,OSを構成する各モジュールの独立性を高め,保守・拡張を容易に行うことができる。ソフトウェアバスを導入し,OS/omicronファイルシステムでは,モジュールの交換・単体デバッグが容易に行え,OSのプロトタイピング環境の基礎を実現した.また複数のファイルシステムが共存できるマルチファイルシステムの環境を整えた.This paper describes a "Software Bus" architecture on which OS kernel is constructed with independent modules. The idea of this architecture is based on common bus systems hardware architectures. Each module is accessed through a common bus by internal procedures and it manages many resources uniformly. We have implemented this software bus architecture on a file system of OS/omicron V3, which is designed for super personal computing and Japanese information processing.
著者
高橋 綾子
出版者
東洋大学大学院
雑誌
東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
no.55, pp.21-30, 2019-03

本研究の目的は、以前妖怪が果たしていた役割を現代では何が代わりに担っているのかについて社会心理学的手法を用い探索的に検討することである。本論では妖怪を「未知なる奇怪な現象または異様な物体であり、人間に何らかの感情や行動を生じさせ、かつ、固有名詞を持ち、社会的役割を果たすもの」と定義し、社会や人間に対する妖怪の作用を「社会的役割」と呼ぶ。本研究では社会的役割に着目し、妖怪事典の内容分析による代表的な妖怪の類型化(高橋・桐生, 2018)の結果を用い、以前妖怪が果たしていた社会的役割を現代では何が代わりに担っているのかについての探索的な検討を試みた。妖怪の類型化では3つのクラスタが得られ、クラスタごとの特徴や各クラスタに属する妖怪の特性が大まかに把握できたと同時に、妖怪の特性と恐怖喚起、注意喚起といった社会的役割との関連が示唆された。現代における代替物においても同様に3クラスタが得られたが、分布には偏りが見られ、代替物が補完できていない機能がある可能性が示唆された。今後は本結果をもとに現代における社会的役割の置換対象、表出方法、過不足の有無などについてより詳細に検討する。
著者
増田 勝彦 面谷 信 高橋 恭介
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.69-74, 1999-02-03

今後、デジタル化社会の進歩と共に"ディスプレイ上にソフトコピーとして表示された本や新聞を読み、考える"という時代が来ると考えられる。しかし現状では、ソフトコピーのままで長文を"読むこと"、"考えること"には一般に抵抗感が存在する。そこで本研究では、思考作業効率の観点から見たハードコピーとソフトコピーの比較をLCD、および用紙上に提示された簡単な計算課題に対する計算速度と正解率を、複数の被験者を用いて測定することによって行なった。これらの比較実験は、ハードコピーを用いる際に一般的な「水平状態」での作業と、ソフトコピーを用いる際に一般的な「垂直状態」での作業の2つの状態において行なった。実験の結果、垂直状態と水平状態の比較ではハードコピー上作業・ソフトコピー上作業ともに、水平状態での作業効率が良いことが示された。また、水平状態作業においてはハードコピー上作業はソフトコピー上作業よりも高い作業効率が得られた。本検討の結果は、ハードコピーとソフトコピーの比較において、媒体の差に加えて水平-垂直の作業状態の差が大きく影響し得ることを示している。