著者
高橋 ヒロ子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.302-310, 1986-10-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
24

呼吸・発声の障害を主とする脳性麻痺アテトーゼ型四肢麻痺児 (9歳9ヵ月) に心理リハビリテーションの手技 (実施期間: S.58.6.~S.59.4.) とボバースアプローチの手技 (実施期間: S.59.5.~S.60.12.) を通して, 呼吸・発声の改善をはかり, 次の結果を得た.1) 心理リハビリテーションの手技によって「アー」発声持続時間は0.12秒から0.61秒にのび, 呼吸パターンも改善した.しかし, 発声姿勢はトニックな全身性パターンが減少したものの, 座位, 立位では動揺の大きい伸展パターンが出現し, 発声持続がのびるにつれ, むしろ顕著になった.2) ボバースアプローチの手技によって「アー」発声持続時間は0.61秒から2.70秒にさらにのび, 呼吸パターンもさらに改善した.また, 伸展パターンは減少し正中線を交互に動揺するパターンに変化した.両手技とも呼吸・発声に改善を得たが, 姿勢筋緊張の改善と頸部・体幹の安定性の向上および呼吸・発声の分離運動の発達の促通を同時に実施することのできるボバースアプローチの手技がより有効であると考察した.
著者
石川 直将 高橋 伸佳 河村 満 塩田 純一 荒木 重夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.232-237, 2008-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

Marchiafava-Bignami病 (以下, MBD) 自験8症例において, 急性期および慢性期の症候と病巣について検討した.8例中6例は意識障害にて発症し, 慢性期に構音障害と半球離断症候を呈し, 画像検査にて脳梁に限局した病変を認めた.これらは従来報告されているMBDの臨床像と一致していた.一方, 発症時に意識障害を呈さない例が2例みられた.これは, 発症時の意識障害の存在が必ずしもMBDの診断に必須ではないことを示している.また, 2例では肢位の異常, 固縮などの錐体外路症状がみられ, そのうちの1例ではMRIで両側の被殻に病変が認められた.同様の症例の報告は過去に4例のみであるが, この症候もMBDの症候の1つとして注目される.慢性期には意識障害, 前頭葉症状は消失するが, 錐体路症状が構音障害, 半球間離断症候とともに長期にわたり持続することが示された.以上から, MBDの臨床像は急性期, 慢性期ともに従来考えられていたよりも多彩である可能性がある.従って, アルコール多飲者が急性の構音障害, 歩行障害, 痙攣などを呈し, 局所徴候が明らかでない場合には, MBDの可能性も考え, 画像検査で脳梁病変の有無を確認する必要があると思われた.
著者
高橋 正人
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.237-243, 1996-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

Unfortunately, anabolic androgenic steroid (AAS) abuse is prevalent in Japan. Most steroid abusers are amateur bodybuilders, powerlifters, wrestlers, and “fitness enthusiasists.” The case presented is of a young amateur bodybuilder, who suffered gynecomastia, whose only significant risk factor was his nonmedical use of an AAS.A 27-yr-old male was admitted to our hospital in December 1992 with gynecomastia. He reported starting to use an AAS, oxymetolone (Anadrol®) 30 mg daily, at the age of 23 yrs in 1987. He had developed bilateral painful gynecomastia, impotence and decreased sex drive within 3 months of starting AAS use. He stopped using it, and was admitted to another clinic in 1991. He took testosterone propionate (Testinon®) 25 mg weekly, but, as he was anxious about the long-term use or this medication, he was adimitted to our clinic.On physical examination his gynecomastia had diminished slightly, but he still had breast tenderness. All his laboratory examination results were almost within the normal ranges. Neverthless his serum free testosterone level was slightly low, so he took tamoxifen (Nolvadex®) and Chinese medicines. Consequently, his gynecomastia improved after treatment, for 5 months.Gynecomastia develops when an AAS is converted to estrogen. In conclusion, tamoxifen administration may be useful to reverse gynecomastia caused by AAS doping in sportsmen.
著者
高橋 香苗
出版者
国際ジェンダー学会
雑誌
国際ジェンダー学会誌 (ISSN:13487337)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.112-131, 2021 (Released:2022-12-25)
参考文献数
40

日本社会における母親像は多様化しつつある。その一方でギャル系のファッションを好む母親,いわゆるギャルママをとりまく現状からは,多様化といってもその許容される範囲には,いまだ限界があるのではないかということが示唆される。母親の役割葛藤に関する研究では,母親としての自己と個としての自己の双方の充実が母親にとって重要であることが指摘され,その不均衡さの問題は母親自身の就業や学歴との関連,あるいは異文化という視点から論じられてきた。しかし,外見のイメージにおける母親らしさと自分らしさを母親たちがいかに両立しているのか,という視点にたった議論は展開されていないという課題があった。こうした課題をふまえ,本研究はファッションにおいても特徴をもつギャルママを対象としたインタビュー・データを分析した。その結果,外見の上では母親らしさではなく自分の好きな格好をする一方で子育ての実務的な面では母親らしいことをとにかく頑張るというギャルママの行動は,外見と役割とを切り離して個としての自己と母親としての自己を両立させる一つの実践であるということが明らかになった。こうしたギャルママの論理は,一見すると新しい母親像の提示であるが,一方で当事者たちは自己犠牲の母親という規範性に疑問を抱いているわけではなく,むしろそれらを参照していることから,そこには保守的な自己犠牲の母親像を強化する働きがあることが見出された。
著者
高橋 良 鈴木 隆広 大森 一人
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.453-469, 2022-12-31 (Released:2023-01-30)
参考文献数
49

In active geothermal areas, subsurface high-temperature thermal waters occasionally cause phreatic (hydrothermal) eruptions without any direct input of mass and energy from magma. So, understanding subsurface hydrothermal systems is critical to improving mitigation strategies for such hazards. The Noboribetsu geothermal area in Kuttara volcano, southwestern Hokkaido, has had repeated phreatic eruptions through the Holocene. In this study, to reveal the hydrothermal system beneath this geothermal area, we investigate (1) the chemical and isotopic compositions of thermal waters and fumarolic gases and (2) the characteristics of hydrothermally altered rocks in phreatic ejecta and around thermal water discharge areas. The chemical and isotopic features of the thermal waters indicate that the hydrothermal activity in this area is attributable to a deep thermal water with a Cl concentration of approximately 12,000 mg/L and a temperature>220 °C. The hydrothermally altered pyroclastic rocks in the phreatic ejecta often include vesicles filled with smectite, chlorite, and Ca-zeolite, implying that a low-permeability clay cap consisting of these minerals exists in the subsurface and impedes the ascent of the deep thermal water. The deep thermal water ascends partly to the shallow subsurface, causing separation of the vapor phase containing CO2 and H2S due to boiling, and the liquid phase discharges as neutral NaCl-type waters. In addition, absorption of the separated vapor phase by groundwater, with oxidation of H2S, leads to the formation of steam-heated acid-sulfate waters, which cause acid leaching and alunite precipitation in the shallow subsurface. The Hiyoriyama fumaroles are derived from the vapor separated from the deep thermal water at 140 °C. Phreatic (hydrothermal) eruptions in the Noboribetsu geothermal area are assumed to have occurred due to rapid formation of a vapor phase caused by a sudden pressure drop of the deep thermal water. Because such eruptions are likely to occur in this area in the future, we should perform efficient monitoring using the constructed model of the hydrothermal system.
著者
高橋 信子 山崎 信寿
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.50-57, 2005-04-30 (Released:2016-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

立ち座り動作の困難な女性が, 安楽に立位で排尿できるようにするための女性用便器を開発した. 便器の寸法やデザインは, 身体関節に何らかの苦痛が生じている女性被験者 (20~76歳) 10名の立位排尿実験から外形中央幅22cm, 高さ30cmのピーナツ殻形状とした. 膝関節や股関節に障害のある女性10名について試作便器の検証を行った結果, 一般的な立位姿勢であれば, 下肢および衣服を汚すことや尿が便器の外に飛散することなく, 安楽に排尿できることが確認できた.
著者
神内 謙至 橋本 善隆 新美 美貴子 山下 亜希 山内 光子 四井 真由美 西田 なほみ 山崎 徹 早川 太朗 中山 英夫 槻本 康人 並河 孝 笹田 侑子 前林 佳朗 高橋 正洋 磯野 元秀
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.256-263, 2014-04-30 (Released:2014-05-19)
参考文献数
9

50歳女性.平成4年に糖尿病を指摘され平成16年より当院にて加療中.低血糖で救急搬送された既往あり.インスリン治療で血糖コントロール不良,また低血糖も起こすため,平成23年2月教育入院となった.入院中,血糖正常であるものの低血糖症状のためパニックになることがあった.翌日のスケジュールを説明しても当日になると忘れる,糖尿病教室でテキストを忘れる,と言う出来事があった.そのため,注意欠如/多動性障害(ADHD)を疑い本人の同意の上で滋賀医科大学精神神経科に紹介しADHDの診断となった.抽象的な情報を処理する能力は低く,簡潔で具体的な手本を示し,時間的余裕が必要な症例であると判断された.全成人の4.7 %の有病率とされるADHDであるが,今のところADHDと糖尿病の合併にかかわる報告は極めて少ない.血糖コントロールが極めて悪化することが考えられ,適切な治療方法が必要である.
著者
下野 功 高橋 志郎 清水 健志 高村 巧 小林 淳哉 都木 靖彰
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (ISSN:18820743)
巻号頁・発行日
vol.117, no.Supplement, pp.S5-S10, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

In this study of the phosphor utilizing a scallop shell, it was researched that the luminescence center was estimated from the chemical composition of the shell for the final purpose of the improvement of the luminescence property. The luminescence centers were estimated to be Cu and Mn from the experiment result and literature investigation. Furthermore, these concentrations were small by more than two orders in comparison with the commercially available phosphors. Therefore, improvement of the luminescence property can be expected by doping Cu and Mn to the shell and to investigate the relationship between these concentrations and the luminescence property to find the optimum concentration.
著者
松井 知子 村上 大輔 椿 広計 高橋 泰城 船渡川 伊久子 山形 与志樹
出版者
統計数理研究所
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2021-07-09

COVID-19、SDGsの複雑に絡み合った課題に対しては、多くの異分野に跨がる学際的研究が 不可欠であり、異分野相関を俯瞰できる方法論が必要となる。従来の統合評価モデルによるアプローチには、1) 不確かさの所在が不明瞭、2) 多様なデータの十分な活用が困難、3) COVID-19のような突発事象への対応不可等の問題がある。本研究では、統計・機械学習により、この従来モデルをデータ駆動型の確率モデルに転換させて、上記の問題1)、2)を解決する方法論Iを確立する。さらにこの方法論Iを、突発事象を含め、様々な事象を包括できるモデル統合の方法論IIへと変革させ、問題3)を解決する。
著者
木村 五郎 赤木 博文 岡田 千春 平野 淳 天野 佳美 大村 悦子 中重 歓人 砂田 洋介 藤井 祐介 中村 昇二 宗田 良 高橋 清
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.628-641, 2012-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
25

【背景・目的】Lactobacillus acidophilus L-55 (L-55株)には,マウスアレルギーモデルに対する症状緩和効果が認められている.そこでL-55株含有ヨーグルト飲用による,スギ花粉症臨床指標への影響について検討した.【方法】スギ花粉症患者にL-55株含有ヨーグルト(L-55ヨーグルト群, n=26)あるいは非含有ヨーグルト(対照ヨーグルト群, n=26)を花粉飛散時期を含む13週間飲用してもらい,症状スコア,症状薬物スコア,IgE抗体について検討した.【結果】L-55ヨーグルト群の総症状スコアと症状薬物スコアは,対照ヨーグルト群より低い傾向が認められた.特に治療薬併用例(n=23)では, L-55ヨーグルト群の花粉飛散後第5週の総症状スコア,第4週の咽喉頭症状スコアおよび第1週の総IgEの変化比が有意に低値であった.【結語】L-55株はスギ花粉症に対する緩和効果を有し,治療薬の併用により効果的に症状を軽減,あるいは使用薬剤を減量することが期待された.
著者
伊藤 敦彦 羽田 勝征 高橋 尚彦 犀川 哲典 山下 武志 安喰 恒輔 速水 紀幸 稲葉 秀子 浅田 健一 村川 裕二
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.640-644, 2002-11-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7

心房細動を有する患者ではしばしば心房粗動 (AFL) を合併する, 発作性心房細動 (PAF) の薬物治療において, Ic群薬は他のI群薬に比べAFLの出現率が高いか否かを検討した.重篤な器質的心疾患や心機能低下を欠く患者179人 (平均年齢58±11歳) の薬物治療中19人にAFLが認められた, 性別, 年齢, 左房径, あるいはβ遮断薬やカルシウム拮抗薬の併用はAFLが記録される割合と関連はなかった.Ia, b群薬とIc群薬では統計的には有意ではないが, 後者の投与中に多くのAFLが記録された (8%対15%) , 投薬前にすでにAFLが記録されている症例で治療中にAFLを認める頻度は52% (12/23) と高く, AFLの既往がない患者での4% (7/156) を大きく上回っていた (p<0.0001) .また, AFL既往例に限れば, Ic群薬投与中はIa, b群薬投与中よりAFLを認める症例が多かった (36%対78%) .以上より, PAF治療中のAFLの出現には治療前のAFLの既往が大きな要因であるが, Ic群薬投与中により多くの症例でAFLが出現する傾向があった.
著者
高久 俊 高久 千鶴乃 平馬 直樹 高橋 秀実
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.202-211, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
14

衛気虚証患者の体質改善に対する少量の玉屏風散末内服の有用性について報告する。対象は易感冒,アレルギー性鼻炎,発汗異常のうち1-2つを主訴とする患者30例である。玉屏風散末は黄耆,白朮,防風の3生薬を粉末にして混合したものを使用した。その有効性については内服開始6ヵ月後あるいは1年後に自覚症状の改善度をスコア化して評価した。玉屏風散末内服は24例(80.0%)で有効(著効19例,有効5例)であり,主訴別では特に易感冒(17例中著効12例を含む16例で有効)およびアレルギー性鼻炎(13例中著効6例を含む10例で有効)に対して高い有用性を示した。また有効症例全24例中,一日内服量0.7-1.4g の症例が19例(79.2%)を占めた。以上,構成する3生薬いずれも保険適応があることを勘案すると,玉屏風散末は少量内服で高い効果を示す経済的な衛気虚証患者の体質改善薬となりうることが示唆された。
著者
高橋 茂
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.1069-1077, 2003-10-15