著者
村山 良之 黒田 輝 田村 彩
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

自然災害は地域的現象であるので,学校の防災教育(および防災管理)の前提として学区内やその周辺で想定すべきハザードや当該地域の土地条件と社会的条件を踏まえることが必要である。災害というまれなことを現実感を持って理解できるという教育的効果も期待できる。福和(2013)の「わがこと感」の醸成にもつながる。<br><br> 学校教育において,児童生徒に身近な地域の具体例を示したりこれを導入に用いたりすることは,ごく日常的である。しかし,山形県庄内地方では,新潟地震(1964年6月16日,M7.5)で大きな被害を経験したが,多くの教員がこのことを知らず,学校でほとんど教えられていない。発災から約50年が経ち,直接経験の記憶を持つ教員が定年を迎えており,教材開発が急務であると判断された。そこで,既存の調査記録(なかでも教師や児童生徒,地域住民が記した作文等)および経験者への聞き取り調査を基に,当時の災害を復元し,それをもとに教材化することを目指した。<br><br>庄内地方における1964年新潟地震災害の復元<br><br> 鶴岡市においては,被害が大きい①京田地区②大山地区③西郷地区④上郷地区について調査した。①と②について記す。<br><br> ①京田地区は,鶴岡駅の北西に位置し,集落とその周辺は後背湿地である。小学校の校舎を利用して運営されていた京田幼児園では,園児がグラウンドへ避難する際に園舎二階が倒壊し,保母と園児16名が下敷きとなった。学校職員をはじめ,地域住民やちょうどプール建設工事を行っていた従業員によって13名が救出されたが,3名の園児が亡くなった。当時の園児Sさんは,倒壊部分の下敷きとなったうちの1人である。逃げる途中に机やいすから出ていた釘で左の頬を切った。自分もグラウンドに逃げたかったが,体が倒壊した建物にはさまれて動かず,「お父さん!お母さん!」と叫んで助けを求めるしかなかった。その後泣き疲れて眠ってしまい,気付いた時にはすでに救出されていたそうだ。<br><br> ②大山地区は,鶴岡市西部に位置する。地区の西部は丘陵地,東部は低地である。町を横断するように大戸川と大山川が流れており,当時の市街地は大戸川の自然堤防上にあった。ここは家屋被害が鶴岡市でもっともひどく,道路に家が倒壊したものもあった。家を失った人々は公民館や寺の竹藪,旧大山高校などで数日間生活した。大山は酒造業が盛んで,醤油作りも行われていたが,これらの被害も大きかった。酒造会社のWさんによると,町中を流れる水路に酒が流れ込み,酒と醤油の混ざり合った異臭が数日間消えなかったそうだ。大山小学校においては,明治時代に造られた木造校舎の被害が大きかった。当時3年生だったOさんの話によれば,教室後方の柱が倒れてきたとのことだった。大山小学校ではちょうど3日前の避難訓練の成果がでて,職員と児童全員がけがすることなく避難することができた。<br><br> 酒田市においては,既存文献で被害の大きい①旧市街地②袖浦・宮野浦地区の2地域について調査した。うち①について記す。<br><br> ①旧市街地は最上川右岸の砂丘とその周辺に位置する。水道被害が深刻でとくに上水道の被害が大きく,6月17~19日にかけて完全断水となった。その間は自衛隊の給水車で水を賄っていた。酒田第三中学校で2年生の女生徒がグラウンドに避難する途中に,地割れに落ちて圧迫死した。グラウンドには,何本もの地割れが走り,そこから水が噴き上げため,落ちた生徒の発見が遅れた。犠牲者と同学年のIさんの話によると,校庭でバレーボールをしている際に地震が起こった。先生の指示で最上川の堤防に逃げようとした時,グラウンドにはすでに地割れが起こっていた。地割れが自分に向かって走ってきた恐怖は,今でも地震の際に思い出すそうだ。水道管の被害,グランドの地割れや憤水から,酒田では広域にわたって激しい液状化が発生したことがわかる。<br><br>新潟地震の教材化<br><br> 現行の小学校社会科学習指導要領では,3年「市の様子」,「飲料水・電気・ガス」,4年「安全なくらしを守る」,「地域の古いもの探し」,5年「国土と自然」,6年「暮らしと政治」の各単元で,上記結果を用いた授業展開が考えられる。このうち3,4年社会科では地元教育委員会作成の副読本を用いることが一般的である。鶴岡市と酒田市の現行副読本には新潟地震災害は含まれていないため,これに追加可能な頁を,上記の研究成果を基に試作した。<br> 鶴岡市教育委員会では,次期改訂で新潟地震を取り上げることとし,2018年度から検討を開始した。以上の研究成果が次期副読本に活用される見通しである。
著者
黒田亮著
出版者
大空社
巻号頁・発行日
1998
著者
黒田 勇
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-29, 2019-10-31

This essay aims to reveal the history of the sports business and suburban development operated by Hanshin railway and two newspaper companies, The Osaka Asahi and The Osaka Mainichi, in the early 20th century. These two sectors of the new industries developed rapidly as cultural industry by stimulating people's desire on the suburban life and leisure activity.
著者
黒田 友貴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.113-116, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
11

本研究では、愛媛大学理学部が実施した新入生セミナーAに着目し、授業日程を短期かつ集中的な日程で実施したことによる効果について検討を行なった。その結果、メインプログラムが終了した時点での調査結果であることに留意が必要なものの、到達目標の達成度はすべての項目でほぼ9割を越えており、授業において十分な学修機会が確保されていることが確認され、ソーシャル・スキルへ効果やSTEM人材に求められる能力においても全ての項目で8割以上の受講者が学修到達度については肯定的な回答をしていることから、短期的な日程においても十分学修を担保できることが明らかとなった。今後の課題として、学修効果の持続性に関する調査や基礎的な大学生活に必要なスキルの獲得とプログラムの関係性について検討することが挙げられる。
著者
大久保 正彦 稲垣 成哲 竹中 真希子 黒田 秀子 土井 捷三
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.suppl, pp.189-192, 2005-03-20 (Released:2016-08-01)
参考文献数
3
被引用文献数
15

本研究では, カメラ付き携帯電話を利用した協調学習支援システムを開発し, その授業実践への利用可能性を評価した.本システムは, カメラ付き携帯電話で撮影された写真を随時自動的にウェブに掲載・公開するとともに, 検索・編集を可能にするものである.小学校1年生及び現職教員を対象とした評価実験における質問紙調査の結果, 小学校1年生において本システムの操作が可能であるとともに, 本システムを利用した学習活動への興味が高いことなどがわかった.現職教員からも小学生と同様に肯定的な評価を得ることができた.また, 現職教員の自由記述の回答からは, 通信コストなどのいくつかの問題点が指摘されたものの, 本システムの授業実践への有効性として, 簡便性, 情報共有とコミュニケーションの活性化などが示唆された.
著者
黒田 宏治 阿蘇 裕矢 クロダ コウジ アソ ユウヤ Kohji KURODA Yuya ASO
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.13, pp.149-152, 2013-03-31

浜松の民芸運動は、浜松の新たな文化やデザインのアイデンティティとなる可能性がある。本稿では、浜松の民芸運動について、郷土史家へのインタビューと地元資料に基づく概略年表整理を行った。浜松の民芸運動の現代的評価に向けて、引き続き研究調査を行っていきたい。

2 0 0 0 OA 革命三人男

著者
黒田礼二 著
出版者
千倉書房
巻号頁・発行日
1933
著者
深井 喜代子 黒田 裕子 山下 裕美 池田 理恵
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.193-197, 2001-08-25

看護行為によって発生する音を実験室で再現し, それを聴いた被験者がどのような生体反応を示すのかを検討した.承諾の得られた健康な女性被験 : 者10名に, 「タオルを絞る音」「看護者の足音」「聴診器の音」「椅子を床に置く音」「椅子を引きずる音」「ドアノックの音」「吸引音」「ブラインドの開閉音」の8種類を聴かせ, 心電図, 血圧, 局所発汗量を連続記録した.その結果, 背景音であるチャイムの音では局所発汗量はほとんど変化しなかったが, 6種類の音で5例以上に発汗増加反応を認めた.また, 6種類の音で最高血圧が有意に上昇した.さらに8種類すべての音に対する一過性の交感神経活性の高まりが全例で確認された.これらの結果から, 看護行為によって生じる音は生体に一過性のストレス様反応を引き起こすことが明らかになった.
著者
章 璐 黒田 乃生
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究(オンライン論文集) (ISSN:1883261X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-54, 2017-03-31 (Released:2017-04-22)
参考文献数
60

The ‘Art Districts’ in China, which started by the spontaneous gathering of artists, are the places where the works of contemporary art are produced, exhibited and sold. In recent years, as the Chinese government expected an economical effect from these art districts, the government has made the contemporary art a part of ‘Cultural Creative Industry’ and supports it politically. Since then these districts have expanded from Beijing to other big cities in China. The purpose of this paper is to consider the changes in the relationship between policy and Contemporary Art by intervention of a government, based on the developments in the art districts in the Chinese mainland. The results show that art districts spread to the big cities, they are changed by administrative policy and real-estate development. There is a direct relationship between the change in a related policy and the development in the Chinese art districts. Therefore, the support from the central government increasing recognition of the cultural industry and development in “Cultural Creative Industry Park” is an important factor in the rapid increase of the art districts.
著者
榑松 久美子 黒田 裕子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.89-97, 2006 (Released:2015-05-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

突然に発症し,意識障害に至った患者の配偶者の心理社会的な体験を記述し,看護支援を探求することを目的とし,一事例に基づいて探究した.参加者は,くも膜下出血で集中治療終了後も GCS8 以下の意識障害が続いた 50 歳代女性患者の配偶者(夫)50 歳代 1 名であった.参加観察法,半構成的面接法に加え,診療録・看護記録から得たデータをもとに,患者の病状が変化した時点,および配偶者の言動が変化した部分に注目し,配偶者の体験の意味を解釈した.分析の結果,配偶者の心理社会的体験は,第 1 段階:妻が生き抜くことをひたすら望む,第 2 段階:意識が障害された妻を受け入れることに葛藤する,第 3 段階:意識が障害されてしまった妻の存在とは何かを考え,今後の人生をどのように生きていくかを模索する,の 3 段階に変化することが明らかとなった.この中で配偶者は,身近に存在する他の家族や状況を理解する医療者に支えられ,意識障害となった妻を受けとめていたと考えられた.各段階の特徴を読み取り,配偶者の安寧を目指した適切な看護支援を行う必要性が示唆された.
著者
黒田 彰子 中村 文 蔵中 さやか 大秦 一浩 濵中 祐子
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、1.奥義抄の伝本研究、2、新出歌学書の研究、3、2を踏まえた平安末期歌学史の研究、の三課題から成る。1については、平安末期以降書写の古鈔本、江戸初期書写の伝本を調査し、後者については、主要な伝本を成果報告として刊行した。古鈔本についての調査は完了し、刊行に向けての最終作業を行っている。2については、疑開和歌抄、口伝和歌釈抄等、平安中期に成立した歌学書の発見を受け、平安末期成立の歌学書とどのような連続性、非連続性を有するかという観点からの検討を行い、口伝和歌釈抄については、その成果報告を刊行した。3については、対象となる和歌童蒙抄の注解を完成し、現在その注解刊行に向けて作業中である。
著者
高橋 一男 堀田 泰司 芦沢 真五 北村 友人 黒田 一雄 廣里 恭史 小幡 浩司 新田 功 太田 浩 関山 健 花田 真吾 小早川 裕子 田中 祐輔
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度の研究はNAFSA年次大会(アメリカ)、EAIE年次大会(スペイン)、第6回APEC高等教育協力会議(ロシア)、AIEC年次大会(オーストラリア)、CBIE(カナダ)、APAIE(シンガポール)などに出席し、UMAPを中心としたアジア太平洋地域における学生交流に関する発表を行うとともに、国際会議・大会に出席している政府関係者及び、大学関係者に対するヒアリングを行い、国の政策と大学の国際戦略の関係について分析を行った。その中でも、特に英語圏であるカナダとアメリカが、UMAPへの参加を表明するなど、学生交流に関する新たな関心と問題意識が生まれていることが確認できた。8月18、19日にはUMAP国際事務局を担当する東洋大学、留学生教育学会と連携し、カナダ、アメリカ、オーストラリアから学生交流に関する専門家を招聘し、国際フォーラムとワークショップを開催した。アジア太平洋諸国の大学がどのような大学間連携を模索しているか、というニーズ調査を推進するための意見交換をおこなった。また、オーストラリア、カナダ、米国など発足当初のUMAPには参加していた英語圏諸国から関係機関の代表に参加を得て、今後、これらの国からUMAPへの参加を得ていくための課題検証について意見交換をおこなった。本フォーラムとワークショップには国内外の大学教員、大学職員、政府関係者等の150人を超える参加を得られた。2月15日、19日、3月26日にUMAPタスクフォース会議を開催し、本科研メンバーと各国国内委員会の代表が意見交換を行った。その中で、UMAPに実際に係る専門家に対し行ったSWOT分析や、日本国内のUMAP参加大学、非参加大学に対するUMAPに関するアンケート調査の分析を行い、今後のUMAPプログラムの発展に寄与するいくつかのアクションプランが提言された。