著者
黒田 怜佑 松田 憲 楠見 孝 辻 正二
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.173-182, 2016

Rapid urbanization and information technology has reduced human connection and a sense of regional community among local populations around the world. This may have led to a decrease in people's sense of belonging and feelings of fellowship toward their neighbors and towns. We hypothesized that one's sense of belonging and feelings of fellowship toward their town will increase after hearing the sounds of bells. Participants were asked to observe virtual scenes in which they heard the bell signaling every hour. We assessed how listening to the bell influenced participants' feelings of community membership and whether viewing particular scenes and the sound increased these feelings and participants' sense of belonging. Results showed that for scenes involving an overhead view of the bell, e.g., scenes that included facilities such as temples or churches, participants reported an increased immersive experience. as a result of the shared sense of time with their neighbors.
著者
河野 益美 黒田 研二
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.79-87, 2001

2000年4月の介護保険導入後,日本の高齢者介護サービスの提供主体が行政から個人の契約へと転換した。本研究はこの保険制度導入後の高齢者施設でのケアの実態を明らかにするものである。この調査により,次のような諸点について改善すべきいくつかの問題点が存在することが分かった。すなわち施設職員の入居者に対する日常の接触,食事・排泄の介助や痴呆のある入居者への援助内容,あるいは入居者や家族の意向を尊重する取り組みについてである。
著者
鶴我 佳代子 関野 善広 神田 穣太 林 敏史 萩田 隆一 會川 鉄太郎 保坂 拓志 菅原 博 馬塲 久紀 末広 潔 青山 千春 鶴 哲郎 中東 和夫 大西 聡 稲盛 隆穂 井上 則之 大西 正純 黒田 徹 飯塚 敏夫 村田 徳生 菅原 大樹 上田 至高 藤田 和彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【はじめに】 東京海洋大学では、平成29年度に新設される海洋資源環境学部において、海底および海底下構造を対象とした海底科学に関する実習・教育・研究を行い、我が国の海洋の将来を担う海洋観測人材の育成を目指している。その機能強化の一環として、可搬型海域2次元地震探査システムを新たに導入した。この地震探査システムは、小規模ながら海底下の浅層構造調査に有用な性能を有しており、学生に対する最先端技術の実習・教育の実施と同時に、駿河湾など日本周辺の重要な海域の浅層構造精密調査に有効利用されることを目標としている。2016年11月、我々はこのシステムを東京海洋大学練習船「神鷹丸」に搭載し、初の海域探査試験として静岡県駿河湾での試験航海に臨んだ。本発表は、本学の地震探査システムの概要を紹介し、試験航海とその成果の第一報を報告するものである。【観測システムの概要】 我々は、2016年11月13~19日の期間中、静岡県駿河湾内において、エアガン震源を用いた2次元反射法地震探査および海底地震計を用いた屈折法地震探査の試験を実施した。この地震探査システムは、10ftコンテナ規格の格納庫に入った震源部・コンプレッサー・受振アレイ部、およびPC等の制御・収録システムにより構成される。震源はBolt社製エアガン1900LL(260cu.in) 2基からなるTwin-Gunを 2対擁し、発震時は左右両舷から1対ずつ曳航する。海上受振アレイは、Hydroscience社製デジタルストリーマーケーブル(長さ600m、センサー間隔6.25 m、96チャンネル)と最後尾の測位用テールブイで構成される。システムは全て可搬型になっており、本学練習船「神鷹丸」(総トン数 986トン、全長65 m、幅12.10 m)の後部甲板および室内観測室に設置する。屈折法地震探査では、Geospace社製海底地震計OBXを21台海底に設置した。OBXは近年石油探査などの浅海調査の際に非常に多くの数を海中ロープで接続し、海底に設置し、観測後回収するタイプの海底地震計である。OMNIジオフォン3成分とハイドロフォン1成分の4成分観測ができる。【駿河湾における試験航海】 駿河湾は陸/海のプレート境界に位置し、深部地震活動を正しく理解するためには、精確な海底下構造の情報が必要不可欠である。この地域は東海地震の震源想定域として地震や地殻変動などの観測網整備が重点的に行われているが、海域における詳細な地下構造調査は陸域のそれと比べると多くはない(例えば村上ほか(2016)など)。そこで我々は、本学の地震探査システムの稼働試験およびその調査性能の検証にあたり、駿河湾海域を調査地域とし、2次元反射法および屈折法地震探査による浅部地下構造の精密調査を試みた。調査は、2016年11月13~19日の期間中、駿河湾内の東部・北部・西部の海域に設定した4つの測線(A~D:総測線長約74km)において、3.5ノット程度の船速で曳航し、50m間隔の発震を行った。東部B測線では、Geospace社製海底地震計OBX21台を投入し同時観測した。日本国内において本タイプの海底地震計による海底アレイ観測は、これが初である。また西部D測線では東海大学による海底地震計4台によって同時観測がおこなった。一次解析の結果からは、駿河湾東部A測線(24km)では、ほぼ平坦な海底下に厚さ~200m程度の堆積層があり、その下には陸上延長部の地形と相関を有する地層境界の明瞭な起伏が見られた。駿河トラフ軸を東西に横断する北部C測線(17.5 km)や、東海地震の震源想定域に含まれる駿河湾西部D測線(石花海南部~清水港沖; 32.5km)では起伏の多い海底地形と一部食い違いとみられる構造が見られている。本システムに関わる技術検討および詳細な構造解析については本発表にて報告する。【謝辞】 本調査は、静岡県漁業協同組合連合会、駿河湾の漁業協同組合・漁業者の皆様の多大なるご協力のもと実施することができました。共同研究により東海大学には実習船「北斗」による海上支援を頂き、本学練習船の安全な航行と調査航海にご協力いただきました。また産学共同研究により㈱地球科学総合研究所、ジオシス株式会社の皆様には多岐にわたるご協力をいただきました。心より御礼申し上げます。最後に初めての地震探査試験航海にも関わらず強力なサポートをしてくださった本学の「神鷹丸」乗組員、陸上支援をいただいた海洋観測システム研究センター、船舶運航センターのスタッフに感謝いたします。
著者
黒田 晴之
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度の「今後の研究の推進方策」でも示したように、The Klezmaticsの創設メンバーFrank London氏を5月に招聘し、東京藝術大学・立教大学・広島市立大学・大阪大学・京都大学とのコンソーシアム形式で、「東欧ユダヤ人の音楽「クレズマー」をめぐる対話」と題して、国内の研究者・関係者も加わり、かつ一般市民・学生にも開かれた、研究成果報告会・講演・ワークショップ・実演の場をもった。この機会にLondon氏が書かれた文章や、ご本人から直接伺ったことを元に、クレズマー・リヴァイヴァルを集中的に調査した成果を、「クレズマー・リヴァイヴァル再考」と題して、京都人類学研究会のシンポジウム『共同体を記憶するーユダヤ/「ジプシー」の文化構築と記憶の媒体』(京都大学の岩谷彩子氏がコーディネイト)で口頭発表した。この内容をまとめて、同研究会のオンライン・ジャーナル「コンタクト・ゾーン」に、「クレズマー、あるいは音の記憶の分有 クレズマー・リヴァイヴァルまでの道のり」として投稿した(現在査読中)。「新移民」が録音した音楽は、"ethnic recordings"というカテゴリーに区分され、かれら以外のポピュラー音楽とは明確に区別された。これからの研究調査ではそうした新移民の音楽が、アメリカのフォーク音楽の規範に吸収されなかった事情を、Alan Lomaxらが対象にしたいわゆる「アメリカン・ルーツ」の音楽などと対照させながら、音楽をめぐる言説から裏付けていく作業を進める。これらの研究と平行してギリシアの音楽「レベティコ」についても、従来の研究を歴史学の立場から総括した単著の翻訳を開始し、ミュンヘン大学教授の著者Ioannis Zelepos氏に現地でヒアリングを行なうとともに、頻繁に意見・情報を交換していることを付言しておく。
著者
黒田 敏夫
出版者
梅光学院大学子ども学部
雑誌
子ども未来学研究 (ISSN:18817424)
巻号頁・発行日
no.6, pp.5-12, 2011

22年前に小学校のPTA会長を2年間務めたときの記録である。PTAは保護者と教員が構成員の教育関係団体である。しかし、実際は保護者が中心になって、子どもたちの教育や教育環境の充実のために活動している。このPTAが小学校の前に計画された十階建てマンション建設の反対を決議して、反対運動を展開した。この計画が駆け込み申請であることがわかり、業者と行政の姿勢を問う運動となった。法的に問題のある事柄に対し、PTAはどこまで働きかけることができるのか、学校や教師集団はどこまで働きかけることができるのか、その困難さと矛盾を経験した。教育環境を守るための戦いの可能性と限界を政治と業者、行政・学校のシステムと人、PTAの組織と会員、地域の組織と住民の姿を通して考える。
著者
冨沢 祐介 黒田 明慈 佐々木 克彦 海藤 義彦 松田 和幸
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
熱工学コンファレンス講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.255-256, 2013-10-18

As smart phones become more complex, higher in performance and smaller in size, heat concentration at localized areas is becoming a problem. Therefore, the aim of this paper is to examine the effect of high thermal conductive materials for heat dissipation in order to solve this problem. The thermal conductivity of the outer case of the smart phone was changed using finite element method (FEM) to simulate high thermal conductive materials or composite materials with anisotropy. The maximum temperature gradually decreased and the minimum temperature gradually increased with increasing the thermal conductivity of the outer case. Moreover, the thermal conductivity in the longer direction of the smart phone was important for lowering the maximum temperature. In this paper, it is found that applying high thermal conductive materials to the outer case is effective for uniforming the heat dispersing.
著者
黒田 嘉宏 仲谷 正史 長谷川 晶一 藤田 欣也
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.379-390, 2011
被引用文献数
1

Ungrounded and light-weight force display is demanded for the daily use of a virtual reality system in a large space. The concern with a pseudo-force display, which displays limited or different physical stimuli compared with the reaction forces causing in real-world, has been growing as a solution for the last several years. This paper reports a research trend of pseudo-force displays for production of physical stimuli to fingers or a palm. We categorize the pseudo-force display according to the approach to induce similar sensation or event cognition to those in real-world. The problems derived from the features of the pseudo-force display are also discussed.
著者
黒田 長久 柿澤 亮三 堀 浩 大阪 豊 臼田 奈々子 内田 清一郎
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-15, 1982-03-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
26
被引用文献数
3 6

22目57科185種の鳥類の血球(一部胸筋)を試料として,澱粉ゲル竜気泳動法(pH7)により,ミトコンドリア内リンゴ酸脱水素酵素(M-MDH)の陰極側への移動度を測定した。移動度の表現は,マガモ血球のM-MDH移動度を100と定めたときのこれに対する相対値である。鳥類M-MDHの移動度は各種組織間に差がなく,またこれまで種内,属内での変異は見られなかった。さらに科内,目内での変異も比較的少なく,他の酵素(アイソザイム)にくらべて極めて均一性の高い酵素である。ダチョウ目,ミズナギドリ目,ペンギン目,カイツブリ目,ペリカン目(ウ科),コウノトリ目(トキ科),フラミンゴ目,ガンカモ目,キジ日(ツカツクリ科•キジ科),ツル目,チドリ目(チドリ科•カモメ科)に属する鳥類は何れも移動度100を示した。これらの目は比較的に原始的とされる地上•水生鳥類の大部分を含んでいる。しかし,ペリカン目のペリカン科(130),コウノトリ目のコウノトリ科(130)•サギ科(150),キジ目のホウカンチョウ科(140),チドリ目のシギ科(250)•ウミスズメ科(190)では100以上の移動度が見られた。また,地上性のシギダチョウ目は例外的に160の,コウノトリ目に比較的近いとされるワシタカ目(ワシタカ科)は140の値を示した。一方,いわゆる樹上性の鳥類では140から360までの移動値が得られ,ハト目からスズメ目へと次第に高い値を示す傾向が見られた。すなわちハト目(140,190),ホトトギス目(200),フクロウ目(200),ヨタカ目(200),アマツバメ目(220),ブッポウソウ目(220,250),キツツキ目(230,300),スズメ目(360)である。ハト目に近いとされるオウム目では,300から360のスズメ目に近い値が得られた。以上の結果から,電気泳動法によるM-MDHの移動度は,科•目を含む高いレベルでの進化を反映しているように思われる。
著者
松石 隆 松田 純佳 黒田 実加 佐藤 雅彦 佐藤 里恵 石川 創
出版者
利尻町立博物館
雑誌
利尻研究 (ISSN:09199160)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.83-88, 2017-03

Rishiri Island is located in the Sea of Japan off the west coast of Hokkaido, Japan. Stranding record at this island could be important information for understanding the migration of the cetacean in the Sea of Japan. A total of 21 stranding records were collected. Each stranding records consisted of one individual. The records include 6 Stejneger's beaked whales Mesoplodon stejnegeri (including one unidentified Mesoplodon), 4 Dall's porpoises Phocoenoides dalli (one truei-type, two dalli-type and one type unidentified), 4 harbor porpoises Phocoena phocoena, 3 Baird's beaked whales Berardius bairdii, 1 killer whale Orcinus orca, 1 beluga Delphinapterus leucas (sighting) and 2 unidentified cetaceans.
著者
黒田 裕子 佐藤 深雪
出版者
広島市立大学国際学部 (Hiroshima City University, Faculty of International Studies)
雑誌
広島国際研究 (ISSN:13413546)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.59-74, 2008

This manuscript analyzes Kyoka Izumi's Furyusen and Kazushige Abe's Sin-semilla in order to explore how the "reality" of Japanese local cities is created. The authors argue that "reality" is created by the process of generating a story which is peculiar to a locality and by sharing that story among the people in the city; the story creates and, at the same time, decides "reality". In addition, each of the stories in the novels --which the authors define as "the database story"--is derived from unique databases. The focus of this manuscript is to explain the creation process of "reality" in these database stories. 13;Set in Kanazawa-city in Ishikawa prefecture during the early 20th century, Furuysen depicts two unique sets of database that are struggling to gain the initiative of the city; the one is a net of national railways and the other is a copy of local family registries. The former is the database that invokes a story of Japan as a modem, collective nation. The latter -which is secretly written by a local philanthropist -is the database that attempts to recreate the "reality" of the traditional city where the local conservatives are desperate to sustain its past glory. 13;On the other hand, in Sin-semilla, which is based on a present-day, small town called Jim-n1achi in Yan1agata prefecture, the young generation in the town is bored with "reality", because it is created by their parents with the cooperation of the American Occupation Forces during the time right after World War ll. In order to find a way out from the boredom and pressure to inherit the "reality-", they attempt to disclose the truth of the town by-processing dataacquired from secret photography. At first, they thought the act of taking secret pictures would be exiting, but they begin to be possessed by a narcotic-like, dazzling effect of the images. However, they find out that the "reality" yielded from the database is quite mediocre; nobody cannot spend their life in this ordinary "reality" as an inherent subject.
著者
黒田 潤一郎 谷水 雅治 堀 利栄 鈴木 勝彦 小川 奈々子 大河内 直彦
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.398-398, 2008

白亜紀のAptianからTuronianにかけて、海洋底に有機質泥が堆積する海洋無酸素イベントOceanic Anoxic Event (OAE)が繰り返し発生した。その中でも、前期AptianにおきたOAE-1aは汎世界的に有機質泥が堆積する最大級のOAEである。このOAE-1aの年代(約120 Ma)は地球最大の洪水玄武岩であるオントンジャワ海台の形成時期(123~119Ma)に近く、このため両者の関連が注目されてきた。オントンジャワ海台の火山活動とOAE-1aの関連を調べることで、大規模な火成活動と地球表層環境変動とのリンクを理解することができる。しかし、両者の時間的関連や因果関係について未解明の問題が多く、前者については年代学的・層序学的精査が、また後者については数値モデル実験などを用いた検討が必要である。本研究では、Aptian前期にテチス海や太平洋で堆積した遠洋性堆積物の炭素、鉛、オスミウム同位体比を測定し、OAE-1aの層準の周辺でオントンジャワ海台の形成に関連した大規模火山活動の痕跡が認められるかどうかを検討し、両者の同時性を層序学的に評価した。用いた試料はテチス海西部の遠洋性堆積物(イタリア中部ウンブリア州)、太平洋中央部の浅海遠洋性堆積物(シャツキー海台のODP198-1207Bコア)および深海遠洋性堆積物(高知県横波半島の四万十帯チャート;庵谷ほか、印刷中)の3サイトの遠洋性堆積物を使用した。これら3サイトにおいて、微化石および炭素同位体比変曲線からOAE-1aの層準を正確に見出した。横波半島の四万十帯チャートは、OAE-1aのインターバルを含む数少ない太平洋の深海底堆積物である(庵谷ほか、印刷中)。イタリアセクションのOs同位体比はOAE-1aの開始時およびその数10万年前の2回、明瞭なシフトが認められ、同位体比の低いOsの供給が増加したことが明らかになっている(Tejada et al., submitted)。特にOAE-1aの開始時に起きたOs同位体比のシフトは極めて大きく、数10万年間続くことから、オントンジャワ海台の形成に関連したマントルからの物質供給でのみ説明可能である。今回、低いOs同位体比が横波チャートにも認められることが明らかになった。先に述べたOs同位体比の変動は地球規模のものと結論付けられる。一方、海洋での滞留時間の短いPbはOsと異なり、サイト間で同位体比が異なる。イタリアのセクションでは当時のユーラシア大陸地殻に近いPb同位体比を示し、同位体比の大きな変動は認められない。これに対し、横波チャートのPb同位体比はオントンジャワ海台玄武岩の同位体比にほぼ一致し、オントンジャワからの物質供給が活発であったことを示している。シャツキー海台の堆積物のPb同位体比はイタリアセクションと横波チャートの中間的な値を示す。また、シャツキー海台の堆積物には、OAEが開まる時期にオントンジャワ海台からの物質供給が増加したことを示唆するPb同位体比の変化が認められた。このように、Pb同位体組成には当時の古地理(オントンジャワ海台からの距離、深海/浅海)に対応した違いが認められた。本発表では上記の新知見に加えて、3サイトのPb同位体比と古地理分布からオントンジャワ海台からの物質供給プロセスなどを検討する。
著者
Kuroda Noritaka Sakai Masamichi Nishina Yuichiro Tanaka Masatoshi Kurita Susumu クロダ ノリタカ サカイ マサミチ ニシナ ユウイチロウ タナカ マサトシ クリタ ススム 黒田 規敬 酒井 政道 仁科 雄一郎 田中 正俊 栗田 進
出版者
The American Physical Society
雑誌
Physical Review Letters (ISSN:00319007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.20, pp.2122-2125, 1987-05-18
被引用文献数
3 104

A midgap absorption band is observed in the quasi one-dimensional semiconductor [Pt(en)2]-[Pt(en)2Cl2](ClO4)4 under hydrostatic pressures at room temperature, where en is ethylenediamine. The transition is allowed only for the polarization parallel to the -Cl-PtII-Cl-PtIV- chain. The peak position remains near the middle of the Peierls gap at any pressure up to 2.2 GPa. The intensity increases exponentially with the peak shift. The gap states responsible for this band are attributed to soliton excitations corresponding to kinks of the charge-density wave.顕著な一次元物性を示すことで注目を集めている擬一次元白金錯体[Pt(en)2][Pt(en)2Cl2](ClO4)4の結晶について光吸収スペクトルを静水圧下で測定した結果、パイエルスギャップのほぼ中間に対応する近赤外波長位置に、加圧と共に成長する一つの吸収帯が発見された。パイエルスギャップ自体は移動積分の増大のために圧力によって減少するが、新しい吸収帯も低エネルギー側にシフトし、かつシフト量はパイエルスギャップの減少分のほぼ二分の一に等しい。この結果に基づいて、新しい吸収帯は擬一次元結合上に生成した電子ソリトンによるものとの解釈を提案し、静水圧という手段で物理的に制御できた初めてのソリトンであることを論述した。
著者
山田 幸一 黒田 龍二
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会近畿支部研究報告集. 計画系 (ISSN:13456652)
巻号頁・発行日
no.20, pp.393-396, 1980-06-01

当社は滋賀県野州郡野州町三上に鎮座し、湖東の名山三上山を神体山と仰ぐ古社である。古記録の類は戦国の争乱で散逸したとされ、中世以前の来歴は詳かでないが、社構としては、本殿〔建武4年(1337)、〓東礎石銘〕、拝殿〔様式上平安時代とされる〕、桜門〔「かうあん三年きのとみのとし」、上層斗東墨書〕の3棟及びその他摂末社があり、中世以前の遺構をまとまって残す貴重な例である。この地方は有史以前早くから開け、殊に社地と指呼の間にある小篠原は銅鐸の出土地として著名である。『古事記』中巻開花天皇の条に、「近淡海之御上祝以伊都玖天之御影之神之女」とあり、御上氏の古さがうかがえる。続いて『日本霊異記』下巻第廿四に、宝亀年中(770〜780)既に社とそれに附随して堂の有ったことが記されている。社伝では、養老2年(718)現社地に本宮を造営したとするが、『源平盛衰記』巻四十五にも同趣旨の記事が見え、これは相当に古い伝承であることがわかる。『霊異記』の記述は、社の位置がはっきりしないけれども、社伝を否定する積極的な根拠はないので、奈良時代には現社地に何らかの神祭施設があったとしてよいであろう。降って平安時代には、月次新嘗に与る式内名神大社に列した。現在残るものでは先ず現拝殿が造られ、遅くとも南北朝初期には今の社構えが整う。中世、法華経三十番神の1つとされ、末期、社地東寄りに西面して神宮寺が建てられたが、明治初期に破却されたらしい。御上神社本殿は、形式上入母屋造本殿であり、その中でも最古の遺構である。当社独自の特異性についても、一般には所謂入母屋造本殿の成立に関しても、従来しばしば注目されてきたが、いまだに不明確な点が多い。これらは、神社建築そのものの濫觴にもかかわる大きな課題であり、ここでは特に触れない。本稿は、現本殿より古い時代の当社本殿形式を復原的に考察することによって、上のより大きな課題の基礎を固めようとするものである。つまり、現拝殿は方3間吹き放しであるが、その柱には板壁の取付痕と思われる溝掘りが残り、もとは本殿であったと伝えられていて、諸先学も一応この伝承を認めておられる。そうすると、当社の中心的本殿が2棟同時に存在したとは考えにくいので、先ず現拝殿の前身建物としての旧本殿があり、現本殿が建立されるに及んで、旧本殿は板壁を取りはらわれて、現拝殿となった、と考えられるだろう。拝殿前身建物の復原的考察を通じて、上の伝承を吟味するとともに、それが旧本殿と考えられるならば、現本殿との比較によって、当社本殿形式の特異性を浮び上がらせてみたいと思う。