著者
三宅 晶子 橋本 雄一
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

【烟台大学・魯東大学研究者受け入れと共同研究】(2017年1月~8月)李文哲准教授(烟台大学)・朴銀姫講師(魯東大学)を千葉大学大学院人文公共学府に「外国人研究者」として受け入れ、共同研究と打ち合わせを行った。【中国研究調査】(2017年9月3日―9月11日)青島:ドイツ統治期・日本統治期建築群調査(ドイツ水兵クラブ、徳華銀行旧址、山東鉄道公司旧址、旧モルトケ砲台、旧青山中学校、青島福音堂、天主教堂、聖保羅教堂、青島徳国総督楼旧跡博物館等)烟台:招遠芸術センターにおける抗日戦争期の資料展示、東砲台調査、魯東大学・烟台大学との打ち合わせ 大連:日本・ロシア統治期建築調査(ダーリニー市役所旧址、旧満鉄本社、大連賓館、大連図書館、旧西本願寺、旧東本願寺、旧日本人住宅街等)【徳島県調査】(2017年11月23日-26日)鳴門市:坂東俘虜収容所跡、ドイツ館、ドイツ村、香川豊彦記念館 徳島市:ドイツ兵慰霊碑、松江豊寿旧居調査、資料収集:『Die Baracke』CD-ROM,『青島戦ドイツ兵俘虜収容所研究』等。シンポジウムの準備、発表内容の打ち合わせを行った。ドイツが模範的植民都市として建設した青島を調査し、1914年第1次世界大戦での日独戦敗北後ドイツ兵が俘虜として収容された鳴門市坂東俘虜収容所跡を調査することによって、ドイツ兵俘虜たちが、狭い収容所敷地内において、かつての青島の地域の名を命名し、都市を模した活動を行うことによって、都市共同体を作り出そうとしていたことが分かった。また、ドイツ兵の慰霊という想起は、そのつどの日本のドイツとの政治的関係、敗戦体験が深く関わっていることが分かった。
著者
黄 暁芬 宇野 隆夫 吉井 秀夫 河野 一隆 上原 雅文 米田 穣 河野 一隆 諫早 直人 宮原 晋吾 臼井 正 張 在明 塔 拉 魏 堅 王 曉〓
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は4年間にわたり、対象調査地のフィールドを通して考古学、歴史学、地理情報システムや年代測定法などの学際的研究を展開していた。主な成果は下記3点にまとめられる。1.漢魏帝都と郡県城址の構造プランとその象徴性1)帝都建設における理念空間の完成:漢帝都長安の建設プランは、南山子午谷口から嵯峨郷五方基壇まで南北軸線全長75kmに及ぶ。それが渭水を中心として都城・陵墓との生・死空間が南北正方位に対置し、天と地・自然山川と記念的建造物の対象性をベースにおき、漢帝国支配の正統と神聖を表象したシンボルであり、東アジア古代都城の成立にも多大な影響を与えていた。2)郡県城址の調査と復元:華北、内蒙古における戦国・秦漢期の郡県城址が計26ヵ所を調査、測量した。GPS・GIS解析によって各遺跡の方位と構造プランを解明し、中央帝都建設に対して地方郡県都市の特色を初めて把握した。一辺500~600四方の城郭都市がほとんどで、北方位を重視するが、真北からの偏角は1度~7度あり、帝都建設ほどの精度がない。その偏角の大小は、中央勢力との関係緊密度に影響されるように見て取れる。城外には正方位重視の墳墓が造営されたことも判明し、帝都長安の都市計画を模倣したものと考える。3)北方国境線遺跡の探求:内蒙古の陰山南麓一帯の調査では、城塞、長城、烽火台の併存が発見した。一辺40-50四方の城塞は城門1つ、石積みの城壁が幅3-5、頑丈な防御施設で、それに長城と烽火台は近接に築かれ、戦国秦漢期の北方軍事施設として完備されたことが判明した。2.秦直道の調査と研究1)秦直道の真相究明:紀元前212年建造された秦帝国の南北幹線道路-秦直道は歴史上、深い謎に包まれ、長い間不明なままであった。近年、秦直道の発掘調査や日中連携調査によって、秦直道の真相がようやく解き明かされてきている。山岳高地の作道、版築土の舗装道路の道幅は平均30m、道の沿線に壮観な皇室の行宮や防御に備えた関所、駅舎施設が付設された。それは高度な土木技術と巨大な権力組織によって創り出された「帝国の道」である。2)古代ローマ道との比較:ローマ道は礫石や砂石の作道が主で、道幅4の石畳みの舗装道が特徴的である。帝国領域間の軍事、交通運輸道として発達し、商用道路の兼用を含む実用性の優れた古代ハイウェーである。3.チベット吐蕃王墓の調査と実測チベットの吐蕃王国を象徴する巨大墳墓の4大分布地点で実地調査とGPS測量を行った。その結果、時期の異なる巨大方墳・円墳を特徴とした吐蕃王室・貴族大墓の構造配置と分布を総合的に把握し、吐蕃大墓の立地方位と景観の特色などの検証が初めて実施した。
著者
正木 治恵 長江 弘子 坂井 さゆり 手島 恵 河井 伸子 松本 啓子 遠藤 和子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国内外の文献レビューと専門家パネルならびにデルファイ調査により、高齢者の終生期ケア質指標(Quality Indicator)を開発した。前提と33項目からなる質指標は、意向の確認、看護倫理に基づく日常ケア、治療・ケア選択への関与、症状・苦痛緩和、臨死期の日常ケア、家族ケア、施設・組織の体制づくりの7つの大項目で構成された。開発した質指標はベストプラクティスを示すものと考えられ、高齢者ケアの質向上に役立つことが示唆された。
著者
中村 圭爾 陳 力 佐川 英治 小尾 孝夫 永田 拓治 室山 留美子 王 小蒙 胡 阿祥 魏 斌 高 大倫 毛 陽光
出版者
相愛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

魏晋南北朝時代、長安、洛陽、建康等の主要な首都の周辺地域では、「都城圏」社会と呼ぶことが可能な、独特の社会が出現した。この地域では、首都の政治体制を機能させ、大量の人口を維持するため、各地と首都を連絡する交通網が整備され、生産と流通が発展した。また、首都の先進的な意識、文化や好尚が伝わり、他の地域とは異なる独特の地域性が生まれた。この「都城圏」社会の存在は、魏晋南北朝時代の都市が歴史上に果たした役割を考える上で、非常に重要な意味を持っている。
著者
岡澤 均 田川 一彦 田村 拓也 戚 美玲 伊藤 日加瑠 塩飽 裕紀 榎戸 靖 曽根 雅紀
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

私たちはフェノタイプおよび病態解析に有用で薬剤開発にも利用出来る複合的モデルシステムを戦略的に開発した。細胞モデル、ショウジョウバエモデル、マウスモデルで構成される複合的システムは、オミックス解析と組み合わせることで多くの結果を生み出すことが出来た。私たちは、新規病態としてDNA損傷修復障害を明らかにし、さらにHMGB, Ku70, Hsp70, Omi, Maxerなどの主要分子を発見した。さらに、この解析システムを用いた薬剤スクリーニングで候補薬剤を同定した。
著者
鈴木 清一 小山内 康人 上野 禎一
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

2年度に渡り国内各地の軟体動物を主とする化石産地10数箇所を調査し,既存データを含めて続成作用に伴う炭酸塩化石硬組織の保存状態の変化を検討した.初生鉱物がアラレ石のものと方解石(低Mg方解石)のものとの間で保存状態が異なり,有孔虫殻など高Mg方解石のものはそのいずれとも相違する.最も安定なのは方解石で下部白亜系でも初生内部構造が残存することが確認された.次いで安定なのは高Mg方解石で,3者中で最も溶解し易いという一般的見解とは異なる結果を得た.これは埋没段階の極めて早期の低Mg方解石化に起因すると思われる.アラレ石は最も不安定であるが,方解石化により殻体自身は保存されることが多い.ただし,内部構造は消失する.方解石化は第四系でも生ずる一方で,上部白亜系に未変質で残存することもあり,母岩の状況に左右される.一般に未変質アラレ石は,泥岩のような細粒砕屑岩類や方解石セメントが粗粒化した砂岩に含まれる.これらの岩相では間隙水の流動性が低いとみなされる.炭酸塩化石の他鉱物による交代現象は極めて多様であり,とくにアラレ石質殻体の選択的な交代により,内部構造を保存することが,珪化,緑泥石化,海緑石化,黄鉄鉱化で確認された.珪化は様々な地質時代と地域を通じて普遍的に生じている.この種の珪化はアラレ石の方解石化以前の埋没早期に行われており,化石内容や産出層準,方解石セメント中の微量元素なども含めて判断すると,埋没環境として沿岸域における「海水-淡水混合帯」を想定できる.なお,一部では方解石化後にも珪化が生じ,2段階の交代作用が認められた.この他,アンケライト,菱鉄鉱,重晶石,方沸石の晶出例があったが,交代か溶脱後の充填か不明である.また,カソードルミネッサンス像観察により,方解石の再結晶化に伴う化石とセメントの同化段階が識別され,続成変質の進行を従来より詳しく検討できることが判明した.
著者
大渕 憲一 佐藤 弘夫 三浦 秀一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

仏教、儒教、神道等の伝統的思想は慣習、習俗、処世訓として日本人の生活に深く浸透し、現代日本人の価値観にも影響を与えているとの仮定のもと、伝統的価値観を測定する質問紙尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討するとともに、日本と同じ東アジア文化圏に属する中国と韓国、それにこれとは異なる文化圏に属するアメリカにおいてこれを施行し、伝統的価値観の国際比較を試みた。その結果、この価値観が多様な側面を包含する多元性を持つものであること、東洋に固有のものではないこと、神道に類似の価値観が日本以外の国にも見られること、年代差は4カ国に共通で、概ね、年長者ほど伝統的価値観が強いことなどが見いだされた。
著者
安藤 清志 松井 豊 福岡 欣治
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本報告書は、1994年に発生した名古屋空港中華航空機墜落事故の遺族77名に対するアンケート調査、「一般遺族」に対する予備調査(有効回答数1253名)、本調査(有効回答数835名)、および、前述の墜落事故遺族に対して2000年に実施した(第1回)アンケート調査の再分析の結果を含む。航空機事故遺族に関しては、事故後8年半を経過した時点においても、統制群として設定された「一般遺族群」と比較して精神的健康度の悪化が持続し、事故の衝撃も残存していた。具体的には、GHQ-12の得点は、事故遺族群が5.73に対して一般遺族群は4.06であり、事故遺族群のほうが有意に高かった。また、IES-Rの得点(侵入、回避、過覚醒得点)は、事故遺族群でそれぞれ12.05,11.06,7.55であったのに対して、一般遺族群ではそれぞれ3.71,4.75,1.68だった。こうした傾向の原因として、悲惨の遺体確認現場の目撃、意味了解の困難さ、ソーシャル・サポートの縮小、不適切な取材活動、当事者(航空会社、メーカー)の対応等が検討された。さらに、日本における航空機事故遺族に対する対策が乏しいことを指摘し、とくに遺族の短期的・長期的な心理的ケアを定める法律の制定が必要であることが強調された。一般遺族調査に関しては、直後悲嘆の規定要因やソーシャル・サポートの効果、死別後の自己変容など多くの側面から分析が実施された。
著者
藁谷 哲也 江口 誠一 竹村 貴人 羽田 麻美 石澤 良明 三輪 悟 宋 苑瑞 梶山 貴弘 比企 祐介 前田 拓志 林 実花 神戸 音々 佐藤 万理映 LOA Mao BORAVY Norng
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,アンコール遺跡からアンコール・ワット,バンテアイ・クデイ,およびタ・プローム寺院を選定し,寺院を構成する砂岩材のクリープ変形と風化環境を有限要素解析や高密度の熱環境分析をもとに明らかにした。その結果,砂岩柱の基部に見られる凹みの形成には,従来から指摘されていた風化プロセスに加え,構造物の自重による応力集中が関与していることが判明した。また,寺院は日射による蓄熱のため高温化,乾燥化が進み,砂岩材に対する風化インパクトの増大が生じていることが推察された。アンコール遺跡保全のためには,日射を和らげる緑地の緩衝効果を見直すことが必要である。
著者
中井 善一 塩澤 大輝 田中 拓
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本課題では,高輝度放射光のX線回折を用いたコンピュータトモグラフィ(DCT)法を開発し,アルミニウム合金およびステンレス鋼多結晶体の結晶粒の形状を三次元的に同定した.その結果,SPring-8の偏向電磁石を利用した汎用のビームラインでも,結晶粒の形状および位置を三次元的に同定することができた.各結晶粒の塑性ひずみを同定するため,結晶方位の拡がりを測定した.この結晶粒方位の拡がりは,転位構造と関連した結晶粒のモザイク性と関連しており,塑性ひずみの増加とともに結晶方位の拡がりが増加した.また,疲労過程中の損傷の蓄積もDCTによって測定することができた.
著者
岡崎 具樹 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

PTHrPおよびPTHrP遺伝子に存在する、負のビタミンD反応性配列nVDREを組み込んだレポーター遺伝子の細胞導入実験によって以下の結果を得た。1)クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いて、HDAC2がビタミンD存在下で特異的に、nVDREを含むプロモーター周囲のクロマチンに動員されるのに対しHDAC1はビタミンD非存在下でのみ動員された。2)ビタミンD存在下ではHDAC2だけでなく、VDRもまた、このクロマチン構造をとったプロモーター領域に動員され、この2者の選択的動員がビタミンDによるnVDRE-VDRを介する転写抑制の主役を担っていると考えられた。これらがヒストンのアセチル化、脱アセチル化を反映していることは、抗アセチル化ヒストンH3、および抗アセチル化ヒストンH4抗体、さらにHDACの特異的阻害剤のトリコスタチンAを用いて行ったChIP法で確認された。3)これらのChIP法の結果は、nVDREを元来持っている内因性のPTHrP遺伝子プロモーター領域でも、異なるプライマーを用いたPCRで確認された。3)さらに免疫共沈降法によって、VDRとHDAC2の両者はお互いに結合しその結合がビタミンD依存的に増強することを確認した。4)ヒト乳癌MCF7細胞にエストラジールを投与して種々の抗体およびnVDREを用いた同様のChIPアッセイを行ったところ、ビタミンD存在下はかりでなくE2存在下でもHDAC2がクロマチン-プロモーター領域に動員され、さらにE2存在下ではERも同様に動員されており、これらの動員はnVDREのDNA配列特異的であった。さらに抗アセチル化ヒストンH3、抗アセチル化ヒストンH4抗体、および抗HDAC1抗体によってこれらの抗体が認識する各蛋白は、ビタミンDの時と全く同様にE2存在下での動員が阻止された。以上よりER、VDRのそれぞれのリガンドによる転写抑制機構に共通のメカニズムがあることが示唆された。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、標的組換え動物(いわゆるノックアウトマウス)などの分子生物学的手法を用いることで、今まで知られていなかったビタミンA、Dの作用を探ることを目的に以下の2点に焦点を当て、これらビタミンの遺伝情報を介した分子メカニズムの解明を試みた。1. 新たなビタミンA、D標的遺伝子の検索:ビタミンA、Dの広汎な生理作用から、無数の標的遺伝子群が存在すると予想されている。同定された標的遺伝子群のみでは、これらビタミンの生理作用を十分●説明できないのは明らかである。そこで上記のレセプター欠損マウスでは、ビタミンAあるいはビタミンDの標的遺伝子の発現が極端に変化していると予想されているため、この標的遺伝子群の発現の差に着目し、RT-PCRを利用したDiffential Display法を用いて標的遺伝子cDNAの単離・同定を試みた。更に得られたcDNA断片をプローブとして全長cDNAの取得を試みた。またクローン化したcDNAを用いコードするタンパクの機能をin vitro系で解析するとともに、当該遺伝子のノックアウトマウスを用いることで全動物での機能を検討した。2. ビタミンA、Dレセプター欠損マウスにおけるビタミンA、Dの代謝:ビタミンA、Dの生合成及びその代謝は複雑な制御を受け、生体には数多くの類縁体が存在する。これらの生合成・代謝の制御を行う当該酵素の性状は不明なものが多い。レセプター欠損マウスは究極のビタミン欠乏動物であるため、これら生合成・代謝酵素活性は大きく変動していると考えられる。そこでこれらのマウスに活性型または代謝型のビタミンを投与し、その生体内での動態を探った。また動態を経時的に迫ることで、各種酵素の性状を検討した。
著者
加藤 茂明 四釜 久隆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、核内レセプターの転写促進能に基づいたホルモン評価系を、分子生物学的手法に基づき動物細胞内で構築し、この評価系をもとに以下の2点に焦点を当て、核内レセプターと共役因子との機能的相互作用を中心としたホルモン関連化合物の新たな評価系の構築を試みた。1. ステロイドレセプター群に相互作用する共役因子群の検索及び同定:前年度でクローニングされた共役因子cDNAは断片なので、この断片を用いた生体内での発現部位(臓器)を同定し、発現部位由来〓DNAライブラリーから全長cDNAを取得した。更に全長cDNAを用いることでtransient expression系にてcDNAがコードする因子の転写促進能を調べた。またステロイドレセプターを強発現させた培養細胞(いわゆるstable transformant)を確認し、この細胞核抽出液からレセプター特異的な抗体によりレセプター複合体を免疫沈降させ、この複合体からレセプターと結合している因子群を単離後、ペプチドシークエンンスからcDNAの取得を試みた。取得されたcDNAのコードされた因子の活性は上記の手法と同様に行い、転写共役因子であるか否かを検討した。2. 機能を保持したステロイドホルモンレセプターを用いてのホルモン結合能の評価系の確立:ステロイドレセプターへのステロイドホルモンの結合能は、通常レセプターを含む細胞由来の核抽出液が古くから用いられてきた。しかしながら、生体組織より調製された核抽出液はロット差が大きく、それ以上に調製は煩雑である。本年度では、生合成させたタンパクが最も本来の主体構造を取ると考えられている昆虫細胞内での大量発現を、バキュロウイルス系を用いて行った。次に発現したレセプタータンパクの機能を、in vitro転写系で調べることで検定し、レセプターの主機能である転写促進能を有したレセプターの大量発現系の確立を試みた。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

染色体構造調節因子複合体について、新規複合体の同定及び構成因子の検索や機能調節を調べる事を目的として、15年度は、前年度の1〜3の課題を継続するとともに、特に課題4に焦点を当て、研究を進めた。1.新規ゲノム発現制御複合体の同定:in vitro転写系及びクロマチンヌクレオソーム再構成系(当研究室で研究済み)を用いてHeLa細胞核抽出液から精製し、精製された複合体構成因子群をMALDI-TOFMASSにより同定した。更にcDNAスクリーニングにより各々の構成因子の機能を調べた。2.細胞種特異的複合体構成因子の同定:これら核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を精製することで細胞種特異的構成因子を同定した。3.染色体構造調節複合体の機能調節の分子メカニズムの解明:最近ではアセチル化、ユビキチン化などの各種タンパク修飾によって機能調節される例が報告されているが、染色体構造調節複合体の構成因子のタンパク修飾による機能調節は全く不明である。そこで、既知核内レセプターコアクチベーター(p160、p68/ファミリー)を用い、各種培養細胞での他の複合体構成因子を同定し、構成因子の複合体構成能とタンパク修飾による機能調節の可能性を検討した。4.ショウジョウバエを用いた新規染色体構造調節のスクリーニング:申請者らは既に、ヒトアンドロゲン(男性ホルモン)レセプターを組織特異的に発現するショウジョウバエのラインを確立し、リガンド依存的な転写促進をGFPで検出することに成功した。本システムを用いることで哺乳類特異的染色体構造調節因子を発現する各種ラインを確立し、次に特定染色体部位を欠失した各種変異体を交配することで、染色体構造調節因子機能に必須な因子を分子遺伝学的にスクリーニングを行った。更に同定された因子をプローブに複合体を同定及び解析した。
著者
加藤 茂明 四釜 久隆 柳澤 純
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、下記の3点に焦点を当て、核内レセプターに基づいた性ホルモン評価系を、分子生物学的手法に基づき動物細胞内での構築を試みた。1.性ステロイドレセプターと転写共役因子群とのin vitro相互作用を利用した性ステロイドホルモン様化合物の評価系:前年度に引続き2種のヒト女性ホルモンレセプター(ERα、ERβ)と男性ホルモンレセプター(AR)のAF-2と、SRC-1、TIF2とのリガンド結合依存的な相互作用を検出するin vitro GST pull-down系を構築し、この2者相互作用を誘導もしくは阻害を測定することで、ホルモン様活性の迅速な評価を試みた。2.転写促進能を利用した性ステロイドホルモン様化合物の高感度生物検定法:1で評価されたステロイドホルモン様化合物が生物活性を有するか否かを、更にステロイドレセプターの転写促進能で検定することで生物検定法とする。ERα、ERβ、ARのAF-2とGAL4DNA結合領域とのキメラタンパクを発現させ、GAL4との結合評価系有するリポーター遺伝子(ルミフェラーゼ)系で、リガンドの転写促進能を調べた。同様な手法で転写共役因子と核内レセプターの相互作用を酵母two-hybrid系にて構築した。この方法でアゴニスト活性のみが検出可能であるが、アンタゴニスト活性は、女性ホルモン(ERα、ERβ)、男性ホルモン(AR)存在下で同様の方法で評価可能であった。3.性ステロイドホルモン活性を規定するレセプター共役因子の同定:性ステロイドレセプター種(ERα、ERβ、AR)固有の共役因子の検索・同定を、酵母two-hybrid法を用いたcDNAスクリーニング、及び生化学的手法を用いて行った。この時第一には転写を促進する因子群の同定を目指したが、同時にクロマチン構造を制御する因子や、細胞周期を制御する因子などの同定も試みた。特に後者の因子の同定は、各種ホルモンの細胞複製・細胞増殖への作用を分子レベルで初めて明らかにできる足掛かりと期待された。
著者
河野 博隆 中村 耕三 山本 愛一郎 川口 浩 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

男性ホルモン・女性ホルモンそれぞれの骨量維持作用及び骨量の性差については、これまで不明な点が多く残されていた。主要男性ホルモンであるテストステロンが男性ホルモン受容体(AR)を介して機能しているばかりでなく、アロマターゼによって女性ホルモンに変換されてERを介しても機能する代謝系を持つことが、性ホルモンそれぞれの骨代謝機能に関する解釈を複雑にする一因となっていたと考えられる。我々はCre-loxP systemを用いて、従来の標的遺伝子組み替え法では不可能であった雌雄の男性ホルモン受容体遺伝子欠損(ARKO)マウスを作出した。骨組織を解析したところ、雄性ARKOマウスは雌雄両方の同胞野生型(WT)マウスに比べて、高代謝回転型の著しい骨粗鬆化を呈していた。これに対して、雌性ARKOマウスの骨量は雌性WTマウスと同等であり、骨量減少は見られなかった。雄性ARKOマウスの去勢実験からは骨代謝を調節している男性ホルモンは副腎由来ではなく精巣由来であることが示唆された。また、性ホルモンの負荷実験結果から、女性ホルモン受容体を介さない男性ホルモンシグナル固有の骨量維持作用が明らかとなり,雄性個体の骨量維持に男性ホルモンと女性ホルモンの両者が関与していることが定量的に示された。初代細胞培養系の解析では、男性ホルモンの骨量維持作用は、男性ホルモンが破骨細胞に直接作用するのでなく、骨芽細胞の破骨細胞形成支持能を抑制することで発揮されることが示された。
著者
加藤 茂明 柳澤 純
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、下記の3点に焦点を当て、核内レセプターリガンドとして働く新規低分子量脂溶性生理活性物質同定を試みた。1.RXRとのヘテロ2量体化を利用した新たな核内レセプターの検索:VDRをはじめとした非ステロイドホルモン型レセプターは、RXRとヘテロ2量体化することでDNAに結合、レセプター機能を発揮することが知られている。このヘテロ2量体化に着目し、RXRをプローブとしてこれと会合するレセプターを検索し、これを酵母内で発現させ、RXRとのヘテロ2量体は、タンパク-タンパク相互作用に基づくtwo-hybrid法にて検出した。取得されたcDNA断片を用い、cDNAライブラリーから全長cDNAの取得を試みた。2.組織特異的ビタミンDレセプター欠損マウスの作出と表現型の解析:標的組換えによるVDR欠損マウスの表現型の解析を行った結果、重篤なクル病を呈しており、骨形成、皮膚などに明らかな異常が認められた。更にRXRβとRXRγの2重欠損マウス(VDR-RXRβ、VDR-RXRγ)を作製し、これらの異常がVDR単独欠失より軟骨で強調されることを見出した。これら動物の表現型を詳細に解析することで、皮膚、軟骨組織においてはビタミンDが血中カルシウムを介さず直接作用することがわかった。既にCreを発現させる皮膚特異的プロモーター(K_1、K_2、K_5、K_<10>遺伝子プロモーター)や軟骨特異的プロモーター(プロコラーゲンII型遺伝子プロモーター)をもつ発現ベクターの作製に成功しており、現在共同研究者であるフランス・パスツール大学、P.Chambon教授らのグループとともに、このようなCreをもつトランスジェニックマウスを分担して作製しているところである。3.新規核内レセプターリガンドの同定:上記の方法にて得られた新たなレセプターリガンド同定を目的にレセプターの転写促進能を活性化するリガンドを検索した。得られた新規レセプターcDNAを用いた発現ベクターにより、動物細胞内もしくは酵母内で発現させ、血清あるいは食物中の低分子量脂溶性画分を培地中に加えて、転写促進能を指標にリガンドを検索した。
著者
竹下 克志 阿久根 徹 佐藤 和強 星 和人 川口 浩 中村 耕三 加藤 茂明 池川 志郎 竹下 克志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では骨・軟骨の形成、再生におけるcystatin10(Cst10)の役割と制御機構を解明し、Cst10の医療応用を実現することを目的として行われた。Cst10はマウス軟骨細胞からクローニングされ、cysteine protease inhibitorであるcystatin familyに属する分子で、形態学的、分子生物学的手法を用いた解析により、軟骨細胞の分化後期に発現し、軟骨細胞の後期分化・アポトーシスの誘導に働くことを見いだした。更にCst10の生体内における高次機能を解明する目的で、Cst10ノックアウトマウス(Cst10KO)を作製した。Cst10KOは、成長・外見ともに、野生型マウス(WT)との顕著な差は見出されなかったが、骨組織を各種画像検査、および組織形態計測によって解析した結果、骨成長や骨代謝の著しい障害は見られなかったものの、成長板での石灰化層および一次海綿骨の減少が見られた。Cst10KOの成長板から単離した軟骨細胞培養により、分化に障害がみられたことから、軟骨細胞に発現しているCst10の役割は、細胞の最終分化の促進と基質の石灰化であることが明らかとなった。また、内軟骨性骨化が関与すると考えられる骨折治癒、変形性関節症における骨棘形成や、高齢化に伴う異所性石灰化においても、Cst10KOではWTに比し石灰化の著明な低下が認められた。またWTでは、これらの病態における石灰化部位においてX型コラーゲンを発現している肥大化した細胞に、Cst10が強く発現していた。これらの所見から、Cst10は、軟骨細胞石灰化作用を有し、生理的な骨成長や骨代謝には影響を及ぼさないものの、変形性関節症や異所性石灰化の病態に関与している事が明らかとなった。
著者
吾妻 健 嶋田 雅暁 平井 啓久
出版者
高知大学(医学部)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

導入:これまで、Schistosoma属の起源について、ミトコンドリアDNAのcytochrome oxidasel遺伝子(CO1)、また核リボソームRNA遺伝子の、large ribosomal subunit rRNA遺伝子(lsrDNA)及びinternal transcribed spacer gene 2(ITS2)の部分塩基配列から系統関係を推定したが、本研究では、CO1、lsrDNA及びsmall ribosomal subunit rRNA遺伝子(ssrDNA)の全塩基配列をはじめて決定し、その情報をもとにSchistosomatidae科全体の系統関係を推定した。材料:解析対象の材料としてSchistosomatidae科のSchistosomatinae亜科6属、Bilharziellinae亜科2属、Gigantobilharziinae亜科2属の計10属29種、またアウトグループとして、Sanguinicolidae科のChimaerohemecus1属を用いた。本研究で決定し解析に用いた各遺伝子の塩基数は、CO1は、1,122塩基対、ssrDNAは1,831塩基対、lsrDNAは3,765塩基対であった。結果:今回は3つの遺伝子を結合した情報をもとに解析した。その結果、(Bilharziella(Trichobilharzia,(Dendritobilharzia, Gigantobilharzia)))の系統樹が支持された。また、(Ornithobilharzia + Austrobilharzia)と(Schistosoma + Orientobilharzia)のクレードとのシスターグルーピングが支持され、哺乳類住血吸虫はparaphyleticであることが推定された。また、Orientobilharzia属は、Schistosoma属内に含まれることが明らかになり、Schistosoma属も非monophyleticであると推定された。また、この系統樹では、S.incognitumは、Orientobilharzia属とシスタークレードをつくるので、これらの2種うち、おそらくOrientobilharziaが、アフリカ産グループとS.indicumグループの祖先種であると推定された。論議:Schistosoma属住血吸虫の起源に関する説については、これまで2つある。一つは、『アジアの住血吸虫は、ゴンドワナ大陸から分離したインド大陸プレートによってアジアにもたらされた。また南米の住血吸虫は、南米がアフリカ大陸と分離する以前にすでに移動していた。』とするゴンドワナ説(アフリカ起源説)である。もう一つは『住血吸虫の祖先は、アジアから哺乳類の大移動によりアフリカに広がった。一方、アジアに残った祖先種は、S.japonicumグループとして適応放散した。また、アフリカに渡った系統は、S.mansoniグループとS.haematobiumグループに分岐したが、S.indicumグループの祖先は、ヒトや家畜とともにアフリカからインドに戻った。』とするアジア起源説である。今回の研究により、後者のアジア起源説が一層支持される結果となった。
著者
松田 和信
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、1990年代の初めにアフガニスタンのバーミヤン渓谷およびパキスタンのギルギットから発見され、ノルウェーのスコイエン・コレクションや米国のアダムス・コレクションをはじめとする海外の蒐集家、および我が国の平山郁夫画伯らに分割して引き取られたサンスクリット語やガンダーラ語による大量の仏教古写本類のうち、平山郁夫画伯のコレクションに含まれる写本類を中心に取り上げ、スコイエン・コレクション等の他のコレクションに含まれる仏教写本研究に従事している海外共同研究者とともに関連資料と比較しつつ解読研究を行って、その出版を目指すものであった。平山郁夫コレクションに含まれる写本類の中で最も重要な資料は、パキスタンのギルギットから発見された説一切有部教団に属する『長阿含経』のサンスクリット語樺皮写本である。これは本来、全453葉よりなる写本であったことが判明しているが、平山郁夫コレクションは、この中の53葉を入手している。4年間に亘った研究期間の間、この長阿含経写本の解読を主として行い、53葉に含まれる複数の経典の解読とテキスト校訂を終えた。また平山郁夫コレクションが入手板した他の写本類についても解読研究を行い、その全体像を明らかにすることができた。研究成果の詳細については研究成果報告書において公表する。