著者
CUSTANCE Oscar
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

走査型熱顕微鏡(SThM)は、熱カンチレバーをプローブとした原子間力顕微鏡(AFM)の一種である。カンチレバーで発生した熱は、ナノスケールでの表面及び熱抵抗を観測、ならびに半導体基板のパターニングとデバイスファブリケーションのプロトタイプのための数ナノメートルハーフピッチのマスクの製造に使用することができる。このプロジェクトの主な目標であった「ミリピードプロジェクト」用にIBMが開発した加熱カンチレバープローブ技術を我々の専門と組み合わせ、SThMの分解能の限界をプッシュする原子分解能AFMを開発することに成功した。
著者
山本 真鳥 棚橋 訓 豊田 由貴夫 船曳 健夫 安井 眞奈美 橋本 裕之
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

・研究実施計画は、平成11年度については、若干の変更の後に、ほぼ予定通りに遂行された。平成12年度は、日程調整を行い、調査の足りない部分を補いながら全体の計画が遂行された。・芸術祭の事前に各国を訪れることによって、準備状況を観察し、また異なるジャンルの芸術の全体的な存在様式を観察することができた。・ポリネシアでは、「伝統」芸術の様態が観光と深く関わる部分がある一方、人々にとってそれらはアイデンティティに関わるものとして、社会生活のなかでも大きな意味をもつ。しかし、それぞれの社会で細部の事情は異なる。・パプアニューギニアでは、もともときわめて多様なエスニック文化が存在するなかで、それら伝統文化を織り交ぜながら、新しいアイデンティティのよりどころとなる「伝統の創造」が生じている。ダンスのみならず、多様な芸術の分野でも、ニューギニアらしさを出しながら、しかも特定の部族に直結しない芸術の創造が好まれる。・ミクロネシアは、芸術祭では後発のパフォーマーであり、ダンスの演技が観光と必ずしも結びついていない。その意味で、伝統的なダンスとは何か、伝統的な芸術とは何か、それらを芸術祭でいかに見せるかを、現在追究している段階である。・各国の芸術祭のリプリゼンテーション、つまり送り込む代表団をどのように選定するか、それら代表団がいかなる演技を見せるか、ということは、それぞれの国の国内事情や文化状況、国家としての様態などとさまざまな絡まり方をしていることが解釈できる。それらを明らかにするのは、個別社会の事情に通じた研究である。既に明らかになったことは、研究成果報告書のなかで論じている。・さらに芸術祭を主催すること自体が、それぞれの国の国内事情や文化状況と深く関わっている。それらが、個々の芸術祭のあり方を規定する大きな要因である。ニューカレドニアの第8回芸術祭に関していえば、フランスからの独立の可能性の生じてきている今、カナク文化をニューカレドニアのアイデンティティの正面に据えることは、先住民であるカナクにとって大きな意味を持っていた。
著者
百田 義治 伊藤 健市 岩波 文孝 内田 一秀 佐藤 健司 関口 定一 中川 誠士 橋場 俊展 堀 龍二 宮崎 信二 森川 章
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

わが国においても人事・労務管理の成果主義的な再編が顕著である。この変化は1980年以降アメリカにおける人事制度変革(人的資源管理への転換)の影響を受けたものである。本研究は現代アメリカの人事制度改革の意義を歴史的・実証的に検証している。すなわち、80年代以前のアメリカ大企業の人事制度と労使関係システムが人的資源管理に与えた影響を、20年代ウェルフェア・キャピタリズム(非組合型労使関係)、ニューディール期におけるその変容、それに制約された第2次大戦後の労使関係下の人事制度の課題を実証的に検証したものである。
著者
伊藤 博明 田中 純 加藤 哲弘 木村 三郎 上村 清雄 足達 薫
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ヴァールブルクが晩年に取り組んだ、未完の学問的プロジェクトである『ムネモシュネ・アトラス』に所蔵された全パネルについて共同して詳しく読み解き、その成果は図書として刊行するとともに、2回のシンポジウム「アビ・ヴァールブルクの宇宙」と「ムネモシュネ・アトラス展」において公表した。ヴァールブルクの研究を批判的に受け継ぎ、文化系統学、イメージ人類学、神話の構造分析、世俗世界のイコノロジーなどについて方法論的考察を深め、その成果は7名の外国人研究者を含んだ国際シンポジウム「思考手段と文化形象としてのイメージ――アビ・ヴァールブルクから技術的イメージ・図像行為まで――」において発表した。
著者
松浦 さと子 石川 旺 川上 隆史 川島 隆 林 怡蓉 牧田 幸文 松浦 哲郎 小川 明子 櫻田 和也 津田 正夫 魚住 真司 山口 洋典 日比野 純一 小山 帥人 平塚 千尋 金 京煥 小山 善彦
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

非営利民間放送は現在、コミュニティにおけるコミュニケーションを活性化し、社会的排除の削減に取り組む独立したセクターとして国際的に認知されつつある。しかしながら、このセクターの持続的発展のための法的・財政的・人的な前提条件は、日本においていまだ存在しない。ゆえに我々は、非営利放送局を支えるための体制の可能なモデルを、さまざまな国と地域における成功事例を比較参照することによって明らかにするよう努めた。
著者
小川 容子 嶋田 由美 杉江 淑子 林 睦 村尾 忠廣
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

歴史的研究, 調査研究, 実験的研究の3分野に分かれて音楽科に求められる「学力」について検討し, 音楽学力に関する幅広い議論を積み上げるための基礎づくりをおこなった。歴史的研究では,(1) 戦後の文部省研究指定校や研究実験校, 調査協力校に関する報告書・資料集の収集,(2) 調査対象地域及び対象県の選定とフィールドワークを主とした実態把握を中心に研究を進めた。調査研究では,(1) 全国の元音楽教師, 現役音楽教師を対象とした質問紙調査の実施,(2) 調査対象者並びに対象グループの選定とインタビューを主とした聞き取り調査の実施を中心に研究を進めた。実験的研究では,(1) 音楽能力調査及び学力検査の追試と分析,(2) 国際比較に基づく児童・生徒の音楽学力の実態把握,(3) 新音楽学力調査問題の開発作成をおこなった。
著者
源栄 正人 大野 晋 柴山 明寛 三辻 和弥 佐藤 健
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、次世代地域防災システムとして構造ヘルスモニタリング機能を有する地域版早期地震警報システムの開発とその利活用の検討を行った。迫り来る宮城県沖地震に対する100万都市仙台の地震被害低減を図るために、三陸沿岸の2観測点、伝播経路にあたる2つの観測点、および仙台の公共建築物に設置された地震計による観測波形情報をIP網により東北大学のサーバにリアルタイム伝送するシステムを構築した。また、前線波形情報を用いた高精度地震動予測を可能にする防災システムについて検討した。利活用の一つとして開発システムを利用した学校での防災教育を行った。開発したシステムは2011年東北地方太平洋沖地震を経験した。得られた地震観測記録は、地震前後の建物の振動特性の変化など構造ヘルスモニタリング研究に貢献した。
著者
井上 治 小松 久男 栗林 均 宇野 伸浩 藤代 節 柳澤 明
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題は、北方ならびに中央ユーラシア地域の複雑で多様な文化を、歴史学・言語学・文学・人類学などの手法を有機的に組み合わせ、時代・地域・学問分野・方法論などの研究上の境界を超えて考究することを目指した。基本視点は異文化受容と文化変容の過程に設定し、文献資料・口頭伝承などの資料の分析を通じて、在来要素と外来要素の存在、外来要素の波及・流入過程、外来要素の流入による在来要素の変容と定着過程、在来要素の干渉による外来要素の変容と定着過程、それらの中間に存在する諸媒体などに着目して、受容・変容・定着という文化の動態を把握すること、各地域における異文化受容と文化変容のモデル化の可能性を追求すること、上記の動態あるいはモデルの相互比較により地域間の異同とそれを生んだ歴史的・社会的諸要因を究明すること、各地域における「伝統」の再構築とアイデンティティやエスニシティのダイナミズムの実態を明らかにすること、これらのいずかの側面にアプローチし、以下のような研究が行われた。(1)清朝で編纂された5言語対訳辞典『御製五体清文鑑』の研究上の問題点、(2)イランのモンゴル人政権における婚姻関係、(3)南方に移住したバルガ人たちの社会・文化変容プロセス、(4)シベリアのチュルク諸語の言語状況の動態、(5)ポスト社会主義時代のトゥバの文化的産物と文化実践の変容過程、(6)中央ユーラシアのテュルク系叙事詩の主人公側意識の多様性、(7)元における高麗在来王朝体制の保全のあり方、(8)古代ボン教の変容とその継続性、(9)モンゴル英雄叙事詩の年齢表現と「七冲」という易学の概念との関係、(10)19〜20世紀前半のモンゴルの祖先崇拝儀礼における伝統的価値観と仏教的価値観の整合過程のモデル化。また、島根県立大学服部文庫所蔵のモンゴル語、テュルク諸語文献の目録(暫定版)を完成させた。
著者
三上 岳彦 高橋 日出男 森島 済 日下 博幸
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

東京首都圏 200 カ所の高密度気温観測データと気象庁 AMeDASの風観測データを用いて、夏季気温分布の時空間変動および要因解明を試みた。夏季の海風卓越日と強い単風日について気温偏差分布の日変化のデータ解析および夏季典型日(夏型)を対象とした気温と風の再現実験(WRF モデル)から、関東平野内陸部での高温域に及ぼす風の効果が明らか担った。また、WRF モデルによる都市型集中豪雨の数値シミュレーションを行った結果、都市の存在が首都圏に降雨をもたらす可能性が示唆された。
著者
里村 雄彦 松本 淳 森 修一 勝俣 昌己 荻野 慎也 横井 覚
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

多数のレーダーのエコー合成図を作成し、インドシナ半島上の台風の全体像を捕らえることができた。長寿命台風では半島上に降水に好都合な気象状況となっていることも示すことができた。数値実験では台風の中心位置が観測と良く一致する結果を得ることができた上、レーダーデータと共に上陸後の衰退期の台風構造を捕らえることにも成功した。また、半島東海岸中部では秋季に特に台風による降雨が多くなることやENSOの影響を強く受けていることも明らかにした。
著者
横手 幸太郎 竹本 稔 藤本 昌紀
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、リンパ管の生活習慣病への関与を明らかにするため検討を行った。肥満2型糖尿病モデルマウスの膵臓ではリンパ管が増生しており、膵島においてVEGF-Cの発現が上昇していた。In vitroでの検討では、IL-1βやTNF-αにより膵α・β細胞でのVEGF-Cの発現が誘導された。以上より、糖尿病、肥満で発現が上昇する炎症性サイトカインが膵島でのVEGF-Cの発現を誘導し、膵リンパ管の増生をもたらすことが示唆された。
著者
桜井 成 藤岡 昭三
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1.ブラシノステロイドの新たな生合成経路ニチニチソウ培養細胞の内生ブラシノステロイドとして、これまでに同定された6位にケトン基をもつ一連のブラシノステロイドのほかに、6-デオキソ系のブラシノステロイドの存在を見い出した。このことは、先に我々が実証した6位がまず酸化されてからブラシノステロイドが生成する経路、"早期C6酸化経路"、とは異なる新たな経路も、この培養細胞で働いていることを示している。重水素ラベルの6-デオキソ系ブラシノステロイド中間体を培養細胞に与え、その代謝をGC-MS分析により追究した結果、6-デオキソティーステロンが、3-デヒドロ-6-デオキソティーステロン、6-デオキソティファステロールを経て6-デオキソカスタステロンに変換された後、6位が酸化されてカスタステロン、ブラシノライドが生成する'後期C6酸化経路"が明かとなった。2.シロイヌナズナ(アラビドプシス)のブラシノステロイド生合成変異株最近、ブラシノステロイドを欠損したアラビドプシスの矮性変異株が見い出され、det2変異株については、DET2遺伝子が哺乳動物のステロイド還元酵素とホモロジーのあることが明かにされている。J.Choryのグループと共同研究により、det2変異株と野生株との内生ステロイドを調べたところ、det2ではカンペスタノールのレベルが野生株に比して著しく低く、det2変異株は、ブラシノライド生合成の最初の前躯体であるカンペステロールをカンペスタノールに変換する段階が欠損しているものと推定された。今後、これら変異株を用いた解析により、ブラシノステロイドの生合成酵素やその発現調節に関して分子レベルでの追究へ展開を図りたい。
著者
佐原 寿史 山田 和彦 長嶋 比呂志 伊達 洋至 清水 章
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ブタをドナーとする異種移植は、ドナー臓器不足に対する有力な解決策となる。腎臓や心臓では2か月超える異種臓器の生着が得られる一方、異種肺移植の生着は数時間から数日に留まる。本研究では、ブタ肺をヒト血液で灌流するex-vivoモデルやカニクイザルへ同所性左肺移植を行うモデルによって、GalT-KOブタ肺が超急性期の肺機能不全を回避しうること、ドナーへの一酸化炭素投与による血管内皮保護効果を介して、術後微小血管障害軽減が得られた。しかし異種移植肺は術後3日以内に血栓性微小血管障害による機能不全を呈したことから、長期効果を得るためには新たな遺伝子改変ブタを用いた治療方針の開発が望まれる結果となった。
著者
遠藤 秀紀 横畑 泰志 本川 雅治 川田 伸一郎 篠原 明男 甲能 直樹 佐々木 基樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

旧食虫類における多系統的な形質を機能形態学的に検討した。筋骨格系、消化器系、泌尿生殖器系、感覚器系、皮膚・表皮系などを旧食虫類の諸目間で形態学的に比較検討を行った。その結果、それぞれの器官において、形態学的類似や差異を確認することができ、真無盲腸目、皮翼目、登攀目、アフリカトガリネズミ目などの旧食虫類諸群間の多系統的進化史理論を確立することができた。
著者
橋本 典明 山城 賢 横田 雅紀 河合 弘泰 川口 浩二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大気・海洋間の運動量輸送を支配する海面抵抗係数の暴風時における特性を定量的に解析可能な方法として,数値モデルを介して複雑なシステムの内部構造を推定する立場から,データ同化技術(4次元変分法)を利用した新しい解析法を開発した。また,種々の条件で本方法の精度や適用性を検討した。その結果,本方法は,観測が極めて困難な暴風時の海面抵抗係数を,暴風域外で観測された波浪観測データから逆推定可能であることを示した。
著者
片山 和俊 尾登 誠一 清水 真一
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

第1年次(平成17年度)に中国福建省西南部、第2年次(平成18年度)に広東省北部の客家民居実測および聞き取り調査、第3年次(平成19年度)に広東省深セン市周辺および香港郊外に残る客家民居の実測調査と、東京芸術大学建築科と香港大学建築学科による国際的なワークショップを行った。今回調査対象とした地方各地域に中国の近代化、急激な経済成長の影響が色濃く見られた。中国の主要都市や各地方の中心都市が発展する表の顔とすれば、客家民居が多く残っているような周辺地域は裏の顔の一つであり、人が住ないままに放置された民居や、無造作な建替えによって荒廃が進む住環境が多く見られた。客家民居と集落にかって見られた風土と生活が一体化した風景は、今急速に失われつつある。その一方で例は少ないが、民居や集落を観光資源として集落博物館や民家園として利用する試みも見かけた。宿泊施設として改築中の民居も見られた。文化財の保存という観点からは問題が残る安易な改修もあったが、生活文化遺産を継承する有効な方法の一つとして捉える必要があると思われた。それほどに変貌と荒廃の範囲が広く急激である。このような実測調査プロセスを経て、当初描いた生活文化遺産の物的な記録を残すという客家民居の実測調査に加えて、実態に基づいてこれからの民居と集落の継承を考える必要を感じ、最後のまとめとして香港大学とのワークショップを行った。ワークショップでは、我々がこれまで行なって来た研究調査の成果を発表するとともに、香港大学建築学科松田直則教授の協力を得て、両校の先生と学生たちによる継承に対する様々な提案を行い、客家民居のこれからのあり方についての意見交換を行った。このことを通じて国を越えた生活文化遺産の問題への関心を高め、将来に向けた日中学術交流の礎を築くことができたと考えている。
著者
吉澤 緑 福井 えみ子 松本 浩道 長尾 慶和
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、種々の遺伝子の多型分析を行い、遺伝子組成(成長ホルモン遺伝子GH、脂肪酸不飽和化酵素遺伝子SCD、がん抑制遺伝子TP53などの遺伝子型の組み合わせ)が既知の雌牛の卵子および精子から体外受精胚を作出し、望む形質を有する子牛を効率的に生産しようと企図された。2010年10月、8個の体外作出胚を受胚雌牛1頭に各2個、4頭の雌に移植し、2頭の分娩が予定され、2011年7月21日雄1頭が無事誕生、26日の雄は死産であった。
著者
矢野 友紀 中尾 実樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

哺乳類においては、補体成分C3の活性化断片C3dが、B細胞上の特異的レセプター(CR2)に結合し、正常な抗体産生応答を支持していることが明かとなっている。本研究では、硬骨魚類においても、哺乳類のC3dと相同な活性化断片が生成するのか、CR2と相同なC3dレセプターが存在するのか、およびC3dが獲得免疫に及ぼす影響するのかについて精査した。まず、コイ血清をザイモサンで処理し、補体第2経路を活性化すると、ヒトC3dに似たサイズ(35kDa)の断片が精製することを確認した。この断片のN末端アミノ酸配列を決定し、これがコイのC3dであることを確認した。2種の主要なコイC3アイソフォーム(C3-H1とC3-S)の両者からC3dが生じることも確認した。ただし、C3dへの分解効率は、C3-H1の方が高かった。両アイソフォーム由来のC3dをグルタチオン(GST)-S-トランスフェラーゼとの融合タンパク質として発現させることに成功した。これら組み換えタンパク質(GST-C3d-H1とGST-C3d-S)は、コイ末梢血リンパ球に対してMgイオン非依存的に結合性を示した。抗コイC3ウサギIgGはこの結合を濃度依存的に阻害した。一方、対照として用いたGSTは全く結合しなかった。C3d-H1とC3d-Sでは、前者の方が高い結合能を示した。以上の結果から、コイにおいても、哺乳類と同様にC3d断片が生じ、これを認識するCR2様のレセプターがリンパ球上に存在することが示唆されるとともに、コイにおけるC3遺伝子多重化によるC3の機能分化のさらなる証拠が得られた。
著者
宮下 清 丹野 勲 中山 健 山本 寛 薄上 二郎 杉浦 正和 櫻木 晃裕 細海 昌一郎
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果として、資格を中心にホワイトカラー人材の育成、評価について日米英の比較から、新たな知見を見出すことができた。まず仕事に使えるよう知識や経験を応用・適用する力であることが重要とされた。日本にホワイトカラー資格は存在しないし、今後も浸透の可能性は低い。英米でも実務経験、OJTが重要で、企業で求められる専門性とは仕事をする力であり、職場・仕事こそが最高の人材育成の場であることが確認できた。
著者
杉松 治美 浦 環 小島 淳一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ガンジス河のナローラからカルナバス流域に棲息する15. 18頭のガンジスカワイルカの6ヶ月におよぶ長期観測を3年間にわたり実施し、取得したデータ解析により、ガンジスカワイルカの特異な音響特性が解明されてきた。また、日/月/季節/年による環境変動等に対応したイルカの特定場所への滞留傾向、子育て、移動等について、科学的データが蓄積、変動する河川環境に適応して行動を変化させるガンジスカワイルカのエコーロケーション戦略を解明することで、ガンジスカワイルカの保護活動に益する知見が得られている。