著者
森部 豊 山下 将司 岩本 篤志 影山 悦子 福島 恵 中田 美絵
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

中央アジア出身のソグド人のうち、北朝・隋・唐時代の中国社会で活動した者たちを取り上げ、彼らの政治・軍事・文化史上の活動を、いわゆる正史などの編纂史料のみならず、既出・新出の墓誌銘をはじめとする石刻史料および考古学的発見による文物資料を利用し、検証を加えた。その結果、ソグド人の東方活動には、北朝・隋・唐初における活動の担い手と、それ以降の時期の活動の担い手において、断絶があるのではないかという仮説にいたった。また、ソグド人研究に必要な基本的資料の収集をほぼ終え、別途公開する基礎的作業が完成した。
著者
小林 隆志 濱野 真二郎 谷内 麻美 Haque Rashidul Mondal Dinesh
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

致命的な内臓型リーシュマニア症(VL)の制圧には、治療による全身症状寛解後に発症する皮膚病変(PKDL)の発症機序を理解し、PKDLを的確に診断・治療することが不可欠である。PKDLのリスクファクターを解明するため、バングラデシュのPKDL患者の調査を行い、VL治療薬別PKDL発症率を解析したが治療薬と発症率に因果関係は認められなかった。しかし、リーシュマニア原虫の Real-Time PCRによる定量的検出に成功し、ミルテフォシンがPKDL皮膚病変内リーシュマニア原虫排除に機能することを経時的、定量的に示した。更に、原虫を高感度で検出する乾燥LAMPの試作に成功し現地での実用性も検証された。
著者
FARRER GRACIA 川上 郁雄 イシ アンジェロ 田嶋 淳子 超 衛国
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、日本における移民と、移民国家であるオーストラリアにおける中国、韓国、ブラジルからの移民またベトナム難民の第1と第2世代の人々が、受け入れ社会に対してどのような市民意識と帰属感を持つかを比較研究することによって、日本社会が「移民国家」となりうるのかを検討することを目的とした。インタビューとアンケート調査を通して、同じ国からの移民が受け入れる環境が異なると、違った市民意識とアイデンティティーが形成されることがわかった。その結果、多様な背景をもつ市民を受け入れる日本側の課題が明らかになった。
著者
杉田 正樹 竹内 整一 加藤 尚武 沖田 行司 香川 知晶 篠澤 和久 直江 清隆 菅野 孝彦 小山 嚴也 加藤 泰史 井上 厚史 田中 智彦 九鬼 一人
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

明治以降、今日にいたる日本の起業家たち、具体的には、渋澤栄一、大原孫三郎、武藤山治、波多野鶴吉、から、現代の稲盛和夫(京セラ)、中村俊郎(中村ブレイス)、大山健太郎(アイリスオーヤマ)、小倉昌男(ヤマト運輸)、大山康夫(日本理科学工業)などについて、インタビューなどを含めて、かれらの公益志向を作り出した、気概、精神、背景にある倫理思想を明らかにした。これは、伝統思想である、儒教や神道、仏教に解消できない、独自の思想であることがあきらかとなった。
著者
東長 靖 濱田 正美 竹下 政孝 林 佳世子 三沢 伸生 仁子 寿晴
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、これまでほとんど研究されてこなかったオスマン朝期イスラーム思想を解明することを目指した。3年間にわたる共同研究により、スーフィズム、神学、論理学、歴史学、政治思想、近代思想の各分野を概説する書籍を編集し、刊行した。『オスマン朝思想文化研究』と題された本書は、上記各学問分野の概観と代表的思想家の説明に加え、その著作を対訳の形で含んでいる。ほかに、オスマン朝期イスラーム思想にとって中核となるスーフィズムについて、イブン・アラビー学派の文献目録、スーフィズム関連用語集などを作成・刊行した。
著者
谷口 和也 佐藤 実 吾妻 行雄 伊藤 絹子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

岩礁生態系を構成する生物は、食物だけでなく、生産者である海藻が生産するアレロケミカルによっても結ばれている。本研究においては、海藻がアレロケミカルによって植食動物幼生や付着珪藻を排除するとの仮説を、新たな実験系を考案して実証した。海中林構成海藻が夏〜秋に大量死亡し、冬〜春に成長阻害と死亡によって海中林の再生が阻害されることによって起こる磯焼けは、高水温よりも栄養塩不足がもっとも主要な要因であることが初めて明らかになった。海中林を構成する褐藻アラメ・クロメが生産し、海水中に分泌するブロモフェノールは、ウニとアワビ幼生の変態を1ppmで阻害し、10ppmで死亡させることを、既知の変態誘起物質であるジブロモメタンを同時に作用させる実験系によって初めて明らかにした。またブロモフェノールは、藻体表面に着生する付着珪藻の増殖を1〜5ppmの低濃度で阻害することも明らかにした。海藻のアレロケミカルの研究は、主にコンブ目褐藻を対象に進められてきた。今回、ヒバマタ目褐藻11種と潮間帯の褐藻マツモを培養し、得られた培養海水をガス質量分析器GC-MSで分析した結果、11種のヒバマタ目褐藻のうち5種とマツモがブロモフェノールを分泌すること、さらにヒバマタ目褐藻10種が植食動物幼生に高い毒性をもち、紅藻無節サンゴモが生産するトリブロモメタンを生産、分泌するという驚くべき事実も明らかになった。本研究によって得られた知見は、岩礁生態系の動的安定性の機構を解明し、高い生産力のもとに安定的に維持・管理できる生態系管理技術体系の確立に寄与する。
著者
水野 広祐 河野 泰之 甲山 治 小座野 八光 遠藤 尚 渡辺 一生 加納 啓良 加納 啓良 プジョ スメディ ノーフボーム フルベン スカイク アルトゥール・ファン
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

インドネシアの民主化と地方分権化、さらにその後の経済成長はジャワ島農村を大きく変化させ、土地を持たない世帯が80%を占めるに至り、1904年の32%、1990年の56%を大きく上回った。この変化は、世帯規模の縮小と世帯数の増加、農村内非農業部門の展開と、ジャカルタなどへの出稼ぎ労働力の結果であり、人口増加はこの間、少なかった。19世紀後半、森林や灌漑排水の国家による整備管理が進んだ。しかし、民主化・分権化の結果、それまのでサトウキビの栽培強制が2世紀ぶりになくなり、土地利用の自由化が進んだ。今日、住民の創意が生かされ、集約農業(赤玉ねぎ等)や非農業(煉瓦つくり)、私有地植林が展開している。
著者
廣川 美子 瀬口 哲夫 岡村 穣 伊藤 恭行 阪口 明弘 寺田 博一
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究費により以下の1.〜5.を行なった。1.蛍光X線分析装置(アワーズテック製:OURSTEX 100FA)・デジタル顕微鏡(キーエンス製:VH-8000)・分光測色計(ミノルタ製:CM-2002)を用いて、土壁の色彩及び発色元素の測定を行なった。測定場所は、京都市桂離宮御殿中書院(一の間、大ばらし工法で江戸時代の壁が残っている)、京都市妙法院(庫裏)、佐原市加瀬家(仏間)、京都市大徳寺玉林院、札幌市八窓庵、京都市杉本家、京都府綴喜郡田辺町澤井家、犬山市如庵、京都府大山崎町妙喜庵待庵、如庵写し〔京都市正伝如庵,京都市長好庵,和歌山市遊風〕、京都市島原の角屋である。加えて土壁の施工方法の解明の可能性を考察した。2.全国の伝統的建造物群保存地区のうち14の街並と内外土壁の色彩の調査を行なった。調査した街並は、千葉県佐原市佐原、埼玉県川越市川越、福岡県甘木市秋月、福岡県吉井町筑後吉井、北海道函館市元町末広町、兵庫県神戸市北野町山本通、京都市上賀茂,産寧坂,祇園新橋,嵯峨鳥居本、岡山県川上郡成羽町吹屋、鹿児島県出水市出水麓,薩摩郡入来町入来麓,川辺郡知覧町知覧である。3.佐原市佐原及び奈良県橿原市今井町の伝統的建造物群保存地区の再生計画を検討した。4.石田志朗博士の協力により、聚楽土と思われる土の地質学的成因の分析実験を従来からに引き続き行ない考察した。5.海外調査を行なった。5-1.中国福建省(南靖と永定)の土壁よりなる土楼及びその保存地区の町並の現地調査を行なった。5-2.スペイン・カタルーニャ地方の土壁を持つ伝統的集落の現地調査を行なった。
著者
水谷 規男 山口 直也 上田 信太郎 岡田 悦典 京 明 緑 大輔 笹倉 香奈
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、刑事法研究者及び実務家からの聞き取り調査をアメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ等の国々について行い、司法取引制度ないしそれに類似する実務が英米法系の国々においてだけでなく、従来は取引に否定的であると考えられてきた大陸法系の国々においても、司法の効率化のために存在していることを明らかにした。これに対して、我が国で導入が検討されている刑事免責制度や捜査・公判協力型協議・合意制度は、訴追側と弁護側の取引を容認するものであるものの、司法の効率化よりも供述の獲得にウエイトがある点に特徴があることを明らかにした。
著者
宮島 昌克 清野 純史 能島 暢呂 鶴来 雅人 吉田 雅穂 池本 良子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地震発生直後に管路に直接的な被害が無くとも急激な流量の増加と水圧の低下といった配水システムにおける異常事態に着目し,被害地震が発生した際にアンケート調査を大規模水道事業体に行った。さらに,この現象が貯水槽の水のスロッシングによる水位センサーの誤作動によるものであることを明らかにし,今後発生する巨大地震による長周期・長継続時間地震動が配水システムの異常挙動に与える影響を明らかにした。
著者
高嶋 克義 平野 光俊 南 知恵子 西村 順二 近藤 公彦 松尾 睦 金 雲鎬 猪口 純路
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本の小売企業を対象とする質問票調査のデータに基づいて、小売企業の仕入革新・マーチャンダイジング革新に関する実証分析を進める一方で、アパレル小売企業やドラッグストア・チェーンの仕入革新についての事例研究を行い、その研究成果を論文で公表した。また、これらの研究を通じて、企業間関係、部門間連携、継続的な改善の3つの条件の相互作用を捉え、小売企業の仕入活動革新における企業間関係と部門間連携との関連性についての研究を展開した。
著者
三町 勝久 吉田 正章 黒川 信重 高田 敏恵
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ガウスの_2E1,一般超幾何函数_{n+1}E_n, アッペルのE_1, E_2, E_3, ジョルダン・ポッホハンマー E_{JP}, そしてラウリッツェラのE_Dなる微分方程式(系)の解の基本系を積分表示で与え,それについての回路行列を明示的に求め,応用として,微分方程式の既約条件を決定した.また F_2, F_3, F_4の場合,隣接関係を調べることにより,対応する微分方程式の可約条件を与えた.E_1~E_4, F_A~F_D, _{n+1}E_nおよびゲルファントの点配置空間上の超幾何微分方程式系について,ある多価函数のサイクル上の積分が解を与えることを示した.
著者
仙北谷 康 樋口 昭則 金山 紀久 耕野 拓一 窪田 さと子
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

家畜飼料に含まれている抗生物質を削減しようとする取り組みは様々な場面でみられるようになってきている。また代替技術もいくつか提案されている。しかし現状としては、抗生物質を投与しないことによって発生する追加的費用を、消費者の負担に求めることは困難であるから、生産の側でこれを内部化しなければならない。抗生物質を含む飼料に頼らない畜産フードシステムの成立は、現状としては生産者側の取り組みによるところが大きい。
著者
石原 陽子 三宅 真美 大森 久光 長谷川 豪 中尾 元幸
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北東アジアからの越境輸送物質の健康影響が問題視されている。本研究では、偏西風によってもたらされる越境輸送物質の発生源および通過地域のモンゴル、中国と久留米のPM2.5の大気及び個人暴露量とその成分及び健康影響について調査研究を行った。その結果、PM2.5の重量と成分には大気と個人暴露で相関性や地域特性を認め、黄砂飛来時には成人慢性呼吸器疾患有症者の呼吸器症状の増悪や精神生理的活動性の低下が見られた。従って、今後の疫学調査では、この点を加味した研究デザインが必要であることが示唆された。
著者
林 香里 前田 幸男 丹羽 美之 KALIN Jason JAMES Curran SHARON Coen TORIL Aarlberg SHANTO Iyengar GIANPIETRO Mazzoleni STYLIANOS Papathanassopoulos JUNE-WOONG Rhee HERNANDO Rojas DAVID Rowe RODNEY Tiffen PAUL K. Jones
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、世界11か国の主要ニュース番組や新聞(紙とインターネット)の内容を一斉分析するとともに、同時期に各国民の政治知識、ならびに政治関心や有効感覚をアンケート調査して、双方の連関があるかどうかを検討した。一般的には、公共放送制度のある国のほうが、国民の政治知識(とくに国際的政治ニュースの知識)のスコアも高かった。しかし、日本は、公共放送制度があるとはいえ、とりわけ国際政治ニュースへの知識や関心度も高いとは言えなかった。本研究では、日本のマスメディアの諸問題を、比較研究の手法とともに国際的文脈から批判的に検討することができた。
著者
工藤 晴也 田中 聡子 楠八重 有紗 藤原 俊 クラウディア テデスキ チェッティ ムスコリーノ アントネッラ ラナルディ 宮田 順一
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

世界遺産であり5世紀に作られた初期キリスト教モザイク、ガッラ・プラチディア廟モザイク壁画の保存・修復を目的とする現状調査及び修復事業を行った。壁の構造、モザイク制作技法、材料の科学分析において研究成果をあげることができた。また、修復事業によって劣化箇所の補修及び全体の洗浄を行い保存環境の向上に務めると共に作品鑑賞の環境を改善した。研究成果は最終年度にイタリア文化会館において展覧会及びシンポジウムを開催し、広く国民に公開した。
著者
入江 光輝 柏木 健一 梅田 信 韓 畯奎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

乾燥地の貯水池は集水域の植生被服率が低いため土砂流入が多く、堆砂が進みやすい。対策として浚渫は有効だが、特に発展途上国では経済的理由で行われず利用可能な水資源量が減少している。そこで、チュニジアの貯水池で堆砂に関わる詳細な調査を行い、同時に堆砂を有効利用して得る収益によって浚渫事業を促進する可能性を検討した。土壌改良、機能性食品、レンガ原料といった用途での利用可能性を検証し、浚渫を含めた事業費負担の試算を行った。
著者
松岡 宏明 泉谷 淑夫 赤木 里香子 大橋 功 萱 のり子 新関 伸也 藤田 雅也 大嶋 彰
出版者
大阪総合保育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

図画工作科・美術科における鑑賞学習指導には、その目標設定と評価の在り方に課題があることを全国調査により突き止めた。そこで、鑑賞学習ルーブリック(コモンルーブリックと題材ルーブリック)を作成し、現場教員に実践をしてもらいながら共同研究を重ね、全国3箇所で活用実践報告会を開催した。また、同時に『鑑賞学習ルーブリック&ガイド』5000部を完成させ、学会や研究会などを通して全国の実践者に届けた。さらにその成果と課題を学会誌に研究論文として発表するとともに、学会の口頭発表を4回に渡って行った。
著者
出口 顕 片岡 佳美 石原 理
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代の欧米で、異性愛の夫婦と彼らの生物学上の子供たちから構成される中流階級の白人核家族は、揺らぎ多様化している。グローバル化の中で国境を越えて親子関係が形成されることも稀ではない。外国から養子をもらうことで形成され国際養子縁組家族もその一例である。本研究は、北欧社会の事例を中心にその特徴を以下の結論をえた。第一に、国際養子縁組家族では、従来の核家族を構成する「文化」と「自然」が反転している。第二に、国際養子自信は受け入れ国の市民として自己規定するのに対して周囲は出生国や生物学的つながりを重視し、それが養子に対する「差別的」ステレオタイプにつながっている。
著者
津 富宏 小長井 賀與
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の第一の成果は、長所基盤モデルに立った、犯罪者(特に、少年犯罪者)の社会復帰のありようについて、理論的な検討を深めたことである。その結果、専門書及び少年院出院者の手記の二冊の書籍を発刊し、さらに、鍵となる翻訳書が最終校正中である。第二の成果は、アクションリサーチを通じて、少年院出院者の相互支援団体が立ち上がり、運営上の経験を蓄積したことである。同団体の理事長は、非当事者である私から、当事者に間もなく移行し、真の当事者団体へと進化するところである。