著者
林 博史 小野沢 あかね 吉見 義明 兼子 歩
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本軍「慰安婦」制度と米軍の性売買政策・性暴力の比較研究をおこなうことを目的として本研究をおこなった。米国や英国などの公文書館や図書館などにおいて、関連史料を多数収集することができた。また各国の研究者との研究交流をおこない、研究協力のネットワークも作ることができた。こうした研究活動を通じて、日本軍のケースと米軍のケースについてその相違についてかなり把握できるようになってきた。同時に、日本軍「慰安婦」制度を世界史のなかで位置づけるためには日米比較だけでは不十分であり、欧州や韓国を含めて国際比較が必要であることも強く認識するようになった。
著者
阿部 真理子 小林 雄一郎 藤原 康弘
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、高校生の英語スピーキング力を 3 年間にわたり縦断的に追跡し、その発達過程を明らかにすることである。具体的には、(1)個人レベルでの経年変化のモデル化、(2)内的・外的な学習者要因が発達に及ぼす影響の解明を行う。そのためには研究の共同基盤となるコーパスの整備が不可欠である。「Longitudinal Corpus of L2 Spoken English (LOCSE)プロジェクト」において収集している縦断的英語スピーキング力データ(約120名×8回)をもとに、今年度は学習者コーパスの構築を推進させた。またコーパスの概要を示す特徴量算出(前半3回分)と、個々人の発話に関する数値的な情報(前半3回分)を算出した。個々人の情報に関しては、学習者ごとにフィードバックも行った。さらには、書き起こしの精度と速度を向上させるために、自動書き起こしツールを用いた作業の検討を繰り返し行った。そして、自動書き起こしツールの効果を検証するためのデータ収集を開始した。高校生の英語運用能力および学習意欲の変動に影響する要因を探るためのアンケートも実施し、内的・外的な学習者要因がスピーキング力の発達にどのような影響を及ぼしているかについて論文をまとめた。国内・国外において一件ずつの研究発表を行った。そのことで、次年度(2018年夏)に共同シンポジウムを二件行うことが決定した。また国外における人的ネットワークの構築を行うのみならず、海外の大学との共同研究の開始が決定した。
著者
岩田 洋夫 矢野 博明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、全方向に動く移動機構を有する可動床が、循環することによって無限に続く歩行面を提供する、歩行感覚呈示装置を実装し、それに昇降機構を搭載することによって、階段などの凹凸面のある歩行面を模擬することを実現した。本システムが体験者に与える効果を、足圧力等の計測によって評価した。
著者
須藤 信行 吉原 一文 古賀 泰裕 古川 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、オープンフィールド法とビー玉埋没テストを用いて、人工菌叢マウスの行動特性を、アイソレーター内測定法を用いて厳密に測定した。無菌マウス(GF)は、SPFマウスの糞便を移植した無菌マウス(EX-GF)と比較し、多動で不安レベルが高かった。GFマウスにBifidobacterium infantisを移植すると運動能が、Blautia coccoidesの移植によって不安関連行動が減弱した。このように腸内微生物は宿主の行動特性やストレス応答の発現に関わっていることがわかった。
著者
須藤 信行 服部 正平 三上 克央 吉原 一文 高倉 修 波夛 伴和 古賀 泰裕
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

極端なやせを追求する神経性やせ症(anorexia nervosa: 以下ANと略)患者においては、体重を恒常的に増加させることが極めて困難であり、種々の治療に抵抗性を示し、重篤な感染症や肝機能障害を併発して死の転機をとることも珍しくない。ANの早期診断、治療、予防法を開発することは喫緊の課題であるが、未だその取り組みは十分な成果を上げていない。本研究では、AN患者群の糞便中腸内細菌叢を次世代シークエンサーによって解析し、健常者と比較することでその詳細な特徴を明らかにするとともにAN患者の腸内細菌叢を移植した“AN型人工菌叢マウス”を用いて、AN患者に見られる腸内細菌叢の異常が、実際の体重変動や行動特性の発現に関与しているかについて検討している。平成29年度は、AN患者の腸内細菌を無菌マウスに移植して作製した“AN型人工菌叢マウス”を用いてAN患者の腸内細菌が体重制御や行動特性の発現にどのように影響しているかについて検討した。その結果、“AN型人工菌叢マウス”では、健常女性の糞便を移植して作製した人工菌叢マウスと比較し、体重増加が不良であった。しかしながらどちらの人工菌叢マウスもエサの摂取量は同程度であった。この結果は、“AN型人工菌叢マウス”では、摂取した食事成分から栄養を抽出する効率、いわゆる栄養効率が低下していることを示唆している。次に人工菌叢マウスの行動特性について、我々のグループが開発した“アイソレーター内行動解析法”にて検討を進めている。
著者
久保 千春 高倉 修 古賀 泰裕 須藤 信行 河合 啓介 森田 千尋 古川 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、定量的PCR法に基づいたYakult Intestinal Flora-Scanを用いて、神経性食欲不振症(AN)女性患者の腸内細菌叢を年齢を一致させた健常女性と比較した。AN患者では健常群と比較し、総細菌数、Clostridium coccoides group、Clostridium leptum subgroup、Bacteroides fragilis group、およびStreptococcusの細菌数が有意に減少していた。AN群では健常者と比べ糞便中の酢酸、プロピオン酸濃度が有意に低かった。以上の結果は、AN患者では腸内細菌叢の異常が存在することを示している。
著者
岩田 修一 陳 迎 金田 保則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

データ駆動型の方法論の基礎を提示するため、データサイエンスの視点から検討した.材料データを記述するための変数群 : メタデータは複雑で、精度や粒度も多様であるため、それらの非均質性に適応可能な測度論を検討し、データシステムの基本的な枠組みとした.データは、測定対象の属する空間あるいはメタデータが張る空間の部分集合についての「何か」をはかった結果についての記述であり、部分集合の測度とよばれる.データ駆動型材料設計は、データを集積することによって、社会のニーズに対応した解空間を作成し、ニーズに最も適合した材料の組成、諸構造、特性、価格を特定する設計作業と定義した.測度については、観測・測定方法あるいは経済性の限界に依り不完全であるため、多様なデータ群を目的に沿って誤差を補正し不完全な部分をモデルや近似により補完し、ニーズに合うデータ群を探索(写像)するプロセスを、材料データベースをプラットフォームにして実装し、データ駆動型材料設計の実例の蓄積をWeb 上で展開した.
著者
春名 正光 大和谷 厚 近江 雅人 玉田 康彦 玉田 康彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

交感神経の支配下で機能する汗腺や末梢血管は重要な微小器官であり、そのダイナミックな生理機能を解明することが重要である。本研究では、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を用いて、ヒト指汗腺や小動脈の生理機能を可視化した。汗腺においては、外部刺激に反応する精神性発汗の動的解析を行い、新たに内部発汗を見出した。小動脈においては、脈動を観測し、弾性型動脈と筋型動脈として同時に機能することを明らかにした。
著者
和泉 潔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

似研究の目的は、非常に稀で予測困難だが甚大な影響をもたらす社会的状況にも対応し、頑強で信頼性の高い社会制度や経営戦略を設計するための工学的手法を開発し、実際の社会現象に適用することである。そのために、実データを基に稀な社会事象の内部メカニズムを探るための社会シミュレーション技術である「可能世界ブラウザ」を開発する。最終的に、(1)実データに基づく社会行動ルールの推定と(2)稀な社会状況の対話型シナリオ構成、(3)社会状況の発生メカニズム・操作戦略の推定といった基盤技術を開発する。当該年度では、下記の実問題の分析結果を反映させ、想定外のリスクとチャンスを分析対象にした可能世界ブラウザの実問題応用への手法開発を行った。金融市場制度設計:数時間から数日間までの比較的短期間の市場と数年間の長期の金融システムの不安定性という、まれに起こるリスクを予防するための市場制度設計を目的とする応用を行った。高頻度市場データを分析して、ユーザに制度や取引戦略と市場安定性の関係を提示し、制度設計で設定すべき要素を示唆するための応用技術を開発した。マーケティング応用:数週聞から数カ月間のネットワークリスク急増という、まれに事象を引き起こすための金融マーケティング戦略を探るために可能世界ブラウザを応用する実証研究を行う。研究協力者の有するデータの分析をもとにしたエージェントベースの金融マーケティングシミュレーションを構築した。
著者
白倉 栄美 中井 美樹 与謝野 有紀 岩本 健良 米澤 彰純 岩間 暁子 持田 良和
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本年度は、中流階層を中心とした文化とライフスタイルの実態を解明するため、昨年度実施した川崎市における「ライフスタイルと文化に関する意識調査」(郵送質問紙調査)を中心に研究活動を推進した。研究経緯は、データ収集の最終調整を行い、データコーディング作業、データ入力を経てデータセットを作成、さらにデータクリーニング作業、コンピュータでのデータの統計解析、研究報告および検討会議を経て研究成果報告書を作成した。本研究の特徴および成果は、わが国で肥大化したといわれる中流階層〜上層の文化状況とライフスタイルとの関連を明らかにしたこと、また、中流階層の文化消費やライフスタイルの差異を個人的要因に求めるだけでなく、マクロな社会的要因である「場」の効果を測定したことにある。ライフスタイルと文化的諸実践に及ぼす社会階層の効果、家庭文化のの効果、学校効果、企業などの勤務先集団の効果等について検討した結果、主な知見として以下の点が明らかになった。1.諸文化活動を分析すると、学歴や職業などの社会的地位変数によって正統文化嗜好と大衆文化嗜好に差異がみられる。同じ社会階層であっても、出身家庭の文化資本および教育は正統文化活動を促進するよう作用する。2.正統文化と大衆文化の両方に関与する文化的オムニボア(cultural omnivore)が若い年齢層ほど増加し、社会全体としてみると文化的寛容性が高まる方向にある。3.男性と女性で文化消費に差があり、男性は大衆文化嗜好が強く、女性は正統文化嗜好が強い。4.女性の大衆文化化は、配偶者の文化消費傾向からの影響で始まる割合が多い。5.社会関係において文化的境界を用いる人は高学歴層に多く、文化資本と強い関連を示す。6.学校効果と企業効果が顕在化しやすい文化側面が存在する。
著者
石橋 隆幸 塩田 達俊
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ナノ領域での磁気特性を評価するため、アパーチャーレスプローブを用いたSNOMの構築と、偏光特性の調査をおこなった。その結果、約10 nmの空間分解能と良好な偏光特性を実現するとともに、アパーチャーレスSNOMにおいて問題であった背景光と信号光の分離に成功した。FDTDシミュレーションでは、実験で得られた偏光特性をほぼ正確に再現することに成功し、プローブ周辺の電場分布を理解することができた。さらに、時間分解測定を実現するための装置の構築を行った。
著者
内山 勝 KHALID Munawar 妻木 勇一 近野 敦 尹 祐根 阿部 幸勇 YOON Woo-keun 梅津 真弓
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、高い汎用性を持つ小型高性能なハプティックインタフェースの開発及びその応用である。具体的には、小さな設置面積、広い作業領域、高い応答帯域を実現する6自由度のハプティックインタフェースと様々な計算機に容易に接続可能な汎用性の高い制御装置の実現、及びこのハプティックインタフェースの宇宙遠隔操作への応用である。本研究の成果は以下のように要約される。1.パラレル機構の剛性を機構パラメータの関数として計算するための新しい解析モデルを作成した。これにより、機構パラメータの変更に伴うパラレル機構の剛性変化を容易に予測することが可能となり、よって、剛性面でのハプティックインタフェースの最適化が可能となった。2.剛性の特性が大幅に改善されたハプティックインタフェースの設計、試作を行った。上記の解析モデルの援用並びにこれまでの試作経験に基づき、従来の試作機の特性を大幅に上回る特性を有するハプティックインタフェースの試作に成功した。試作したハプティックインタフェースの設計図はインターネットにより一般に公開予定である。3.本研究で開発したハプティックインタフェースの応用として、宇宙遠隔操作を取り上げ、研究を実施した。このハプティックインタフェースにより、技術試験衛星VII型搭載ロボットアームの遠隔操作実験を行い、その特長である小型軽量及び広可動範囲のの有効性を実証した。また、宇宙遠隔操作の地上実験装置として双腕ロボットシステムを開発し、マスタデバイスに、このハプティックインタフェースを採用し、その有用性を示した。
著者
村上 昌弘 岡田 茂
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

原核生物である藍藻類は、酸素発生型の光合成以外に鉄酵素nitrogenaseを用いて窒素固定も行うため、過剰の鉄が必要とされる。藍藻類はシデロフォアによる鉄獲得機構を備えるとの報告が過去に数例あるが、藍藻種間のシデロフォア産生能に関しても統一的な報告はない。これらの観点から藍藻類のシデロフォア産生能の評価およびその化学的性状に関する研究を行い、以下の知見を得た。1.藍藻類のシデロフォア産生能のスクリーニングを行い以下の結果を得た。ブルーム形成の代表種であるMicrocystis aeruginosa、Oscillatoria agardhiiは活性を全く示さなかった。一方、窒素固定能力をもつヘテロシスト形成糸状性藍藻は強力なシデロフォア産生活性を示した。また嫌気的条件下のみで窒素固定を行うとされるPlectonema boryanum等のヘテロシスト不形成糸状性藍藻の一部も活性を示した。2.窒素固定種の代表種であるAnabaena cylindrica NIES-19からシデロフォアanachelin-2およびanachelinを単離・構造決定した。3.A.variabilis M-204およびヘテロシスト不形成変異株であるNIES-23の両株のシデロフォアは、クエン酸を中心に左右対称な構造を持つヒドロキサム酸系の既知シデロフォアschizokinenであることが判明した。3.ヘテロシスト不形成糸状性藍藻の1種であるO.tnuise UTEX1566からhydroxypyridinone構造を有する新規シデロフォアoscillabactinを単離・構造決定した。以上、本研究において、ほとんど未開拓であった藍藻シデロフォアの構造解析の結果、藍藻類は極めて新規かつ複雑な構造を有するシデロフォアを産生していることが明らかにされた。
著者
宇澤 達 山田 裕二 青木 昇 藤井 昭雄 黒木 玄 長谷川 浩司
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、対称対についての研究を行った。対称対は、リー群および代数群の研究において基本的な対象である。群Gと位数2の自己同型σが対称対を与える。古典型単純リー群も、基礎体の標数が2ではないときには、一般線形群を元に、位数2の自己同型の不変元全体として定義される。したがって、標数が2ではないときには、単純リー群は有限個の例外を除いて、一般線形群の対称対として理解することができる。1)対称対の基礎理論。標数2の体の上でも、リーマン対称多様体に相当する理論が構成できることがわかった。佐武図式も定義される。標数2の体上では、位数2の自己同型の共役類の数が一般には増えることが知られている。その理由もルート系の言葉で理解することができることがわかった。2)整数環上のスキームとしての対称多様体の構成。整数環に1/2を付加した環の上での対称多様体のモデルの構成は比較的容易であるが、ここでは整数環上のスキームとしての構成ができることがわかった。3)対称多様体のコンパクト化の構成。対称多様体のコンパクト化のモデル(群Gが随伴型であるという仮定のもとに)整数環上のスキームとして構成できることがわかった。応用としては、標数2の体上では、5個の2次曲線と接する2次曲線の数が51と、標数が2ではないときの1/64となっていることの説明がある。4)ルスティックによって定義された指標層に対してラングランズ対応を定義することができることがわかった。群ではなく、より一般の対称対に対してもラングランズ対応を研究することは、ジャッケの相対跡公式ともあわせて大変興味がある問題である。5)対称対と整数論の関係。対称対に関連して、エプシュタインのゼータ関数が定義され、その特殊値についての結果が得られた。また、群と対極にある対称対に付随して、楕円曲線の族があらわれる。楕円曲線の族に関する結果も得られた。6)数理物理との関係。対称対としてあらわれるアフィンリー環についての知見が得られた。
著者
福元 謙一 野際 公宏 鬼塚 貴志
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では材料評価手法としてTEM内引張試験その場観察法により熱時効および照射により生じる組織要素の硬化因子パラメータの定量評価を行い、熱時効および損傷発達過程に伴う高温強度特性変化を予測評価した。Bcc金属の純Vおよび純Feでの研究結果から運動転位と空孔型欠陥集合体であるボイドの相互作用が直接観察され、材料因子による障害物強度について測定した。その結果、ボイドによる照射硬化は母材の剛性率などに依存せず、ボイド形状因子が硬化量に対して支配的であるであることが示された。上記手法を用いた信頼性の高い原子力構造材料寿命評価解析手法を確立した。
著者
斎藤 恭一 浅井 志保
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究代表者は、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水の処理に適した吸着材の形態として繊維に着目した。市販のナイロン繊維を出発材料にして放射線グラフト重合法を適用し、極低濃度の放射性セシウムやストロンチウムを除去するために、無機化合物(それぞれ、フェロシアン化コバルトとチタン酸ナトリウム)を担持して繊維を開発してきた。この吸着繊維の性能が認められ、現時点で、サブドレンから汲み上げた汚染水や港湾内汚染水の処理の現場への適用や試験に至っている。
著者
丹羽 美之 伊藤 守 林 香里 藤田 真文
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本テレビ系列の全国29局が制作するNNNドキュメントは、日本のテレビで最も長い歴史を持つドキュメンタリー番組である。1970年の放送開始以来、これまでに放送された本数は約2200本にも上る。これらは日本の現代史・放送史の貴重な記録である。本研究では、これらの記録を次世代に引き継ぐために、NNN各局の全面的な協力のもと、全番組をデジタルアーカイブ化し、詳細な番組データベースを作成した。またこれらを活用して、テレビが戦後日本の転換期をどのように記録してきたかを明らかにした。その成果は『NNNドキュメントクロニクル(仮)』として2019年に東京大学出版会より出版予定である。
著者
池本 幸生 松井 範惇 佐藤 宏 峯 陽一 尹 春志 寺崎 康博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の課題は、アジアおよびアフリカの貧困問題にケイパビリティ(潜在能力)アプローチを応用し、経済中心の開発思想から人間中心の開発思想へと転換させることにあった。ケイパビリティとは、アマルティア・センとマーサ・ヌスバウムが人の暮らし振りのよさ(Well-being)を適切に捉える概念として提唱しているものである。ケイパビリティは日本でも多くの人が言及しているにもかかわらず、その訳語である「潜在能力」から勝手なイメージが作り上げられている。この点を明らかにするために日本でのケイパビリティの使われ方をサーベイし、どこが間違っているのかを指摘した。このような研究によってケイパビリティの誤った理解を正す一方、ケイパビリティの正しい理解を普及させるため、論文等を書いたり、セミナー等を行ったりした。ヌスバウムの『女性と人間開発』の翻訳もその活動の一環である。この理論的研究の延長として、センの正義論などについても研究を行い、貧困という「善さ」に関わる領域から「正しさ」に関わる領域へと研究を展開した。実証研究としては、ベトナム(池本)、バングラデシュ(松井・池本)、中国(佐藤)、アフリカ(峯)、韓国(尹)を取り上げ、それぞれの国に関して数多くの論文が公表された。さらに、ケイパビリティ・アプローチが先進国の問題をも適切に分析することができることを示すために日本の不平等の問題についても研究を行った。本研究における成果の発表については国際ケイパビリティ学会(HDCA)などの国際学会で毎年、発表を続ける一方、HDCAの主要メンバーやアジア・アフリカ地域の共同研究者を日本に招いて国際会議を開催した。予想を超えた反応は、経済以外の分野、例えば、公共哲学、国際保健、教育、総合人間学、幸福論、農村開発など様々な分野でケイパビリティ・アプローチに対する関心が高いことであった。今後の発展が期待できる分野である。
著者
漆谷 真 守村 敏史
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は以前に筋萎縮性側索硬化症の原因蛋白質であるTDP-43の2つのRNA認識部位(RRM1とRRM2)内の配列を抗原とし、異所性局在型や凝集体形成型のTDP-43のみを認識する抗体を作出した。本研究ではこれらの抗体を用いて、TDP-43凝集体の形成を阻止する低分子化合物の同定や一本鎖抗体(scFv)を作製し細胞内のTDP-43凝集体の除去効果を検証した。RRM1抗体を用いた競合ELISA法によってTDP-43の異常会合界面に結合し凝集体形成を阻止する化合物を同定した。RRM2を抗原とし蛋白質分解シグナルを持つscFvはTDP-43凝集体と特異的に結合し分解促進し細胞死を抑える成果が得られた。
著者
浅野 雅秀 吉原 亨
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高次脳機能における糖鎖の役割を明らかにするために様々な糖鎖遺伝子の改変マウスを用いて,行動実験を中心に解析を行なった。β4GalT-2欠損マウスやC6ST-1 Tgマウスでは新奇刺激に対する過敏性や注意機能の異常が認められ,ドーパミン系の異常が示唆された。脳特異的β4GalT-5とβ4GalT-6欠損マウスでは活動性の変化や注意機能の異常が見られ,ミエリン形成の異常が示唆された。このように糖鎖は高次脳機能に重要な役割を持っていることが明らかとなった。