著者
淺輪 貴史 小林 秀樹
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は、研究手法に関する定式化を理論的・実験的に行った。具体的には、気温分布の逆推定手法の数学的定式化と熱赤外域分光センサの利用可能性の理論的・実験的検討に関する課題に取り組んだ。まず、衛星リモートセンシング分野で用いられている気温分布や大気濃度分布の逆推定手法を調査し、都市大気の水平気温分布推定に適用する方法を理論的に検討した。特に、パスの終点が既知の温度(放射率)の物体である場合と大気の無限遠である場合とで、定式化がどのように異なるのかを示した。これらは、建築空間でパスが短く、且つパスの終点が壁面等である場合と、都市大気を対象として比較的遠距離のパスに適用する場合との違いに相当する。次に、熱赤外域分光センサを利用して、上記で定式化した逆推定手法を都市大気の気温分布逆推定に適用した場合に、どの程度の精度が得られるのか、また課題点は何かを実験的に検討した。実験は7月に東京都多摩市で実施した。4階建物の最上階から、500m遠方と2.7km遠方の森林までの区間を対象に熱赤外域分光センサによる観測を実施した。同時に、パスの終点が大気の無限遠である場合についても観測を実施した。パス間を4層に分割して気温分布の逆推定を行った結果、いずれのパスにおいても第1層目から誤差が大きく気温の過小推定が起こっていた。第2層目以降では、MAP法による事前分布に近い結果が得られており、実際の大気からの温度情報の寄与が小さい結果となった。上記の点について放射伝達モデルを用いて数値実験的に検討を行った。放射伝達モデルでは、実験のような誤差は生じなかったこと、また実験においてはいずれのパスにおいても同様の誤差傾向を示していることから、今回の実験に含まれるバイアスの原因であると考察した。これらは、実験と数値解析の両方を用いて、今後要因の感度分析を行って行く必要がある。
著者
臼井 陽一郎 市川 顕 小山 晶子 小林 正英 小松崎 利明 武田 健 東野 篤子 福海 さやか 松尾 秀哉 吉沢 晃
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

(1)先行研究のレビューを進めるとともに、海外学会(英国EU学会など)に参加、さらにブリュッセルなどヨーロッパ諸国で実務者および海外研究者にアクセス、インタビューを実施するなかで、本研究課題に関わる研究状況をサーベイし、<EUの規範パワーの持続性>という研究テーマの意義およびアクチュアリティについて再確認できた。規範パワー論はEU政治研究においていまだ<終わった>研究課題ではなかった。(2)研究会を3回実施(関学大・東海大・新潟国際情報大)、理論枠組と役割分担の微調整を行った。また4名の研究協力者に参加してもらい、理論枠組と実証事例の整合性について批判的視点を加えてもらった。この一連の研究会の結果、規範パワーたろうとする加盟国首脳の政治意思と、EUの対外関係にみられる4つの制度的特徴(マルチアクターシップ・シンクロナイゼーション・リーガライゼーション・メインストリーミング)の関係性をどう理論的に突き詰めていくかについて、メンバー間に意見の不一致があることが分かり、今後の理論的討究の課題が浮き彫りとなった。それは大きくは、合理主義アプローチに依拠した因果関係として仮説化していくべきか、それとも構成主義アプローチに依拠した構造化プロセスの把握を目指していくべきなのか、という二つのアプローチの対抗関係であり、次年度の研究会で詰めていくべき課題となった。なお4年後の研究成果発表のため、メンバーそれぞれの研究課題を仮題として章立てを作り、出版社を決め、出版へ向けた交渉に入った。
著者
金子 芳樹 浅野 亮 井上 浩子 工藤 年博 稲田 十一 小笠原 高雪 山田 満 平川 幸子 吉野 文雄 福田 保
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究のASEANを①拡大と深化の過程、②地域横断的イシューの展開 、③域内各国の政治社会変動分析という観点から「国際・地域・国内」の3次元で捉え直すという目的に沿って、第1年目の平成29年度においては、各担当者が現地調査や文献調査を中心に国別、イシュー別の調査を進めた。また、本研究のもう一つの特徴である「ASEANとEUとの比較」という観点については、その第1歩としてEU研究者を報告者に招聘して研究会を複数回開催し、EUの組織や地域統合のあり方などについて研究分担者・協力者の理解を深める活動を行った。その際、ASEANとEUの両研究分野の相互交流や共同研究を今後進めていくことについても、その体制造りなどを含めて意見交換を行い、具体的な段階へと歩を進める準備を行った。さらに、本研究の研究成果を逐次社会に公表していくという目的と、研究の新たな展開と蓄積のために他国や他分野の研究者との情報・意見交換を進めるという目的に沿って、国内の公開シンポジウムや学会ならびに他国開催の国際研究集会に研究分担者・協力者を派遣もしくは参加支援を行った。また、各研究分担者・協力者は、本研究のテーマもしくは関連テーマに関する論文および書籍の発表・刊行を積極的に行った。これらを通して、研究成果の公表とフィードバック、新たな研究知見の獲得、国内外での研究人脈の形成といった面でそれぞれに成果を得ることができた。上記のような諸活動を通して、1年目の目標であった本研究の基盤作りを着実に進めることができ、2年目以降のステップアップに向けた準備を整えることができた。
著者
松塚 ゆかり 水田 健輔 佐藤 由利子 米澤 彰純
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度の研究目的は、マクロデータを用いて学生と高度人材の国家間移動と移動を規定する要因を分析することであり、課題中心的観点から理論、定量、定性研究を組み合わせて以下を遂行した。1.理論研究: モビリティーを軸に、公共財政論、人的資本論、規模の経済性理論、国際流動化論、移民論等の基礎文献を収集・整理し、共用ドライブ上で研究メンバー間で共有するとともに、定量研究のための仮説を整えた。2.定量研究: (1) 学生と高学歴者の国家間移動データをUNESCO:UISとOECD移民データベース(DB)等から、(2) 経済力、雇用、所得格差等の経済指標をWorld Development Indicators等から、(3) 就学歴、大卒収益率、高等教育費公私負担率等の教育指標をEducation at Glance等から収集、統合・加工した後、各国が提供するデータで補強し、高等教育をめぐるモビリティーとその規定要因を分析するためのデータベース(Database for Higher Education Mobility〈DHEM〉)を構築した。DHEMは研究メンバーの専門と関心を軸に複数にデータセット化し、専用ドライブで共有して分担分析した。さらに、平成30年度の計画研究である個票データの収集を試行し、DBの具体的設計を終えた。3.定性研究: 平成30年度の米国現地調査に向けて上記の定量及び理論研究の成果を参考に、訪問候補の政府機関と大学の情報収集、調査プロトコールと質問項目の作成を進めた。4.研究成果の公開: 全米比較国際学会でのパネル会議開催の申請が採択され、同学会で上記の理論研究、定量研究の成果を発表した。 発表件数: 7件、研究論文: 1件、図書: 1件
著者
中條 清美 松下 達彦 小林 雄一郎 Anthony Laurence 濱田 彰 西垣 知佳子 水本 篤
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,いつでもどこでもだれでも,教育用例文コーパスを使って,DDL(Data-Driven Learning,データ駆動型学習)が実施可能なように,教育用コーパス・検索ツール・教材を搭載したDDLオープンプラットフォームを開発し,その活用と普及を図ることを目的とする。具体的には,平成25‐28年度科研において開発した第Ⅰ期開発版のデータ駆動型英語学習支援サイトSCoRE(Sentence Corpus of Remedial English)に基づき,1)教育用例文コーパスの増強,2)検索ツールの高度化・軽量化,3)DDL実践・効果検証・DDL普及活動の3項目の研究を行い,成果を逐次,国内外に発信することである。平成29年度の研究実績について述べる。1) 教育用例文パラレルコーパスの増強:第Ⅰ期開発版の英語例文・日本語訳データの見直しを行い,例文の増補・改訂,および,インターフェースの改良を加えた第4次開発版SCoREを公開した。2) 検索ツールの高度化・軽量化:SCoREツールのひとつ,「適語補充問題」ツールのログ機能を強化し,教育利用の促進を図った。さらに,ユーザの利便性を考慮し,新たに携帯端末用検索ツール「m-SCoRE」を開発・公開した。3) DDL教材の開発・実践・効果検証:上記1),2)の教育現場への応用研究として,外国語学習者がDDLに取り組むための教材や効果検証テストを開発し,データ駆動型英語学習支援サイトSCoRE(http://www.score-corpus.org/)に収録した。当該サイトは,オープンプラットフォームであり,教師・研究者が自由に収録データをダウンロードできる。大学生および高専生を対象としたDDL指導実践授業の評価と教育効果の検証を行った。研究成果として,雑誌論文を5件公刊し,6件の学会発表を行った。
著者
村上 呂里 那須 泉 西岡 尚也 善元 幸夫
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ベトナムでは、教え込みから子ども中心主義への教育改革に取り組んでいる。本研究は、貧困問題や差別、学力問題や言語問題などの課題を抱える少数民族地域の小学校をフィールドとし、共通の問題を抱えた沖縄で培われた理論や実践に基づき、ベトナムの教育改革の質的向上に参加した。その成果については、日本語版『日本・ベトナム共同授業研究の歩み-教え込みから子ども中心主義へ』(明石書店、2015)とベトナム語版"Tu giao duc nhoi nhet sang giao duc tich cuc"(フォレスト社、2106)として刊行し、ベトナム側にも広く還元した。
著者
中林 純 中島 賢太郎 川合 慶
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2000年代前半に国土交通省が全国で発注した公共工事で大規模な入札談合が行われていた可能性についての存在を推定する方法について検討を行った。公共工事等の入札で予定価格を全員が超過した場合に行われる「再度入札」に着目し、談合によって業者が入札する予定の金額を事前に打ち合わせしていた可能性を示した。さらに再度入札に参加した業者の入札行動を分析したところ、期間中に談合を繰り返した可能性が高い業者が約1,000社、またそれらの業者が落札した工事は当該期間中だけで約8,000件、予算規模で約9,000億円にも及ぶことがわかった。
著者
青木 正博 梶野 リエ 小島 康 藤下 晃章 佐久間 圭一朗 竹田 潤二
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、マウス生体での機能に基づいた探索により大腸がんの転移制御因子の同定を試み、HNRNPLLというRNA結合タンパクを見出した。大腸がん細胞でHNRNPLLの発現を低下させると転移能や浸潤能が亢進した。さらにHNRNPLLは、(1) CD44というタンパクをコードするpre-mRNAの選択的スプライシングを調節して大腸がん細胞の浸潤を抑制すること、(2) 大腸がん細胞の上皮間葉転換の際に発現が低下すること、(3) DNA複製因子をコードするmRNAの安定性を高めて大腸がん細胞の増殖を促進することを明らかにした。
著者
塚本 勝男 中村 教博 横山 悦郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

太陽系形成初期過程におけるコンドリュール形成を模擬した珪酸塩メルト浮遊実験を行い,その結晶成長組織形成過程をフェーズ・フィールド・モデルによる計算機シミュレーションにより実験を行った.その結果は以下のとおりである.1.地上実験では容易に結晶化する珪酸塩メルトが,宇宙空間のような無容器浮遊実験では結晶化せずにガラス化してしまうことが初めてわかった.すなわち惑星間物質が結晶化するには星間ダストなどの微粒子と衝突することが必須であることが示唆される.この結果は,太陽系形成初期には非常に濃いダスト数密度が与えられていたことを示す.2.コンドリュールは従来言われていた平衡凝固ではなく500-1000Kという超高過冷却メルト(ハイパークールドメルト)からの結晶化であることが初めて示された.ハイパークールドメルトからは低過冷却結晶組織が安定に形成されることが熱力学的計算から予測されており,本研究は実験による証拠を提示したことにもなる.3.浮遊メルト結晶化実験,ならびに計算機シミュレーションの結果から,バードオリビンコンドリュールに固有の特徴的なリム構造は,従来言われているような徐冷過程(100K/hr)では形成されず,急冷過程(100K/s)によってのみ形成されることがわかった.4.コンドリュール再現実験結果から,直径1ミリのコンドリュールの結晶化が完了するまでの時間は,原始太陽系の冷却速度には無関係に約10秒程度であることが推定できた.この推定結果は従来説である数時間オーダーと比べて極めて短時間であり,コンドリュールは短時間イベントによる産物であることが予想される.この結果はコンドリュールに激しい蒸発の後が見られず揮発性成分が残されていることと調和的である.
著者
落合 勇一 日野 照純 関根 智幸 石橋 幸治 青木 伸之 山本 和貫
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、多層カーボンナノチューブ(MWNT)における本質的な伝導様式の差異を詳細に調べ、その原因の解明と「朝永・ラッティンジャー液体(TLL)モデル」の適用の可否について検討を行うことを目的としている。本研究の最終的な結論としては、通電加工法を用いることにより、精密ではないが、多層CNTの層数制御が可能であることがわかった。そこで、これまで行ってきた、加工雰囲気・破壊の進行・電気伝導特性変化がどのように相関するのかを再検討した。常温・大気中では破壊がランダムに進行し、最外層から同心円状に破壊が進行するモデルが成り立ち難いということが明らかになった。さらに、高温領域での伝導度の温度変化に現れるベキ乗則と低温領域での微分コンダクタンスのバイアス依存性に現れるベキ乗則は、加工前は両方共にベキが0.4程度でほぼ一致しており、いわゆるTLL的な伝導が起こっているのに対し、通電加工後は伝導度の減少とともに両方のベキが増大し、値に差が出てくることがわかった。そしてさらに通電加工を進めると、バリアブルレンジホッピング(VRH)的な伝導へと変化することがわかった。これは大気中での通電により発熱した状態で酸素との反応による破壊が進行し、その際に生じた格子欠陥が電気伝導を支配していることを意味しており、層数の厳密な制御には適さない条件であると結論づけた。一方で雰囲気制御を確かめるため、高真空中(10^<-6>Torr程度)および液体窒素中にて通電破壊を行った場合は、層の破壊が一箇所で比較的秩序をもって進行し、最外層から同心円状に破壊が進行することがわかった。これは精密なMWNTの層数制御ができる事を意味しており、低層数MWNTを得るには有望な加工条件であることがわかった。しかしこの方法で通電加工を行った場合でも、加工を進めるとVRH的な伝導が観測され、厳密な意味では低層数部分だけでの伝導特性を分離して議論する必要があるという結論に至った。
著者
松岡 和美 内堀 朝子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

【かな由来の手話表現の音韻的制約】指文字が取り込まれて語彙化する「かな由来」の手話単語では手話の音韻パラメータの1つである「位置」と、利き手の身体部位との接触の有無に関連性があることを明らかにした。その理由に接触や追加の動きが手話単語のsaliency(顕著性)を高めることが考えられることを指摘した(論文採択済み)。【愛媛県大島の地域共有手話の研究】数と時の表現について追加のデータを収集し、ろう者と聴者が手話を共有する地域の歴史的・社会的背景の聞き取り調査を行った。他の共有手話や聴者のジェスチャーも考察に入れた論考をまとめた(論文採択済)。海外の研究で用いられた動画を参照しながら、より文化的に適切な動画を作成し、一致動詞の空間使用を調査した。【日本手話の否定とモダリティ】日本手話の否定表現とモダリティ表現の共起関係の制限を手がかりに、否定は3つ、モダリティは2つの異なる位置に生じていることを明らかにした。その構造的位置は、語彙の形態・意味的な性質と深く結びついている仮説を提案した。【数量詞の適用範囲と空間位置】日本・アメリカ・ニカラグアの聴者のジェスチャー動画を収集し、数量詞を含む文を用いる際に'more is up'の空間的メタファーの使用に関して数量的分析を行った(論文投稿中)。【話題化の非手指標識について】文頭の話題化要素に伴って生じる「眉上げ・うなずき」に加えて、文頭に生じる要素には話題化とは別の非手指動作が伴っている例も観察した。例えば「目細め(ないし視線変化)」であるが,これは従来Referential Shiftの非手指標識とされている。今後の研究でも,これらを含め,非手指標識全般について,複数の標識を厳密に見分けた上で互いの分布(特に共起関係)を記述する必要があることが確かめられた。
著者
加藤 憲司 鈴木 志津枝 船山 仲他 福嶌 教隆 田中 紀子 岡本 悠馬 川越 栄子 長沼 美香子 益 加代子 植本 雅治 嶋澤 恭子 山下 正 松葉 祥一 金川 克子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度に引き続き、学部生対象の単位互換講座(10~1月 全15回)およびユニティ市民公開講座(7月 全5回)を実施した。今年度はロールプレイにスペイン語および中国語のネイティブスピーカーをそれぞれ招いて演習を行ったので、過年度よりも一層の臨場感を講義の中に盛り込むことができたと考える。ただしユニティ市民公開講座については、受講者数の減少が止まらず、市民への普及・啓発としての本講座の役割は終えたと判断することとした。医療通訳を巡る国内の情勢は極めて大きな変革期を迎えているため、常に最新の情報を踏まえて方向性を探る必要があることから、関連する第20回日本渡航医学会(倉敷市 7月)、第1回国際臨床医学会(東京 12月)などの学会や、全国医療通訳者セミナー(東京 8月)などのセミナーへ積極的に参加した。さらに、地元の兵庫県においても医療通訳の制度化に関する研究会が立ち上がり、3回の会合がもたれ、本研究チームからも複数のメンバーが参加した。調査研究については、昨年度末に1300通以上の質問紙を全国の一定規模以上の医療機関に発送したが、回収率は20%以下に留まった。データを一旦分析し、本学紀要に投稿したものの、追加のデータ分析をすべく取り下げ、現在も論文原稿を執筆中である。
著者
奥村 明之進 南 正人 井上 匡美 川村 知裕 舟木 壮一郎 松浦 成昭 新谷 康 中桐 伴行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

慢性閉塞性肺疾患COPDの新たな治療法の開発は急務であり、今回COPDに対する細胞治療を用いた再生医療を考案することを目的とした。COPD誘導マウスに対して、健常なマウスより脂肪幹細胞を分取し、経静脈的、経気管的に投与すると、移植細胞は障害肺へ集積し気腫肺を改善した。さらに、人工多能性幹細胞iPS細胞を様々な成長因子を用いて肺胞上皮細胞への分化誘導法を検討した。分化誘導した細胞を標識して、上記と同様に肺障害マウスへの移植を施行し、肺胞への生着および呼吸機能の改善を確認した。肺の再生医療を考案する上で、脂肪幹細胞やiPS細胞が重要なツールになり得ると考えらえた。
著者
小林 達明 高橋 輝昌 保高 徹生 近藤 昭彦 鈴木 弘行
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島第一原発事故による放射性Cs汚染に対する除染作業による里山森林生態系の反応を3年間継続測定した。137Csの初期沈着量は500kBq/m2だった。137Csの林冠から林床への供給は、2013年7kBq/m2だったのが2014年4.4kBq/m2に減少したが、2015年には4.7 kBq/m2に増加した。これは137Cs動態が平衡状態に移行しつつあることを示す。林床の137Cs蓄積量は有機物層除去で79%、リター除去で43%減少した。林冠から林床への137Cs供給はそれぞれ38%と33%減少した。処理効果は見られたが、有機物層下層の除去は可給態Csの減少にあまり貢献しなかったと考えられる。
著者
大城 房美 ベルント ジャクリーヌ 中垣 恒太郎 吉原 ゆかり 長池 一美 須川 亜紀子
出版者
筑紫女学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

「女性」という主体とグローバル化によって拡がったMANGAは、均質ではなく多様な表現を生み出しているという先の研究から得られた観点から、本研究では「グローカル化」をキーワードに、アジア(東/東南アジア)に焦点を定め、各地域での日本マンガの影響、地域独自の女性マンガ文化の成り立ちや発展、動向や現状の調査・分析を行い、その成果を論文や学会で発表し、論集を発行した。女性MANGA研究プロジェクトとして開催した3回の国際会議では、地域公共機関の協力を得て現地の女性作家も招聘して討論を行い、グローカルな現象を経て生み出されたMANGAの派生文化的領域の可能性のさらなる検証が、今後の課題として確認された。
著者
高村 大也 笹野 遼平
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

要約技術の開発に必要となる大規模要約データを自動構築する技術、またそれを効果的に利用する技術を開発した。また、入力文書に対し、文分割、文圧縮、文融合などの演算を施した上で要約を生成する技術、およびウェブページの推薦システムにおいて、ユーザにカスタマイズしたスニペットを生成する技術を開発した。また、野球のイニング速報を自動的に生成する技術を開発した。さらに、ニューラルネットワークに基づく文要約手法において、出力長を制御する技術を開発した。また、日本語の文圧縮のための大量のデータを自動的に抽出する手法を開発し、実際にこの手法を用いて大規模データを構築し、文圧縮モデルの学習を行った。
著者
佐原 哲也 石田 勇治 市野川 容孝 山岸 智子 薩摩 秀登 丸川 哲史 三沢 伸生 関 哲行 武内 進一 大石 高志
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、民族浄化とは民族が国家主権の基礎となるという国民国家理念に起因する近代的現象であるとの仮説の有効性を検討した。三年間の研究期間の間に、ヨーロッパ、ユーラシア、中東、アフリカ、東アジアの幾つもの事例を比較研究し、仮説の有効性は大部分証明された。住民の強制排除、大量追放は、近代初期のヨーロッパに始まり、一九世紀から二〇世紀には東欧・バルカン、中東、旧ソ連、アジア、アフリカへと広がっていったことが確認されたからである。研究の結果、更に重要な発見もなされた。それは民族浄化の発生メカニズムの具体的な解明である。この発見は、ボスニア内戦を中心に、民族浄化を生み出した政治状況、社会的条件、イデオロギー、暴力の展開過程がつぶさに解明された結果であった。ボスニア内戦はユーゴスラヴィ社会主義連邦共和国の解体に起因し、これは一九八○年代のデタントと世界的な金融危機に始まり、一九八九年の東欧革命の余波をうけていた。余波は共和国毎の複数政党選挙という形をとり、選挙後、連邦政府の統合機能が失われ、憲法秩序が崩壊した。これに続いて、独立を目指す共和国が非合法な武装を開始し暴力の独占が崩壊した。こうして、住民の間に生命と財産の不安と恐怖を広がり、従来のアイデンティティが崩壊し、ジェノサイドの「記憶」に基づく危機意識が芽生えた。そして、民族主義者はこれを利用して権力を濫用し、民族浄化を展開したのである。その際、特に民兵の役割が重要であった。民兵は主に犯罪者から組織されていたが、民族解放運動の伝統を利用して自己正当化を図り、受け入れ可能な存在となった。結論として、民族浄化の防止には秩序崩壊時の暴力の統制、特に民兵の排除が中心的課題であることが明らかとなった。
著者
古山 昭子
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

温室内で生育中の2種類の木性シダから放出される塩化メチルをバッグエンクロージャ法によって測定した結果、ヒカゲヘゴからの塩化メチル放出量は日中に減少し、クロヘゴからの放出量は日中に増加することが明らかとなった。さらに、大型チャンバーと低温濃縮/GC/MSから構成される放出量自動測定システムを開発して、塩化メチル放出量の連続観測を行ったところ、両者とも放出量は日中に低下した。気温の変化に対してクロヘゴは正の応答を示し、ヒカゲヘゴは負の応答を示した。1)ラット由来の肺胞上皮細胞と肺毛細血管内皮細胞を用い、基底膜を有する正常肺胞壁を模した2〜0.5μm厚の培養組織の作製に成功した。この培養系に粒径20nmと200nmの蛍光標識されたポリスチレン粒子と金コロイド粒子を培養組織に添加して、粒子の動態・通過機構・認識機構を検討した。A)細胞間の結合部ではなく細胞に取り込まれた20nm粒子がわずかではあるが細胞層を通過するが200nm粒子は通過しなかった。B)200nm粒子はphagocytosisで、20mm粒子はpinocytosisで細胞に取り込まれ、核やミトコンドリアへの移行はなかった。C)カーボンナノチューブは凝集が激しく単粒子で曝露して毒性評価することは困難であった。細胞内シグナル伝達分子の活性化としてNF-κBの核移行と、サイトカイン(IL-1b、TNF)の分泌は検出されなかった。MAP kinaseのリン酸化がナノナノチュいブ添加で検出されたが、毒性の弱い20nm粒子では弱かった。2)マウスに気管内投与した20nmと200nm金粒子は、主にマクロファージに貪食され、ごくわずか20nm粒子は粒子単独で循環系に入り体内移行することが形態的及びICP-MSで示された。3)マウスにカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、二酸化チタンを気管内投与し、肺への影響を検討した。組織染色ではNF-κBの核移行は検出されず、サイトカイン(IL-1β、TF-α、TGF-β)は50μgのカーボンナノチューブ投与でわずかに分泌が亢進していた。50μgと10μgのカーボンナノチューブ投与で肺の炎症、肉芽腫、部分的な線維化が認められ、ニッケル含量の多いシングルウォールのカーボンナノチューブで影響が強かった。カーボンナノチューブは肺胞マクロファージに貪食されていたが一部上皮細胞に刺さっている像も観察された。
著者
安藤 寿男 七山 太 近藤 康生 嵯峨山 積 内田 康人 秋元 和実 岡田 誠 伊藤 孝 大越 健嗣
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本各地の白亜系~現世カキ化石密集層や現生カキ礁において,産状や堆積構造の観察,カキ類の形態・生態調査から,個々の密集層や礁の形成過程を復元し,形成要因を考察した.道東の厚岸湖では現世カキ礁を含む完新世バリアーシステムの堆積史や海水準変動を復元し,パシクル沼では縄文海進初期の津波遡上による自生・他生カキ化石密集互層を認定した.また,九州八代海南部潮下帯のカキツバタ礁マウンドの地形や生態を調査した.
著者
西本 一志
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

工学研究は,人々の生活を便利にする技術の実現を目的として推進されてきた.しかしながら,過剰で近視眼的な便利さの追求の結果,副作用として各種の問題が生じてきている.この1つの解決策として,筆者らは,妨害的要素をあえて導入することによって,人による人間的な営みに対して,異なる視点,あるいは高次の視点から見た場合にプラスの影響をもたらそうというメディア・デザインの考え方を提唱している.本研究成果報告書では,我々自身の研究事例に基づき構築した,妨害による支援システムのデザイン方法論について述べる.併せて,この考え方に基づき新たに開発した2つの語学学習支援システムの概略を示す.