著者
永松 朝文 大塚 正人 AJAYA Shretha R. 真銅 隆至 池内 百江 芦田 則之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,細胞増殖機能調節に関わっている酵素のチロシンキナーゼを阻害して,腫瘍細胞増殖を阻害する新規抗腫瘍薬開発を目的に行った研究である。デアザフラビン類縁化合物に関して,抗腫瘍活性データとコンピューターを駆使した酵素へのドッキングデータよりバーチャルスクリーニング系を構築した。この系より得られた活性情報を基にデザインした新たな活性有効化合物を合成・評価する新しい高効率抗腫瘍活性化合物検索系を構築した。
著者
村田 俊也 橋爪 和夫
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、剣道7段は、なぜ剣道8段の動きの情報を全く入手(入力)できないのかという事象を解明することである。剣道8段は、7段相手に全く情報を発しないで動作を発現しているのか、あるいは、7段は8段の発現している動作を入力できる技能がないのか、という問題を解決することを意図している。2021年度は当初計画していた運動生理学とバイオメカニクスに基づく実験ができなかった。それで、これまでに積み重ねてきた武道学的な視点に基づく自己点検について再検討した。前年度までは、2019年度報告に示した総数53項目(生理学1、運動学35、心理学2、戦術4、剣道学11)について自己点検と自己評価そして省察を行ったところ、ほぼ確定した。本年度はこれらの自己点検が部分練習の学習サイクルとなった結果、全体練習ができていないという仮説を設定した。従って、一旦自己点検の項目から離れて、武道学や剣道で用いられる「自然体」という考えで本研究課題を探求することを意図した。剣道で用いられる「自然体」の概念は、明確にされていない。ゲシュタルト心理学は「人間の精神を、部分や要素の集合ではなく、全体性や構造に重点を置いて捉える」と説明している。「全体性の考察に力学の概念を取り入れた」概念は、自然体という用語で武道の技能を表現することと類似していると考察した。自然体で打突する剣道の技能は「53の項目を念頭に置きながら打突する」技能とは概念的に乖離していると考察した。なお、剣道で問う「中心線」についてはバイオメカニクス的な実験研究が必要であり、次年度の課題とすることとした。
著者
三條場 千寿 Chi-Wei-Tsai Zhang Ling-Min
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日本産サシチョウバエ、Sergentomyia squamirostrisは北海道を除く本州、四国、九州、沖縄に広く分布することが本研究により明らかとなった。成虫の発生は気温が20℃を超える6月から9月であり、爬虫類に対しての嗜好性があることが示唆された。南西諸島においては、S. squamirostrisと形態学的・遺伝的に異なる種の存在が明らかとなった。中国、モンゴル、台湾における採集調査および台湾に生息するSergentomyia属サシチョウバエとの分子系統解析の結果より、東アジアにおいてS. squamirostrisは、中国の一部地方と日本のみに生息する可能性が高い。
著者
吉本 尚
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究の目的は、生活習慣病のリスクを高める量の飲酒を行っている過剰飲酒者に対して、微アルコール飲料の提供でアルコール摂取量が減るのかを介入試験で検証することである。過剰飲酒は危険な飲酒パターンの一つであり、生活習慣病以外にもアルコール依存症、がんなどの慢性的な健康障害が惹き起こされる。本研究では、地球規模課題である過剰なアルコール摂取の改善を図るための有用な資料を世に提供することで、政策提言を含む効果的な対策を行うことが可能となる。新型コロナ流行に伴い、飲酒量の増加とアルコール関連問題の増加が世界中で確認されており、本研究のテーマは非常に重要であり、かつ喫緊の課題と考えられる。
著者
伊藤 俊彦 橋爪 克己 藤田 直子
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

A. luchuensisが生成するグルコアミラーゼは、生デンプン結合ドメインを有するグルコアミラーゼの働きにより超高アミロース米を消化することを明らかにした。また、難消化性米を原料米とし、A. oryzaeで作成した麹は超高アミロース米を消化することを明らかにした。さらに、A. oryzaeが生成する難消化性デンプン分解酵素は、α-アミラーゼ及びグルコアミラーゼであることを明らかにした。しかし、グルコアミラーゼはpIの異なる3種の酵素が見出されており、これらの詳細な検討は今後の課題である。
著者
橘 勝康 原 研治 野崎 征宣 槌本 六良
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ふ化直後のマダイとトラフグにカロテノイド(マダイ:β-カロテンあるいはアスタキサンチン,トラフグ:β-カロテン)で栄養強化した初期餌料を投餌し無投薬で生産を試みた。マダイでは、ふ化後20日の飼育で,β-カロテン及びアスタキサンチン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。トラフグでは,ふ化後28日の飼育でβ-カロテン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。両魚種ともに全長からみた成長にはカロテノイド強化による有意な差は認められなかった。飼育最終日の仔魚より脾臓を採取し,リンパ球の幼若化反応を検討したところ,両魚種ともにPWM20μg/mlあるいはCon A 100μg/mlの刺激で,カロテノイド強化区が対照区に比較して有意に高い幼若化の反応性を示した。これらの強化初期餌料でマダイやトラフグの種苗を飼育することにより,種々の感染症に対して抵抗力の高い健康な種苗の無投薬での生産の可能性が考えられた。引き続いてβ-カロテン強化モイストペレツトでブリ一年魚の飼育を2-3ヶ月間無投薬で行い飼育開始と飼育終了時の血液値と免疫防御能の比較を行った。飼育終了時における血液値では,両区とも飼育開始と飼育終了時では顕著な違いを認めず,実験期間を通じて健康であったと考えられた。実験終了時の免疫防御能をリンパ球の幼若化能を比較すると,β-カロテン区がマイトーゲン添加培養の全てで対照区より高い幼若化を示し免疫防御能が高いと考えられた。以上より,β-カロテン,アスタキサンチン共に免疫賦活作用を持ち,これらを餌料に添加することで無投薬飼育が可能となることが分かった。
著者
田中 直樹 長屋 匡信 中村 浩蔵
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

トランス脂肪酸は日常生活で我々が頻繁に食する脂肪酸である。米国ではトランス脂肪酸摂取が禁止されているが、我が国ではトランス脂肪酸の健康被害に関する科学的根拠が乏しいとの理由で、その摂取に注意が払われていない。我々はトランス脂肪酸が肝癌を促進させる可能性を見出したが、そのメカニズムは不明である。本研究では、食事中トランス脂肪酸が肝臓に与える影響を多角的に解析し、その毒性を機能性食品で軽減する方法も探索する。トランス脂肪酸毒性に関する明確な科学的根拠とその予防戦略を提示できれば、国民の食生活の改善や健康寿命延伸、新規産業創出につなげられる可能性があると考えている。
著者
野上 建紀 エラディオ・テレロス
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アジア・太平洋海域の有田焼交易ネットワークについて、考古学的な研究によって明らかにした。近世の有田焼がいわゆる「鎖国」政策下にオランダ船や唐船によって長崎からアジアやヨーロッパへ輸出されていたことは知られている。その一方、長崎で交易が許されなかった船も有田焼を運んでいたことはあまり知られていない。太平洋を越えて、アジアとアメリカを結んでいたガレオン貿易を担ったスペイン船もその一つであった。今回の研究により有田焼が中米・カリブ海周辺にも広く流通し、ペルーやコロンビアなど南米にまで輸出されていたことが明らかになった。特に芙蓉手皿とよばれる皿類やチョコレートカップが広く流通していたこともわかった。
著者
滝沢 誠 菊地 吉修 渡井 英誉 佐藤 祐樹 笹原 芳郎 笹原 千賀子 田村 隆太郎 戸田 英佑
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、伊豆半島における前期古墳の調査をつうじて、半島基部に形成された古墳時代前期の政治拠点と東日本太平洋岸域における広域的なネットワークとのかかわりについて検討した。あらたに確認された瓢箪山古墳(前方後円墳)の発掘調査では、同古墳の立地や墳丘構造が伊豆半島の基部を横断する交通路を強く意識したものであることを明らかにした。また、同古墳が築かれたとみられる古墳時代前期後半には、周辺域において集落規模の拡大や外部地域との交流が活発化する状況を把握することができた。これらの成果をふまえ、古墳時代前期後半には、伊豆半島基部の交通上の役割が高まり、その拠点的性格が顕在化したものと結論づけた。
著者
豊平 由美子 坂巻 路可 李 暁佳 吉永 有香里
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

交感神経系モデルとしての培養ウシ副腎髄質細胞を用いて、ストレス軽減効果の有る予防薬や気分障害の治療薬として適用できる可能性があるポリフェノールを選定した。アピゲニン、オーラプテン、イカリソサイドAはニコチン性アセチルコリン(ACh)受容体刺激よるカテコールアミン(CA)分泌と細胞内へのCa、Naイオン流入を濃度依存性に抑制した。アピゲニンとルテオリンはチロシン水酸化酵素(TH)活性を濃度依存的に抑制した。イカリソサイドAはACh刺激によるCA生合成やTH活性を濃度依存的に抑制した。アピゲニンとイカリソサイドAはイオンチャネルの機能を阻害してCA神経系の機能を抑制することが示唆された。
著者
小野寺 淳 杉本 史子 西谷地 晴美 宇野 日出生 宇野 日出男
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

比叡山西麓に位置する京都府左京区八瀬は八瀬童子会という組織をもつ。八瀬童子は天皇から特権を与えられ,明治・大正・昭和の三天皇の大喪にかかわった。皇室と比叡山との関係の中で八瀬童子の人々は独特な空間認識と歴史意識を育んだ。本研究は絵図,古文書,聞き取りから八瀬童子の空間認識と歴史意識を明らかにした。八瀬童子の空間認識は18世紀初頭に起こった比叡山延暦寺との境界争いで顕在化する。裁許の結果,比叡山と八瀬の境界が「老中連署山門結界絵図」に描かれた。地形図,空中写真などにより絵図に描かれた境界線や事物の位置を推定,現地で確認調査を行った。また絵図のデジタル画像を作成,5点の絵図の違いを明確にした。この結果,八瀬と比叡山の境界は現在の琵琶湖国定公園の西端,すなわち元禄国絵図における山城国と近江国の国境と一致した。この争論が発生した原因は八瀬や大原の集落で行われていた柴の採取にある。八瀬の人々は比叡山の聖域を越えて柴の採取を行い,京の市中で柴を売り歩いた。この日常的な経済行為が比叡山との境界争いを生んだ。しかしこの争論は天皇から特権を与えられた八瀬童子に有利な裁決が下された。これに感謝して始まったとされる「赦免地踊り」は実は11世紀中期まで遡ることができる。すなわち中世的な祭礼組織にみられる歴史意識は18世紀初頭に変質したと考えられる。
著者
薄井 和夫 DAWSON John
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、英国最大手の家電小売企業ディクソンズ社(現在DSGI社)が、(1) わが国カメラの英国への輸入とわが国チノン社との提携によって成長の端緒をつかみ、(2) 競合企業カリーズの買収を機に総合家電小売として成長を遂げる一方で、アメリカ市場参入の失敗による深刻な危機を経験し、(3) これを克服して現在の地位を確立するまでの発展の軌跡を解明し、「漸次的イノベーション」[=画期的な革新とは異なる部分改良型の革新]を同時並行的に継続することの重要性を明らかにした。同時に、わが国独自の系列家電チェーンの端緒を築いた戦前の展開を解明し、独立系企業の近年の展開によって欧米の家電小売業と直接比較研究を行ないうる条件が成熟してきたことを示した。
著者
高村 仁知
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

魚の嗜好性と機能性を高める調理法の開発を目的として、魚臭成分の原因となる脂質酸化生成物の生成を抑える抗酸化成分を含む香味野菜を加えて調理を行い、海産魚に含まれるにおい成分及び機能性成分の調理過程における変化を解析した。その結果、香味野菜を加えて調理することにより、脂質劣化に由来する揮発性成分が減少した。また、薬味なしの試料では調理後、抗酸化活性は減少していたが、薬味を加えることにより抗酸化活性が増加していた。以上の結果から、魚に香味野菜を加えて調理することにより嗜好性及び機能性において優れた効果を発揮することが示唆された。
著者
高橋 浩 南 雅代
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

水の溶存無機炭素(DIC)分析では、試料採取から分析までの期間に生物活動によりDICが変化しないように、塩化第二水銀の添加が認知されているが、水銀の錯体形成等の影響や環境負荷が大きいことが問題である。そこで、水試料のDIC変化を防ぐ処理として、塩化ベンザルコニウム(BAC)の添加とろ過を併用した手法を確立する。具体的には、ろ過実施に関するブランク検証と最適なろ紙孔径の選択、BACの添加によるブランクの低減手順の検証、複数の天然試料を用いた処理の有効性の検証を行う。本研究により水銀を使用せずに正確なDIC分析が可能となることで、分析の効率化と安全性の向上を実現し、将来にわたって大きな貢献となる。
著者
吉村 政穂 藤間 大順 堀 治彦
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

研究にあたっては、まず文献に基づいて最近の動向に関する調査・分析を進める。具体的には、OECD、EU によって策定される国際的ルールとあわせて、この分野での国際的な議論をリードする米国、そして金融面での産業政策に力を入れる英国及びシンガポールを取り上げ、(a) 新しい国際課税ルールの受容に伴う国内法人税制の変化、(b) ICO 発行によって調達された資金の課税、(c) 分散型自律組織(DAO)の課税上の取扱いといった論点を軸として各国の議論を対比する。さらに他の研究者・実務家との議論を重ね、日本の法人税制がどのような変容を迎えるのか、またどういった対応が望ましいのかを議論していく。
著者
山本 雅道 白井 浩子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1. 走査型電子顕微鏡を用いて無腸目 Convoluta naikaiensisの初期発生の過程を詳細に記載し、産卵から孵化(約90時間後)までを以下の4期16ステージにわけた。第1期(卵割期):St.1-St.7, 第2期(陥入期):St8-St.10,第3期(球形期):St.11-St.12,第4期(偏平期):St.13-St.16卵割は変形ラセン卵割で、割球の胚内部への侵入は動物極、植物極の2極で進行した。2. 扁形動物渦虫綱より無腸目、カテヌラ目、多食目、卵黄皮目、順列目、棒腸目、全腔目、三岐腸目、多岐腸目の9目より17種を選び、18S rDNAのほぼ全長にあたる約2000塩基対のDNA断片の塩基配列を決定した。そのデータをもとに近隣結合法、最節約法、最尤法により系統樹を作成したところ、すべての系統樹で無腸目が渦虫類のなかで最も早期に分岐したグループであるという結論が得られた。3. 扁形動物渦虫綱の無腸目、カテヌラ目、多食目、棒腸目、全腔目、三岐腸目、多岐腸目の7目のミトコンドリアの遺伝子暗号を比較した。無腸目を除く6目AAA,ATAは各々アスパラギン酸、イソロイシンを指定してたが、無腸目ミトコンドリアではリジン、メチオニンを指定してた。この事実は、無腸目は他の扁形動物が特殊化する以前の段階で分岐していたことを示唆しており、無腸目の原始性を明確に示す結果と言える。4. 無腸目は体表上皮細胞とその下の筋肉組織を隔てる基底膜構造が全く存在せず、表皮と筋肉が複合構造を形成している。筋表皮複合構造の形成過程を透過型電子顕微鏡で追跡し、発生過程においても基底膜構造が出現する時期は全くないという結論を得た。この事実は、無腸目の筋肉表皮複合構造が退化の結果生じたものではないということを示唆している。
著者
秋鹿 研一 東 千秋 加藤 之貴 劉 醇一
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

アンモニアはCa,Mgなどのハロゲン化合物と安定な錯塩を作る。塩化カルシウムにアンモニアが近づくと、窒素のローンペアーの強い配位力と塩素イオン同士の排斥力により、アンモニアのほうがカルシウムイオン近くに取り込まれる。結晶は2配位、8配位へと変化し、膨潤する。これをアンモニアの吸蔵材料として使うために、これらの錯形成反応の速度論データを取る装置をくみ上げ、データ取得を始めた。これらのデータは全くないこと、材料実用化のためにはあらゆる種類のデータを多くの技術者にとって貰う必要があるため、簡便な装置として、食品の水分量を測定する自動天秤を利用することを企画した。CaCl2にアンモニアを吸蔵させる際、水蒸気が共存すると正確なデータがとれないため、天秤を窒素気流雰囲気下へ設置した。CaCl2などの潮解性試料に対し、水分の吸収条件を検討した。吸収、脱離の速度に影響する因子は、アンモニア圧、(塩素、臭素混合であれば)陰イオンの種類と割合、結晶子あるいはクラスターサイズ、温度などである。CaCl2-CaBr2系は、常温、常圧でアンモニアを分離、貯蔵、放出でき、実用化の可能性がある。CaCl2は高い圧で、CaBr2は低い圧でアンモニアを吸収する。Cl/Bn比,1:1,の混合系は中間的構造を取るため、両者の中間的圧力(常圧付近)でアンモニアを吸蔵放出できる。これらについて、速度論データを取るための予備的実験を重ねたが、出発物質の水分制御が思ったより難しく、比較検討できるデータが十分に得られたとはいえない。従って、平衡に近い挙動のデータはこれまでのデータに加えることが出来たが、速度論的データについては再現性を得るに至っていない。サンプル調製法、速度データ取得装置については更なる検討を必要とした。実験データの整理法については理論的考察をさらに推し進めた。
著者
道上 義正 神林 康弘 中村 裕之
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

黄砂やPM2.5などの大気粉塵による健康影響が社会問題となっている。本研究では、大気粉塵中の重金属が成人慢性咳嗽(気管支喘息、咳喘息、アトピー咳)患者の目のかゆみや咳の悪化に関連していることを示した。重金属による症状の悪化は、血清IgEレベルの低い患者で強かった。重金属による影響は、アレルギー症状が弱い患者で強いことが示唆された。また、総浮遊粒子状物質とPM2.5で重金属の構成が異なっていた。特に、黄砂日では、総浮遊粒子状物質の重金属濃度は高くなったが、PM2.5では濃度があまり変わらない重金属もあった。粒子状物質による健康影響を考える上で、構成成分を考慮することが重要である。
著者
菅澤 貴之 三須 敏幸 桑畑 洋一郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

大学院博士課程修了者の就業状況については、近年、「ポスドク問題(若手研究者問題)」としてマスコミ等で社会問題化されているものの、大学院重点化政策が開始される1990年代までは博士課程在学者数が3万人未満にとどまり、対象者へのアプローチが困難であったことも影響し、未解明な部分が多い。そこで本研究では、インターネットによる調査票調査から収集された調査データを用いた計量分析(定量的手法)とインタビュー調査(定性的手法)を組み合わせた実証分析を行うことで、博士人材のキャリアパスの実態を多角的に捉えることを試みる。
著者
飯田 直樹
出版者
地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、小河滋次郎の児童保護に関する主張に光を当て、それが小河の社会事業思想の中核にあることを示す。その上で、その思想が具体化されたのは、小河が立案した方面委員制度よりも、むしろほとんど小河とは無関係と考えられていたセツルメントであること、また、小河の思想の影響を受けて、幼児保育がセツルメントの中心事業になることを明らかにする。さらに、小河の影響が、セツルメントを介して都市での露天託児実践や農村での農繁期託児所という領域にまで及ぶ事を示し、小河の思想に新たな意義を見出す。日本における福祉国家化が、児童保護の分野を軸に進行することを明らかにし、医療偏重の福祉国家史の刷新を目指したい。