著者
金菱 清
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

東日本大震災において様々な脆弱性に直面した。世界に比して大災害による死亡・行方不明者が多数に上るわが国において、喪失や悲嘆経験を理解し克服する方法や教訓は多岐にわたるが、心理学・宗教学・社会学・民俗学等の各分野に散らばり、総体的・実践的な説明体系や仕組みがない。申請者は現在まで「東日本大震災の被災者はどのように死を受け入れるのか」を主題に、即座に彼岸に送れない死者の存在(幽霊、夢、行方不明等)に対する調査を継続している。生死の中間領域における「霊性」の視角を活用し、喪失や悲嘆経験を克服する体系的手法を編み出し、自己表出の困難な人びとの現実世界を開示する、社会学的な調査方法論を模索したい。
著者
三浦 一芸
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

タイリクヒメハナカメムシ (以下タイリク)は日本でアザミウマの防除に広く販売されている。販売しているタイリクはCIWolbachiaに感染している。そのため、野外で感染雌の分布が拡大すると考えられる。そこで、分子生物学的手法を用いてWolbachiaの感染の有無やDNA解析をおこない、タイリクの感染系統の非感染系統への影響を検討した。放飼地域には天敵製剤由来と考えられる個体が多く採集される地域が存在した。放飼タイリクのWolbachia感染率は無放飼地域より高かった。しかし、放飼地域のmtDNAおよび核DNAの多様性は無放飼地域と変わらないことより天敵製剤は生態系への影響は低いと考えられた。
著者
金子 真人 宇野 彰 春原 則子
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

新1年生203名と通級指導学級に通う児童19名(ADHD児5名、視覚認知困難児10名、その他4名)にDCD課題と他の認知機能に関わるスクリーニング検査を実施し、DCDの併存特性を検討した。その結果、DCD課題は単純な運動に限定した上肢道具なし課題にて相関が高く、特にグーパーによる上肢交互運動が相応しかった。また、発達障害疑い児の中で、複数の発達障害を併存する児がDCDを呈する児の検出確率は、92.1%を呈した。
著者
生田 国大 西田 佳弘 酒井 智久 小池 宏 伊藤 鑑
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

NF1は多発する神経線維腫を特徴とする遺伝性腫瘍症候群である。神経線維腫は疼痛、機能障害、醜状をきたし患者QOLの低下につながるが、保険診療による薬物治療は現状ない。本邦の患者数は4万人であり、神経線維腫に対する薬物治療、予防治療の開発へのニーズは高い。本研究では、NF1患者の神経線維腫に対する実現可能な新規治療法の基盤データの構築を目指す。経年的に増大、増加する全身の神経線維腫に対して、drug repositioning法により既存薬剤から腫瘍抑制効果を有する候補薬剤を同定し、神経線維腫培養細胞における薬効メカニズムの確認とpreclinical modelにおける抗腫瘍効果の評価・検討をおこなう。
著者
下夷 美幸
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

離婚後、子どもと離別した父親の多くが養育費を支払っていない現実がある。そこで本研究では、離婚により子と離別した父親を対象にインタビュー調査を行い、離婚過程および離婚紛争の実情、離婚後の生活実態、離婚前と離婚後の子との関係性、子に対する扶養の実態と扶養意識等について分析する。そのうえで、離婚当事者の実情に即した、養育費確保の支援のあり方について探究し、その実現のための政策的課題を提示する。
著者
永松 俊哉 北畠 義典 泉水 宏臣
出版者
公益財団法人明治安田厚生事業団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

これまで我々は,睡眠改善にストレッチが一部寄与する可能性を報告したが、どのような運動様式が有効なのか、あるいは運動の効果が発現する機序については依然不明の点が多い。そこで本研究では、まず実用性を重視した短時間のストレッチ運動プログラムを作成し、睡眠ならびに精神的健康に関連する生理的・心理的要因に及ぼす本プログラムの影響を検討した。その結果、本プログラムの実施は、体温変動、ストレス反応軽減、および気分の改善をもたらすことが示された。続いて、本プログラムが睡眠改善に寄与するのか否か、軽度睡眠障害者を対象に睡眠脳波の変動および睡眠前後のストレスマーカーをもとに検証した結果、本プログラムは睡眠中にストレスを緩和する作用を有する可能性が示唆された。
著者
丹野 孝一 中川西 修 根本 亙
出版者
東北医科薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ストレプトゾトシン誘発性1型糖尿病モデルマウス(STZマウス)では血糖値の上昇に伴い疼痛閾値の低下が認められた。STZ投与後14日目における疼痛閾値の低下はAT1受容体拮抗薬のロサルタンによって抑制された。STZマウスの脊髄後角においてアンジオテンシン (Ang) ⅡおよびAng変換酵素 (ACE)の発現量は上昇していた。さらに、ACEはグリア細胞ではなく、神経細胞特異的に発現していることが確認された。以上の結果より、STZマウスでは脊髄後角の神経細胞におけるACEの発現量増加に起因し産生量が増加したAng ⅡがAT1受容体に作用し、糖尿病性神経障害性疼痛を引き起こしていることが示唆された。
著者
安藤 興一 高橋 千太郎
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

放射線医学総合研究所・重粒子線がん治療装置を利用し,麻酔下において炭素線(290MeV/u,5mm-Spread out Bragg Peak)を,マウス頭頂部(8週令:C57BL)から5mmまで均一に局所照射を施した。炭素線30Gyを照射し,照射3ヶ月後にwater-mazeを用いた記憶・学習障害の解析を行ったところ,記憶獲得過程の障害および作業記憶(短期記憶)の障害が認められた。また病理組織学的解析により,照射群において海馬CA1-3領域の神経細胞が39-49%減少していることが判った。一方,胎児期にX線1.5Gy被ばくした場合においても,生後8週令において空間認知障害が誘発されたが,その障害は一様ではなく,軽度,中度および重度の学習障害群に大別された。重度の記憶障害群について病理組織学的検討を行ったところ,海馬神経細胞層(CA1-3領域)に異所性細胞群が高頻度に認められた。また異所性細胞群が認められた海馬領域では,記憶に重要な役割を持つアセチルコリン(acetylcholine)受容体の特異結合の減少が生じていたことが判明した。以上の結果より,放射線脳局所照射モデルおよび胎児期放射線被ばくモデルは,ともに学習・記憶に重要な役割を担っていることが知られている海馬領域の特異的変化が生じていたが,その高次脳機能障害のメカニズムは異なることが判明した。また記憶・学習障害は,海馬神経細胞の減少や異所性細胞の出現により,海馬内の神経情報伝達の阻害が生じている可能性があり,そのことが放射線による記憶・学習障害の要因であることが推察された。また,シュードウリジンやメラトニンなどのビール含有成分がマウス全身照射による造血器・腸管障害を防護することが判明したので,これらの成分による放射線能機能障害に対する防護効果について検討している。
著者
中村 友紀
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究課題は、近代初期イングランド復讐劇による民衆心性への影響を明らかにすることを目指すものである。成果としては以下2点がある。1.数多く制作されジャンルを形成した復讐劇作品群が共有していた常套的様式の表象としての作用とは、ルネサンス的という文化的ムーブメントに位置付けて検証すると、個人主義的な自己のアイデアを表現するものと考えられる。復讐劇は、個人の概念を人々に明示する点で、近代的概念の媒体といえる。2.イングランド社会に見られた、演劇以外の他の芸術や娯楽、媒体における表象と復讐劇の関連性を見出し、それらの表象が、特に美学的・倫理的側面で、人々の近代的心性の形成に影響力を持ったと結論づけた。
著者
鈴木 道雄 川崎 康弘 住吉 太幹 中村 主計 倉知 正佳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

拡散テンソル画像による検討の結果、統合失調症患者では、前頭葉と視床、側頭葉とを連絡する白質線維束の統合が障害されており、その一部が陰性症状の成立に関与することが示唆された。自己と他者の評価課題による機能的磁気共鳴画像(fMRI)により、前頭前野、大脳正中構造、後頭頂小葉などの機能変化が、統合失調症における自己意識の障害に関連することが示唆された。病初期の患者を対象とした構造的MRIにより、前部帯状回の構造変化が統合失調症の顕在発症に関与することが示唆された。
著者
菅原 一真 山下 裕司 廣瀬 敬信
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

糖尿病は比較的頻度の多い疾患であるが,難聴の進行は患者のQOLを大きく低下させる。糖尿病に伴う難聴については以前からの詳細な形態学的研究が行われているが,難聴を予防する方法は明かでない。本研究では糖化ストレスに曝露された内耳において生成される終末糖化産物(AGEs)に着目して,研究を計画している。2020年度までに,糖尿病モデル動物を用いて,内耳においてAGEsが生成される時期や部位,その条件について検討した。その結果,聴覚障害を生じる前より内耳血管条へのAGEsの生成が観察された。さらに,AGEsの生成と炎症性サイトカイン,酸化ストレスと内耳微小血管の動脈硬化の関係についても検討を行った。AGEsの生成後に組織学的に血管障害が明らかになってきていることから,血管障害の原因としてAGEsの関与が疑われた。更にAGEs阻害物質メトホルミンを用いて,糖尿病に伴う難聴の予防が可能かどうか検討した。2021年度は,メトホルミンの内耳におけるAGEs産生を抑制する機序を明らかにする目的で,in vitroモデルを用いて実験を追加する予定である。
著者
峯 昇平
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

PET(ポリエチレンテレフタレート)を主とするプラスチック廃棄物は、重大な環境問題である。近年、PETを原料にまで分解できる酵素「PETase(ペターゼ)」が発見され、資源リサイクル実現可能な酵素として注目されている。PETを効率的に酵素分解するには、PETが酵素に分解されやすい形状に変化する65℃以上で反応を行う必要がある。しかしながら、PETaseは熱に弱く、35℃以上になると活性を失う。そこで、本研究では、65℃以上で高活性を有する耐熱性PETaseを作製することを目的とする。
著者
高橋 敏夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、日本近代・現代の「怪物」表象の特色・意義についての研究である。「怪物」とはなにか。「怪物」とは、怪物を嫌悪し恐怖する秩序によってうみだされる。「醜悪」「恐怖」「不快」「汚れ」「グロテスク」といった怪物の印象は、怪物がもたらすものだとしても、つねに「誰かにとって」の印象だということである。さまざまな秩序を統合する社会体制は、独特な認知の体系、価値体系、経済体系、政治体系、時間と空間の体系、身体体系等から成り立っており、それらの諸体系の複雑な組み合わせによって、「正体のわからない」「あやしい」「異なるもの」とされたとき、はじめて異能を有する怪物が誕生する。したがって、怪物表象の研究は、怪物が出現する体制秩序の認知から身体にいたる体系を明らかにするだろう。怪物表象の出現する場である文学・映画などは、そのときどきの体制秩序の体系をうっしだすとともに、他方でそうした体系を変形する装置でもある。いいかえれば、怪物を生み出す体系をあらわにすると同時に、怪物を生み出す体系を変更していく方向を示すものにもなっている。この両者を怪物表象をつうじて考えることを、わたしの怪物研究の目的としたい。本研究があつかう時代および対象は、文学における「怪物」表象が「貧困」や「悲惨」などの表象とともにあらわれた1895(明治28)前後にはじまり、それから100年の後、ホラー小説が大量に出現し、そのなかに「怪物」「悲惨」「残酷」などの表象があふれだす1995年前後までである。
著者
野村 隆士 千田 隆夫
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

典型的なカベオラは,細胞膜上で直径80nm前後の陥凹構造を持ち,脂質ラフトと同様にコレステロール/スフィンゴ脂質に富む膜ドメインである.カベオラは,細胞内シグナル伝達,エンドサイトーシス・トランスサイトーシス等の物質輸送に関与すると考えられている.研究代表者は,カベオラのクラスタリング機構の研究を行っている過程で,ラフトに親和性を示す分子としてCD13を同定した.数種のラフト分子は,生細胞において,リガンドまたは抗体で架橋するとカベオラへ移動することから,CD13も同様に抗体を用いて架橋したところ,カベオラへ移動することが判明した.CD13はヒトコロナウイルス-229E(HCoV-229E)のレセプターであることから,HCoV-229EがCD13を架橋し,抗体と同様にカベオラに運ばれる可能性が考えられた,この可能性を検討したところ,HCoV-229EはCD13を架橋し,細胞膜上をカベオラに運ばれることが光顕的,電顕的に明らかとなった.次に,HCoV-229Eの細胞内侵入経路としてカベオラが利用される可能性について検討した.その結果,(1)HCoV-229Eの細胞内侵入は膜コレステロール量に依存すること,(2)siRNAを用いてカベオリン-1(カベオラ構成タンパク質の一種)をノックダウンすると感染効率が落ちること,が明らかとなり,HCoV-229Eは,侵入経路としてカベオラを利用することが判明した.今後,ウイルスエンベロープとヌクレオカプシドを別々の蛍光色素で標識したウイルスを作製し,両蛍光色素の動態をリアルタイムに解析することにより,ウイルスエンベロープの膜融合局在,virus genomeの放出局在を時間軸を持って検討することができると考えている.
著者
西田 みゆき 白幡 峰子 鈴木 紀子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、小児外科的疾患患者が「性」を含めて自身の疾病を理解しその子なりの自立した生活が送れるように支援することであった。その目的達成のために①「小児外科的疾患患者に対する性教育」について現状把握、問題の明確化、② 当該患者の性教育を中心とした疾患理解のニーズの抽出とプログラム骨子作成、③「小児外科的患者における性教育を中心とした疾患理解のためのプログラム」作成を行った。その結果、性教育を含め系統だった疾患の説明は受けておらず、早期からの病名告知を望んでいた。一方で、本邦における性教育の現状を調査し性教育に必要な要素を抽出した。この結果を踏まえてプログラムを作成した。
著者
室田 浩之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

痒みは時に生活の質を大きく損なわせる皮膚症状の一つです。特に多くの方が経験する「温もると痒い」という症状の多くが治療に抵抗性を示します。温熱が痒みを誘発するメカニズムはまだ十分に理解されていないため、本研究では皮膚の温感に影響を与える神経栄養因子アーテミンが温もると痒い現象に関わるかを検討しました。本研究よりアーテミンの皮膚への蓄積は脳を興奮させ、全身の温熱過敏を誘発する結果、全身に温もると痒い現象を生じさせる、いわゆる「痒がる脳」のメカニズムの一旦が解明されました。この成果は「温もると痒い」症状に対する新しい治療の開発につながると期待されます。
著者
石岡 恒憲 峯 恒憲 亀田 雅之
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

センター試験など大学入試レベルの短答式記述試験における自動採点および人間採点を支援する実用可能なシステムの試作および実装をした.自然言語における完全な意味理解はこの数年では不可能であるという判断のもと,採点は設問ごとに作題者が用意した「採点基準」に従った自動採点を基本とし,その結果を人間が確認・修正できるものとする.システムは「(予め用意された)模範解答」と「実際の記述解答」との意味的同一性や含意性を判定するほか,プロンプトと呼ばれる素材文と解答文との意味的近似性なども考慮する.また採点結果は多値分類であることから,サポートベクターマシンではなくランダムフォレストによる機械学習分類を使う.
著者
玉野 和志
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

都市の成長ないし衰退の状況を分析するための基礎的な統計単位として,どこからどこまでの地理的範囲を当該の都市地域と設定するかについての方法論的な検討を行った.1㎞四方の範囲に含まれる人口量を示した国勢調査のメッシュデータを用いて,5000人以上の人口を有するメッシュ地域の集積を基本に,都市地域の設定を試みることで,従来の人口集中地区にほぼ相当する基礎統計単位の設定に成功した.この方法を太平洋ベルト地帯を中心とした地域に適用して19の都市地域を区分に,それにもとづく分析を行うことで,三大都市圏を中心とした都市の現状を把握することができた.
著者
稲葉 政満
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

耐久性のある良い和紙を選択し、使用することが、現在の資料を残すためだけではなく、過去の遺産の保存修理のためにも望まれている。和紙の主原料であるコウゾはアルカリ水溶液で煮熟され、繊維化される。アルカリとしては木灰、石灰、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が使用されている。煮熟剤の違いがどのように紙の耐久性などの違いをもたらすのかついて直接検討した例はない。そこで、同一の高知産楮から作成した和紙の保存性に及ぼす煮熟剤の違い、漂白の有無による影響について、検討することとした。本研究では、煮熟方法の違う和紙に酸(ドウサ)を塗布して湿熱劣化試験を行った。ドウサ引きを行った苛性ソーダ煮の試料はpHが大きく低下し、劣化処理によって大きな強度低下や変色を招いた。木灰や炭酸ソーダのようなマイルドなアルカリで煮熟した試料中にはアルカリが残留し、ドウサ塗布によるpHの低下を抑えることから、劣化処理による強度低下が少なかった。ほぼ同一のpHにおいても、漂白試料は未漂白試料よりも劣化しやすかった。和紙中のセルロースの重合度は強いアルカリである苛性ソーダで煮熟した場合は他のものに較べて低く、煮熟中に繊維が損傷を受けていることが明らかとなった。また、繊維中の構成化学成分としては、木灰などのマイルドなアルカリの方がヘミセルロース残量が多かった。煮熟剤を替えて作成した和紙の濡れ特性には差は認められなかった。以上の実験結果から、マイルドなアルカリで煮熟すること、そして漂白しないことが保存性の良い和紙を製造するための条件であると結論できる。
著者
轡田 竜蔵 永田 夏来 阿部 真大 松村 淳
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

この共同研究のねらいは、拠点都市圏から離れた地域(=30万人以上の規模の都市雇用圏の圏外)に創出されている新しいライフスタイルや公共性について、これをオンラインや移動の広域化によって、都市を超えた社会が形成されているという観点を軸にして、社会学的に考察することである。京都府北部地域の20-40代を対象とし、当該課題に関する参与観察・インタビュー・質問紙調査を行う。