著者
内田 満夫
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は,人工知能の技術のひとつである再帰型ニューラルネットワーク(RNN)の技術を用いて,県レベルの地方の感染症流行の予測をおこなうことを目的とした。群馬県の衛生環境研究所と連携して過去の感染症データを用いて流行予測モデルを作成し,研究開始後に実際報告される感染症の発生データを入力し,実際に精度の高い予測を行うことが可能かどうか検討する。
著者
谷山 牧 山下 留理子 保母 恵 藤田 千春
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

比較的若い世代の生活保護受給者の就労意欲に影響を与える健康特性を検討した。当事者インタビューの結果、健康特性として【他者から理解されがたい持続的な苦痛】【精神的防御力の低さ】【社会的適応力の低さ】【自己流の健康管理】があり、これらはトラウマティックストレスにより引き起こされている可能性が考えられた。このうち、【精神的防御力の低さ】【社会的適応力の低さ】の改善を目指し、トラウマ・インフォームド・アプローチを基盤とした「ストレス対処講座」を作成し、評価を行った。参加後、自覚的健康度や自尊感情には有意な変化はなかったものの、不安・不確実感の有意な軽減が認められ、ストレス反応の改善傾向が示された。
著者
平原 達也
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、外耳道入り口に置いた小型スピーカから放射した計測信号を、頭部の周囲に置いた複数のマイクロホンで受けることにより、多点の頭部伝達関数(HRTF: head-related transfer function)を同時計測するシステムを構築した。この高速HRTF計測システムを用いると、多数位置のHRTFを15秒以下で計測できた。そして、このシステムを用いて、頭部を回旋させた状態のHRTF、頭部の近くから離れた位置までのHRTF、頭部近傍のメッシュ状の空間位置のHRTFを計測し、接近・遠離音像や文字軌跡の移動音像を再生するバイノーラル信号を合成できた。
著者
年縄 巧 浜岡 秀勝
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

交通量や走行速度,車種を簡便に測定するために,高感度の地震計を利用した計測システムの開発を試みた.道路脇2ヶ所に地震計を設置し,車両が通過する際に生じる地盤振動を計測した.また,ビデオ撮影によって車両の通過の有無や車種を記録した.いくつかの予備調査の結果,車両が時速20km程度以上で通過する場合には,地盤の上下動の応答変位波形に特徴的な波形が生じることがわかり,これにより車両が検知できること,またこの波を5〜15m程度離した2点において計測することにより車両の通行速度を計測することが可能であることがわかった.また,速度が増加するにつれ応答波形のパルス幅が短くなり,両者の値には高い相関があることから,一点で得られた尾応答波形のみからでも,走行速度が推定できることがわかった.車両が時速10km程度以下の低速の場合には,地盤の応答変位波形に特徴的な波形は見られないが,車線に高さ1cm程度のゴム製の段差を設置し,応答速度を計測した場合,車両が段差上を通過する際に顕著な速度応答が生じることがわかり,これによって車両の通過が検知できることがわかった.また,片側1車線の一般道路において,モデル道路と同様の計測を行い,車種の違いによる地盤振動の変化を検討した.小型車量通過による地盤振動と異なり,大型車両通過による地盤振動は複数のパルスから構成されており,地盤振動の形状の違いによって車種の判別が可能であることがわかった.この手法は,片側2車線道路の計測には不向きであることなどの欠点は残すものの,測定機器の運搬・設置が容易であるため,十分実用的な手法であることがわかった.
著者
小澤 博
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、16・17世紀の英国演劇に書き込まれた地中海、および地中海諸国に関連するトピックを比較検討する事により、当代の詩的想像力と地中海世界との交渉の中に形成された初期近代英国演劇の特性を、社会文化史的側面から捉え直すことにあった。この研究では、ムーア人やユダヤ人の表象を中心に、北アフリカやイベリア半島のスペインをも視野に入れつつ、新世界へと拡張する西洋が、旧世界の演劇的想像力の中に創造した文化史の解明を試みた。バレンシアで開かれた第7回シェイクスピア学会世界大会においては、こうした視点から「スペインと初期近代劇と題するセミナーのリーダーを務めた。また、『シェイクスピアを学ぶ人のために』に所収の論文「異人を印す-シャイロック考-」では、地中海貿易の要衝ヴェニスとロンドンとユダヤ人を中心とする異人の問題を取り上げ、キリスト教対異教文化の対立について論じつつ、そこに内在する問題が、広くムーア人を含む異人種・異教徒の問題に発展する可能性を指摘した。『シェイクスピアを読み直す』に所収の論文「モンストラスな、余りにモンストラスな-『オセロー』と隠蔽-」は上記論文の延長上に位置し、地中海の要衝ヴェニスの白人キリスト教文化とムーア人の関係を検証し、劇中に隠蔽された異文化排除の実相を読み解いたものである。以上のような研究から、イスラム・ムーア人・ユダヤ人・イタリア諸都市(ヴェニスやヴェローナなど)等々の表象と演劇的意味を検証することで、地中海的視座から見た今ひとつの英国ルネサンス演劇文化論を提示することができた。
著者
小峯 敦
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の最大の成果は、ケンブリッジ大学中央図書館およびLSE文書館などにおいて、ケインズおよびベヴァリッジの原典(手紙・メモ・草稿を含む一次資料)を精査することを通じ、次の認識に至ったことである。すなわち、戦間期の巨大な知としての両人は、効率と公平を両立させる構想を推進しており、特にケインズにおけるその内実は、次のような複合的な組織を実現することであった。つまり、公共心を持った大規模経営者、真性な長期期待に基づく投資家、公平無私な政策担当者、専門的知を持った経済助言官、適切な経済情報を流す公共メディアという複合体である。この複合体こそ、彼らの言葉に即した「投資の社会化」の実態である。
著者
米本 直裕 川島 義高 遠藤 香
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

自殺予防介入の普及と適応に関する研究ガイダンスを作成した。事例として、ゲートキーパー(GKT)研修について検討した。1つ目として、GKTの有用性について系統的レビューを行い、介入効果の限界と今後の研究の必要性を明らかにした。2つ目として、系統的レビューを行い、日本の自殺予防政策の発信とGKTの普及の関連と、ゲートキーパーの知見の統合や評価といった課題を明らかにした。
著者
太刀川 弘和 高橋 あすみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年各大学で自殺予防対策が始まっている。しかしこれまでに、大学生向けの標準化された自殺予防教育手法は開発されていない。そこで本研究では、欧米の自殺予防プログラムを参照して講義形式とeラーニング形式の二つの自殺予防のメンタルヘルス・リテラシー教材を開発し、有用性を検証した。講義と演習からなる自殺予防教育プログラムCAMPUSは、医学部生に実施した。実施後に自殺予防の理解度は向上し、3か月後に自殺念慮も低下した。E-learningの危機介入リテラシープログラムは、実施後のウェブ調査で被験者の知識が向上し、抑うつ気分も低下した。二つの自殺予防教育プログラムは、大学生の自殺予防に有効と思われた。
著者
青木 学聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

オープンサイエンス、研究データ管理の視点から、イオンビーム科学・工学における巨大原子座標を中心とした各種データを扱うための共通基盤の研究を行った。長年の歴史を持つ古典的なイオン衝突シミュレーションの互換性の維持と利便性の向上のため、入出力データに対するプリ・ポストプロセスの開発を行った。また、従来と単原子イオンビームとは異なるクラスターイオンの衝突シミュレーションの事例を収集、整理し、クラスターイオン衝突における解析手法を提示した。
著者
川上 善郎 川浦 康至
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、商店街と商店街に住む人、そして商店街を利用する人々が、私たちにもたらすもの、もたらしたものを研究の対象にしようとする。それらを客観的に把握することで、それらが果たしてきた社会心理学的機能を知ることによって、新しい形の商店街についての構想を生み出すことが可能になる。本研究は、多くの人の成長の過程で体験した商店街のイメージ=心の中のパッサージュを現実の社会の中に再生させる手立てを探り出す試みである。(1)社会調査法による研究からは、商店街の利用意向や利用頻度は、直接地域愛着を高める効果があると同時に、普段商店街を利用する頻度が高いほど、おしゃべりや対人接触といったコミュニケーションを媒介として、地域愛着を高める間接的効果もあることが示された。また、商店街利用頻度の高さが、社会資本を直接促進し、商店街利用頻度の高さは、おしゃべり必要度を媒介としても社会資本を高める間接効果と、買い物の楽しさを媒介として社会資本を低める間接効果も有していることが確かめられた。このことから、商店街の存在が、地域愛着を高めること、また個人の社会資本をも増大させることが確かめられた。(2)2001年時点で存在した商店街のホームページが、その後どのような推移をたどったのかを分析することで、商店街のインターネット利用の問題点を探った。2001年8月時点で運用されていた463のホームページは7年半後の2009年1月で1/4が休止、残り3/4が継続して運用されていた。インターネットでの商店街ホームページの分析結果から、現実の商店街が社会的に成立するためには、個々の商店の存在意義が求められていること、そして商店主と顧客間の個人レベルでの相互作用が欠かせないことが示された。
著者
葛城 浩一
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では,ボーダーフリー大学における学士課程教育の質保証の実現可能性について明らかにするために,学部長を対象としたアンケート調査に基づき,ボーダーフリー大学における教育の質保証の実態について明らかにした上で,その実現を促進あるいは阻害する要因についての検討を行った。また,その結果をふまえた上で,教員を対象としたアンケート調査に基づき,教育の質保証の実現を促進あるいは阻害する要因を手がかりに,ボーダーフリー大学及び当該大学教員の教育の質保証の実態について明らかにした。
著者
李 巍
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ジンチョウゲ科およびトウダイグサ科植物由来のジテルペノイドは、化学構造と生物活性多様性に富んでいる。本研究では、日本産および中国産のジンチョウゲ科またはトウダイグサ科植物を収集、植物抽出物ライブラリーの構築、系統的な化学成分研究により、強力な抗HIV活性をもつ新規ジテルペノイドを多数単離・構造決定した。さらに、天然物からの半合成により化学誘導体を作製し、これらジテルペノイドの抗HIV活性の構造活性相関を明らかにしたと共に、新規抗HIV薬の創製のための構造最適化を行った。
著者
小池 一男 李 巍
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

認知症においては、記憶障害・見当識障害などの中核症状と共に、行動・心理的な周辺症状(BPSD)が患者の生活の質を著しく低下する。本研究では、認知症のBPSDに対する漢方薬の有用性を基礎科学的なアプローチにより明らかにすることを研究目的とした。前年度に引き続き、急性認知症モデルのスコポラミン誘発記憶障害モデルマウスにおいて、五苓散の作用を検討した。五苓散はオープンフィールド試験でスコポラミンによる自発運動量の増加を抑制したことに加え、強制水泳試験では、スコポラミン単独投与群よりもさらに無動時間を短縮させたことから、五苓散は急性認知症モデルにおけるBPSDの陰性症状および陽性症状の両方を改善する可能性が示唆された。作用機序については、五苓散の抗コリン作用を中心に現在、解析を行っている。一方、体内の酸化ストレスの亢進は認知症の発症を促進することが知られている。我々は先行研究において、医療用漢方製剤の抗酸化活性を評価した結果、抗お血作用を有する漢方薬は高い抗酸化活性を示すことを明らかにした。今年度においては、抗お血漢方薬の抗酸化作用の詳細を解析した。その結果、実証に用いられる抗お血剤は抗酸化活性の発現に相関が認められるた。漢方薬の中に、通導散と桃核承気湯は最も強い抗酸化活性を示し、構成生薬の中に、ダイオウとオウゴンは最も抗酸化活性に貢献した。現在、これら漢方薬の抗酸化活性を介した認知症のBPSDに対する効果を検討を行っている。
著者
伊澤 良兼 畝川 美悠紀 滝沢 翼 塚田 直己
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳血管障害、血管性認知症の発症には、血液脳関門透過性の亢進が関与することが知られている。当研究は過去に報告した脳血管内皮透過性亢進メカニズムに基づき脳血管障害モデルマウス等を用いてRhoK阻害薬、MLCK阻害薬等によるin vivoでの血管透過性亢進抑制効果、脳浮腫・間質液動態・梗塞体積への影響、神経機能保護効果などを評価する。最終的に、同時進行中であるニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトをターゲットとした臨床・基礎研究成果とあわせ、血管透過性制御による脳血管障害、脳血管性認知症の新規治療法の確立を目指す。
著者
結城 美智子 大槻 美佳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳卒中後病的疲労(Post Stroke Fatigue: PSF)は発症率が高く、機能回復・社会生活復帰の阻害要因となり、慢性的な経過を経てフレイルや寝たきりをもたらす重篤な後遺症の一つである。PSFはそのメカニズムは解明途上にあり、発症時期も一定ではないこと、非薬物療法において有効な介入は十分に証明されていないが先行研究で示されている。そこで本研究では、脳卒中患者のフレイル予防の観点からPSFに着目し、急性期から適切に把握し、その改善にむけて有効なケアプログラムを構築すること、同時に、PSFの重症度に関連する生体指標を探索し、この指標も活用し、ケアプログラム介入効果を評価することである。
著者
立石 洋平 松本 武浩 河野 浩章
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

脳卒中と心不全や心房細動を始めとした心疾患は互いが強く関連し、いずれも生活の質に影響を及ぼす。これらを共通レジストリに登録し、観察していくことは脳卒中・心疾患の包括的な予防医療の展開につながると思われる。一方、レジストリの構築には人的、経済的負担を伴い、継続が困難になる場合が多い。そこで、我々は、すでに使われている地域医療連携ネットワークシステムを利用して脳卒中・心疾患共通レジストリを構築する。さらにウェアラブル端末を利用し血圧や脈拍なども自動格納する。これらのデータや画像および血液データ、生活の質についてのデータを登録し、脳卒中や心疾患発症や死亡などの発生を予測する因子の探索を試みる。
著者
吉村 壮平 古賀 政利 豊田 一則 中井 陸運 三輪 佳織 笹原 祐介
出版者
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳卒中の予防や、医療機関の診療レベルの向上のためには,脳卒中患者の登録事業により脳卒中診療の実態を知ることが不可欠である。わが国最大規模の、「日本脳卒中データバンク」のデータを人工知能(AI)を用いて解析することにより、脳卒中後の障がいを予測する方法と、それを臨床現場で活用できるシステムの開発を目的とする。簡易に利用可能なシステムが実用化されれば、脳卒中専門医以外の医療者や一般人であっても、脳卒中を起こして直ぐの時期にとるべき行動を決定する補助とすることができる。脳卒中を正しく診断し、適切に治療方針を立て、再発予防治療を行うことにより、重い障がいが残らないようにすることが期待される。
著者
西川 智文 岡村 智教 上羽 哲也 宮松 直美 北条 雅人 福田 俊一
出版者
京都光華女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

脳梗塞既往者314名のデータベースを作成し、これと並行して行っている健常者集団の調査(「日常的な健康度を指標とした都市コホート研究」(神戸トライアル)参加者の内、比較対象となる1013名)のデータと比較した。その飲水習慣から脳梗塞既往者の脳梗塞発症前の水分摂取量は健常者集団と比較して少ないことが推測された。この成果を国内外の学会にて発表を行い、まとめたものは国際英文雑誌であるCerebrovascular Diseasesに掲載された。
著者
稲福 征志
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

先進国においては「肥満」と「結核」が経済的弱者層に集積することが懸念されることから、本研究では結核菌感染がメタボリックシンドローム病態に与える影響についての基礎的知見を得るべくして、結核感染プロトタイプである抗結核ワクチン株BCG菌体を用いた研究を遂行した。BCG菌体投与による脂肪肝の改善作用はBCG菌投与による獲得免疫の活性化が大きくかかわっていることが示唆された。また、BCG死菌体投与による脂肪肝改善は認められなかったものの、BCG菌体成分が褐色脂肪細胞に対して何かしらの影響を与えていることが明らかとなった。
著者
眞壁 仁
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、中国清朝の学術移入後の徳川儒学思想の展開を分析し、学派別の思想分類を再検討して、徂徠学以降の儒学思想を捉える新たな枠組を提示しようとした。蔵書群の書誌調査をもとに、足利学校から、紀州藩、林家とその門人、昌平坂学問所に至るまでの学問方法とその内容を検証し、限られた対象を通してだが、考証学の日本における展開を位置づけた。また徂徠学以降の儒礼受容と実践についての一般化を試み、東アジアでの儒礼受容と展開の型について、独自の整理を行った。