- 著者
-
逢見 憲一
- 出版者
- 国立保健医療科学院
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-01
令和元年度は,人口動態統計毎月概数,大日本私立衛生會雜誌,日本公衆保健協会雑誌,公衆衛生,等の資料の発掘と収集,分析を行った。また,上記発掘資料を用いて,わが国の平均寿命延長に医療・公衆衛生の果たした役割を定量的に検討した学術論文「わが国の平均寿命延長の年齢構造と医療・公衆衛生の役割―第4回から第22回生命表より―」を執筆投稿し,受理掲載された。また,上記発掘資料を用いて,内務省保健衛生調査会設置から日中戦争・第二次大戦下での公衆衛生活動等について検討した。さらに,パンデミック対策の一助とすべく,わが国の“スペインかぜ”を含むインフルエンザパンデミックによる健康被害を定量的に把握し,あわせてわが国における公衆衛生行政の置かれていた状況を検討した。令和2年度は,新型コロナウイルスパンデミック対策の一助とすべく,上記大日本私立衛生會雜誌の1918(大正7)年から1920(大正9)年の “スペインかぜ”に関する記事・論文を検討し,(1) スペインかぜ流行期の対策の大枠は現代に劣らないものであったこと,(2) ただし,「明治19年の蹉跌」により,地方の衛生行政は警察の所管となって取締行政の性格が強くなり,住民との乖離が大きくなっていたこと,(3) また,スペインかぜの当時,公衆衛生を取り巻く状況は必ずしも恵まれたものではなかったこと,などの仮説を検討する。また,第二次大戦前に京城帝国大学教授として生命表研究に携わった水島治夫を中心とした旧植民地の生命表や乳児死亡に関する一連の研究を概観し,第二次大戦前の植民地医学・衛生学の到達点を確認する。さらに,近年の年齢調整死亡率低下の年齢・死因構造から,指標としての有用性や活用方法を検討することを目的とし,2000年から2015年の全国について,死因別年齢調整死亡率を算出し分析する。なお適宜,研究順序やテーマの入れ替え・変更を行う予定である。