著者
御室 哲志 高梨 宏之
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

最も多い事故形態である追突に関し、ヒヤリハットデータベースの解析を行い、36のシナリオに分類したところ、発生割合が多い重要シナリオでは、先行車より前方の交通状況が関与していることが分かった。後続車からは直接見えない前方の信号変化を後続車ドライバに伝えない場合と伝えた場合の比較を、2台の車両を用いた実車試験で行った。信号情報がある場合は、後続車の減速度ピークが16%減少し、有意な差を示した。予期しているが故に、制動動作には余裕が生じたと考えられる。このことは被験者の主観評価結果からも裏付けられた。先行車より前方の情報提供効果を確認した。これは間接的ではあるが、適応的警報の有用性を示している。
著者
伊藤 和弘 島田 順一 加藤 大志朗 西村 元宏
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

一般に普及してきた高速ネットワーク回線を医療画像読影に応用した。デスクトップ画面共有技術としてvirtual network computingを使用して複数のコンピュータを接続した。接続したコンピュータの画面が同期されるため、遠隔地にいても同じ画面を見ることができる。静止画面だけにとどまらず、CT画像を自由にスクロールして望みの画像を出したり、数スライスの上下スクロールを繰り返して検討するなどの動きの早い画面でも応用できた。このシステムで、若手呼吸器外科医や医学部学生に対して、遠隔地から画像読影の指導を行った。移動や待ち時間を減らし、対面教育と同じ品質である点で有用であった。
著者
梶原 和美 緒方 祐子 中村 典史
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,口唇口蓋裂(Cleft Lip and/or Palate: CLP)の子どもとその家族に対する有効な心理的援助を実現するための方法論を提示することである。そのため(1)CLP児の母子関係に潜在する心理的問題,(2)CLPによる障碍が子どもの対他者関係,特に家族に及ぼす影響,(3)成人CLP者の回想における母子関係の変容過程を検討した。結果は,(1) 関係性構築の阻害要因と促進要因,(2) 構音障害への対処の重要性,(3) CLP者の人生岐路におけるレジリエンス(回復力)という観点から考察された。
著者
野中 成晃 堀井 洋一郎
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

牛の膵蛭および小形膵蛭の生体診断法として、ナイロンメッシュ濾過虫卵検査法および糞便内抗原検査法を開発した。日本各地および海外(ブラジル、ベトナム)から得た虫体の遺伝子を解析して2種の種としての独立性を明らかにしたが、一方で、形態学的鑑別が困難であることを示した。さらに、これまで詳細な検討がなかった治療法として、プラジカンテル25mg/kg1回経口投与が有効であることを示した。
著者
立花 亮 田辺 利住
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

キトサン溶液を無水酢酸でアセチル化することで、キチンゲルを作製した。塩基性の細胞増殖因子は、キチンゲルに残存するアミノ基を残した場合、結合せず、ヨード酢酸でカルボキシメチル化すると、強く結合した。また、キチン結合ドメイン融合FGF2は特異的に結合し、緩衝液にはほとんど溶出しなかった。キチンを分解するリゾチームによって、キチン結合ドメイン融合FGF2は徐放された。キチンの分解に伴ってゲル外に放出されたのであるが、ゲルの成分の徐放と異なるパターンで徐放されていることから、放出された後に、再結合が起こっていると考察された。結果的に、初期バーストのない理想的な徐放システムが得られた。
著者
本多 薫
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学習内容をモデル化し,計算,読む,照合の課題を提示できる実験用の学習支援システムを構築した。そして,学習中の生体情報の計測と主観的評価を実施し,学習中の学習者の負担を分析した。その結果,心拍のパワースペクトル解析より,課題開始30分程度で負担が大きくなることなどを示した。また,学習支援システムを用いて30分間連続で学習(課題遂行)した場合には, 10分間以上の休憩を取ることで,学習者の負担や疲労感を抑えられる効果があることを明らかにした。
著者
百瀬 修二 田丸 淳一 梶野 一徳
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大腸菌で DNA の組換えに関わると考えられている dbpA (DNA-binding protein A)の発現が、ヒトにおいて活性化リンパ球の指標となる CD30 陽性細胞の染色態度とリンパ組織において類似していることを見出し、さらに CD30 陽性の悪性リンパ腫 (Hodgkin リンパ腫;HL など)においても高頻度に発現していた。HL では NF・B シグナル伝達系の恒常的活性化が知られているが、dbpA が NF・B シグナル伝達系の下流で発現・機能すると考えられた。
著者
小松 尚 小篠 隆生 鶴崎 直樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

わが国と米国における先進事例の分析を通じて、.キャンパスおよびキャンパス周辺の公共空間や住環境をマネジメントとするために、行政や企業、NPO、地縁組織といった主体と大学で構成されるまちづくり連携体のあり方とマネジメントの手法、.このまちづくり連携体によって創造される「地域公共空間」としてのキャンパス空間像、.そして大学キャンパスと近隣地域のトータルなまちづくりとしての公共空間マネジメントの戦略について考察した。
著者
渡邉 正彦 石川 巧 藤井 淑禎 瀧田 浩
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

高度経済成長以前の状況では、一国の文化が一つの価値観に収斂されていく傾向が顕著であるが、しかし高度経済成長によりもたらされた経済的余裕を背景として、個人の価値観が多様化し、それに即した表現が様々な形で現れてくるようになり、そして、そのような状況の中で、統一感を喪失することを余儀なくされた人々が、必然的に孤独感を抱え込み、そのはけ口を表現に求めるようになる傾向が看取される。
著者
四方田 千恵 白水 紀子 赤松 美和子
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

「台湾文学における日本表象の相互性について―日本・韓国・中国文学を視野に入れて―」というテーマのもと、台湾から楊智景(中正大学)、黄美娥(台湾大学)などの気鋭の研究者を迎え、3年間で3回の国際ワークショップを行った。さらには日本統治時代を舞台とした甘耀明の大作『鬼殺』の翻訳を刊行し、甘耀明を迎えての国際シンポジウムも行い、研究成果を社会に還元した。その他、7回の国際学会を含む国内外の学会で合計13回の報告を行うなど研究成果を積極的に公開した。
著者
黒木 貴一 磯 望 後藤 健介 宗 建郎 黒田 圭介
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、国内の都市河川の御笠川、大分川、大淀川、白川を対象とし、地形図、空中写真、衛星データなどの時空間地理情報をGISで用いて、それらの氾濫原の土地条件とその変化を明らかにした。また過去に災害が生じた場所の土地条件も検討した。この結果、氾濫原に対し時空間地理情報を用いる解析では、堤外の土地条件の分布とその変化の特徴から、都市域の自然災害の量的・質的評価ができることが示された。またこれら解析方法は、海岸平野及び海外の氾濫原にも応用できることを確認した。
著者
渡辺 秀樹 大森 文子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

英語の動物名で人間比喩義を持つものを類ごとに全て収集・リスト化し、イヌ科、ネコ、鳥類、昆虫の人間比喩用法、代表的詩人の動物名使用の特徴について研究論文を発表した。本研究では動物名の縁語も含めて人間比喩用法における動物名の類義・対義のグループや複雑な構造性を明らかにしたが、このメタファーの構造性の提示が本研究の成果であり学界でも注目された。その成果は既に日本英語学会全国大会シンポジウム「これからのコロケーション研究」の講師として口頭発表し、今後『英語動物名メタファーの構造と歴史』(仮題)という学術書に記す。
著者
土屋 紀子 後藤 勝正
出版者
豊橋創造大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

地域健康女性の尿失禁は、わが国においてほぼ30%前後の発症率からの改善策必至で尿失禁予防の効果的セルフケアの探究を尿失禁者35(平均年齢63.6歳)に運動手法評価で実施した結果:ダンベルとJOBA選択者に禁制効果を得た。質的研究手法では、尿失禁の開放感と仲間との連帯感、それとヘルスプロモーションの具体的学習コーチングによりセルフケアの向上にむすびついたことが抽出された。
著者
内海 敦子 JUKES Anthony LESTARI Sri Budi PAAT Hendrik
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

最終的な遂行後の文章私の研究題目は「インドネシア国スラウェシ島の絶滅危機言語の多面的記述と言語データのアーカイブ化」で、平成23年度から平成26年度の四年間にわたって以下の三つの活動を行った。第一に会話やナラティブ・スピーチなどの自然言語、及び芸能や儀式など文化活動の映像・音声データを採集しアーカイブ化することで、同時に申請者の研究成果を英語で出版する。第二に現地および他国の研究者と共同でそれらの言語の記述を進め、大量のデータを活かした言語の多様な側面の分析を行うこと。第三に民族語からインドネシア語マナド方言への言語シフトと言語態度に関する社会言語学的調査を行うことである。
著者
大崎 美穂
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

多変量時系列である慢性病の医療データから,病状把握や治療に役立つ知識を自動的に発見する仕組みが望まれている.そこで,本研究課題ではC型慢性肝炎の検査治療履歴を題材とし,病状のモデル化・特徴量抽出・予測とそのシステムに基づく知識発見を目指した.具体的には,自己回帰モデルと自己回帰条件付き分散不均一モデルの階層的な適用による病状記述,これらのモデルに基づく特徴量抽出,モデルの次数から必要な検査回数に関する知識を導出した.カーネルロジスティック回帰を適用して肝臓の悪化度合いを予測するシステムを開発し,さらにカーネルロジスティック回帰に識別学習を導入した新しい分類器を提案した.
著者
津賀 一弘 赤川 安正 吉川 峰加 日浅 恭
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

認知症高齢者においても検査可能な簡便な口腔機能検査法の開発を目的として、棒付きの飴を舐める機能の定量評価法を開発し、既存の口腔機能検査との関連を検討した。その結果、飴を舐める機能はオーラルディアドコキネシス(/pa/、/ta/、/ka/の連続発音速度)、舌圧、頬圧および唾液分泌量とは強い相関を認めなかった。また、認知機能が低下した多くの高齢者においても検査可能であり、提供されている食事形態との関連を認めた。本研究により、飴を舐める機能検査は認知症高齢者の口腔機能評価に有効な方法であることが示唆された。
著者
田村 文誉 八重垣 健 西脇 恵子 菊谷 武
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

東京都、千葉県、山梨県、沖縄県の保護者576名を対象としたアンケートの結果、食事に関する悩みは多くの母親に共通し、悩みの傾向はこどもの成長と共に変化していき、こどもの成長に伴い母親の育児負担度は減少することが示唆された。一方、摂食指導を受けている摂食嚥下障害児の母親の場合、子供が年長になるに従い育児負担は増加した。平成24年度に行った摂食相談を希望した8名において、東京都と千葉県の計7名は摂食機能に関すること、沖縄県の1名は歯に関する相談であった。東京都の3名中1名はその後、専門医療機関へ繋がった。千葉県の3名は既に専門医療機関に受診中であった。沖縄県の1名は相談のみで問題が解決した。
著者
澤入 要仁
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

南北戦争が起こるとアメリカの大衆詩人たちは果敢に反応した。彼らは愛国心や哀悼など、戦争のあらゆる面をうたった。その多くは戦意昂揚をはじめとした素朴な感情を単純にうたったものだったが、詳しく検討すると、たくみな表現によって複雑な機能を果たす作品も少なくなかった。たとえば勇猛な老婆の物語「バーバラ・フリーチー」は戦中に書かれた詩でありながら、すでに戦後の和解や平和を示唆していた。南軍兵士が憂さ晴らしにうたう戯れ歌「あの喇叭卒」は、その卑俗な笑いによって、部隊の団結や死への覚悟を導く仕掛けになっていた。大衆詩はその表面的な分かりやすさの背後に、多層的・多義的な意味を秘めていたのである。
著者
吉浦 裕 内海 彰
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ソーシャルメディアを通じた個人情報の流出が問題になっている。そこで、メディアに投稿しようとする文章から個人情報の漏洩を検知する技術を開発し、11名の被験者の投稿文各1000件を用いた評価実験で、通勤・通学先及び職種情報の漏洩の約90%を検知することができた。一方、複数の個人情報の照合によるプライバシー侵害の問題が顕在化している。そこで、注目者の投稿文を本人の履歴書との照合により検知する技術を開発し、12名の被験者の投稿文各1000件と100人の背景ノイズ各1000件を用いた評価実験で、8名の被験者について、本人の投稿文と背景ノイズ100人の投稿文の中から、本人の投稿文を特定することができた。
著者
高橋 政代 春田 雅俊 田邊 晶代 柏井 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

現在、社会的に問題となっている中途失明者の原因の多くは網膜の視細胞が選択的に障害されることによる。これらの網膜疾患に対して胎児網膜組織を移植することが欧米では試みられているが、胎児組織を利用することの倫理的問題、ドナー不足の問題、拒絶反応など問題も多い。我々は網膜幹細胞を培養して、視細胞移植の細胞源として臨床応用できないかを検討している。今回、胎児網膜、成体虹彩、成体毛様体から網膜幹細胞を分離培養しうるか、またこれらの細胞が視細胞への分化能を有しているかを確認した。ラットの胎児網膜をneurosphere法で培養することにより、神経前駆細胞のマーカーであるネスチンを発現する網膜前駆細胞を培養することができた。これらの網膜前駆細胞は分化誘導条件下では効率よく視細胞にも分化する。しかし継代を重ねるとともに視細胞に分化する割合も減少し、網膜としての組織特異性が失われてしまうことが分かった。次に毛様体色素上皮や虹彩上皮から網膜幹細胞を培養できないかを試みた。成体ラットの毛様体色素上皮や虹彩上皮からは細胞分裂して増殖し、神経前駆細胞のマーカーであるネスチンを発現する神経前駆細胞を得ることができた。これらの細胞は分化誘導条件下で引き続き培養するとニューロンまたはグリアのマーカーを発現するが、視細胞に特異的なマーカーは発現しなかった。そこで視細胞の発生に必要不可欠なCrxホメオボックス遺伝子を導入すると、成体の毛様体組織や虹彩組織から視細胞に特異的なマーカーであるロドプシンやリカバリンを発現する細胞を得ることができた。毛様体組織と異なり、虹彩組織は臨床的に確立された周辺虹彩切除術で安全確実に自己組織を採取できる。そのため、今回虹彩組織から得られた視細胞が生体内でも機能することが確認できれば、将来拒絶反応のない視細胞移植として、臨床応用することも期待できる。