著者
吉村 博幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年,各人の生体情報を利用した個人認証システムは,パソコンやスマートフォン等,我々の身の回りの情報機器や携帯端末等で多く使用されている。しかし,各人の生体情報は一度外に情報が漏れてしまうと取り換えることができないため,暗号化や加工などの手法でテンプレートを作成して保存し認証処理を行うことが望ましい。本研究では,指紋情報の加工を安全に行うため,非整数次フーリエ変換を用いた指紋テンプレート作成方法を種々提案し,認証精度を最も高くするための変換次数などの条件を明らかにした。またこの処理を高速かつ高精度に行うため,レーザ光やレンズを用いた光情報処理による手法について提案した。
著者
塩野谷 明
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、スキー実滑走時模擬振動暴露シミュレータの開発を行なうとともに、スキー滑走メカニズム解明のための基盤構築を目的とする。シミュレータは、スキーヤーを想定した雪塊を、雪面に見立てたスキー滑走面で滑走させるものである。スキー板の振動は、ボールバイブレータを圧縮空気で回転させ、発生させる。シミュレータでは雪塊が滑走する際の動摩擦力、動摩擦係数、滑走速度が算出される。実験の結果、250Hz付近の振動を板に暴露した場合、滑走速度の増加、摩擦係数の低減、滑走速度の増加に伴う動摩擦係数の低下が認められた。以上の結果より、本シミュレータはスキー滑走メカニズム解明の基盤として適当であることが示唆された。
著者
梶 博史
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

筋と骨ミネラル代謝の相互関連を解明するために。筋における骨化調節因子および筋から産生され、骨形成促進的に作用する体液性因子の同定を試みた。筋由来の細胞と骨化シグナルを増強させた細胞で網羅的遺伝子解析をおこない、骨形成活性を有する因子を抽出した。そのなかで、Tmem119は筋骨化を局所性に誘導する因子として期待され、オステオグリシンおよびFAM5Cは筋から産生される新規の体液性骨形成因子の候補として、今後の骨粗鬆症治療薬開発の標的としてさらなる研究を進めたい。
著者
土佐 昌樹 田原 淳子 大澤 清二 小石原 美保 イ ヨンシク 陸 小聰
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

3年間の調査研究計画として日本、中国、韓国を中心とする東アジア三カ国において集約的な現地調査をおこない、関係行政機関、ジャーナリスト、スポーツ指導者などを対象にインタビューを実施した。その過程で培われた知見とネットワークを基礎に、日中韓の代表者を集めて2013年11月30日に国士舘大学において国際シンポジウムを開催し、論議を深化させた。スポーツの社会的意義をグローバルで未来志向的な展望から捉え直す好機となった。
著者
鴈澤 好博
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

石英のOSL が熱に極めて敏感(300℃x20秒でリセット)であることに注目しOSL法による活断層年代測定のための基盤研究を進めた.アニール実験からOSLのFC (速成分)とTLのシグナル消失条件を検討したところ,OSLでは300℃,20秒で,UV‐TL270℃領域では300℃,12~30秒で消失した.トラップ寿命の評価でも,同様な結果が得られた.このことからOSL法は活断層年代測定に有効であることが示された。
著者
案田 順子 福島 祥夫 木村 憲洋 石坂 公俊 児玉 直樹
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

第1に「かなひろいテスト」の有効活用を目指し各母音位置による判別表を独自に作成、誤答および取りこぼしとの関係を明確にした。この判別表は早期発見と予防に新側面を齎した。第2に母音を均等に配し文脈の明解な「文字ひろいゲーム」を考案・作成した。第3にこのゲームを軽度認知症患者と健常者に実施、結果を分析し、文部省唱歌50曲をベースにした3~5拍の自立語の空所補入によるオリジナル脳リハビリテーションゲームを開発した。
著者
フランク スコットハウエル 猪俣 芳栄 橋本 剛 スコット ハウエル 猪俣 芳栄
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

次の二つの観点より「化学英語論文における複合名詞」の研究を行った。1.Inorganic Chemistry誌中、英語圏の化学者と日本人が執筆した論文の各章の複合名詞(NCs)の使用頻度を比較した。両地域のNCsの利用頻度はほぼ同じで、日本人のNCs用法は適切であることがわかった。更に、NCs中に隠された表現を検討した。2.Dalton Transactions誌の英語圏化学者の論文中で使用されている頻出NCsをPERCコーパスで検索し、用法を調べた。その結果、NCs の従属部は単数形をとること、「名詞+名詞」と「形容詞+名詞」が同じ意味をとる場合、前者は意味を限定する役割があることがわかった。
著者
小粥 太郎
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

情報という観点から、私は、近代法のシステムを点検した。この作業によって、私は、近代法のシステムにおける自由、名誉、責任などの基礎概念の意義と変遷について、理解を深めることに役立つことができたと考える。また、情報化社会の進展などとともに、私は、近代法のシステムを支える民法学の役割が変化しつつあることも、認識することができた。具体的には、民法における近代性の危機というタイトルの学会発表などの成果がある。
著者
川本 真浩
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、スポーツ史及び帝国=コモンウェルス史の観点から、英連邦大会の初期の歴史を見直し、その新たな局面を明らかにした。同大会は、帝国=コモンウェルス史のなかのスポーツ文化の一つにとどまるものではなかった。同大会とその開催事業によって、政治の世界でいうコモンウェルスとは別の「もうひとつのコモンウェルス」がつくりだされ、しかも政治とも関わりあう形で一定の社会的機能を果たしたのである。さらに、本研究では、グローバルなスポーツ大会と本国の地域ナショナリズムの相互関係を視野に入れつつ、スコットランドの事例を探ることによって、スポーツの世界でナショナリズムと帝国意識が交錯する様子をも明らかにした。
著者
内田 みどり
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ウルグアイにおける1973年のクーデターと軍の人権侵害について、歴史家は一致して「少数派の大統領が軍に頼った末に生じた「国家テロリズム」とみなしている。だがゲリラと軍の双方に責任があるという「二つの悪魔」説が市民の間で生き残っているのは、合法政党に転身した元ゲリラを選挙戦で攻撃するために、自分たちは軍政の被害者だと考える政治家がこの説を利用してきたからだ。
著者
山田 満 吉川 健治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

広義の平和構築を考えると、長期的視野を持った社会経済的開発が求められ、特に社会開発・人間開発の視角から平和構築に必要な適正規模の「開発」とは何かが問われている。本研究では、紛争経験国のラオスと新生国家で開発段階に至った東ティモールとの比較研究を行った。その結果、政治体制及び独立に至る歴史的背景、つまりラオスはインドシナ旧仏領諸国との連携、また東ティモールは国連やドナー諸国の援助という外部アクターとの関係性が開発方法の基本的な相違点として浮き彫りになった。
著者
丹野 忠晋 山田 玲良 櫻井 秀彦 林 行成
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

理論パートでは医薬品卸と医療機関の間の交渉力の差によってどのように上流の製薬メーカーの利潤に影響を与えるかについて定性的な結果を得た.現行の薬価制度では卸の交渉力が高いほど上流の製薬メーカーの利潤は高くなる.実証分析による主要な結論は,病院や薬局の規模が大きいほど総価取引になる確率が高まることである.一方で,取引する卸の数が多くまたは後発医薬品の利用割合が高いほど単品単価取引に移行する確率が高くなる.四大医療用医薬品卸は上流の製薬メーカーに様々な情報を提供しており,その対価が大きな利益の源泉になっていることが明らかになった.
著者
長尾 辰哉
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

共鳴X線散乱(RXS)には弾性過程、非弾性過程があり、それぞれ物質の基底状態、励起状態の性質を調べるのに適している。本研究では、特に秩序変数が複雑な系を対象に、定量性をもったRXSスペクトル解析用の理論を構築した。非弾性過程に対し、複数の自由度が活性な系、秩序の相関が短距離な系を、弾性過程に対しては多極子秩序系を対象とした。これらを銅やIrの酸化物、希土類化合物に適用した結果、実験結果を再現したり、重要な予言に成功し、これらの物質の性質に対する理解の進展に大きく寄与した。
著者
貴家 勝宏
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日米中の自動車産業をグローバルなレベルにおける生産構造の転換と制度化との関連から検討し、地方政府と企業による多様で重層的なネットワークの形成過程を検証した。中国の自動車産業の急速な台頭には、世界的な自動車産業の新興国への生産移転というグローバルなシフトが背景にあり、日米の多国籍自動車企業と中国自動車産業との間における競争と協力関係、また中国の地方政府との協力関係など国境をこえる生産ネットワークが発達したことが大きい点を明らかにした。グローバル経済の視点から、多様なネットワークをベースにしたリージョナル・ガバナンスの生起の検証を通じて、日米中を基軸とする公的な地域統合と実態としての経済統合との親和性を明らかにした。
著者
太田 好信
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

20世紀を通して、国民国家形成から脱植民地化までを牽引してきたのは、言語、文化、アイデンティティが一体化した「ヴァナキュラー論」である。だが、これに代わり、21世紀の現代社会における複雑な社会集団の現状を把握するため、言語、文化、アイデンティティ間にある新しい関係を想定する「ポストヴァナキュラー論」を提示した。
著者
下楠 昌哉
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の成果は、1)日本における、あざらし女を民話を基にした西洋の文芸作品の受容の過程と現状を海外に発信したこと、2)文学に現れた、ブリテン諸島における"mermaid"と日本における「人魚」の概念に関する比較研究を行ったこと、3)スコットランドのオークニー諸島と北アイルランドでフィールドワークによって実際に民話を収集したこと、4)松村みね子の翻訳作品を研究するにあたっての留意事項を明らかにしたこと、5)ジェイムズ・ジョイスの紀行文とアイルランドの民間伝承の関係性を検証したこと、6)日本、英国、アイルランドをつなぐ研究者間の連携を促進したこと、である。
著者
大平 剛
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ムスリム(ボスニアック)、セルビア人、クロアチア人の三主要民族間で凄惨な内戦が三年半もの間繰り広げられたボスニア・ヘルツェゴビナの紛争後復興状況を調査し、平和構築活動が民族間の分断状況を改善するきっかけになっているのかどうかを考察した。結果として、紛争終結直前から直後にかけての混乱期に行われた特定民族への援助活動が、紛争終結後十数年を経過した現在においても影響を及ぼし、ひいては同国における民族主義に基づく政治活動の延命につながっていることが確認できた。ボスニア・ヘルツェゴビナでは今もって民族間に分離独立の動きが残っており、紛争再発の芽が完全に除去されたとは言い難い状況にある。本研究の調査結果から、紛争再発防止の観点からも、紛争終結後早期における援助活動の調整と監督が、その後の復興にとって重要であることが指摘できた
著者
佐々木 卓也
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ジョージ・ケナンとポール・ニッツェは封じ込め政策に重要な影響を与えた戦略家である。封じ込めを提唱したケナンは日欧の経済再建を重視し、相互譲歩による対ソ交渉を唱えた。彼はさらに欧州的な外交に共感し、1970年代のデタント外交を支持した。これとは対照的にニッツェは軍事的な封じ込めを主張し、対ソ交渉には消極的であった。結局ニッツェ的路線が対ソ政策の基本を形成した。ただし興味深いことに、レーガン大統領はニッツェ的な路線とケナン的な路線を適切に実践し、冷戦の終結に至る過程で決定的な成果をあげたのである。
著者
荒井 良雄 箸本 健二 長沼 佐枝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 地理的位置情報に基づいた携帯電話の各種情報サービスを扱っている. 第1に, NTTドコモのIエリアサービスを例に情報提供サービスを分析し, 現行の地域区分の限界と登録店舗の地理的分布の特徴が把握された. 第2に, 金沢市竪町商店街を事例として, 携帯電話とQRコードを利用したプロモーション活動の実態分析を行い, 画一的な情報発信や商店街そのものへの集客促進に主眼を置いたシステムには限界があることが判明した. 第3に, GPS携帯電話利用の各種セキュリティ・サービスを検討し, その背景には, 高齢者や子供の安全確保に対する関心の高まりがあるが, それは現実の「安全」よりむしろ「安心」に向かっていること等の論点が示された.
著者
桑原 希世子 加藤 泰浩 佐野 弘好
出版者
芦屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

古生代末の大量絶滅に至るグローバルな海洋環境変動を解明するために,パンサラッサ遠洋域に堆積した最上部ペルム系層状チャートに含まれる放散虫サイズと,チャートの化学組成や岩相との関係を検討した.放散虫アルバイレラのサイズの変動と直接同期するような,チャートの化学組成の変動は現時点では見いだせなかった.しかし,化石群集帯ネオアルバイレラ・オプティマ帯,および化石帯を代表するアルバイレラ・トリアンギュラリスの生存期間は,海洋の酸化還元状態と呼応関係にあることが明らかになった.