著者
笹岡 俊邦 大久保 直 佐藤 朝子
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

パーキンソン病では黒質線条体ドーパミン神経の変性によってドーパミンが枯渇し、運動障害が起こる。線条体の中型有棘神経に発現する D1、 D2 ドーパミン受容体(D1R、D2R)の運動制御への関与がわかっているが、その分子機構は明らかでない。本研究では Tet-off システムによるコンディショナル D1R 発現マウスを用いて、成熟後に D1R を発現抑制すると運動量の低下が確認された。しかし D1R ノックアウト(KO)マウスが示す過剰な運動量と反対の結果であった。このことはマウスの発育時における D1R 発現の有無がその運動量の低下又は過剰への制御と関係することを示している。
著者
脇島 修 猿田 茂 藤岡 達也 江坂 高志 山本 勝博 永尾 好輝 角谷 知彦 脇島 修 柚木 朋也
出版者
大阪府教育センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

PHS回線を利用した情報通信ネットワークを構築し、大阪府教育センターと研究協力員の小学校において、物理領域(1校)、化学領域(3校)、生物領域(2校)の遠隔実験授業を実践した。通信用のソフトウェアとしてはMicrosoft社のNetMeetingを使用している、画像等はデジタルビデオカメラで、音声はマイクでパソコンに取り込まれ、PHSで学校に配信される。通信速度が最大64kbsであるため、フレーム数は1秒間に1ないし2コマである。電波状態が良好な場合でも、速い現象には追随できない。動画は予め、ファイルで転送しておく。配信された画像やファイルはクラス全員が見やすいようにプロジェクターで拡大した。授業内容については、物理領域においては、「電流のはたらき」による発熱に焦点をあてた。発熱と発光に関連して、液体窒素中で炭素芯に電流を流し、発光させ、電球への仕組みへと発展させた。化学分野については「ものの溶け方」の項目の中で溶液からの巨大結晶づくりに関連するものであった。生物分野ではモンシロチョウの卵から成虫になる過程や昆虫の体のつくりを学習させた。特に、昆虫の食べ物や食べ方に焦点をあて、電子顕微鏡を用いた昆虫の口のつくりの観察を含めて小学校3年で2校実践した。授業実施後の児童へのアンケート調査によれば、今後も今回のような遠隔授業を受けたいと答えたものが96.7%あった。また、授業の内容がよくわかった及びだいたいわかったと答えたものの割合も81.5%あり、今回の授業の内容が発展的であることを考えあわせると、この遠隔授業により、児童の興味関心が引き出され、理解を進めたといえる。
著者
愛敬 浩二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

9.11以降の英米憲法理論の特徴は、「立憲主義の復権」の下で、拷問解禁論に象徴されるような「立憲主義の動揺」が生じた点にある。本研究はこの歴史的文脈を踏まえて、「緊急事態における法と裁判官の役割」に関する憲法理論的研究として、「Legality」の観念に注目しつつ、①国家緊急権に関する憲法理論の変容と②裁判官の良心に関する憲法学説の動向を分析した。また、③主にイギリス憲法理論を素材としつつ、法的立憲主義と政治的立憲主義の関係に関する分析を行った。その成果として、緊急事態における立憲的統制を最大化するための憲法理論のあり方と、その理論の下で期待される裁判官の役割に関する問題提起を行った。
著者
山崎 樹里 鳥居 隆三 土屋 英明
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

当該年度は、卵巣刺激を施した成熟メスカニクイザルから採取された未成熟卵IF(germinal vesicle : GV、Metaphase I : MDを用いて、体外成熟培養法の確立、および体外成熟卵子の評価としての顕微授精を行った。体外成熟培養法の確立を目指し、TCM-199に10%-FBS、penicillin-strepmmycnを添加したものを基本培地とし、BDNF、GDNF、IGFI、EGF、RGF、Leptin、BstatiClの7因子添加の影響を調べた。また、ヒト可溶化羊膜(Human Solubilized Amnion products : HSAP)を培養器剤にコートして使用することで、ラミニン、ニドゲン、コラーゲンなどの影響を調べた。その結果、GV、MIどちらのステージにおいても、7因子の添加、およびHSAPの使用による体外成熟率の改善は見られなかった。また、体外成熟卵子の顕微授精の結果、高い受精率が得られた。しかし、体外培養により発生の確認を行った結果、全ての顕微受精胚が8細胞期~16細胞期で発生を停止した。そこで、体外成熟卵子の核成熟を確認するために、体外成熟卵子を固定、染色して核相を調べた結果、多くの卵子で核成熟が確認された。次に、体外成熟卵子の細胞質成熟を確認するために、ヒト卵子において、細胞質が成熟すると細胞質表面に整列する表層顆粒の分布を調べるために電子顕微鏡観察を行った。その結果、採卵時に成熟している卵子においても、表層顆粒が細胞質表面に整列しておらず、ヒトと同様の評価ができないことが確認された。また、体外成熟卵子の観察により、表層顆粒が細胞質表面に整列しているものが多数含まれていた。体外成熟卵子が顕微授精後に発生停止になることから、カニクイザルにおいて、表層顆粒が細胞質表面に整列していることは、細胞質成熟が過剰なのではないかと推察された。
著者
藤本 薫 高橋 真理 眞茅 みゆき 宮内 清子 稲次 潤子 大蔵 由美
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、更年期女性の健康行動の促進に向けて、セルフコーチングを基本としたプログラムを作成し、評価を行うことを目的とした。更年期症状を有する45-55歳の女性を対象に、更年期の健康に関する情報およびセルフコーチングを促す記事について、ホームページを作成し、63日間更新した。対照群17名、介入群16名をITT解析した結果、簡略更年期指数、自己効力感、健康関連QOLの得点および平均歩数における介入前後の差の比較では、いずれも有意な差は認められなかった。ホームページを利用した情報提供や行動を振り返るセルフコーチングの働きかけは、一方向となり、効果が得られなかったことが推察された。
著者
甲斐 教行
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

中部イタリアのフィレンツェで活動した彫刻家コッラード・ヴィーニ(1888-1956年)の伝記的消息および進歩史観を、存命する三名の弟子への取材により明らかにした。またその親交の深かったホテル・バリオーニの経営者フランチェスコ・バリオーニが依頼した同ホテル開業25周年記念メダル《ケレス》を、彫刻家が抱いた進歩史観の観点から、文明の寓意と解釈した。さらに、《ケレス》、北米の墓地のための《キリスト磔刑》、南イタリアのシチリア州ラグーサの郵政電信庁舎を飾る女性擬人像の個人像習作を初公刊し、女性擬人像の主題を同庁舎設計者マッツォーニの残した文書に基づき初めて特定し、図像分析を行った。
著者
水田 邦子 飛梅 圭
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、TMEM16E遺伝子の機能および生理的役割を分子細胞生物学的手法により検討し、TMEM16E関連遺伝性疾患発症の分子メカニズムを解明することを目的とした.その結果,TMEM16Eノックアウトマウスでは明らかな表現型が認められず,他の筋ジストロフィー関連分子の代償性活性化により相殺されている可能性が予想された.さらに,ヒト筋芽細胞のin vitro分化の系において,TMEM16E蛋白が筋管細胞のみならず分裂期の筋芽細胞においても高発現していることを発見したことから,筋分化とは別に細胞周期依存的にその発現が調節されることが予想された.
著者
花木 賢一
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では免疫不全マウスを用いた実験を障害すると考えられる主要な日和見感染症起因微生物であり、感染マウスの糞便に排出される黄色ブドウ球菌、マウス肝炎ウイルス(MHV)、マウスノロウイルス(MNV)、肺パスツレラを単一の方法で同時に検出を可能にすることを目的として等温遺伝子増幅法(LAMP法)の開発を行った。MHVとMNVに対しては62℃90分の反応で検出する逆転写LAMP法をそれぞれ完成させた。また、黄色ブドウ球菌に対しては薬剤耐性能と消毒薬耐性能も同時に判別する3つのLAMP法を完成している。肺パスツレラを検出するLAMP法は特異プライマーの設計ができておらず、検討継続中である。
著者
池田 恵子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日英同盟期の融合文化規範としてのスポーツに着目した。質実剛健、良妻賢母は日本における中等教育機関の教育理念に相当したが、それらは英国中流階級のエリート教育において理想とされた教育理念を媒介し、スポーツ教育と帝国主義との関わりを経由している。第二次世界大戦の勃発以前には、スポーツ教育を通じて英国規範を活用したにもかかわらず、ファシズム期には国粋主義的文化規範への昇華を意図し、国防体育が実践された。いずれも、近代国民国家形成期に日本的ナショナリズムを構築する上で、巧みに利用された外国の文化システムの援用であった。これらを複合的に融合することで日本独自のスポーツ的風土が醸成された経緯を説明している。
著者
伊藤 正人 佐伯 大輔 山口 哲生
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ハトを対象に、遅延割引、社会割引、社会的ジレンマ場面における共有選択を測定し、価値割引率や選択率の間の相関関係を調べた。その結果、遅延割引率と、社会割引率や共有選択率との間に有意な相関は見られなかった。また、社会割引率と、チキンゲーム・サクラあり・ランダム条件で得られた共有選択率の間には、有意な負の相関が見られた。これらの結果は、衝動性-利己性の関係がハトとヒトにおいて異なる可能性を示している。
著者
村井 陽子 奥田 豊子
出版者
相愛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

豆摂取を促進するため、幼稚園、小学校の保護者を対象に、簡単な豆料理の調理実習と豆に関する講話による料理講習会を開催し、豆摂取背景要因と実習豆献立の評価を調査した。実習豆献立を家庭で作る意欲高群は、豆についての関心が高く、食生活を重視する傾向を示した。また、動機づけには、実習献立の評価および食生活重視度が影響していることが示唆された。さらに、小学校保護者を対象として、6種の豆料理について嗜好性と調理意欲を調べた結果、豆摂取が進みにくい層で、豆素材製品使用献立が家庭での調理に結びつく可能性が示された。豆調理頻度向上には、豆料理を紹介する印刷媒体による働きかけも有効であることが示唆された。
著者
荒井 晃作 井龍 康文 町山 栄章 井上 卓彦 佐藤 智之 松田 博貴 佐々木 圭一
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

琉球弧の一部である沖縄島及び宮古島の間には広いプラットフォーム状(平らな高まり)の地形が存在している.本研究ではこの高まり状の地形の地質学的な発達史に関して,島嶼の沈降という切り口で研究を進めた.プラットフォーム状の地形は,その縁辺における断層運動に伴って,壊れるように沈降していること.プラットフォームの高まり自体はほぼ安定していて,約1万数千年前の最終氷期にはサンゴ礁が存在していた可能性が高いことが明らかになった。
著者
志久 修
出版者
佐世保工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、斜めから撮影することにより射影ひずみを受けている文字列の認識方法の開発を行った。具体的には、(1)射影ひずみを受けている文字の形状正規化方法の開発、(2)個々の文字の認識結果(文字コード+画像中の文字位置)から、文字列辞書(文字コード列)を利用することにより、個々の文字を文字列にグループ化(文字列を認識)する方法の開発を行った。実験により開発した方法の有効性を確認した。
著者
吉田 恒雄
出版者
駿河台大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

精神障害者による児童虐待に関するアンケート調査からは、担当者がとりわけ困難な課題と感じているのは、当事者との関係の構築や精神保健福祉に関する専門知識の不足であることが明らかになった。先行研究調査からは、この問題の背景には精神障害だけでない複合的原因があること、この問題が児童虐待への対応、社会的養護の根本的課題であり、かつ多機関連携がとくに求められる課題であることを知ることができた。法学文献調査からは障害者による在宅子育て支援の視点を法律に明記することが重要であることが、 関連分野の研究者・実務家からは対応組織のマネージメントの重要性、重大事件でのケースの評価に関する課題が示された。
著者
山名 淳 宮本 健市郎 山﨑 洋子 渡邊 隆信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、新教育運動期において、児童・生徒の「本性」に基づいて彼らの自己活動の余地を保持するために、学校における「アジール」的な時空間(教師の明確な計画性を逃れる曖昧な時空間)の重要性が認識され始めたことに注目し、新教育的な学校における「アジール」との関わりにおける教師の技法を、新教育運動の影響が最も鮮明にみられたイギリス、ドイツ、アメリカ合衆国を考察対象として比較史的に究明することを心試みた。日本との比較考察という視点も導入し、今後の継続的な研究の展望を示した。本研究の成果は、報告書『新教育運動期における学校の「アジール」をめぐる教師の技法に関する比較史的研究』にまとめて公にした。
著者
池田 博 岩坪 美兼
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

バラ科キジムシロ属キジムシロ群に含まれる広域分布種と、それらから派生したと考えられる地域固有種について、形態学的・細胞遺伝学的・分子遺伝学的解析をおこなった。解析の結 果、1) キジムシロ群植物は全て 2 倍体(2n=14)である、2) P. freyniana var. sinica は、別の種 として取り扱うべきである、3)ヒメツルキジムシロは雑種ではなく、独立した種と考えられる ことが判明し、4) P. koreana とキジムシロ、ヒメキジムシロとテリハキンバイとの雑種を見出 した。
著者
粂井 輝子 柳田 利夫
出版者
白百合女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

社会史的視点から、アメリカ合衆国においては、『新世界/新世界朝日』(1906~1940 年)、『日米』(1919~1932年)、『北米時事』(1916~1942)、『羅府新報』(1946~1952年)の文芸欄短詩型文学のデータ化、第二次大戦中の司法省管轄抑留所発行の短詩型文学の発掘・データ化、自由律俳句の指導者下山逸蒼の個人書簡閲覧解析を行った。ペルー共和国では、『ペルー新報』(1950~1980年)の短歌作品を収集し、ペルー日本人婦人会文芸部短歌研究会の活動を調査した。
著者
金本 伊津子
出版者
平安女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

「快適」な老後をいかに過ごすかという問題は、長寿社会日本だけが抱えている問題ではない。アメリカ・ブラジルの日系社会も1880年代よりハワイ、アメリカ本土、そしてブラジルへと移住した日本人(一世)だけでなくその子ども(二世)も老齢期に達し、高齢者の急増という社会問題を抱いている。また、それぞれの多文化社会におけるエスニック・マイノリティという日系人の社会的立場は、老いの問題に文化の問題を添加する状況を引き起こしている。本研究は、複数の文化の狭間で老いを迎えるエスニック・マイノリティとしての日本人移民の老いの過程に焦点をあて、日本人が異文化-ここでは三つの多文化社会(アメリカ・ハワイ・ブラジル)-に適応するために文化変容を遂げてきた過程を比較検討し、多文化社会におけるエスニシティと老年期における文化喪失の過程-脱文化化、あるいは、エスニシティ(記憶の総体)への回帰-が相互の関連しあう領域に文化人類学的な考察を行った。調査項目は、各多文化社会における日系コミュニティ成立の過程と高齢化の過程、日系老人を取り巻く社会状況、日系老人を支える福祉施設の設立の歴史とそこでの日常生活、日系老人のオーラル・ライフ・ヒストリー、各多文化社会における他のエスニック・グループの老いの現状、の5項目である。一世にとって、最初に獲得した文化(日本文化)から、対立型多文化社会アメリカ、統合型多文化社会ブラジルへの一方的同化の過程であると考えられてきた長期的異文化適応の過程は、実は、(1)日本文化と移住先であるホスト文化(アメリカ文化・ブラジル文化)との両立の過程であったこと、そして、(2)年齢とともにホスト文化との関係性が薄れるにつれ、長年両立してきた日本文化が重要な意味を帯びてくるエスニシティへの回帰する過程であったことが明らかとなった。
著者
友清 衣利子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

強風被害拡大に影響を及ぼすさまざまな因子同士の相関と経年変化を分析し、それぞれの時代や地域に対応した、より正確な被害推定を行った。多種多様な強風被害拡大影響因子を分析・分類することで、被災地域の気候や構造物の特性を定量的に把握できることが分かった。それぞれの地域の特性を示す影響因子や因子の経年変化を考慮すれば、地域ごとに実際により対応した被害推定を行うことができ、自治体での防災対策に有用な情報を提供できる。
著者
中山 祐一郎 保田 謙太郎
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

アブラナ属植物の河川における分布を、西日本の45の一級水系について調査したところ、ほとんどの河川において生育が認められたが、分布の密度や種構成は河川によって異なっていた。大阪府の大和川では、アブラナ属のカラシナが堤防法面と中水敷に生育していた。外来植物を除去する実験の結果から、カラシナは、堤防法面では秋の草刈後に出来た裸地にすばやく侵入して優占しているが、中水敷では在来種を競争によって排除して優占していると考えられた。また、野生系統と栽培系統との比較栽培実験の結果から、アブラナ属植物は、競争環境と攪乱環境で有利に働く性質をあわせもつことによって、河川の様々な環境で生育が可能であると考えられた。