著者
足立 智昭 村井 憲男 川越 聡一郎
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

現在、小・中学校において、 LD・ADHD・高機能広汎性発達障害の児童生徒に対する指導および支援が緊急の課題 となっている。しかし、これらの発達障害は、それぞれ独立の障害というよりも、互いに重なりあう部分も少なくなく、そのアセスメントは専門家であっても容易ではない。そこで、本研究では、確率的に発達障害をアセスメントするエキスパートシステム(専門家の推論や判断に近い振る舞いをするソフトウェア)の構築を行った。
著者
向井 信彦 中川 真志
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、血管の変形と血管を傷つけた際に発生する出血を同時に実現して性能評価を行うと共に、単体の計算機だけではなく複数の計算機をネットワーク結合した手術シミュレータシステムを構築して、処理の高速化に関する検討を行った。さらに、従来の血管モデルでは血管径を一定とした変形にしか対応できないため、血管径の変化も考慮したモデルを考案し、大動脈手術のような血管そのものの手術にも対応できるモデルと変形手法を構築した。
著者
表 弘志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小胞型グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)はV-ATPaseがATPの加水分解によって形成するH+の電気化学的勾配を駆動力とし、グルタミン酸を小胞内に輸送するトランスポーターである。この研究ではVGLUTによるグルタミン酸輸送の分子機構を明らかにすべく、VGLUTを含むSLC17型ファミリートランスポーターの輸送機構を速度論的に解析した。
著者
佐々木 長市 松山 信彦
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

客土をもつカドミウム汚染水田模型を作製し、湛水条件下で、すき床層(汚染土)が開放浸透で酸化層となる閉鎖浸透模型において、稲体のカドミウム濃度および水稲の生育収量を調査した。カドミウムの濃度範囲は、玄米で0.000~0.200mg/kgとなった。開放浸透層模型の値が閉鎖浸透模型より大きな値となった。浸透型の差により生育には大きな差異は認められなかった。穂数、玄米重は開放浸透模型より閉鎖浸透模型で上回った。
著者
田中 博通 藤原 広和
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

研究実績の概要は下記の通りである。1.多点風速計と超音波風速計を使用して自然風を観測した結果、以下の知見を得た。(1)平均風速の鉛直分布は対数分布となった。地表から1〜2mまでは、地表の粗度の影響を受けて乱れ強さは増加するが、地表から離れるにつれ測定した10mまでは風速が増加しても乱れ強さはほぼ一様な分布となった。(2)鉛直断面における変動風速の横相関係数C(r)は、r=9.5mの場合でも0.6以上の値となり、自然風はかなり大きなスケールであるといえる。(3)水平方向風速と鉛直方向風速の乱れ強さは、水平方向の平均風速が大きくなると増加する特性がある。2.リンゴ果樹の枝のヤング率について、様々な枝の付き方があることから、今回は直接現場で引張り試験を行った。その結果、以下の知見を得た。(1)枝のヤング率は枝の高さや枝の勾配や枝の太さに関係なくほぼ一定になった。(2)リンゴの枝のヤング率の平均値はE=3.3×10^7gf/cm^2となり、柿の枝のヤング率と同程度となった。3.自然風によるリンゴの揺れは、2台のCCDカメラでステレオ撮影し、それを画像処理して求めた。その結果は下記の通りである。(1)自然風によるリンゴ果実の変動は、前後の変動が大きく、上下・左右の変動はそれに比べ小さい。(2)自然風によるリンゴ果実の変動は、風速の大きさよりも、風速の変動の大きさに関係する。(3)風速が強い時は枝は大きく揺れないが、風速が弱まったとき力が解放され揺れる。従って、枝揺れやそれにともなうリンゴ果実の振動は風の息に関係する。(4)防風ネット背後でのリンゴ果実の変動は、風速の強弱、変動に左右されない。
著者
山本 由喜子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ネギ属野菜類のうちタマネギやネギは、共に日常的に頻繁に食される身近な食品であるが、その生理効果についてはあまり報告がない。そこで平成15年度はタマネギ、平成16年度はネギについて、血圧上昇抑制効果、抗酸化効果、体内脂質蓄積防御効果などを検討した。【平成15年度】タマネギの血圧上昇抑制効果および抗酸化効果に対する加熱の影響を、NO合成酵素阻害剤(L-NAME)誘発高圧ラットを用いて検討した。タマネギ試料は生、あるいは60分間沸騰加熱したものを凍結乾燥して粉末にしたものを用いた。その結果、L-NAME誘発高血圧ラットに対して、生タマネギの血圧上昇抑制効果は100℃60分間加熱することにより消失した。また生タマネギによる血中TBAR上昇抑制作用も加熱により見られなくなり、さらに尿中NO代謝物排泄の減少や血管NOS活性の低下抑制も見られなくなった。自然発症高血圧ラット(SHR)を用いた実験においても、生タマネギの効果は加熱調理により見られなくなることが示された。【平成16年度】正常ラットに高脂肪高蔗糖食を投与した場合の血中および肝臓脂質上昇ならびに血圧上昇に及ぼす影響を、青ネギおよび白ネギについて比較検討した。その結果、高脂肪高蔗糖食に5%青ネギを添加することにより2、4週目の血圧上昇は有意に抑制されたが、白ネギ添加では有意な抑制効果は認められなかった。血管スーパーオキシド生成能は高脂肪高蔗糖食投与で亢進し、青ネギにより抑制された。白ネギによる抑制効は弱く有意ではなかった。体内の脂質に対しては、青ネギによる影響が強く、血漿・肝臓コレステロールとTGの上昇を抑制した。白ネギでは血中コレステロールおよびTGに有意な影響は見られなかったが、肝臓におけるそれらの上昇を抑制した。これらの結果、白ネギよりも青ネギにより強い生活性を見出した。
著者
小川 眞里子 片倉 望 山岡 悦郎 伊東 祐之 久間 泰賢 遠山 敦 秋元 ひろと 斎藤 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は平成11年度から13年度の3年間のプログラムによって、「物語としての思想-東西の思想を物語の観点から読み直す-」をテーマに総勢10名を超えるメンバーの参加をもって始められた。参加者の専門は西洋、日本、インド、中国の思想分野にわたり、比較思想的探求を行う際の共通の切り口として「物語」という切り口は面白いのではないかと考えた。たしかに、物語は文字をもつ以前から口承の形で受け継がれてきており、人間存在と切り離しがたく普遍的に存在する。それにもかかわらず従来の哲学からは「物語」への取り組みの糸口が見出しにくく分担者は苦闘を強いられた。そうした中で、東北大学の野家啓一氏を招き講演会を開き、その成果を文字に起こして研究分担者がきちんと共有できたことは、各自の研究を進める上で大きな助けとなった。とくに今回の講演で示された科学的実在と物語の関係は大変示唆的であった。また東洋思想の観点からお話をしていただいた田辺和子氏の「原始仏教聖典の中の物語」は、先に述べたごとく「物語」がいかに本質的に人間存在と結び合ってきたものであるかを納得させるものであった。こうした経緯をへて各自が報告の作成に取り掛かり、桑原は野家氏の中心的テーマであった歴史の反実在論から説き起こしそれとキリスト教徒の問題に切り込み、武村は物語と哲学との比較という非常に興味深いテーマに行き着ついた。その他各自がこのユニークな研究の端緒をいかに完結させるかが今後の課題である。
著者
牛山 素行
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

豪雨災害においては外出中の遭難者が全体の6割,自ら危険に近づいたことによる犠牲者が1/4を占めるなど,情報を公開・伝達すれば被害軽減が図れるといった単純な構造ではない.どのような情報を理解してもらえば被害軽減行動に結びつくかの検証が必要であり,その一端として本研究では,地形(標高)を認識している者は防災行動が積極的であることを示唆した.
著者
大久保 晋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

スピンフラストレーション系では、相互作用が競合するためマイナーな作用が支配的である場合がある。スピンJahn-Tellerではスピン-格子相互作用により格子を歪ませることになる。本研究ではフラストレーション効果の解明のため、カゴメ格子やパイロクロア格子をもつ反強磁性体におけるスピンフラストレーション効果を、強磁場ESRを用いることで緩和の速いスピンダイナミクスを調べ、格子を変えてもスピンの揺らぎが強く残ることを明らかにした。
著者
時得 紀子 田中 博之 村川 雅弘 無籐 隆
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日米小・中学校の研究先進校から抽出した優れた授業実践に、独自に設けた評価観点などを尺度として質的な分析を加えた。その結果、音楽と言語と身体の各活動がバランスよくかかわり合うことで、表現活動が活発化する傾向が見られた。また、音楽と言語が相互に作用することで双方の活動の質が高まることから、この往来の活性化をはかる手立てとして、言語が関わる演劇的表現や音楽と関わる身体表現活動などを関連させた活用型の学習が有効であることがわかった。
著者
室 雅巳 庄野 秀明 庄野 真由美
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

(1).正期単胎妊娠の胎児心拍数基線における周期性を明らかにする目的で、合併症のない37〜39週の正常妊娠9症例を対象に3日間の連続胎児心拍数(FHR)収録を行った。得られたFHRデータから10分間の区画毎に胎児心拍数基線(FHRB)を同定、各症例毎に最大エントロピー法によって得られたピークスペクトルからFHRBの時系列データに内在するリズムの周期を抽出し、あてはめ曲線を描出した。得られた曲線の日内変動最低点および最高点を示す時刻を各症例毎に求め各々の分布について検討した。その結果、正常正期妊娠におけるFHRBの日内変動は約24時間と約12時間の周期のリズムをベースに持ち、更に各個体の状況や環境因子に伴う種々のリズムが複合され、その表現型が形成されていると考えられた。(2).双胎間の胎児基準心拍数(BFHR)の日内変動位相の同期性と位相差を解析し、一絨毛膜二羊膜性双胎(MD)と二絨毛膜二羊膜性双胎(DD)の特徴を抽出する目的で、妊娠35〜37週の双胎妊娠15例(MD7例、DD8例)に対して24時間双胎心拍数同時収録を施行。収録したデータから症例毎に各々の双胎のBFHRを5分毎に同定し1時間毎の平均値を算出、各胎児のBFHRの日内変動の有無を検定した(ANOVA)。各症例で双胎間のBFHR日内変動位相差を求めるために第1子のBFHR日内変動に対して第2子の日内変動位相を-3〜+3時間の間で1時間づつ移動させた場合の両者間の相関係数をそれぞれ算出。最大Rを示す位相差を症例毎に求め、膜性による特徴を比較した。その結果全ての双胎両児のBFHRに有意な日内変動を認めた(p<0.01)。双胎BFHR間に全症例で有意な相関が認められ、MD、DDの平均最大Rの間に有意差は認められなかった。DDでは8例全てでBFHR日内変動の位相が完全に同期していた。一方、MDでは7例中3例でBFHR日内変動位相は同期していたが3例で第2子が1時間先進、1例で第1子が3時間先進しており日内変動に位相差を示す症例が認められた。以上より双胎間のBFHR日内変動はMD、DD共に高い相関を示すが、DDでは完全に位相が同期しているのに対してMDでは位相差が認められる症例が存在する。MDでは胎盤内血管吻合等による双胎間の循環動態の差異から胎児日内変動に関連する母体因子の移行に不均衡が生じる可能性があると考えられた。
著者
今井 知正 村田 純一 黒住 真 門脇 俊介 信原 幸弘 野矢 茂樹 宮本 久雄 山本 巍
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

自然主義をめぐる哲学的思考の歴史的遺産を再検討したうえで、現代の哲学的自然主義をめぐる論争状況を直接に主題化し、根本的な論点について、各研究者がそれぞれの立場から検証作業を行なった。その結果、現代的な自然主義と反自然主義の対立を一挙に解消することはできないとしても、いくつかの重要な成果が得られた。(1)認識論的自然主義はアプリオリな知識を説明し得ないとされてきたが、暗黙的概念了解と想像による概念連結を根拠として、自然主義的立場においてもそうした知識が説明可能であるという見解が得られた。(2)色彩概念は長らく物理的説明に委ねられ哲学的アプローチに乏しかったが、現象学やウィトゲンシュタインの知見を参照することで、色彩概念が自然主義的還元を許さない多次元性をもつことが示された。(3)自然主義批判の立場はまた、哲学の基礎付け主義や強い意味での正当化要求と、極端な自然主義や懐疑論が裏腹の関係にあり、それらのいずれもが、人間の実践的世界における自由や合理性、真理や正・不正の経験の「内在性」に基づくことを示すことによっても展開できる。(4)ウィトゲンシュタインの後期哲学にも、通常の自然主義とは異なる、人間の「自然誌的」過程における実践に意味や規範の前提を求める「超越論的自然主義」が見られる。(5)日本思想史における「倫理」の位置づけ、現代世界における「公共哲学」の可能性などを問う中で、自然主義の限界を明らかにする作業も行なった。
著者
中牧 弘允 村上 興匡 石井 研士 安達 義弘 山田 慎也
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度は、入社式、新入社員研修と社葬に焦点を置いて調査をおこなった。入社式と新入社員研修については大阪のダスキンで、一燈園とのつながりを明らかにした。社葬については、ソニーの社葬を調査し、国際色豊かな演出の中にソニーの企業としての特色と盛田会長のカリスマ的創業者としての性格を明らかにした。また、大成祭典、一柳葬具総本店といった葬儀社においても調査をおこない、社葬と社員特約の歴史的変遷を跡づけた。平成12年度は、前年度に引き続いて入社式、新入社員研修、社葬を追跡調査したほか、社内結婚についての調査もおこない、公と私の場が入り交じった日本独特の会社文化を明かにした。社葬と会社特約については、大阪の大手葬儀社である公益社を新たに調査した。平成11・12年度を通じて、九州の酒造関係の地場産業における儀礼調査、京都の伏見稲荷神社における会社儀礼の調査をおこない、伝統産業と宗教の関わり、会社ならびにサラリーマンの強化儀礼について研究をおこなった。それぞれの調査を総合して、報告書として「サラリーマンの通過儀礼に関する宗教学的研究」を作成した。
著者
三浦 國雄 山里 純一 宮崎 順子 益子 勝 大野 裕司
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、術数学の基礎研究として主要術数書の文献解題を行なうものである。すでに平成17・18 年度の第一期研究において研究報告『主要術数文献解題』を刊行したが、本研究はそれを承ける第二期研究であり、第一期で取り上げることが出来なかった文献(出土術数文献も含む)の解題を試み、すでに本年3 月、『主要術数文献解題 続編』として刊行ずみである。
著者
福長 将仁 田淵 紀彦
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

動物ミトコンドリアゲノムは37 の遺伝子とひとつの制御領域から成っているものが多い。またこれらの遺伝子構成は比較的保存されていて大きな変化はない。しかしAcariformes に属するダニ類では遺伝子構成が再編されていることが我々の検索から明らかになったのでこの上目に属するダニ類を網羅的に検索、系統的関係を調べた。その結果この上目に分類されるダニ類においてミトコンドリアゲノムは独自の進化を遂げたことが推察された。
著者
内田 照雄
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、測定時間の大幅な短縮をはかりかつ分光強度パターンと蛍光寿命パターンを同時測定するため,光源の二重振幅変調と高速撮像素子としてのイメージインテンシファイヤーの利得変調方式を併用した検出器内部ヘテロダイン検出法を考案し,その理論的解析を行なった。さらに,装置の試作を行い、装置の動作確認を行なった。まず、イ)高速撮像素子としてのイメージインテンシファイヤー、ロ)レーザ、ハ)2台のAO変調器、ニ)3種類の変調用正弦波発信器,ホ)タイミング回路、ヘ)I.I.の蛍光面画像撮像用CCDカメラ、ト)パソコンからなる装置の試作を行った。レーザとしては小型空冷アルゴンイオンレーザを用い、2個の直列に配置したAO変調器を二重に正弦波変調を行い、蛍光試料を変調励起する。この変調信号とわずかに異なる変調信号でイメージインテンシファイヤーの利得変調を行った。2個のAO変調器(No.0とNo.1)のうちNo.1のAO変調器はNo.0のAO変調器(変調周波数 f_0=20.0000MHz)とイメージインテンシファイヤーの利得変調周波数(f_2=19.9990MHz)の差の周波数(f_1=1kHz)の正弦波で変調される。たとえ,f_0,f_2の周波数が時間的に若干変動してもf_1は常にf_0とf_2の差となるように,ミキサー回路を用いた。この結果CCDからは,No.1のAO変調器による変調をOFFにすることにより,通常のDC蛍光像が得られる。また,No.1のAO変調器による変調がONの状態におけるCCDの蛍光像から,OFF時の蛍光像信号を差し引くことにより,蛍光寿命情報すなわち蛍光寿命パターンが一括して得られる。アクリジンオレンジ等標準蛍光試料測定により,nsオーダの蛍光寿命が計測可能であることが分かった。蛍光像信号のSN比向上が今後の課題である。
著者
田中 克典 田中 延亮
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究対象地である落葉林では、雨季の始まりとその期間の変動によって落葉林の着葉期の長さが変わり、その年々変動が著しいことが明らかになった。昨年度は落葉林の大気-植生-土壌内の熱・水環境を再現できる大気-植物-土壌間の蒸発散のモデルが開発された。本年度はこのモデルによる対象地の熱・水環境の再現と数値実験を通じて、落葉林の蒸発散の季節・年々変化と着葉期間のメカニズムを調べた。これらの再現実験では、葉面積指数の季節性を考える場合と一定にした場合を仮定して行われた。現実と異なり葉面積指数を一定にした理由として、土壌水分が著しく減少する乾季においても、光合成による二酸化炭素吸収が可能であるかを検証するためである。ここでは、調査で得られた葉面積指数のピーク時の値、土壌の水利特性や土壌の深さを考慮した。葉面積指数の季節性を考慮した実験では、3年間の土壌水分の観測結果が十分再現され、モデルで計算された蒸散が蒸散の指標となる樹液流速の季節性とよく一致した。また、この再現実験によって、蒸発散のピークが雨季に現れるなどの熱・水交換の特徴が抽出され、着葉期間中、二酸化炭素の吸収を持続できることがわかった。一方、葉面積指数を一定にした場合では、乾季に二酸化炭素の吸収を持続できず、逆に放出し、葉を通年維持できないことが示された。これは、土壌水分の減少とともに気孔が閉じ、蒸散による葉温のコントロールが失われ葉温が上昇し、呼吸活動が活発になるためである。また乾季から雨季に移っていくなかで、純光合成の値が放出から吸収に転じる時点と春分の日以降に展葉した年での展葉期がよく一致した。一方、雨季が終わって、完全落葉する少し前の時点で純光合成の値が吸収から放出に転じることが示された。この数値実験により研究対象である落葉林の成長期間における予測可能性を示した。現在これらの成果は論文に纏められ、英文誌に投稿中である。
著者
吉富 秀樹
出版者
津山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、プール排水口に身体を吸着されるという事故を未然に防止するため、流体自身の流れで吸引力を制御できる渦室付排水管を研究開発するものである。これまでに渦室付排水管の小型モデルを用いて研究を進めてきたが、実機サイズでの特性が確認できていなかった。そこで、本研究では、新たに実規模渦室付排水管を製作して特性試験を実施し、小型モデルの研究成果の有効性を確認すると共に設計データを整備した。
著者
小島 夏彦
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では汽水湖中海で2年間,水質,渦鞭毛藻群集,休眠胞子(シスト)の定期的な調査を行い,(1)中海に生息する渦鞭毛藻群集の実態,(2)これら渦鞭毛藻群集が環境変化の中でどのような変動を見せるのかを明らかにすることができ,(3)群集変動はどのようなメカニズムのもとで起きているのかについて手がかりを得た.これらのことは今後の汽水域での渦鞭毛藻研究の指針になるものと考えられる.中海の渦鞭毛藻群集として32種が認識された.以前の中海におけるプランクトン調査では渦鞭毛藻は多くて数種が認識されていたにすぎない.したがって本研究で初めて中海の渦鞭毛藻群集の実態が明らかになったと言える.この群集で優占し,しかもほぼ周年観察されるものとしてProrocentrum minimum,Heterocapsa rotundata,small Gymnodinium complexがあげられる.特にProro.minimumの赤潮状態にも至る圧倒的な優占と無殻渦鞭毛藻の多様性の高さが中海渦鞭毛藻全体の特徴として指摘できる.中海では上述したように3つのグループが周年存在するがその個体数の変動は激しい.群集変動のメカニズムについては,汽水域が極めて環境変動が激しいことから,環境が短期間に大きく変化するような場所では常に環境状態をモニターできる状況に渦鞭毛藻が存在することが他種に対してアドバンテージを得ることになると考えられる.これはどういう形にしろ周年水中に遊泳体として存在することが環境変化に対する素早い対応を導くことを意味する.その意味では本湖で優占する上記3グループのほとんどがこの条件のもとに生息し,汽水環境に適応していると言える.これらのことから,シスト形成種は不適環境をしのぐための適応と考えられてきたが,汽水環境では特に独立栄養種は,シスト形成についてはそれほどプラスには働かないと考えられる.以上のことを考慮すると,古生態学へ渦鞭毛藻シスト群集を応用する時に過去のシスト群集がその当時の汽水湖の遊泳体群集を忠実に反映しているとは考えにくい.そのような状況を考えれば中海底質に多い従属栄養種のシスト群集の遊泳体群集の中での働きをさらに調べる必要があろう.
著者
玉川 洋一 杉本 章二郎 小林 正明
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

原子力発電所およびその周辺施設等における主に建屋内の漏洩放射能のモニターを行うため,ガンマ線のコンプトン散乱を利用した数個のシンチレーターからなるリアルタイム型全方向有感型の検出器の開発を行った.2インチのNaI(Tl)シンチレーターとプラスチックシンチレーター等を組み合わせて,角度分解能5°でガンマ線のエネルギー同定可能な検出器のプロトタイプを2つ製作し,ガンマ線源の飛来方向を視覚的に捉えるための描画ソフトも開発した.