著者
小野 寛晰 青戸 等人 鹿島 亮 石原 哉 外山 芳人 WOLTER Frank 酒井 正彦
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目標は、計算機科学に現われる数理論理学の問題を理論と応用の両面から解明しようとするものである。本年度に得られた成果のうちの主要なものを以下にあげる。1.代数的手法による縮約のない部分構造論理の一般論の展開(小野)2.部分構造論理におけるMaksimovaの変数分離の原理の研究(小野)3.直感主義的様相論理の研究(青戸、小野)4.項書き換え系における停止性および合流性に関する研究と関数型プログラム言語への応用(外山、青戸)5.弱い含意命題論理に対する証明論(鹿島)6.構成的数学の展開(石原)1)の縮約規則をもたない論理の一般論については、小野はその成果をポーランド、スウェーデン、スペイン、ドイツで発表した。また北陸先端科学技術大学院大学において、オーストラリアのM.Bunder博士、R.Gore博士およびアメリカのA.Scedrov教授とそれぞれ部分構造論理に関する共同研究をおこなった。2)については、いくつかの部分構造論理に対しMaksimovaの原理を証明論的手法により証明した。このようなアプローチはこの研究が始めてである。3)の直観主義様相論理については、青戸がその有限モデル性についての興味深い結果を示した。4)の項書き換え系とその応用については、外山と青戸が精力的に研究をおこない、優れた成果をおさめている。弱い含意論理におけるcut elimination theoremについては鹿島が、また構成的数学については石原がいくつかの成果をあげた。
著者
松井 克浩
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、被災と復興の過程における近隣関係の再評価や外部の民間やNPOなどの多様な諸主体との連携が、被災地内の種々の社会関係に影響を与え、関係の対自化を促し、それを更新していく様を新潟県内での事例研究および質問紙調査によって具体的に明らかにした。そこに東日本大震災を含む災害被災地の復興、さらには中山間地の再生の新たな可能性の端緒を見出すことができた。
著者
上原 邦昭
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

デジタル映像を対象とする検索システムが従来のデータベースシステムと大きく異なる点は,(1)検索のための効果的な内容記述方式を開発する必要があること.(2)映像コンテンツ自身による分類や構造化が必要なこと,(3)利用者の主観,視点,嗜好などを反映した感性的な検索や,映像のストーリやキーワードによる高度な意味的な検索が求められていることなどである.本年度は,前年度に開発した階層的内容記述形式を用いて,柔軟なストーリ検索が可能な知的映像検索システムを開発した.知的映像検索システムは,階層構造の上位レイヤに記述されたストーリを用いたストーリ検索機能,特定の人物の行動,場所,時相に注目した個別属性検索機能,ストーリに対応する映像をすべて表示させるか,もしくは部分的な映像を表示させる選択的映像表示機能,余分な挿話を省略して映像のダイジェストを作成する映像ダイジェスト機能などを有するシステムである.具体的には,Lehnertの提案したAffect Unitに基づく動画像の内容記述モデルを開発した.本内容記述モデルでは,予め典型的なシーンをプロトタイプとして用意しておき,ボトムアップのアプローチに基づいてストーリの内容記述を行っている.映像データの内容記述モデルでは,ユーザの記述コストが高くなることが問題となるが,本システムでは,プロトタイプを階層構造として管理して,ユーザの労力を軽減するようにしている.さらに,ストーリの内容記述を具体化して,ユーザの主観の差異をできる限り吸収するようにしている.また,本内容記述モデルを用いたシステムをプロトタイプ指向言語AMULETを用いて構築し,具体化についての実験を行った.
著者
大岡 頼光
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ルター派プロテスタントを長く国教としたスウェーデンの共同墓は、生者が死者の冥福に何もできないという教義から出てきた。ルター派の労働観は、労働を重視する同じプロテスタントのカルバン派とも違う。修正された予定説のカルバン派は貧を滅びの証とし、貧者を助ける義務は国にないとする。だがルター派は「人は働いて初めて幸せになれる」と考え、徹底した就労支援を公財政で行う。このルター派の発想はインタビュー調査でも確認できた。
著者
日向 進 松田 剛佐
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「連」と呼ばれる筏の規格が河川の流域によってどのように定められたかに注目して、京都周辺の丹波材、紀州の吉野材・熊野材、鳥取藩の智頭材について、各川筋における「連」の規格と変遷について史料調査を行った。丹波材14尺、吉野材は1間を7尺5寸、熊野材は13尺と15尺、智頭材は1間を7尺としていた。このような相違がみられることについては、各河川の浚渫状況や中継する材木市場などの相違が条件として考えられた。
著者
村田 拓司 福島 智 中野 泰志 伊福部 達 大西 隆 苅田 知則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.選挙のアクセシビリティの研究平成16年度:電子投票と選挙に関する新見での選管担当者と障害有権者への聞取調査の結果、有権者は同システムの有用性に満足するもそのアクセシビリティ配慮がより広範には活用できていないこと等が明らかになった。17年度:新見調査を踏まえ、都市部の四日市での同様の調査の結果、(1)高齢者の筆記の不安解消、点字の書けない全盲者や知的障害者が独自に投票できたが、(2)両市とも電子投票導入時や機種選定時の障害者の参加機会がなく、引きこもりがちな障害者向け啓発が困難で、配慮とニーズの齟齬があり、(3)電子投票の信頼性への要求が高く、(4)投票機も改良の余地があり、(5)第三者認証、最低限アクセシビリティの法文化も必要なこと等が明らかになった。2.総合支援システムの研究16年度:(1)模擬電子投票後アンケートの分析やバリアフリー専門家討論会による電子投票のアクセシビリティ調査、(2)上記の新見調査の結果、電子投票機の最低限アクセシビリティの確認と、より多様な障害者向けユーザビリティに残る課題、アクセシビリティ等の客観的評価手法やその配慮保障のための法制整備の必要性等が明らかになった。17年度:四日市調査等の結果、(1)点訳選挙公報等の情報入手が困難で、(2)知的障害者も支援次第で参加可能なこと等、選挙参加促進の総合支援策の必要性が明らかになった。3.選挙とまちづくりの研究16年度:バリアフリーのまちづくりのための当事者参加型ワークショップの分析の結果、投票環境整備にはまちの日々のあり方が重要で、障害者のバリアを、彼らを交えたワークショップを通して体験的に理解する必要性が明らかになった。17年度:四日市調査の結果、公共施設の投票所のバリアフリー化が進むも最寄りの小規模集会所等を投票所にするのに難があること等が明らかになった。
著者
満保 雅浩
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

民主主義的な手続きに基づく健全な電子社会を確立するために、現在必要とされる制約を可能な限り除去した、高い信頼性を有する電子選挙システムを構築することに取り組んだ。まず、公開検証型電子投票を、暗号技術の危殆化による過去の投票内容の暴露の危険性という観点から考察し、暗号の危殆化にも対応した安全な公開検証型投票方式の構成方法を示した。そして、電子選挙における投票時刻に着目し、投票し直しを許すことによる買収や強制への耐性の向上効果について検討をおこなった。更に、投票内容が正しく処理されたことを確認するための仕組みについても考察を行った。
著者
仲地 博 高良 鉄美 比屋根 照夫
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1) 研究期間を通して、資料の収集、実態調査、研究会等を行った。その成果の一部は本報告書の研究発表の欄に記載した通りであり、その他にも、講演・シンポジウムという形で社会に還元されている。2) 研究分担者の意見が細部まで完全に一致することはもとよりないが、共通する結論は次のようなものである。1995年の沖縄における代理署名訴訟は、全国的な問題提起となった。代理署名訴訟の渦中の沖縄で独立論が飛び交ったことに見られるように、代理署名訴訟の背景は、広く深い。日本国憲法の意義と限界、地域自立を求める世界的傾向、エスニシティとアイデンティティにかかる政治思想の歴史と動向がそれである。これらの本質的な結節点で、代理署名訴訟は、考察されなければならない、それなくして、「沖縄問題」を分析解決することはできないからである。代理署名訴訟は、最高裁判決で終結し、沖縄問題は、政治の表舞台から消えたかに見える。また、現地沖縄でも住民運動のうねりは過ぎた。しかし、SACO合意にかかる基地移設問題を中心に基地問題はなお進行形の課題である。否、戦後53年基地問題は、とりも直さず、沖縄社会を規定する最大の要因であり、巨大基地ある限り、過去進行形であったし未来進行形であることも疑いない。代理署名訴訟は、沖縄とは何か、沖縄の抱える課題は何か、沖縄は全国民に何を問うのか、を具象的に示すものであった。それゆえ、繰り返し検証される必要がある。3) 本研究は、この報告書で終了するものでは決してない。私達のライフワークの一つとして、継続的に共同研究を続けることを予定している。
著者
山田 健司 水村 容子 小川 信子 一番ヶ瀬 康子
出版者
群馬松嶺福祉短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)日本の現行公選法規定は、法規上心身能力低下をもつ選挙人の選挙権行使を実質上抑制阻害している。当該規程は、1951年地方選挙で発生した大規模不正投票の再発防止を理論的根拠としている。しかしながら、当該規程は、不正投票発生原因に対応したものではなく、在宅投票制度全体を不可能とする投票権侵害=選挙権侵害=違憲状態を生ずる原因となっている。1974年に一部復活した郵便投票制度以降を勘案した場合も、同様な違憲状態にあり、この状態は70数年間に及んでいる。(2)介護保険の要介護認定者は、本調査結果の範囲において半数以上が、非投票である。非投票原因は、主として体調の不調と移動困難性である。これは、能力低下レベルとは相関していない。また、移動困難性は通常の移動手段(歩行運動機能レベル)とは関連がなく、自宅と投票所間の投票当日における移動手段の確保を意味している。身体上の能力低下は、投票行動において障害とは言えず、非投票を惹起する原因は、環境因子によって生じている。したがって現行公選法規程が、重度歩行運動機能低下を在宅投票の事由とすることは、実態的論理的に誤謬である。(3)オランダでは、本調査結果の範囲において心身能力低下と公選における非投票とは関係がない。非投票は、自由意志による積極的投票拒否である。またスウェーデンは、在宅投票を不在者投票の一環として制度化し、投票環境の改善によって投票率の向上を恒常的に国策として進めている。(4)以上の結果から、現行公選法規定は、投票権の制限よって心身能力低下をもつ選挙人の選挙権剥奪を行っているといえる。また、すでに心身能力低下をもった高齢者が選挙人人口中に一定の比率を占めており、高齢化によってその人口は激増していくことが予想される。これは、わが国において行政政策への非関与、社会保障施策当事者性の奪取という現象を生じせしめ、人権保障の実体外人口を実質的に増加させるものである。(5)現行公選法が改正され、心身能力低下=投票バリアが解消する場合においては、公権行使への関与階層が未経験域に変化する。また改正が無い場合には、修正資本主義の自己矛盾つまり社会保障機能不全による社会制度倒壊へシフトする。いずれのケースでも、わが国は近い将来において、今と異なる社会形成を経験する可能性が高く、このことは日本自らが、社会と人間のとりわけ本質的な在り方を、本格的に問うべき時の訪れを意味している。
著者
田中 愛治
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、戦後の日本政治を特徴づけた「55年体制」と呼ばれたものが、国民意識の中では実態としては存在せず、一党優位体制を支えた有権者の意識と1993年の政権交代を引き起こした有権者の意識とは同一のものであるという仮説を検証しようとした。そこで「政治システム技術(system support)」という概念を導入することによって、戦後の変化を包括的に説明できる理論モデルを構築し、そのモデルを実証的に検証しようと試みた。研究は概ね研究計画通り進み、平成7年度には1989〜95年の自民党一党優位体制崩壊期の分析をし、平成7年10月には拙論「『55年体制』の崩壊とシステム・サポートの継続」を発表した。平成8年度には1972〜88年度までの自民党一党優位体制確立期まで遡って分析し、平成8年12月にはその成果を拙論「国民意識における『55年体制』の変容と崩壊」にて発表した。平成9年度には、「55年体制」が形成されたと考えられている1948〜60年までの日本人の政治意識を分析し、拙論「国民の政治意識における55年体制の形成」を平成9年9月に発表した。厳密には1960年代の時期の分析が完全には終了しておらず、成果を十分に発表していないが、対象となる期間の世論調査の結果は入手し、基本的な分析は終わったので、近いうちにこの部分も併せて、研究成果全体を発表したい。
著者
田路 秀樹 金子 公宥
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

両側性および一側性の肘屈曲運動によるパワー発揮特性を力-速度関係から検討した結果、力-速度、力-パワー関係においても両側性機能低下が認められると共に、最大筋力、最大速度、最大パワーにおいても有意な両側性機能低下が認められた。また、両側性・一側性によるレジスタンス・トレーニングでは、両側トレーニングにより両側運動が、一側トレーニングにより一側運動が増加し、特に筋力の特異的な増加が見られた。
著者
柴垣 芳夫 水本 清久
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1CET1温度感受性変異体の分離とmutational analysis昨年度分離した温度感受性変異体(ts変異体)を21株についてすべてDNAシークエンスを行い分類を行ったところ、7種類の変異体(cet1^<ts>-1〜7)に分類することができた。変異が認められた部位は、我々が欠失変異体を用いて、Ceg1-Cet1相互作用に必要な領域、TPase活性に必要な領域としてマッピングした領域の中あるいはそのごく近傍に存在した。また、cet1^<ts>-3,5〜7は複数の部位に変異が入っていたため、個々にアミノ酸変異体作成し、それぞれのアミノ酸変異の酵母の生育および酵素活性に与える影響を調べた。その結果、cet1^<ts>-1;G527D,cet1^<ts>-2;S419L,cet1^<ts>-3;T396I/T400Iは、TPase活性はそれほど大きく減少しなかったが、細胞は温度感受性を示した。このことは、これらのアミノ酸変異がTPase活性以外のCet1機能に影響を与えた結果、温度感受性になったことを示唆している。R532K変異はTPase活性が大きく減少したにもかかわらず細胞は温度感受性にならなかった。このことはR532がTPase活性に重要なアミノ酸であることを示唆している。またR242K変異はCeg1-Cet1相互作用領域の変異で、単一変異のみで温度感受性になった。このことはR242がCeg1-Cet1相互作用に重要な役割をしていることを示している。しかも、R242K/A257Nあるいは、R242K/E200Kの変異体では温度感受性は見られなかったことから、A257,E200は、R242と協調してCeg1-Cet1相互作用に関与していることが示唆された。2 キャップ構造を持つRNAの効率的な検出法の確立酵母細胞抽出液を用いてキャッピング酵素の転写反応に与える影響を調べる上で、転写産物にキャップ構造が付加されているか否かを、簡便かつ定量的に検出する方法の確立はキャッピング酵素と転写の関係を調べてゆく上で必要不可欠である。そこで、cis-diolと架橋を作ることが知られているBoronateを側鎖に持つアクリルアミド誘導体(N-acryloyl aminophenyl boronic acidを合成し、電気泳動的にcap構造の持つRNAの分離を行った結果、少なくとも数100ntのRNAについては、cap構造の有無によって分離することができた。現在、この系を用いてキャッピングの時期などを検討中である。
著者
長尾 光之
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

後漢から南北朝期の口語資料を多くふくむ漢訳仏典とその他の口語資料を用い、1.疑問文 2.得 3.与 4.着 5.被 6.代名詞 7.2音節と2字連語 8.縦使、仮使 9.重複形式 10.量詞 11.接尾詞、の枠組みに従い、言語体系の一部を明らかにした。そのうち、漢訳仏典をはじめとする魏晋南北朝期に多用される「どこ、なに」の意味で用いられている「何所」に着目して変遷の様子をさぐった。先秦において「なに」をあらわす代表的な疑問代名詞は「何」であった。漢代には近代語に連なる2音節化の傾向のなかで疑問詞「何等」が現れる。六朝には疑問詞「底」が用いられ、連用されて「底是」ともなる。また、「何」が「物」と連用されて「何物」ともなる。「等、底」系には形態素{T}を、「物」系には{M}を設定する。{T}は時代を追って{S}に変化して行ったものと考えられる。唐代の文献を見ると「是」と「所」を同音で標記している場合がある。「所」が魏晋南北朝期に幅広く用いられたのはこの期にすでに{S}系疑問詞が発生したことの反映と考えられる。「等、底」が現代語「什公」の前身である「是物」などに連なって行くさいに「所」がその橋渡しをしたという仮説を立てた。そのほか、漢訳仏典の代名詞について総合的に論述している兪理明『仏教文献語言』を紹介した。また、4世紀の口語を反映していると考えられる鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』のテキストのうちパリ国立図書館・ペリオ文献に収められている同経の目録を作成した。
著者
片岡 郁雄
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

ブドウ果実の初期発育の制御による裂果抑制について調査した。無加温全面被覆と部分被覆栽培の‘藤稔'について、裂果の発生様相を調査した結果、裂果はベレゾーン期頃から発生し、全面被覆および部分被覆栽培での発生率は、1.7%および3.7%であった。裂果は主に成熟期の前半に果底部で発生し、後半には果頂部にもわずかに発生した。ベレゾーン後の果皮の硬度は、全面被覆栽培に比べ、部分被覆栽培でより低い傾向があった。次に‘藤稔'の果実肥大と裂果に及ぼす生長調節物質の影響を調査した。満開期にGA25ppm、満開10日後GA25 ppmCPPU5ppmの単用あるいは混用処理した結果、成熟開始後、GA単用区、GA・CPPU混用区では全果実の12%が裂果したが、CPPU単用区では2%であった。果実肥大はGA・CPPU混用区で最も優れ、CPPU単用区がこれに次いだ。収穫期には果皮硬度、可溶性固形物およびアントシアニン含量は処理間に差はなかった。GA単用およびGA-CPPU混用区では小果梗周辺部に亀裂が増加したが、CPPU単用区では少なかった。小果梗周辺の亜表皮細胞はGA区に比べCPPU単用区で小さかった。以上の結果から‘藤稔'のGA処理果とCPPU処理果における裂果発生率の差異の一因として、果皮の組織構造の違いが関与していることが示唆され、満開後のCPPU単用処理は、果実肥大促進の効果をもたらすと同時に裂果を抑制させるための有効な手段となりうる可能性が示された。
著者
薬師神 裕子 中村 慶子 山崎 歩 二宮 啓子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

思春期1型糖尿病患児へのメンタリングを用いた看護介入プログラムを開発し、思春期患児(10名)及び青年期患児(7名)への双方の介入効果を評価した。1年間の継続メンタリングを用いた介入により、思春期患児の自己効力感は介入セッション後6か月まで有意に上昇した。また、血糖値の有意な低下が12か月後まで見られた。思春期患児からのメンタリングに対する肯定的な評価にも関わらず、良好なメンタリング関係を長期間継続することは難しく、信頼関係構築のサポートとメンタリング関係のモニタリングを強化する看護支援の必要性が示唆された。
著者
吉高 淳夫
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

小型ビデオカメラや映像共有環境の普及により一般ユーザも映像を制作し共有することが一般的になっている.撮影法による非言語情報,特に感性情報の表現を意識しない,あるいは知らないユーザにより制作された映像は制作者の意図を適切に伝えることが出来ない場合が多い.この問題を解決するために,目標とする非言語情報表現に従い映像撮影を支援するインタラクションモデルの検討ならびにそれに基づく撮影システムを実装し,その効果を評価した.
著者
粟生田 友子 川里 庸子 菅原 峰子 櫻井 信人 長谷川 真澄 瀧 断子 鳥谷 めぐみ 太田 喜久子 小日向 真依 白取 絹恵
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

環境因子に対して高齢者が示す反応からせん妄発症リスクを予測し、環境による発症リスクを軽減する方法を検討することを目的に、入院中の高齢者のせん妄発症に関わる物理的・人的環境因子に対する高齢者の認知の様態を明らかにし、せん妄発症群と非発症群の比較関連検証を行った。結果、物理的・人的環境に関して2群間に差が認められた項目は<部屋の位置><看護師の訪問頻度><緊張感を助長する検査の有無><他の患者との交流><不安を助長するものがある>であった。
著者
柳町 智治 岡田 みさを
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本科研調査では、日本語の「学習」を「学習者と周囲とのコミュニケーションが環境中の様々なリソースに媒介され変容していくプロセス」として捉え、目本語の使用、学習といった実践のあり方を「具体的な文脈に属する複数の人間、道具のやりとりのダイナミクス」と見なし再考した。具体的には、第二言語話者あるいは日本語母語話者が日常的な実践を行っている場面(理系大学院における実験場面やボクシングの練習場面)をとりあげ、そこで見られるインタラクションをビデオデータの微視的な分析やフィールド調査を通じて詳細に記述、分析するということを行った。その際、(1)人の行動がその場の言語、非言語行動、人工物の使用といったマルチモダルなリソースの並置を通してどのように成し遂げられているのか、(2)何かを学習するということをその文脈で特有のものの見方(professional vision)を学ぶことと捉えた場合、個々の文脈においてそうした「vision」が当事者たちによってどのように提示されその理解が達成されているのか、の2点を分析考察の中心とした。日本語によるインタラクションを「マルチモダリティ」および「vision」の視点から考察した研究はまだほとんど行われていないが、3年間の本プロジェクトでは、日本語第二言語話者と日本語母語話者の相互行為が当該文脈においてどのように成し遂げられ、組織化されているのかの一端を具体的なインタラクションの分析を通して明らかにした。
著者
加藤 和夫 志子田 有光 加藤 和夫 佐々木 整
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

研究計画に基づき、システムの構築、教材の作製を行い、実技教育を行う授業において2年間のデータをサーバに蓄積し、時系列分析を行った。これらの内容を論文(投稿中を含む)にまとめ、国内外の学会、研究会で報告した。その結果オープンソースLMSを大規模実習室に導入することでコストを軽減できるほか、柔軟な進捗分析を行うことができ、教育支援システムとして有効であることが確認された。
著者
今川 真治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, 幼児・児童・生徒および学生を受け入れているグループホームや高齢者福祉施設において, これら若年者との交流が, 入居している認知症高齢者にどのような影響を与えうるのかを,高齢者の行動を分析することによって検証することを目的とした。若年者の適度で穏やかな関わりかけは, 認知症高齢者に肯定的な感情を惹起したと思われたが, 認知症度が重度である場合には, 交流に対する忌避的な行動が生起しやすかった。