著者
新谷 喜紀 田中 誠二 篠田 徹郎
出版者
南九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

昆虫の過変態における遺伝子発現や内分泌機構を調べるために、過変態昆虫の代表であるマメハンミョウについて、同じ温度のもとで光周期だけの違いによって、4齢から5齢への変態(擬蛹化)と4齢からの直接の蛹化を調節できる飼育条件を見つけ出した。このように、擬蛹化と蛹化予定の幼虫を産み出すことが可能になったので、それぞれの幼虫における遺伝子発現の差異をRNA-seqによって調べたところ、コクヌストモドキなどモデル昆虫で知られている変態のキー遺伝子の発現に差異がみられた。
著者
小西 天二 中村 憲夫 小川 優子 東 朋子 正木 美佳 松本 直美
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

オキシピナタニンは,マウスの腹腔内および経口投与後の脳波測定により、経口投与においてのみ睡眠量の増加が認められた。また、血中濃度の検討で,経口投与時の血中濃度は非常に低いことがわかった。オキシピナタニンは体内で代謝を受け、作用する可能性が判明した。人工胃液,人工腸液での安定性、肝臓での代謝の検討から,胃、腸および肝臓で代謝されていないことがわかった。更に、サーモグラフィーを用いた体温測定により、オキシピナタニンは末梢血管の拡張作用に伴う熱放出により、睡眠改善効果を示す可能性が示唆された。
著者
大瀧 慈 神田 隆至 藤越 康祝 佐藤 健一 越智 義道
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1)SIRによる有効射影縮約空間の次元選択のための統計規準の構築正準判別関数法において使われているモデル選択基準を基に、SIRでのEDR空間の次元の推定のための統計的選択基準を構築し、数値実験によりその性能を検証した。(シンポジューム「多次元データ構造の探索」において発表、現在論文投稿準備中)2)SIRアルゴリズムの改良回帰関係が対称的構造を伴う有効射影方向に対して、SIRのオリジナル版のアルゴリズムが上手く働かない問題に対して、主要点解析法を組み込みその性能の向上を試みた。(Symposium on"Statistics,Combinatorics and Related Areas",Bombay(India),2000にて発表、現在投稿準備中)3)B-スプライン法による散布図平滑化アルゴリムの改良B-スプラインの基底関数の結節点の配置を調整することで、スプライン曲線モデルの適合度を向上させるように平滑化アルゴリズムの改良を行った。(現在、論文投稿中)。4)低次多項式によるパラメトリックモデルとB-スプラインモデルによるノンパラメトリックモデルの選択における統計的規準の構築(現在、投稿準備中)5)ノンパラメトリック回帰モデルによる一戸建て住宅データ解析(広島女学院大学生活科学部紀要,2000にて論文を掲載済)6)ノンパラメトリック回帰モデルによる日本の市区町村別肺がん死亡危険度データの解析(Jpn J Clinical Oncology,2000に論文を掲載済)
著者
渡邉 淳
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

血管型エーラス・ダンロス症候群(血管型EDS,エーラス・ダンロス症候群IV型)は、血管や管腔臓器に特異的に発現するIII型コラーゲン(COL3A1)の片方のアレルの遺伝子変異で発症する.本症候群は血管破裂、消化管破裂、子宮破裂を合併し、時に突然死を呈する常染色体優性遺伝病であり,他のエーラス・ダンロス症候群と異なる疾患群と考えられている。現在のところ、根本的な治療法はなく対症療法が主となっている.本研究では血管型EDSのCOL3A1変異型(グリシン変異、splicing変異)ごとに、COL3A1変異アレルに対するRNAi(RNA interference)による発現抑制効果を検討し、これまで治療法のない血管型EDSに対する治療の可能性について臨床応用に向けた基礎的研究成果を集積することを目的とした.それぞれの変異型に対して変異部位特異的なsiRNAを作成し、変異線維芽細胞に導入した。Splicing変異においては、変異mRNAの発現を特異的に80%以上減少することができた。さらに、コラーゲンの発現増加に関わるLysyl oxidase(LOX)の発現ベクターをsiRNAと同時に導入したところ正常COL3A1の発現の増加を認めた。その後、グリシン変異、splicing変異によるdominantnegat iveメカニズム以外に、haploinsufficiencyを来すナンセンス変異に対しては、Lysyloxidase(LOX)を導入することで正常COL3A1の発現の増加を認めた。新たにsplicing異常をきたすを来す変異を同定し、スプライスを人工的に起こす発現ベクターを構築し、in vitro変異評価できるシステムを構築した。
著者
川口 寿裕
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

離散要素法(DEM)を歩行者間の相互作用力計算に適用し、高密度下の歩行者流れを解析できる数値シミュレーションコードを作成した。本コードを直線通路内歩行者流れ、出口からの退出、群集詰め込みなどの問題に適用したところ、既存の実験結果と定量的によく一致することが確認された。特に、高密度下での群集内作用力の不均一性について、有益な知見を得た。一方、ビデオカメラを用いて実際の群集の流れを撮影し、PIV解析を行った。二次射影による平面補正を行うことで、斜め上からの撮影画像からも適正な歩行速度を計測できることが確認された。
著者
中村 仁美 玉井 克人 冨松 拓治 遠藤 誠之 味村 和哉
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

現在の不妊治療の治療効率を向上するためには現在ブラックボックスである受け入れ側の子宮の着床能を前方視的に評価しその周期ごとの治療方針に反映させなければならない。これまでの我々の研究において、ヒトでは排卵期前に子宮内膜の電気生理学的パラメータを測定する事でその周期の子宮内膜の受容能が前方視的に評価できる事を明らかにした。本研究では、この物質的基盤を明らかにするために月経による子宮内膜の再生機構について、マウスモデルを用いて基礎研究を行う。将来的に、電気生理学的評価の物質的基盤を検討する事でヒト子宮の着床能を前方視的に評価する装置システムの精度の向上だけでなく、治療への応用をめざす。
著者
東 淳一 新谷 奈津子 仁科 恭徳 小泉 利恵 金丸 敏幸 山下 仁司
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、英語のスピーキングの学習を促す教具としての人工知能の有効性と、英語スピーキング力測定の際の学習情報収集用教育ツールとしての人工知能の有効性の両方を検証するために実証実験を行うことである。 1年目の研究準備段階では、まず米国AKA社の英語学習用人工知能ロボット「Musio」を導入してその動作確認を行い、研究計画を立案した。2年目には、Musioとの対話を通じて特定の問題の回答を導くためのタスクを構築することとしたが、実際のMusioとの対話ではタスクベースの会話が想定通り機能しなかった。このため、急遽実験方法を変更し、大学生の実験協力者とMusioの間で自由会話を行ってもらい、その会話記録の分析を行った。実験後に会話記録分析を開始し、実験協力者にはMusio使用の会話練習についてのアンケートを実施し、いわゆる人工知能ロボットの導入が学習者に与えるインパクトを調査することとした。3年目の2020年度については新型コロナ感染拡大により、実験等ほとんどの事業が不可能となった。このためMusioとは別に人工知能的なエンジンをもつ対話システムであるAmazon Lexを用いた音声ベースの対話システムの構築実験を実施し、さらにこのような音声対話システムに用いられる最新のTTS合成音についても調査した。
著者
渡辺 哲
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

CDAA食投与によるラットNASHモデルでは、投与2週目より著明な脂肪肝がみられ、肝線維化(8週)、肝硬変(16週)、肝がん(50週)へと進行した。酪酸菌を投与した群では、肝での酸化ストレス抑制、門脈中エンドトキシン減少、肝脂肪沈着の抑制、インスリン抵抗性の改善、炎症反応抑制等が認められ、同時に肝でAMPK、AKTのリン酸化とともにNrf2の著明な発現増加がみられた。In vitroの解析より、酪酸によるAMPKのリン酸化はSirtuin1のリン酸化と核移行を促し、その結果mTOR2 complexの集積とAKTのSer473のリン酸化が起こり、最終的にNrf2の発現が増加することが判明した。
著者
熊澤 慶伯 長谷川 政美
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

トカゲ亜目を構成する主要な科より代表種を選んでミトコンドリアDNA全塩基配列約17キロ塩基対の決定を行った。その結果、イグアナ下目やヤモリ下目を構成する科から多数の種について(その他の科の殆どからは少なくとも代表種1種について)ミトコンドリアDNA全塩基配列を決定することができた。コードされる37遺伝子の塩基配列を用いて最尤法などによる分子系統解析を行い、信頼できる系統関係を構築するとともに、分子時計を仮定しないベイズ法を用いて分岐年代の推定を行った。その結果に、大陸移動に関する地質学的情報と古生物学的情報を加味して、トカゲ類の系統分岐と中生代の大陸移動の関係について考察を行った。主な生物地理学的成果は次の通りである。1)トカゲ類の主要な科間の分岐は白亜紀の大規模な大陸分離の以前にさかのぼる、2)ただしアガマ科とカメレオン科の分岐だけは約1億年前のゴンドワナ大陸で起き、その後アガマ科はインド亜大陸などに乗ってユーラシアに分散した可能性がある、3)マラガシートカゲ亜科のイグアナ類は他のイグアナ類と大陸の分断に伴い分岐した、4)ヤモリ科とトカゲモドキ科の分岐はパンゲア超大陸のローラシア大陸とゴンドワナ大陸への分裂に伴い分断的に起きたと考えられる。またこれらの研究を行う過程で、Draconinae亜科アガマ類のミトコンドリアゲノムの遺伝子配置に、脊椎動物としては初めてとなる遺伝子(本件ではプロリンtRNA遺伝子)の逆位を発見し、その分子進化機構として相同的DNA組換えを提唱した。
著者
六車 由実
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

H19年度は下記の内容の調査・研究を行った。(1)事例の収集および基礎的データベースの作成人柱伝説およびその比較対象としての人身御供伝説、またそれに関係する伝説資料を、『日本昔話通観』『日本の伝説』『全国昔話資料集成』『日本昔話大成』『日本民俗学』『旅と伝説』『郷土研究』『民族学』の悉皆調査によりピックアップし、都道府県別に分類してファイリングした上で、各資料のナンバリングおよびa(人柱伝説)、b(人身御供伝説)、c(そのほかの関連伝説)に分類して、エクセルにて基礎的なデータベースを作成した。この際、資料の収集およびファイリング、ナンバリングには、院生1名および学生2名のアルバイトを使用した。(2)個々の事例についての資料収集および聞き書き調査上記の作業と並行して、H19年度においては、以下の地域に実際に行き、聞き書きを行うとともに、図書館等の郷土資料のなかから関連資料の収集を行った。・8月16日〜19日秋田県横手市増田の人柱伝説と増田の盆踊り・9月2日〜4日静岡県富士市松岡の護所神社に祀られる人柱・3月12日〜17日香川県高松市、丸亀市、琴平町、徳島県徳島市の人柱(3)これまでの調査・研究から見えてきた人柱伝説を考察する際の課題本調査を始める前の予想では、人柱伝説は人間が自然に対抗するために作り出した人神(守り神)であり、川神や水神などの自然神の存在が希薄化する一方で、人柱による人神への信仰が高まったと考えていた。しかし、今回調査した事例のなかには、水神やそれに値する川除大明神といった自然神と人柱を祀った神とが共存し、両者が補完的な関係に位置づけられているものがいくつかあった。人柱に立った者の霊が人神として祀られているというのは間違いではないだろうが、それまでの自然神との関係をより慎重に検討していく必要があろう。
著者
長坂 猛 田中 美智子
出版者
宮崎県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

目もとへの温罨法がスムーズな入眠に与える影響を日常生活の実験で調べた。実験には20代の22名に参加してもらい、睡眠中の心拍変動と体の動きを記録した。目覚めてからのアンケートにも答えてもらった。就寝前の10分間に、暖かいアイマスクを装着する条件と、何も装着しない(対照)の2条件を設定し、それぞれ別の日に参加者の自宅で実験した。入眠直後の心拍数は、どの条件でも減少した。交感神経活性は、暖かいアイマスクを装着したときに減少した。アンケートによる主観評価の一部に差が見られたのみで、入眠までの時間に統計的に有意な差は見られず、今回の結果からは、目もとの温罨法が入眠に効果があるとは言えない。
著者
玉野 春南
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

緑茶成分のテアニン摂取は、海馬歯状回の長期記憶と関係する神経新生を促進し、記憶の細胞レベルの分子基盤とされる長期増強(LTP)を増大させることを見出した。テアニン摂取による海馬依存性の記憶向上にはnon-NMDA受容体依存性のLTPの関与があり、海馬依存性長期記憶にはLTPの維持を基盤とすることが示された。一方で、記憶の獲得のみならず獲得した記憶の保持にも海馬神経細胞において細胞内Zn2+シグナリングが必要であることを明らかにした。さらに、細胞外Ca2+ではなく、細胞外Zn2+が過剰に流入すると、記憶獲得の障害だけでなく、保持されていた記憶もLTPの維持障害を介して消失することを明らかにした。
著者
金澤 忠博 井﨑 基博
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平均8歳の極・超低出生体重児220名のうち、自閉スペクトラム症(ASD)15.9%、注意欠如多動症(ADHD)が20.5%、限局性学習症(LD)が23.2%、知的障害は9.5%、境界知能は9.1%であった。重症のIVHとIUGR、CLD、ROPがIQを低下させ、重症のIVHは、ASD、ADH、LDの増悪にも関わり、IUGRもADHDやLDの発症に影響を与えていることが示された。一卵性双胎24組48名と二卵性双胎21組42名について、遺伝率と共有環境、非共有環境の寄与率を調べると、ASDや不注意に関しては遺伝率より周産期を含む共有環境の寄与率の方が大きいという特徴が確認された。
著者
程木 義邦 朴 虎東
出版者
茨城県霞ケ浦環境科学センター(湖沼環境研究室、大気・化学物質研究室)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

湖沼でアオコを形成するシアノバクテリアの多くの種がシアノトキシンと呼ばれる肝臓毒や神経毒を生産する株を含む。日本には神経毒を生産するシアノバクテリアCuspidothrix issatschenkoiが広く分布している。しかし、本種については、世界的にも研究事例が少ない。本年度は、一昨年度にゲノム完全長を決定した日本の湖沼から単離したCuspidothrix issatschenkoi RM-6に加え、琵琶湖、霞ヶ浦(西浦・北浦)など主要な湖沼から本種を単離している培養株から有毒株・無毒株を選抜しゲノム決定を試みた。また、ヨーロッパの湖沼から単離された本種2株について不完全帳ゲノムの情報が報告されている。これらの株の情報も含め、有毒株vs無毒株、日本株vsヨーロッパ株の機能遺伝子群の比較により、それぞれの株の環境特性を評価するとともに、本種にとっての窒素固定能やシアノトキシン生産能保有の適応的意義を議論した。その結果、RM-6株のゲノムから、47個のtRNA遺伝子および5セットのrRNA遺伝子を含む4,328個のコード配列(CDS)が確認された。ゲノムのG + C含量は37.7%でCRISPRの座位は12個検出された。また、二次代謝産物生合成遺伝子として、ホモアナトキシン-aのほかランチジン、シアノバクチン合成遺伝子が検出された。しかし、チェコ共和国で分離された株から報告されたカスペリン遺伝子は検出されなかった。また、RM-6のゲノムから多くのトランスポゾンに関する遺伝子が検出された。本種は、シアノトキシンの生産能だけでなく、ネンジュモ目の中では唯一、単一種内で窒素固定能を有する系統と欠損した系統がみられる。この様な遺伝的特性が本種の系統や生態型の多様性に関係していることが考えられた。
著者
波多野 敏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、フランス革命期以降の法システムを、社会契約論の再構成を通じた「社会」という観点から統一的に把握し、この「社会」の観念を基盤に、「意思」を持った「法的主体」が構成されることをあきらかにする。フランス革命期の「社会法」的な実践は、一般に考えられている以上に、新しい「社会」形成に不可欠の要素であったことを示し、19世紀末の「社会法」理論の系譜を革命期の理論にさかのぼって明らかにする。その上で、社会契約論とその再構成が18世紀末と19世紀末の二つの理論を結びつける鍵となっていることが示され、ヨーロッパ近代法の教義学的規範構造が明らかにされる。
著者
汐見 稔幸 志村 洋子 村上 博文 松永 静子 保坂 佳一 冨山 大士
出版者
白梅学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、乳児保育室の環境構成が子どもの行動に与える影響について、環境条件として空間構成と音に注目し、アクションリサーチ的手法を取り入れて調査した。その結果、部屋を単一空間から仕切られたより小さな空間にしたり、部屋から80dBを超える音を減らしたりすることによって、子どもが落ち着き、集中し、じっくり遊ぶようになることがわかった。
著者
沢田 啓吾 三木 康史 竹立 匡秀
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMPC)が分泌する組織再生誘導因子(Trophic因子)の中でも、特に三次元培養を行うことで増強される因子を同定する。また、それらのTrophic因子の発現に関与するシグナル経路について検討を加え、二次元培養環境でのADMPCにおいて同シグナル経路を増強することで、歯周組織構成細胞に如何なる影響を与えるのかについて検討する。本研究の成果により、従来の二次元培養環境でのADMPCのTrophic効果を増強する方法が明らかとなることで、ADMPC移植による歯周組織再生療法の有効性向上に繋がる貴重な情報が得られるものと期待される。
著者
杉山 政則 野田 正文
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯周病の主な原因菌はPorpyromonas gingivalisであり、本菌は毒素ジンジパインをくることで歯周組織を破壊する。予備的実験の結果, Aepergillus oryzae S-03株を脱脂大豆を用いて個体培養すると, 「毒素ジンジパイン」に対する阻害物質を産生することを発見した。 この度の本研究を通じて, 脱脂大豆を用いてA. oryzae S-03を培養し得られた麹由来のジンジパイン阻害剤の分子量は, 3, 000~10,000であり, クロロホルムや酢酸エチルには溶解しないが, 水には可溶であった。また, 100℃, 10 minの熱処理でも全く阻害活性は失われなかった。
著者
千島 隆司 石川 孝 林崎 良英
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

耳垢タイプはABCC11遺伝子多型によって決まることが知られている。一方、海外では耳垢タイプによって乳癌罹患率が異なるとの報告を認めている。本研究では、日本人女性における遺伝子多型(耳垢タイプ)と乳癌罹患率の関係について検討した。その結果、遺伝子多型が湿性耳垢の女性は、健常女性に比べて乳癌罹患率が1.63倍と有意に上昇していた。耳垢タイプは簡単なアンケートだけで判定できるため、高リスク女性に個別化検診を行うことで、効率的に早期乳癌を発見できる可能性が示された。
著者
佐藤 俊樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本年度は特に、(1)本研究プロジェクトの学術的成果をふまえて、社会学の従来の方法論と統計的因果推論などの最新の分析手法との連続性と非連続性を明確にして、因果推論の方法を社会学のなかに適切に位置づける、(2)それらをふまえて「量対質」の対立をこえた安定的な因果分析の枠組みを構築する、の二つを主な課題にして研究を進めた。特に研究成果を狭い範囲の専門家だけでなく、隣接諸分野の研究者や大学院生や学生なども読者層となる媒体に成果の一部や、それらをふまえたより実践的な考察を掲載することができ、より一般的な形での成果の発信・還元を進めることができた。佐藤俊樹「コトバの知と数量の知 百年のウロボロス」(『現代思想』20年9月号)では、マックス・ウェーバーの比較宗教社会学をとりあげて、それが適合的因果の方法論に厳密にしたがっており、それゆえ彼の社会学的研究全体もこの方法論を軸に体系的に整理できることを述べた。佐藤俊樹「知識と社会の過去と美来」(『図書』860,862,864号)では、新型コロナ感染症のパンデミックへの対応を主な事例にして、現代の社会と社会科学がどのような状況にあるのかを素描した。今回のパンデミックは大規模感染症がもつ確率的な事象という面に対して、社会が反省的な対応を迫られた最初の事例である。偽陽性と偽陰性が第二種の過誤と第一種の過誤の問題であるように、「知る」ということは科学的には確率的な推論であるが、社会の側ではそれを受け入れられない。そのずれは社会科学の内部にもその成立以来、ずっとありつづけおり、ウェーバーの方法論はそのずれへの反省的対処の最初の試みの一つにあたることを示した。