著者
佐藤 正知
出版者
広島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

瀬戸内海島嶼部や海域では特殊な電波伝搬が生じるために地上デジタル放送の視聴が難しい地域があり、これらの難視聴地域を解消するために瀬戸内海沿岸及び芸予諸島には多くの中継局が設置されているが解決には至っていない。また、近年では地上デジタルテレビ放送の高度化方式である4K・8K放送の地上波放送の技術開発が進められており、その要素技術の中に複数の中継局が協調して送信することで通信容量を向上させる方式が採用されている。本研究では、この中継局協調送信を通信品質の改善の用途に用いることで地上波テレビ放送を視聴可能な地域が拡大できることを示す。
著者
酒井 良忠
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

RA滑膜細胞ではミトコンドリア生合成が低下しており、その改善はRA滑膜細胞のアポトーシスを亢進させ、細胞増殖能およびMMP3/RANKL分泌を低下させた。CIAマウスへのAICARの投与は、手足の厚さ、関節炎スコアを有意に低下させ、滑膜炎症細胞浸潤、滑膜増殖、軟骨変性及び破骨細胞増勢を抑制し、骨破壊の抑制とともに、関節破壊抑制の効果をin vivoでも証明した。RA滑膜でのミトコンドリア低下は、炎症時のミトコンドリアのアポトーシスを低下させ、滑膜細胞の増殖を亢進させ、関節破壊の引き金となっている可能性があり、ミトコンドリアをターゲットにした治療の可能性が示唆された。
著者
平泉 隆房
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

西日本に鎮座する日吉神社・白山神社を網羅的に検出し、それら全てを国土地理院の地勢図・地形図上に確認した。すでに、東日本での作業から把握できたように、延喜式内社を名乗っていながら、中世や近世には白山さんとか日吉さんといわれ、白山信仰や日吉信仰の神社だったところをいくつも検出できた。また、山陰・南海・西海道のいづれにおいても、古代山岳信仰の拠点であった場所に、いつの間にか白山信仰や日吉信仰が入り込んでいる事例を探り当て、山岳信仰、延暦寺、日吉信仰が密接に連関していることも改めて立証できた。
著者
井川 輝美 渡辺 守
出版者
盛岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

昆虫の種数は100万種以上にも達し、陸上では他の生物を凌駕し繁栄している。しかし、海の昆虫は希で、外洋にはHalobates属に属する5種の昆虫しかいない。外洋性Halobatesは生態学上・進化生物学上極めて興味深い位置を占めているが、外洋での調査の困難さ故にその生態について分かっていることは少ない。本研究の目的は、日本近海の外洋性Halobatesの個体群調査を行いその生態を解明しようとしたものであり、研究成果の概要は以下の通りである。日本近海の研究調査航海に参加し、定量的採集調査を行った(参加航海:1999年7月三重大学練習船勢水丸99-09次航海、熊野灘〜東シナ海;1999年4月東京大学海洋研淡青丸99-07次航海、紀伊半島沖;2000年6月東京大学海洋研淡青丸KT00-08次航海、四国・九州沖;2001年5月東京大学海洋研淡青丸KT01-07次航海、東シナ海;2002年5月東京大学海洋研白鳳丸KH02-01次航海、東シナ海;2002年9月東京大学海洋研淡青丸KT02-13次航海、東シナ海)。これらの航海において日本近海で初めて、Halobatessの定量調査が行われた。調査海域ではH.micans, H.germanus, H.sericeusが確認された。3種のうち2種が比較的狭い海域に高密度に生息し、しかも、種構成が経時的に変化することが示された。2種が同じ海域で高密度に生息することが確認されたのは本調査海域が最初である。西岸境界流である強力な黒潮の流れが赤道付近に生息するH.micans、H.germanus 2種を北へ輸送し、3種の共存する特異的な海域が形成されたと考えられる。また、黒潮流域に形成される様々なサイズの渦がヘテロな環境を形成し、3種共存が可能となっていると推察される。種構成の経時的変化は、表面水温の季節・年次変動と季節風の影響と考えらる。
著者
榑沼 範久
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

京都学派の著名な哲学者である下村寅太郎(1902-1995)は、1973年の定年退職後も著述活動とは別に、自身の研究談話会「プリムツァール会」で広大な思索をテープに残していた。「真の著作遍歴は著作以外にあるとすらいえる」、「テープの存するかぎり潜在的著作と称してもよいであろう」とは下村自身の言である。だが、『下村寅太郎著作集』(1988-1999)の完結から20年以上が過ぎた現在でも、この「潜在的著作」は公刊されていない。入手可能で可聴状態にあるテープを文字化し、選択・編集・校閲を経て刊行を目指す本研究は、下村の未知の側面の発見にとどまらず、思想史研究にとって重要な学術資料の集成になるだろう。
著者
長谷 正人
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近年流行のドキュメンタリーバラエティ番組(アメリカでいうリアリティTV)は、「出演者」という問題を前景化したテレビ番組である。これが本研究のとりあえずの結論である。70年代までのテレビ番組は、「製作者」のものであった。いかに優れた番組が作られるかが人々にとって論じるべきことであり、出演者や視聴者は二次的な問題にすぎなかった。それに対して80年代に前景化されたのが「視聴者」の問題だった。「スチュワーデス物語」に代表されるように、製作者の意図とは距離を置いたところで、「視聴者」が解釈することによって番組のありようが決定される。そのような製作者と視聴者の微妙なずれでゲームが行われたのが80年代のテレビバラエティだった。これらに対して、『未来日記』や『あいのり』に代表される近年のドキュメンタリーバラエティ番組は、製作者の意図とも、視聴者の解釈とも違うところで、出演者がどのような役割を果たしているかが実験的に探求されたのである。メッセージの透明な伝達者ではなく、製作者の意図とも視聴者の欲望ともずれた不透明な身体を持った出演者。それはスターともアイドルともまったくちがう様態で私たちの社会に現れただろう。たとえば80年代のアイドルから90年代以降の女子アナへとテレビの主役が変わったことは、その典型的な徴候である。その出演者の不透明な身体からメディア社会の自閉性の向こう側を見通そうとしたのが、これらの番組だろう。しかしその自閉性は崩されないまま、テレビのシステムが出演者さえも飲み込んでしまったのが現代の状況である。
著者
末柄 豊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

①この間、新型コロナ感染症予防のために在宅での研究を余儀なくされたこともあり、各史料所蔵機関がWEB公開している史料画像について渉猟をすすめ、これまで利用できていなかった室町時代の記録典籍類の紙背文書として残された書状について少なからず検討をすすめることができた。特に、宮内庁書陵部所蔵三条西本および山科本や、龍谷大学図書館所蔵三条西本『源氏物語細流抄』の紙背文書などに見るべきものが多いことがわかり、判読および検討をすすめた。また、以前から紙背文書の存在は認識していたが、冊子として綴じられていることで披見が叶わなかった国立公文書館内閣文庫所蔵速水常房旧蔵甘露寺親長書写『公卿補任』3冊の紙背文書について、画像の公開がなされたため、その解読をおこなった。その結果、ほとんどが長享3年から延徳3年の3年間の文書からなっており、当該期の『親長卿記』の記載を相対化(何を記し、何を記さなかったのか、など)できる貴重な史料であることが明らかになった。②明治大学図書館所蔵の三条西本除目書2点の紙背文書について詳細に検討し、これまでにも指摘した三条西公条書写の除目書の紙背文書の特徴と一致することを確認した。あわせて、北陸・東海地方を中心に、各階層の武士をはじめ、多様な人士の書状が残っていることを確認し、特にこれまで書状を残していることが知られていなかった学僧一栢現震や伊予の武士今城能親の書状が存在していることを明らかにした。③大阪狭山市郷土資料館寄託の個人収集文書や、京都市龍安寺所蔵文書について調査・撮影を行った。
著者
星 周一郎
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成29年度は、(1)前年度の準備作業に基づき、平成27年に成立した改正個人情報保護法をめぐる議論を整理し、街頭設置カメラ映像の高精細化や、生体認証機能の備えられたカメラシステムについての法的規制の枠組みと、その法的根拠・許容限界に関する考察を行った。具体的には、個人識別や画像処理が容易に行いうるシステムの普及がみられることから、これを商用目的、あるいはマルチユースという形態で利用する場合を念頭に、匿名加工情報や統計情報としての利用を含めた、その許容限界について予備的な考察を加え、その結果を「街頭設置カメラ映像の商用利用に関する一考察」と題する論文で公表した。また、街頭設置カメラの防犯、捜査での利用がますます増加していることから、(1)生体認証機能を備えたカメラシステムの利用も含め、防犯という文脈での利用の許容性を、プライバシー概念との相関も踏まえつつ検討し、その成果を「犯罪の未然防止・再犯防止と情報の取扱いに関する覚書き」と題する論文、および「防犯カメラの高機能化と法的規制の新たな動向」と題する小論で公表した。また、(2)犯罪捜査や公判での立証といった、刑事司法における防犯カメラ、カメラ映像証拠の法的性質や許容限界について、近年普及が著しいドライブレコーダーの活用の是非という視点も含めて改めて包括的な検討を加え、「防犯カメラ・ドライブレコーダー等による撮影の許容性と犯罪捜査・刑事司法における適法性の判断」と題する論文において、その成果を向上した。さらに、生体認証機能を備えたカメラシステムについて、防犯目的等で利用の可否等について、さらなる検討を行うための前提として、情報共有の枠組みのあり方についての情報収集を行ったほか、英米における議論状況や関連動向に関して、情報収集を継続して行った。これらを踏まえて、計画最終年度である平成30年度の研究を進めることとしている。
著者
山本 八千代 竹元 仁美 松原 三智子 須藤 桃代 泉澤 真紀 笹尾 あゆみ 馬場 みちえ 秋鹿 都子 関口 史絵
出版者
安田女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

助産師の知識や認識等の現状を明らかにすることを目的とし、 2020年10月から12月に郵送による自記式質問紙調査を実施した。その結果241名の助産師有資格者から回答をえた。回答者の年代は20代から60代で、助産師の平均従事年数は15.3年であった。 過去5年以内に、妊娠期あるいは子育中の家族で、行政の「要支援対策協議会」や「養育訪問支援事業」の支援につながった事例との遭遇経験は、3例未満23.7%、3例以上5例未満8.3%、5例以上10例未満7.5%、10例以上16.2%であった。助産師の遭遇事例は少なくない。「虐待防止という観点から助産師教育を再検討するにあたり、全体的に助産師の能力が備わっているか」という問いには、①課題の少ない妊婦や家族の相談にかかわる技術及び、②支援を要する家族を発見する技術では、「まあまあある」、「ほぼ十分である」の回答が多かった。しかし、③未熟であったり、課題を抱える家族や、支援を要する家族とコミュニケーションをとる技術、④助産師が日頃から地域の中に入り、地域の人々とかかわる力、⑤メンタルヘルス問題のある親の育てにくさに寄り添う技術、⑥多職種・他部門との連携や調整する力では、その逆で、「大変不足している」「不足している」との回答が多かった。本結果から、助産師の虐待問題を抱える事例との遭遇は少なくないことと、発見や予防のための助産師の技術をさらに向上させる必要があることが明らかになった。特に、未熟であったり、課題を抱える家族とかかわる技術、支援を要する家族とコミュニケーションをとる技術、日頃から地域の中に入り、地域の人々とかかわる力、メンタルヘルス問題のある親の育てにくさに寄り添う技術、多職種・他部門との連携や調整する力などを高める必要がある。
著者
石綿 良三 田辺 基子 神谷 克政 根本 光正
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

多くの科学入門書、テレビ番組、インターネット情報などで流体力学現象の原理の誤認識が多く見られる。誤認識の拡散実態と拡散メカニズムを調査研究し、拡散防止策の提言を進めた。特に、拡散メカニズムには科学的要因だけではなく、著者や読者の理解とその心理、社会的背景等まで踏み込む必要があり、その追及を行った。(新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、研究の進行に制約を受けた。2020年度は当初の研究最終年度あったが、期間を1年間延長し2021年度に継続することになった。)小学校5年理科の教科書・参考書で「曲がる川では外側が速い」と記述されていることについて調査を進めた。厚木市近隣の実際の川における計測では、外側が速いか、遅いかは一概にはいえないことを確認した。しかし、内側に堆積している川では外側で速くなることが多く、教科書の記述に合うともいえる。だが、曲がることに外側を速くする効果があると認識させてしまうことは問題であり、大学で習う流体力学とは矛盾することになる。実際の川における計測はまだ不十分であるので、調査範囲を拡大するとともに文献調査を進める予定である。小学校5年理科の「曲がる川」に関するビデオ教材の調査を行った。それらの教材では、外側で速く、内側で遅く流れている川の映像、実験映像ばかりである。これは教育内容に則したものであり、当然の状況であるが、実際には一概に外側が速いわけではないので、一部の偏った情報のみが選択的に公開され、教育に利用されている可能性がある。この点についてさらなる調査を2021年度に行う予定である。なお、これまで行ってきた、理科教員、科学館スタッフ、科学ボランティア、大学・高専教員を対象にした研修会を実施することができなかった。流体力学に関する原理の理解状況、誤認識の実態調査を直接行えなかったので、この点については2021年度に継続することとした。
著者
飯島 睦美
出版者
明石工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

「英文読解ができない,英単語・英語例文が覚えられない」などの困難を抱える複数の学習者に行ったWAIS-Ⅲ(ウェクスラー成人知能検査)の結果を分析すると,共通して「処理速度,符号・記号,数唱」の能力が顕著に弱いということが観察できた。 こういった分析結果を「言語学習適性-音韻符号化能力,文法感覚,帰納的言語学習能力,暗記学習」の観点から考察し,英語学習の改善につながる具体的な指導法,および学習法を提案し,そして,英語学習に困難を感じる学習者には,どういった特性があるのかを明らかにした上で,さらにそういった特性を補って英語学習の改善につなげるための具体的指導法,学習法を提案することを試みた。
著者
下夷 美幸
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、離婚シングルマザーを対象にインタビュー調査を実施した。その結果、離婚届出に至るまでの過程で、離婚自体および離婚条件について、とくに、離婚後の子の養育費と面会交流について、十分な協議がなされていない実態が判明した。全体の研究を通して、未成年の子のいる夫婦の離婚において、子の権利を保障するためには、離婚前に親教育を徹底すること、離婚後の子の監護に関する協議について、調停の仕組みが利用できるようにすること、養育費を確保するための履行強制制度を導入することの必要性が明らかとなった。
著者
吉永 進一 GAITANIDIS IOA 大澤 絢子 荘 千慧 栗田 英彦 大道 晴香
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、第一に、終戦直後から1960年代までを中心として、インド、アディヤールにある神智学協会本部所蔵の資料や、戦後日本の神智学系の運動の調査を行い、神智学思想の伝播と流布についての通史を記述する。第二に、同時期の出版メディアの調査を通じて、神智学以外の西洋秘教思想の一般への流布を調べる。第三に、それら1960年代までの動きが、1970年代のオカルト流行とその後のニューエイジへの発展へどう発展し、あるいは断絶したかを検証する。
著者
高梨 琢磨 土原 和子 山崎 一夫 杉浦 真治
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

チョウ目の幼虫は、体表に存在する糸状の機械感覚子(以下、糸状感覚子)で音や気流を感知することが知られている。本課題において、この糸状感覚子の同定並びに比較を複数の分類群においておこなったところ、糸状感覚子を1)胸部にのみを持つ種、2)腹部にのみ持つ種、3)腹部と胸部の両方に持つ種、そして4)糸状感覚子を欠く種がみられた。感覚子の有無は、植物体内外での摂食(内部食や外部食)等の生活様式と捕食回避に関連していると考察した。
著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本列島では5世紀後半に西方起源と考えられる植物灰ガラスが突如出現し、6世紀にかけて大量に流通した。この時流入した植物灰ガラスは極めて多く、それまで流通の中心であったインド~東南アジア産のガラスに匹敵する。すなわち、日本列島への植物灰ガラスの大量流入は、交易ルートの中心が海路から陸路へ転換したことを示唆する。一方で、日本で出土する植物灰ガラスは、西アジア産の典型的な植物灰ガラスとは化学組成の特徴がやや異なる。本研究では、日本で出土する植物灰ガラスの具体的な生産地は一体どこなのか、そして、どのようなルートで流入したのか、という問題について同位体分析や超微量成分分析から明らかにする。
著者
北野 信彦 窪寺 茂
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

建築文化財の外観塗装材料や色調は、建造物自体のイメージを大きく左右する。そのため、この基礎調査は塗装修理を行う際にも大切である。本研究では、(1)個々の建造物の外観塗装材料の性質や色相、変遷に関する調査を行った。その結果、多用されたベンガラ塗装や漆塗装では時と場所に応じた塗装材料の使い分けが行われていたことが明確になった。そして、伝統的材料や技法を生かした新塗料開発の可能性も手板作成などを通してわかってきた。
著者
酒井 智宏
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、言語表現の意味(に関する知識)が外的環境に依存するとする意味論的外在主義と、言語表現の多義性が個人の心の中にネットワークの形で表象されるとする語用論的調整の考え方を統合することである。ごくわずかな例外を除き、哲学では外在主義が当然視され、逆に言語学では内在主義が当然視されてきた。本研究は、正反対に見える二つの立場がそれぞれの領域で当然視される理由・経緯をいかなる論点先取も犯すことなく追究し、「内在主義を出発点としない内在主義」と「外在主義を出発点としない外在主義」がそれぞれどこまで可能であるかを見定め、どの立場に立ったとしても有効な意味論を構築する。
著者
有賀 誠 松元 雅和 伊藤 恭彦 上原 賢司 施 光恒 田上 孝一 松井 暁
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

現代世界は、不可避的にグローバル化が進む世界である。そうした流れの中で、国民国家という枠組みでは解くことのできない環境問題等の課題が数多く出現している。このとき注目されるのは、「コスモポリタニズム」という歴史ある思想である。本研究は、「コスモポリタニズム」を、現代的な課題に応答可能なものとしてアップデートすることを目指している。
著者
小黒 一正
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、勤労世代と引退世代との間の政治的な力関係により、将来の成長を促す政府投資(例:科学技術・研究開発)と公的年金の配分割合が変化する「世代重複モデル」を構築し、「余命投票方式」への移行可能性の分析を行った。その結果、次のことが明らかとなった。まず、人口動態が変化する状況の下での「選挙制度」の重要性や、「余命投票方式への移行可能性」である。また、一定条件の下、「現行の投票方式」から「余命投票方式+地域別選挙区」や「余命投票方式+年齢別選挙区」に移行可能であることも分かった。
著者
本田 ゆかり 投野 由紀夫 野口 芙美
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

JFスタンダードは国際交流基金によって開発されたCEFRに基づく評価基準である。現在、その準拠教材開発と普及が進められている。JFスタンダードに基づく教育では、コミュニケーション能力を到達基準として能力記述文に沿った指導が行われるが、言語機能が優先され、どのような語彙や表現に注目すべきかというような点が曖昧になりやすい。そこで本研究では、タスク遂行に必要な語彙や表現を体系的に示すとともに語彙項目の重要度を明らかにしたい。能力記述文に紐づく語彙や表現の中でも学習優先度を意識し、過剰な重複や見落としを避けることができれば、効率よく学習を進めることができる。