著者
玉田 芳史 河原 祐馬 木村 幹 岡本 正明 横山 豪志 滝田 豪 左右田 直規
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は民主化以後に登場した新しいタイプの指導者について、(1)その登場の背景ならびに(2)登場が民主化に与える影響について分析した。具体的に取り上げたのは、韓国の盧武鉉大統領、中国の胡錦涛国家主席、タイのタックシン首相、マレーシアの与党青年部副部長カイリー、インドネシアのユドヨノ大統領とゴロンタロ州知事ファデル、インドのインド人民党(BJP)、ロシアのプーチンである。(1)背景 (a)民主化に伴い指導者が選挙を通じて選ばれるようになったことが新しいタイプの指導者の登場を可能にした。(b)1990年代に政治経済の激動を経験し(経済危機、長期政権の崩壊)、国民が危機からの脱却を可能にしてくれる強い指導者を待望した。(c)既存の政党組織よりも、個人的な人気によって、支持を調達している(自由で公平な選挙が実施されているとはいえない中国とマレーシアは例外)。(d)指導者は国民に直接訴えた。危機で傷ついた国民の自尊心の回復、危機の打撃を受けた経済再生とりわけ弱者の救済をスローガンとした。このいわゆるポピュリズムの側面は中国やインドにも共通していた。(c)(d)双方の背景には、放送メディアやインターネットの積極的な活用が宣伝を容易にしたという事情があった。2 影響 (a)強い指導力を発揮できた事例とそうではない事例がある。韓国とインドネシアでは期待外れに終わり、タイとロシアでは期待通りとなった。(b)強い指導力を制度化できるかどうかに違いが見られた。プーチンは成功したものの、タイでは強い指導者の登場を嫌う伝統的エリートの意向を受けたクーデタで民主主義が否定された。
著者
松久 寛 西原 修 本田 善久 柴田 俊忍 佐藤 進
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

スキ-時の人体の上下運動に関してはひざをリンク機構、筋肉を収縮要素、それと直列につながる弾性要素、並列の減衰要素で模擬した。ひざは大きく曲げる程ばねが柔らかくなるリンク機構による幾何学的非線形性を持ち、筋肉はばねと減衰からなる受動的なダンパ-としての役割と収縮による能動的な運動を行う。動特性としてはひざを深く曲げる程緩衝効果は大きくなるが、筋肉にかかる荷重は大きくなる。能動的に立ち上がる場合は立ち上がりの前半に雪面への押し付け力が増加し、後半に減少する。この雪面押し付け力の増加減少をタイミングより利用することによって、雪面の凸凹による体の不安体を安定化することができる。またスキ-板をはりとして、足首で力とモ-メントが働くとして人体とスキ-板の連成振動の解析モデルを作成した。ここで、人体の動きとスキ-板の形状、剛性などとタ-ンの関係が明らかになった。テニスに関してはボ-ルを一つの質点と一つのばね、ラケットを弾性はり、ガット面を一つのばね、腕を回転とねじり方向各3自由度のばね・質点系でモデル化した。ここで、腕のモデル化においては、腕をインパルス加振したときの各部の回転角加速度を計測し、時系列デ-タの最小自乗法によって各係数を同定した。そして数値計算によって、ボ-ルの飛距離、腕にかかる衝撃力の関係を明らかにした。また、ラケットの特性、すなわち曲げ剛さや、ガットのはり具合の影響についても検討し、このモデルがほぼ妥当なものであることがわかった。また、ラケットの構造の変化、すなわち重心位置とボ-ルの飛距離や手にかかる衝撃力の関係についても検討した。これらの研究により、人体の力学モデルの作製法およびスポ-ツ用具の解析法が確立されたので、これらを組み合わせることにより、人体の運動時の動特性、特に関節にかかる応力等を求める手法が得られた。
著者
永井 和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度から倉富日記の一部翻刻を進めてきたが、1919年〜21年までの日記についてはすでに翻刻が終わっており、一部を下記Webサイトにて限定公開した。本報告書には、その一部(1920年の1月1日から7月9日まで)を印刷掲載した。翻刻した倉富日記は図書として2009年から公刊する予定であり、すでに国書刊行会との間で出版契約が成立している。倉富家の御遺族からも刊行について内諾を得た。印刷刊行が決まったので、Webサイトでの翻刻日記の限定公開は中途で停止した。研究成果としては、まず第一に、東京控訴院検事長時代の倉富日記を材料に、日比谷焼打事件裁判における検察当局と司法省の動向を明らかにしたことがあげられる。これは、日比谷焼打事件の研究において従来まったく不明とされてきた問題であり、一次資料を用いてはじめて解明したものである。また、倉富の伝記的研究としては、韓国政府顧問として渡韓するにいたった事情のうち、Push要因というべきものを、ほぼ完壁に明らかにすることができた。これについては、先行学説がすでに存在している(平沼・三谷説)が、それを一次資料を用いて裏づけるとともに、その経緯をさらに詳細に明らかにした点で意義がある。第二の成果は、田中義一内閣時代の朝鮮総督府官制改定問題を分析することで、天皇・内閣総理大臣・朝鮮総督三者の権力関係について厳密な考察をおこない。朝鮮総督は各省大臣と同格の存在として内閣の外部に位置づけられていたが、同時に内閣総理大臣のもつ機務奏宣権によって、その行政統制権のもとにおかれていたことを明らかにした。なお研究計画では、日記の翻刻とあわせて、1920年代の宮中問題の研究を主とする予定であったが、同時並行させていた倉富勇三郎と植民地朝鮮の研究(国際日本文化研究センター松田利彦准教授主宰の共同研究「日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚」での分担テーマ)に時間をとられ、宮中問題については具体的な成果を発表するまでにいたらなかった、しかし、すでに研究は進んでいるので、しかるべき時に追加発表する予定である。
著者
山邊 時雄 田中 一義
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

本研究は、特異な磁気物性、特に強磁性あるいは反強磁性を示す有機高分子の分子設計ならびに電子状態の理論的解明などを目的として実施したもので、その研究実績の概要は以下のようである。(1)安定な強磁性有機高分子として期待できるポリ(m-アニリン)の分子設計を行い、併せてその電子状態、特にスピン状態の解析を非制限ハートリー・フォック法に法づく結晶軌道法によって行った。その結果、本ポリマーの適当な酸化により、主として窒素原子上に強磁性的スピン相関を示す電子状態をとりうることが明らかとなった。またポリマー鎖中のフェニル基への適当な置換基導入により、スピン状態の制御を行いうることも明らかとなった。(2)有機強磁性体としての潜在的可能性を有する、何種類かのポリ(フェニルニトレン)の電子状態および磁気的性質についての解析俎、非制限ハートリー・フォック法に基づく結晶軌道法によって行った。その結果、π性スピンはベンゼン環中をスピン分極を伴いながら非局在化しており、長距離磁気的秩序配列が可能であることが明らかとなった。一方、σスピンは1価の窒素上に比較的局在化していることも明らかとなった。以上により、ポリ(フェニルニトレン)はポリ(mーフェニルカルベン)と同様に、強磁性ポリマーの有効な候補でありうることが結論された。(3)3回対称性を有する非ケクレ有機分子に対して、非経験的分子軌道法を用いてその高スピン状態の理論的解析を行った。1,3,5ートリメチレンベンゼン及び1,3,5ートリアミノベンゼンのトリカチオンは、ほぼ縮退した3つの非結合軌道を持ち、4重項状態はヤーン・テラー変形した2重項状態より安定で、基底4重項であることが明らかとなった。これは別途得られている実験結果ともよく一致している。
著者
山邊 時雄 立花 明知 田中 一義
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究において実施したものは以下に記するように、実験の部と理論の部に大別される。その大要と実績を併せて記載する。1.本研究における実験の部では、熱処理法・熱CVD法および有機合成法によって種々の有機磁性体材料を調製し、併せてそれらの磁気物性を中心とする固体物性の測定・解析を行った。まず熱処理法で調製したアルキレン・アロマティック系樹脂の磁気物性として、3重項以上のスピン配列を示すことが磁化曲線ならびに電子スピン共鳴の測定より得られた。これらのことより、部分的ではあるが強磁性的なスピン相関が現われることが結論づけられた。さらに熱CVD法によりアダマンタンを炭素化させた材料では、より明確な強磁性的スピン相関の存在が結論づけられ、超常磁性との関係の議論も行っている。なおポリ(mーアニソン)については以下の部であわせて述べる。2.上記の実験的研究と並行して,理論の部では強磁性的スピン配列を示す高分子材料の分子設計・磁気的性質の予測などを実施した。計算法としては非制限的ハ-トレ-・フォック法に基く結晶軌道法解析プログラムを新たに開発した。これによりポリ(mーフェニルカルベン)の強磁性発現が確認された。さらに強磁性を示すと期待できるポリジフェニルカルベンのスタッキング配向性,ポリパラシクロファンの強磁性発現の可能性などについての解析も実施し、特に前者では特別な配向ピッチ角において単量体間の強磁性的相互作用が、発現することが明らかとなり分子設計上、有用な示唆を与えた。一方、ポリ(mーアニソン)の酸化あるいは脱水素状態が強磁性を有することを新たに予測し、あわせてこの高分子の実際の合成を開始し、所期の物質を得ることに成功した。その磁気物性の測定もあわせて実施しており、この高分子において特異的な強磁性相関の存在することを明らかにした。
著者
尾形 幸生 作花 哲夫 深見 一弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

電気化学的に生成する多孔質シリコンの構造発現を統一的に把握するために諸条件下で生成する微細構造を詳細に検討し、以下の成果を得た。(1) マクロ孔形成は独立した事象として考えるのではなく、他の構造を含んだ多孔質構造形成として統一的な視点で取り扱わねばならないことを明らかにした。(2)ルゲート型多孔質シリコンのセンサー応用の可能性を示し、電気化学手法による微細構造制御による光学特性の向上の可能性を示した。
著者
廣海 啓太郎 赤坂 一之 三井 幸雄 太田 隆久 三浦 謹一郎 石井 信一
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本報告中では、SSIは「放線菌のズブチリシンインヒビタ-」を、SMPIは「放線菌の金属プロテア-ゼインヒビタ-」を表す。SSIが放線菌金属プロテア-ゼSGMPA及びSGMPBを強く阻害することを見出し、新規蛍光性基質を用いて阻害物質定数を決定した(石井)。遺伝子工学的手法を用いてSSIの種々のアミノ酸残基を置換し、これら変異体の特性ならびにSSI遺伝子発現系の特性を明らかにした(三浦)。SSIに対するモノクロ-ナル抗体の作成を試み、数種のIgG1及びIgM産生クロ-ンを確立し、NMRによるエピト-プ解析を行った(荒田)。シンクロトロン放射光を用いてSSI及び変異型SSIとズブチリシンとの複合体の結晶のX線回折デ-タの収集に成功し、これに基づく構造精密化を行った(三井)。耐熱性プロテア-ゼ、アクアライシンI、の遺伝子の全塩基配列を決定し、大腸菌中で発現させ、本酵素の構造と機能を解析した。(太田)。クロ-ン化した遺伝子を用いるSMPIの生産において、菌体外分泌生産量を増大する条件を検討した(高橋)。蛋白質についての安定同位体利用NMR法を確立し、部位特異的アミノ酸置換がSSIの高次構造に及ぼす効果を解析した(甲斐荘)。SSI変異体につき重水素NMR法により分子構造の「ゆらぎ」を解析した(赤坂)。SH/SS化合物の電気化学的微量分析法を確立した(千田)。SSI変異体とズブチリン及びSMPPIとサ-モリシンの相互作用を平衡論的・速度論的に解析した(廣海・外村)。海洋細菌から新規ペプチド性セリンプロテア-ゼインヒビタ-、マリノスタチンD、を単離し一次構造を決定した(原)。ペプスタチン非感受性の酸性プロテア-ゼの新規インヒビタ-、チロスタチン、を単離し一次構造を決定した(小田)。好熱菌から単離した新規耐熱性酸性プロテア-ゼの特徴ある性質と極めて高い基質特異性を明らかにした(村尾)。
著者
デル ペッシェ ラウラ
出版者
京都大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:03897508)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.123-159, 1997-03-31
著者
豊原 治彦 三上 文三 鈴木 徹 井上 広滋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

貝殻は炭酸カルシウムを主成分とする鉱物であるが、炭酸カルシウムの単純結晶である方解石やあられ石とはことなり、5%程度の有機物を含んでいる.貝殻形成の分子機構については長く不明のままであったが、本研究においては、申請者はマガキを用いて、貝殻中に新たに申請者らによって見出されたクモ糸様タンパク質の貝殻形成における機能ならびにこのタンパク質の産業応用について研究を行い、ナノテクノロジーや水質浄化剤への貝殻の応用の可能性を提示した.
著者
島田 真杉 川島 昭夫 川島 昭夫 島田 真杉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

従来、Lucile Brockwayの研究に代表されるように、19世紀後半から20世紀初にかけての帝国主義時代について論議されることの多かった、イギリスの帝国拡大と植物資源の確保をめぐる政策を、18世紀半ば以降の重商主義時代に原型を見出そうとしたのが本研究の目的である。われわれは特に西インド諸島におけるイギリスによる植物園の設立の動機と経緯に注目し、その企図と構想が、イギリス本国における、ロンドン勧業協会の経済的活動に対する一連の奨励策の実施の中で発案されたものであることを確認した。さらにジャマイカにおける植物園設立の背景には、北米大陸のイギリス植民地の独立運動への傾斜の中で、食糧自給の要にせまられたプランテーション経営者の奴隷主たちの従来のモノカルチュアから多角化、新作物導入の必要の認識があったことを明らかにした。とりわけその理論的指導者Edward Longとジャマイカ植物園との関与はブリティッシュ・ライブラリ蔵Dancer MSSの文書で検証しうる。
著者
須田 千里
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本近代文学館所蔵の芥川龍之介文庫の和漢書465点1822冊と、葛巻義敏寄贈本4点の書き込みを調査した結果、芥川によると考えられる書き込み36点、その他何らかの書き込みのあるもの93点、頁の折られた箇所(または折り跡)のあるもの290点があることをを明らかにした。芥川の書き込みや判明した材源については論文として発表、または紹介した。また、『破邪叢書』第一集が『るしへる』の、『日本に於ける公教会の復活前篇』が『じゆりあの・吉助』『おぎん』『黒衣聖母』の、それぞれ材源となっていることを明らかにした。
著者
西川 元也 高倉 喜信
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

細胞を利用した治療法の効果増強を目的に、体外から投与した細胞の体内動態を精密に制御することのできる新規方法の開発を試みた。前年度までに確立した細胞の体内動態評価システムを用い、マウス線維芽細胞株NIH3T3の体内動態に及ぼす各種処置の影響について定量的に評価した。まず、投与経路・部位の影響について評価するために、細胞懸濁液を種々の臓器に注入し、その後の体内動態を経時的に追跡した。その結果、細胞の体内動態ならびに生存期間は投与部位に大きく依存することが示され、中でも脂肪組織や骨格筋に投与した場合に長期間生存することが明らかとなった。一方、マウスの全層皮膚欠損に対する細胞治療を目的とした検討では、NIH3T3細胞を損傷皮膚表面に滴下、あるいは近傍に皮内注射した場合には非常に速やかに消失した。また、GFPトランスジェニックマウス由来骨髄細胞を用いて同様の検討を行ったところ、骨髄細胞でも同様の傾向が認められた。このとき、静脈内投与でも損傷部位への集積が観察され、損傷が速やかに修復する傾向も認められた。組織内に注射により投与した場合には、投与された細胞近傍では血流が乏しく、酸素供給が不十分である可能性がある。低酸素条件下においては、低酸素誘導性因子HIF-1の安定化が生じたり、活性酸素生成が亢進することが報告されている。そこで、酸化ストレスの抑制を目的に、過酸化水素を消去するカタラーゼで細胞を処理したところ、移植後の残存細胞数が有意に増加した。従って、移植細胞の急激な消失を抑制するには、カタラーゼ誘導体などにより酸化ストレスを抑制することが有望であることが示された。
著者
野村 慎一郎
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,環境条件による相分離を利用した新規リポソームDDS(薬剤送達システム)の開発である.研究代表者はリポソーム内で無細胞タンパク質合成を行わせることにより,目的のタンパク質のみを発現させたリポソームが構築可能であることを示してきている.最近,細胞間で相互の物質輸送を担う膜タンパク質・コネキシンをリポソーム膜に発現・提示しうるとの実験結果を得た.この結果を利用し,細胞へのDDSへの利用可能性を求めた.サイズおよび組成の異なるリポソーム環境で膜タンパク質を組み込み,培養細胞に水溶性蛍光色素を非破壊的に輸送することに成功した.またペプチド薬剤をモデルとして細胞内に輸送し,細胞内の遺伝子発現の制御が可能であること,異なるタイプのコネキシンの発現により標的選択性が得られることを示した.
著者
藤井 讓治 杣田 善雄 中野 等 早島 大祐 福田 千鶴 堀 新 松澤 克行 横田 冬彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、織豊期の主要人物、織田信長・豊臣秀吉・豊臣秀次・徳川家康・足利義昭・柴田勝家・丹羽長秀・明智光秀・細川藤孝・前田利家・毛利輝元・上杉景勝・伊達政宗・石田三成・浅野長政・福島正則・片桐且元・近衛前久・近衛信尹・西笑承兌・大政所・浅井茶茶・孝蔵主について、その居所と行動を、当時の日記と厖大に残されている多くは無年紀の書状をもちいて確定したものである。その成果は、この期の政治史・文化史研究の基礎研究として大きな意味をもつ
著者
中野 実
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

脂質ナノディスクの構造とダイナミクス脂質ナノディスクはリン脂質とアポリポタンパク質A-Iとの複合体であり、生体内で見られる新生HDLと同じ構造をもち、薬物のキャリアとしての応用も検討されているナノ粒子である。dimyristoylphosphatidylcholine(DMPC)を構成脂質とするナノディスクについて中性子小角散乱及び栄光法によって構造評価を行ったところ、ナノディスク中のDMPCはベシクル中に比べ、密に充填されていることが明らかになった。脂質のナノディスク間移動速度をTR-SANSによって評価したところ、ベシクル間移動よりも約40倍も促進されており、しかもエントロピーの増加を伴うことが判明した。すなわち、脂質の高密度の充填が、膜のエントロピーの低下をもたらし、脂質の膜解離プロセスを有利にすることが明らかとなった。脂質ナノディスクの構造変化Palmitoyloleoylphosphatidylcholine(POPC)のような不飽和リン脂質でナノディスクを調製すると、脂質/タンパク質比に応じて大きさの異なる3種類の粒子(流体力学的直径9.5-9.6nm、8.8-9.0nm、7.8-7.9nm)が得られることが判明した。小さい2種類のナノティスクはDMPCなの飽和リン脂質膜や、コレステロールを高濃度含む膜からは生成しなかった。Dipyrenyl-PCのエキシマー蛍光とdansyl-PEの蛍光寿命から、小さい粒子では大きい粒子に比べ、アシル鎖領域の側方圧の減小と脂質頭部付近のパッキングの上昇が生じていることが判明した。これらの結果より、大きい(9.5nm)ナノディスクの脂質二重層は平面構造をとるのに対し、小さいナノディスクでは鞍状曲面を形成することが明らかとなった。
著者
熊田 孝恒 丸山 隆志 岩木 直 田村 学 川俣 貴一 村垣 善浩
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

人間の認知機能では、前頭葉から脳のより低次の領野に対するトップダウンのコントロールによって、低次領野における情報処理の調節が行われている。この研究では、トップダウンの情報処理の基盤としての前頭葉の機能を、特に、前頭葉機能の中心である「知能」の側面に着目して明らかにした。知能を構成する3つの要因である、更新、移動、抑制の機能には脳内の異なるネットワークが関与していることがわかった。
著者
櫻谷 英治
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

これまでに、アラキドン酸(AA)の工業生産糸状菌であるMortierella alpina IS-4の形質転換系を構築し(平成16年度本研究課題)、高度不飽和脂肪酸生合成に関わる遺伝子の過剰発現と遺伝子発現抑制により、高度不飽和脂肪酸の生産性向上の可能性を示した(平成17年度本研究課題)。本年度では、脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子の発現抑制とω3脂肪酸不飽和化酵素(ω3DS)遺伝子の過剰発現を行い、高度不飽和脂肪酸の組成を大きく変えることに成功した。1.M.alpina 1S-4の脂肪酸鎖長延長酵素(MAELO)遺伝子は、他の脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子と相同性が高いものの、その機能は明らかでなかった。そこでRNAi法により本遺伝子の発現抑制を行ったところ、炭素鎖長22以上の飽和脂肪酸が検出されなかったことから、本酵素遺伝子は主に超長鎖飽和脂肪酸の生合成に関与していることが示唆された。炭素鎖長20以上の超長鎖飽和脂肪酸は高度不飽和脂肪酸生成過程の不必要物質である。グルコースを炭素源とした培地で培養すると、野生株で超長鎖飽和脂肪酸は培養日数と共にその割合が増加し、培養14日目には総脂肪酸の8%に達する。一方で、MAELO-RNAi形質転換株では、超長鎖飽和脂肪酸は培養14日目でも検出されなかった。以上より、MAELO遺伝子発現抑制により超長鎖脂肪酸を含まないAA生産を示すことができた。2.AAをエイコサペンタエン酸(EPA)に変換するω3DS遺伝子を本菌株で過剰発現させ、EPAの生産量を増加させることに成功した。野生株のEPAは総脂肪酸当たり8%蓄積するのに対して、ω3DS遺伝子過剰発現株では32%となったことから、EPAの生産を4倍増加させることができた。このようにある特定の遺伝子の過剰発現により、高度不飽和脂肪酸の生産性を向上できることを示した。
著者
宮内 弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本プロジェクトではフィリップ・ラーキンの草稿をイギリスのハル大学内のラーキン資料室で調査し、単語、統語法、詩的形式などの分析を通して、彼の詩作品の文体的特色を明らかにしようと試みた。とりわけ韻に関して細心の注意を払いながら、押韻のパターンが詩のテーマとどう関わっているかを実例を示しながら考察した。また彼の韻をイェイツ、オーデン、ヒーニーなどの他の現代詩人のものと比較しながら、ラーキンが詩の話者のさまざまな感情を伝えるために、不完全韻を含む韻の可能性を最大限追求していることを論じた。さらにテクストの内部構造を明らかにしたうえで、これまでの分析を考慮に入れ、より広い観点から作品の解釈を行った。以上の研究を次の二つの研究論文にまとめて発表した。まず「ラーキン詩における文体的特質ー『教会に行く』と『ビル』における迂言的表現と韻を巡って」『京都大学文学部紀要』第44号85-108ページ(2005年)ではラーキンの文体的特質の一つである迂言的表現と韻に焦点を合わせ、両者の役割を、互いに関連を持つ「教会に行く」と「ビル」の二つの詩において論じる。次の「ラーキンのエレジーと死に関わる詩をめぐって」『京都大学文学部紀要』第45号1-26ページ(2006年)では,これまで充分論じられてこなかった、エレジーと死に関する詩を選んで、基底に流れているさまざまなレベルの二重構造を明らかにし、それに絡めて形式と内容の関係を論じている。イェイツに関しては彼が死の前年の1938年に滞在したフランスのMentonとRoquebruneで書いた作品を調査した。
著者
石橋 明浩
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

時空特異点の波動によるプローブによって、特異点は波動に対して正則、非正則の二つに分類される。もしダイナミカルなブロセスで非正則な裸の特異点が現れる様な状況は、宇宙検閲官仮説に法って、排除されることが望ましい。このような非正則な裸の特異点発生の排除が、量子効果を考えることで達成され得ることを簡単なモデルにおいて、具体的に量子粒子の計算をして、示した。(A.Ishibashi and A.Hosoya)我々の4次元宇宙が、高次元の反-de Sitter時空の中にあるブレーンとして記述される、いわゆるブレイン宇宙シナリオが近年、盛んに議論されている。このシナリオでは、5次元方向に運動しているダイナミカルな4次元ブレーンの振舞いを議論することが本質的に重要である。このシナリオは、これまでのところ通常の4次元一般相対論に基づく重力理諭と整合している。我々は、この5次元方向の存在が顕著な役割を果たすブレイン宇宙の新しいモデルを提案した。その特徴は、まずRandall-Sundrum modelと違って、はじめに5次元バルク時空は反-de Sitter時空である必要はない。bulk時空で真空泡発生、その膨張とブレーンと衝突する事によって、ブレイン宇宙の有効宇宙項が消え、ブレーン上のンフレーションが終り、ビッグバン宇宙に転じることができる。同時にバルクが反-de Sitter時空になるため、通常の4次元一般相対論的重力が再現されることになる。特に、通常の4次元での真空泡に因るインフレーションの終了と違い、ホライズンスケールを越えて、同時に4次元宇宙が再加熱される。この様に、ブレーン宇宙とバルク内部の真空泡や、別のブレーンとの衝突を用いて我々の4次元ビッグバン宇宙モデルを再現しようとする幾つかのモデルが最近提案されてきた。上述した我々のモデルの紹介とともにその他のブレーンの衝突を用いた理論についてレポートした。(U.Gen, A.Ishibashi, T.Tanaka)また、ブレーンの様な物体が重力とどの様な相互作用をするのかについて、4次元の場合には、線形摂動の範疇でブレーンの揺らぎの自由度が、その自己重力を考慮すると、周りの重力波摂動の自由度で記述されるという、ブレーンのダイナミクスについての、これまでの素朴な予想とは非常に異なる結論がえられていた。我々は、この現象は、一般の次元で起こることを示すとともに、この一見この矛盾する様な現象は、ある状況下では解消することを示した。即ち、我々の提案した、弱い自己重力近似の状況かでは、自己重力を考慮したダイナミクスは、考慮しないテストブレーン近似による運動の解析によって得ることができることを示した。(A. Ishibashi, T. Tanaka)また、ブレーンの様に拡がりをもつ物体と、同じく拡がりをもつ相対論的物体であるブラックホールとの相互作用は非常に興味深い。我々は数値計算の方法を用いて、この二つの物体の共存する静的な時空解が存在することを示し、相互作用について議論した。(R.Morisawa et al.)
著者
畑 信吾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

PCR法を用いてミヤコグサ菌根cDNAライブラリーから単離した3種類のリン酸トランスポーター遺伝子のうち、LjPT3が菌根特異的に発現していることをリアルタイムRT-PCRで確認した。次いで、in situ hybridizationによってLjPT3 mRNAは菌根菌の樹枝状体を含む皮層細胞に局在することを見いだした。また、高親和性リン酸輸送体を欠損した酵母PAM2変異株にLjPT3を発現させたところ、菌体内へのリン酸取り込みが上昇したので、LjPT3には確かにリン酸輸送能があることが証明された。さらにLjPT3の役割を明らかにするため、毛状根形質転換によってRNAiコンストラクトをミヤコグサに導入した。菌根菌を接種して低リン酸濃度で対照との生育を比較したところ、LjPT3ノックダウン形質転換体では樹枝状体付近にリン酸が蓄積して吸収がスムーズに行われない結果、対照よりも生育が有意に劣っていた。共生時における菌根菌の発達をさらに詳しく観察したところ、LjPT3ノックダウン形質転換体では対照に比べて樹枝状体の数が半分近くに減少する一方、idioblast細胞(褐色のフェノール化合物を液胞に蓄積し防御応答に関与すると思われる植物細胞)や菌糸侵入地点が2倍近くに増加していた。この結果から、植物は菌根菌由来のリン酸吸収量を監視しており、能率の悪い菌根菌を排除して新たな共生関係を模索することが示唆された。次にノックダウン形質転換体に菌根菌と根粒菌を同時に接種したところ、ネクローシスを起こして早死した根粒が多数観察された。これは、宿主植物が低能率だと認識した菌根菌への攻撃を行う際に、根粒菌もそのあおりを食ったために起こった現象だと思われた。