著者
川崎 真弘 米田 英嗣 村井 俊哉 船曳 康子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.33, 2014 (Released:2014-10-05)

発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較し、発達障害の方略の違いを調べた。PCディスプレイ上に呈示された人の両手のうち一方がタッピング動作をし、被験者はその動作と同じ手でタッピングをすることが要求された。方略の聞き取り調査より、定型発達者の多くが視点取得の方略を取るのに対して、発達障害群の多くは逆に心的回転の方略をとった。その方略の違いは発達障害のスケールと有意に相関した。また発達障害者は定型発達者とは異なり、自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意にパフォーマンスが悪化した。今後の課題として同時に計測した脳波・光トポグラフィの結果を合わせて発達障害の方略の違いに起因する脳ネットワークを明らかにすることを目指す。
著者
中垣 辰徳 松田 憲 楠見 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.144, 2012 (Released:2012-07-20)

Matsuda, Nakagaki & Kusumi(2011)は,仮想空間におけるアバターの印象形成に背景情報の情動価及び,刺激の反復呈示が及ぼす影響について検討した。本研究では背景の情動情報を順序と提示する組み合わせによって操作することで,アバターの印象形成に,Aronson & Linder (1965)の示した,与えられる情報の変化によって印象形成に影響を与える,ゲイン・ロス効果 が現れるかの検討を行った。背景情報の変化からより良い印象をアバターが得ることができれば,仮想空間上でであったアバターと交流を始めるかどうかの判断に影響すると考えられる。参加者には学習段階としてアバターと背景の一致不一致評定を課し,評定段階ではアバターのみを呈示した上で好意度,教育水準,信頼度を7段階で評定させた。その結果,教育水準評定において条件間で,背景快→不快条件のほうが背景快→快条件よりも評定値が高く,ゲイン効果とは逆の影響がみられた 。
著者
瀧川 真也 仲 真紀子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-73, 2011-08-31 (Released:2011-09-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は,音楽により喚起される懐かしさ感情が自伝的記憶の想起に及ぼす影響を検討することであった.参加者は大学生57名であり,小学校高学年時と中学校時の記憶,および小学校高学年時に聴いていた音楽の記述を求めた.1カ月後,参加者に,画面に提示されたエピソードが参加者の小学校と中学校のどちらの記憶かを判断させ,その反応時間を測定した.反応時間を懐かしさあり音楽条件,懐かしさなし音楽条件,音楽なし条件の3条件で比較検討した.その結果,懐かしさを感じた時は,懐かしさを感じさせる時期の自伝的記憶のみが想起されやすくなることが明らかになった.また,小学校高学年の時に聞いた音楽に対し,より懐かしさが喚起されると,中学校の記憶に対する誤反応が増加することが示された.
著者
森 数馬 中村 敏枝 安田 晶子 正田 悠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.99, 2008 (Released:2008-11-10)

音楽の印象における歌詞の影響を定量的に検討した研究は数少なく、これまでの研究では、歌詞における意味内容と声質や歌い方を混同して歌詞の影響を測っている。本研究は、歌詞の言語の意味内容が認知できない演奏音と文字で書かれたその歌詞の邦訳を用いることで歌詞における意味内容と声質や歌い方を区別し、歌詞の意味内容が演奏音の印象に影響を与えるかを定量的に検討することを目的として実験を行った。演奏音と歌詞の意味内容の印象がかけ離れた作品2つを刺激とし、同一の参加者が3条件(演奏音のみ呈示、歌詞のみ呈示、演奏音+歌詞呈示)で実験を行い印象を測定した。実験の結果、両作品において演奏音+歌詞の印象は、歌詞よりも演奏音に近い印象を示すという傾向があった。したがって、本研究で用いたような作品の印象において、歌詞の意味内容という論理情報が及ぼす影響は弱く、演奏音という感性情報が及ぼす影響が強いということが示唆された。
著者
柴崎 秀子 時本 真吾 小野 雄一 井上 次夫
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.101-120, 2015-02-28 (Released:2015-04-16)
参考文献数
56

本研究では日本人高校生用の日英両語のリーディングスパンテスト(RST)を開発し,集団による短時間での実施が可能であるかどうか試行した.その結果,本研究で開発したRSTの信頼性係数は日本語(α=.864),英語(α=.875)ともに高く,得点分布に正規性が示され,RSTを集団で行うことが可能であることが示された.このテストを用いて,高校2年生を対象に日英語RST得点の相関を分析したところ,英語習熟度の高い群の相関係数は.677,低い群は.531であった.英語専攻の大学生を対象にした先行研究では日英語RST得点の相関係数は.84と報告されている.これらの結果は,第二言語の習熟が進んだ学習者は未熟な学習者よりも日英語RSTの相関係数が高いことを示し,その理由として,第二言語に熟達した読み手は第二言語読解を母語読解に近い形で行うことができるからではないかと推測される.
著者
宮本 大輔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.33, 2016 (Released:2016-10-17)

近年、コンピュータシステムではなくコンピュータを利用するエンドユーザを対象としたサイバー脅威が報告されている。とりわけ、金融機関などに似せて作られたウェブサイトを用いてユーザを騙すなどの攻撃の被害は増加している。従来、サイバーセキュリティ分野ではユーザが偽サイトを見分けるためのサポートが研究課題であり、教材の開発やインタフェースの改善、検知して知らせるソフトウェアといった対策が行われている。ここで、サイバー脅威に対するエンドユーザの思考を、コンピュータシステムがエンドユーザから観測される情報から推測できると考える。我々は被験者を集めて実験を行い、ウェブサイトの真贋判定を行う際の眼球運動から被験者がどのような意思決定を行うかを予想する研究を行った。この先行研究を紹介するとともに、認知心理学の知見をサイバーセキュリティ分野に応用できるかを議論する。
著者
山田 祐樹 河邉 隆寛 井隼 経子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.55-55, 2010

非人間的対象の人間らしさが増大すると,ある時点でその対象への評価が急激に低下するといわれる (不気味の谷現象).本研究は,この評価の低下が,対象を2つのカテゴリに分類する困難さと関係しているかを検討した.実験1では,実際の人物と漫画の人物の画像を0%から100%までの10%ずつのモーフィング率で合成した11枚の画像を用いた.観察者は各画像に対しカテゴリ判断 (実際-漫画) を求められ,その潜時をカテゴリ化困難度の指標とした.また,各画像の好意度について-3 (嫌い) から3 (好き) の7段階で評定させた.結果として,モーフィング率とともに潜時と好意度評定値が変化し,最も潜時の長かった画像と最も評価の低かった画像が一致した.実験2では,犬の画像 (実際,ぬいぐるみ,及び漫画) を用いても同様の結果を得た.これらの結果は,カテゴリ化困難な画像における処理流暢性の低さが評価の低下を引き起こすことを示唆する.
著者
上田 彩子 廼島 和彦 村門 千恵
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.103-112, 2010-02-28 (Released:2010-11-25)
参考文献数
50
被引用文献数
2

主に顔の形態特徴の情報処理を基に行われる顔認知過程において,表情情報が影響を及ぼすことは,多くの研究で示されている.また,表情認知に性差があることも示唆されている.表情認知における性差が,顔認知過程で表情が及ぼす影響に関与する可能性がある.そこで,本研究では,顔の印象決定において表情が及ぼす影響に性差が認められるかどうか実験的に検討した.刺激の顔の形態変化にはメイク手法を用いた.被験者は,刺激の相貌印象と表情表出強度について評価を行った.その結果,表情認知能力に性差は認められなかったが,相貌印象判断に表情が与える影響は女性のほうが大きいことが示された.
著者
秋山 舞亜 小早川 達 小林 剛史
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第11回大会
巻号頁・発行日
pp.90, 2013 (Released:2013-11-05)

本研究では、視覚/嗅覚/視覚・嗅覚刺激によって誘発される自伝的記憶想起の反応時間と想起内容の関係に着目した。その結果、嗅覚および視覚手がかりを同時提示した群、視覚手がかりのみを提示した群、嗅覚手がかりのみを提示した群の順に自伝的記憶を想起するまでに要した反応時間が短いことが示された。
著者
野村 郁也 鮫島 和行 植田 一博 鷲田 祐一 岡田 浩之 大森 隆司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.64, 2012 (Released:2012-07-20)

新商品が次々と発売される消費社会において,既知の商品と未知の商品との間の選択は日常的に行われており,いずれを選択するかは消費者行動の重要な一面となっているが,このような選択に関する実験的研究はまだ少ない.本研究では,ミネラルウォーターを用いて,実験参加者にとって既知の商品と未知の商品との間の選択を繰り返し行い,その選択に関わる個人特性について検討した.さらに,商品選択を行っているときの脳活動をfMRI計測によって調べた.その結果,情報探索的な実験参加者ほど未知の商品を選択する割合が高くなる傾向が見られ,また,未知の商品の選択時には右前頭極に活動が見られた.これらの結果はともに未知の商品を選択することが情報を得るための行動であることを示唆するとともに,損得勘定に基づく判断であるとする従来のマーケティング現場の通念を変えうるものである.
著者
山田 祐樹 佐々木 恭志郎 三浦 佳世
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.128, 2014 (Released:2014-10-05)

わが国の刑事法廷の座席配置は,法壇から見て右側が検察官,左側が弁護人であることが一般的だが,配置が逆転する事例もある。認知心理学研究では,人間が利き手側に位置する対象には肯定的な,非利き手側の対象には否定的な評価を下すことが知られている。本研究では,この空間認知的性質が刑事裁判の量刑判断に影響を与えている可能性について検討を行った。403名の参加者は裁判風景を模した写真を観察後,2種類の裁判シナリオを読み,被告人の量刑を判断した。写真は,通常配置(右:検察官,左:弁護人),逆配置(右:弁護人,左:検察官),統制配置(位置関係は通常と同様だが検察官と弁護人が外向している)の3種類であった。結果として,右利きの参加者は正配置よりも逆配置の量刑を有意に短く(約1年)見積もることが明らかになった。このバイアスは,参加者が利き手側の弁護人あるいは検察官を肯定的に評価したことに起因すると考えられる。
著者
松本 昇 越智 啓太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.104, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究では,高思考抑制傾向者における自伝的記憶の具体性の減少を,検索誘導性忘却効果によって説明できるか否かについて検討した。参加者は思考抑制頻度をたずねる質問紙へ回答した後,ポジティブ,ネガティブそれぞれ2つずつのエピソードを視聴した。その後,その中の1つのエピソードについて1週間にわたって反すうをするように教示を受けた。1週間後,自由再生課題と手がかり再生課題を行った。その結果,思考抑制得点が高い者ほど,ネガティブエピソードを反すうした際に,ポジティブエピソードがより抑制されることが示された。この結果は,思考抑制とその逆説的効果として生じるネガティブ記憶の侵入,そして反すうを繰り返すことによって,具体的なポジティブ記憶へのアクセシビリティが低下する可能性を示している。
著者
相薗 敏子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第11回大会
巻号頁・発行日
pp.161, 2013 (Released:2013-11-05)

人々は日常生活で鉄道や通信など多様なサービスを利用しており,それによって社会インフラ上には交通系ICカードや携帯電話の利用履歴,あるいはPOSデータなど膨大なデータが日々生成・蓄積されている。我々は,社会インフラ上のシステムの全体最適化や顧客サービスの満足度向上を目的として,これらデータを人々の生活履歴のデータと捉えて生活のパタンや行動特性を抽出・活用する研究を行っている。本稿では,鉄道の移動データから人々の生活パタンを抽出する手法および鉄道移動データによる実験結果について述べる。
著者
市川 伸一 下條 信輔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.137-145, 2010-02-28 (Released:2010-11-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

ベイズ的な事後確率推定問題の中でも,「3囚人問題」は,とりわけ数学的な解が直観的に理解しにくいことで知られている。我々は,オリジナルの3囚人問題の事前確率を変化させた変形版を提案した.これは,解答者の思考過程や納得のしかたが答えに反映されやすくなるとともに,その規範的なベイズ解は,いっそう反直観的に思えるものである.数理的分析と心理実験を通じて,3囚人問題,とりわけ変形版の難しさがどこにあるのかが検討され,問題構造に関する中間レベルの表象が重要であることを指摘した.また,こうした反直観的な事後確率推定問題を理解するための一つの方法として,数学的に同型な視覚的モデルである「ルーレット表現」を提案した.事後確率を主観的に推定するときの素朴なスキーマやヒューリスティックスの性質と,ベイズ的な推定方法を促すことの可能性について議論された.さらに,これらの研究がどのような意義をもつものかを,近年の関連研究とともに議論していく.
著者
望月 愛 河瀬 諭 川口 明日香
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.89-89, 2010

本研究の目的は、テレビコマーシャルで用いられている音楽が商品の認知に与える影響について検討することである。そのために、本研究では、実際にテレビコマーシャルで使用された曲を用いて、そこから商品名を想起する実験を行った。実験参加者は大学生22人(ほとんどが音楽専攻生)、使用した曲は22曲、商品は全て同一ジャンルのものとした。実験は集団聴取実験であり、実験参加者は刺激曲を聴取した後、択一式でその音楽が使用されていたと思う商品を選択した。実験の結果、正しく想起されやすい商品と楽曲の属性には関連が見られた。さらに、各実験参加者の正解数は、テレビコマーシャルに対する視聴行動に影響を受けることが示唆された。また、特定の音楽において、イメージの類似した商品間で間違いが多かった。本研究は、広告認知のみならず、音環境によって記憶が想起されるメカニズムを解明する上でも示唆に富むものである。
著者
大庭 真人 岡本 雅史 飯田 仁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2009 (Released:2009-12-18)

会話において,話し手の発話の分節に合わせ聞き手が動作を行う結果として話し手と聞き手との動作の間に同調が観られる事例が報告されている(Kendon, 1990).本研究では,コンテンツユーザとしての観客が漫才においてどのように笑いを享受するのかを分析するため,漫才師による公演を漫才師・観客ともに撮影収録した.漫才師2組に2本ずつの漫才を行ってもらい,230秒と298秒,357秒と262秒の映像音声データを収録した.このデータから,観客の同調現象に着目し,分析した.観客の漫才師に対する反応は「笑う」「拍手」をするといった非常に制限されたチャネルを通じて行われているようだが,実際には笑うという観客が同時に起こす反応に加え,漫才師が笑わせる合間の姿勢を変える動作においても,複数の観客間に同調現象が観察された.これは会場の離れた位置の観客間でも観察されており,漫才師に起因して生じることが分かった.
著者
喜入 暁 越智 啓太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第11回大会
巻号頁・発行日
pp.155, 2013 (Released:2013-11-05)

女性の魅力評価における研究で,Dixson et al. (2011)は,WHR2パタン×バストサイズ3パタンの刺激を用いた実験を行い,バストサイズに関係なく低WHRが魅力的であると判断されるにもかかわらず,視線は顔やバストにのみ大きく注意が向けられることを示した。しかしこれに関して刺激による影響が考えられる。完全に全裸の実験刺激を用いたので,普段見ることのない新奇な身体的特徴をよりよく注視したという可能性である。本研究では水着を着用した女性で,WHRのみを編集した5パタンの刺激を用いて実験を行った。この結果,視線に関してDixson et al. (2011)のような結果は示されず,身体のそれぞれの領域に同程度の注意が向けられることが示された。
著者
小林 正法 池田 賢司 服部 陽介
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2014 (Released:2014-10-05)

本研究では,解釈レベルの違いが検索誘導性忘却に影響するかどうかを検討した。検索誘導性忘却とは,ある記憶の検索が他の関連する記憶の抑制を導く現象である。解釈レベル理論から,高次解釈(e.g., Why思考)では関連付け符号化,低次解釈(e.g., How思考)では項目特定的な符号化を導くとされている。学習項目を関連付けることが検索誘導性忘却を減少するという知見から,本研究では高次解釈を行った場合,検索誘導性忘却が生じないと予測した。実験1,2を行い,得られた検索誘導性忘却効果を統合したメタ分析を行った。分析の結果,低次解釈群では検索誘導性忘却が生じたが,高次解釈群では生じなかった。このように,本研究は学習に直接影響しない操作である高次解釈(Why思考)が,検索誘導性忘却を減少させることを初めて明らかにした。
著者
鬼頭 陽菜 北村 涼乃 中村 凜 村山 雄飛 元木 康介 井関 紗代
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.92, 2023 (Released:2023-10-18)

近年,モバイル決済が急速に普及しているが,現金に比べて支払いの実感が乏しいと指摘されている。モバイル決済では,「○○で支払います」とブランドネームを口にしたり,ブランドネーム(e.g., PayPay,QUICPay)が決済音に使われていたりすることに着目し,本研究では,ブランドネームの音象徴が支払いの痛みに及ぼす影響について検討することを目的とした。結果として,共鳴音(m, n, l)を含むブランドネームは,有声閉鎖音(b, d, g)を含むブランドネームに比べて,”やさしい”と知覚されるだけでなく,支払いの痛みを和らげ,金銭的損失の知覚を低減することが明らかになった。これらのことから,企業は共鳴音を含むブランドネームを採用することで,モバイル決済の利用を促すことができると考えられる。一方,消費者は,共鳴音を含むブランドネームのモバイル決済では,特に浪費に注意する必要があると示唆される。