著者
北岡 明佳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.177-185, 2008-02-29 (Released:2010-07-21)
参考文献数
25
被引用文献数
6 3

錯視とは,対象の真の特性とは異なる知覚のことである.伝統的に錯視と呼ばれてきたものは,高次の認知的過程にあまり影響されないので,知覚心理学の研究領域と考えられてきた.本稿では,顔の錯視について考えることで,錯視の認知心理学というものの可能性を検討する.
著者
時津 裕子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.110, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

かつては口承で語り継がれた怪談が,Web上のテキストで楽しまれるようになって久しい。そこで描かれる恐怖がどのようなものであるか知ることは,現代日本人の心性や文化的特性を考える上で不可欠だろう。本研究の目的は,現代のネット怪談がもつ意味的構造を解明することである。まとめサイトに掲載されたランキング上位100篇の怪談を収集し,作中に登場する恐怖の喚起につながると考えられる112件の物語要素を抽出した。つづいて,各話におけるこれら要素の存否状況をダミー変数として,数量化理論Ⅲ類による分析を実施した。カテゴリー布置から,1軸が,作中で発生する出来事の原因に明確な説明が成り立つかどうか(「ルール明示/ルール不明瞭」)を,2軸が怪異や霊的存在が目に見える形で登場するかどうか(「恐怖の直接呈示/間接呈示」)を表すと解釈でき,ネット怪談はこれら2軸の組み合わせにより4類型に分類できることがわかった。
著者
守谷 順 丹野 義彦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.123-131, 2007-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
45
被引用文献数
4 3

本研究では,社会不安に見られる脅威関連刺激に対する選択的注意が,刺激からの注意の解放の欠如によるか検討した。社会不安高群と社会不安低群を選出し,実験を行った。プライム刺激には社会的脅威語,中性語,記号を用い,画面中央に100 ms,または800 ms提示した。その後,ターゲット刺激がプライム刺激の左右の一方に提示されるので,実験参加者にはプライム刺激を注視しながらターゲット刺激の位置弁別をキー押しで判断するよう求めた。結果,社会不安高群は社会不安低群に比べ,社会的脅威語を800 ms提示時に反応時間が遅延した。また,刺激提示時間が800 msでは,社会不安高群は中性語・記号よりも社会的脅威語で反応時間が遅れた。しかし,刺激提示時間が100 msの際は,社会不安高群と低群の間で差はなかった。社会的脅威刺激が800 ms程度長く提示されると,社会不安高群は刺激からの注意の解放が困難であることが明らかになった。
著者
水野 りか 松井 孝雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.31-38, 2018-02-28 (Released:2018-04-17)
参考文献数
27

水野・松井(2016)は,日本語の同音異義語では仲間が多いほど顕著な同音異義語効果が認められることから,同音異義語が呈示されるとその複数の仲間が活性化されることを示した.しかし日本語は同音異義語が多く,概してその仲間の数も多いため,この知見から考えれば日本語が処理に時間のかかる言語だということになってしまう.著者らは,文脈効果の知見から考えて,適切な文脈があれば仲間の数にかかわらず日本語の同音異義語も円滑に処理され,同音異義語効果は生じないのではないかと考えた.そこで本研究では,意味的に一致した文脈と不一致の文脈を呈示して仲間が多い同音異義語,仲間が一つの同音異義語,非同音異義語の語彙判断時間を測定した.その結果,一致した文脈を呈示した場合は仲間が多くても少なくても同音異義語効果は生じないことが見いだされ,日本語の同音異義語は適切な文脈があれば仲間の多少にかかわらず非同音異義語と同じように円滑に処理されることが明らかとなった.最後に,現実場面に近い状況で言語処理過程を検討する必要性が論じられた.
著者
長谷部 育恵 楠見 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-79, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
32

自分の脆弱性は低く見積もられる傾向がある.本研究では,脅威遭遇事例の被害者の違いによる受け手のリスク認知への影響を検討した.社会的比較理論の先行研究から,「親友の脅威遭遇事例のほうが見知らぬ一般人の事例よりもリスク認知を高める」(仮説1),「行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高める」(仮説2)と仮説を立てた.740名の参加者が食中毒に対するリスク認知を評定した後,脅威遭遇事例を読み,再度リスク認知を評定した.脅威遭遇事例に登場する被害者は,関係の有無(親友・一般人)と落ち度の有無の観点で操作した.その結果,行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高めた.さらに,相関分析の結果からは,類似した他者に同化して自己のリスク評定がなされると考えられた.被害者との関係性の有無による差はみられなかった.最後に,社会的比較理論の観点を中心に結果を考察した.
著者
大北 葉子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.13, 2016 (Released:2016-10-17)

非漢字圏日本語学習者を対象に漢字正誤判断試験時の眼球運動、正答率、反応時間、空書行動の有無の関係を調べた。漢字一字ずつがパソコンモニターに表示され、被験者が正誤判断するまで刺激漢字はモニター上に表示された。刺激は、曖昧漢字、偽漢字、ハングル文字、部首倒置漢字、真漢字の5種類だった。曖昧漢字は日本語学習者の書き間違いを基にしていて、図形的にわずかな誤りのある字形である。偽漢字は部首と旁の組み合わせが存在しないもので、部首倒置漢字は部首と旁の位置を反転させている。ハングル文字と真漢字以外の正答率は個人差が大きかった。偽漢字と部首倒置漢字の回答率不良者は注視点数が少なく、眼球移動距離が短い、反応時間が短く、刺激間での注視点数、眼球移動距離、反応時間にあまり差がなく、空書がなかった。成績不良者は字形分析が不十分である可能性がある。空書は字形知識の内在化の指標になると考えられる。
著者
高橋 純一 行場 次朗
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.112, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

本研究では,アファンタジア傾向者の視覚イメージ特性について一事例検討を行った。アファンタジアとは,視知覚に異常は認められないにも関わらず,視覚イメージの形成に困難を示す状態である。本研究の事例(K)について,視覚能力(レーブン・テスト)とイメージ能力(鮮明性,統御性,常用性[認知スタイル])の測定を行った。結果から,Kの視覚能力について問題は見られなかった。イメージ能力では,視覚,触覚や痛覚などに関するイメージは皆無であったが,聴覚イメージのみ弱く保たれていた。また,視覚イメージの欠如から,統御性は判断ができなかった。さらに,認知スタイルについては,視覚処理よりも言語処理の優位性が明らかとなった。以上より,アファンタジア傾向者では,視覚イメージが欠如している一方で,他の感覚モダリティに関するイメージ(e.g., 聴覚イメージ)の残存性と言語処理の優位性について,認知の代償性が存在すると考える。We examined a single case of Aphantasia, focusing on mental imagery abilities. Aphantasia is a condition in which individuals have difficulties in forming mental imagery although their visual perception is intact. The subject (K) had never experienced visual imagery. His visual (Raven’s test) and imagery abilities (vividness, controllability, and cognitive style) were assessed. While he displayed no difficulty in his visual abilities of perceiving/discriminating objects, he showed a complete deficit in his imagery abilities of visual, tactile, pain, gustatory, olfactory, and somatic image clarity. There may have also been substantial deficits in auditory image. He could not judge controllability due to his blind imagination. Moreover, his cognitive style seemed to mainly involve verbal strategies. We speculated that individuals with Aphantasia display cognitive compensations for their blind imagination, for their imagery to function in some modality (e.g., auditory imagery) and they show superiority in verbal processing.
著者
齊藤 俊樹 大谷 昌也 金城 光
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.50, 2014 (Released:2014-10-05)

視線のカスケード現象とは,好きなものを選ぶ判断(選好判断)の際に,選択決定よりも時間的に先行して選択する刺激へ視線が偏るという現象のことである (Shimojo et al., 2003)。これまでの研究でカスケード現象は知覚していない記憶上の刺激に対しても生じることが報告されている。本研究では,記憶上の刺激に対してもカスケード現象が起こるのか,記憶保持時間によって視線の偏りの強さが変化するかを実験1で検討した。先行研究ではカスケード現象が選好判断以外でも生じる可能性が示唆されており,実験1において選好判断と選嫌判断での視線の動きに差がみられなかったことから,実験2では判断条件を増やしカスケード現象の違いを検討した。その結果,選好判断以外の判断でも最終的に選択した刺激への視線の偏りが認められた。本研究より,視線の偏りが好意判断に特別に影響していない可能性が示唆された。
著者
安田 晶子 中村 敏枝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.11-19, 2008-08-31 (Released:2010-07-09)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

本研究では,身体反応と音楽聴取時の感動がどのような関係にあるのかを定量的に追究することを目的とした.はじめに,聴取実験での評定項目を選定する目的で質問紙調査を行い,音楽聴取時に頻繁に経験されていた5つの身体反応(「鳥肌が立つ」「胸が締め付けられるような感じがする」「背筋がぞくぞくする」「涙が出る」「興奮する」)を選出した.次いで行った予備実験では,本実験での刺激曲として曲想の異なる2曲を選定した.本実験では,150名の実験参加者が,刺激曲の聴取中に生じた感動と5つの身体反応の強度について評定を行った.その結果,5つの身体反応評定値はいずれも感動評定値と有意に高い相関を示した.よってこれらの身体反応は,すべて音楽聴取時の感動と強く関連することが示唆された.さらにこれら5つの身体反応評定の平均値は,感動評定値とのより高い相関を示し,この傾向は曲想の異なる刺激曲を用いた実験参加者群で一致した.すなわち,これらの身体反応を総合すると音楽聴取時の感動との間に顕著に強い関連性が示された.
著者
小川 佳純 井藤 寛志 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

Guénguen (2014) は身体魅力の中でも特にハイヒールに着目して研究を行っており,女性がハイヒールを履くことが男性の援助行動に影響を及ぼすことを報告した最初の論文である。今回は日本においてGuéguen (2014)の実験3を追試し実際にフィールド実験を行うことで,この結果が通文化的な結果であるのかということを検討することを目的とした。場所は日本の愛知県豊橋市で行い,協力者の女性は0㎝5㎝9.5㎝の3種類の靴を履き,実験参加者の前で気づかないふりをしてわざとパスケースを落とし,拾ってもらう回数と援助までの時間がヒールの高さによって違いが生じるのかということを検証した。結果は援助率と援助までの時間においてヒールの高さで違いは見られなかった。このことから考えられることとして文化差の他に実験の状況の統制の要因が挙げられる。傍観者効果の影響や,実験参加者の年齢まで視野に入れる必要があった。
著者
本郷 由希 喜多 伸一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-21, 2005-08-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

視覚的時間順序判断に聴覚が及ぼす影響を,視覚刺激と聴覚刺激の左右に関する空間一致性に注目して調べた.視覚刺激を短い時間間隔をおいて呈示し,その前後に聴覚刺激を呈示した.第1実験では,視覚的時間順序判断の能力が,視覚刺激と聴覚刺激が空間的に一致している場合には良くなるが,視覚刺激と聴覚刺激が空間的に不一致な場合には悪くなることが示された.この成績変化は視聴覚刺激の時間間隔(AV-SOA)が640 msという長い条件になっても残った.第2実験では,こういった成績変化に対して,視覚刺激に先行する聴覚刺激の方が,後続する聴覚刺激よりも,より強い影響を与えていることが示された.これらの実験結果は,視覚的時間順序判断に対する聴覚の優位性に対し,空間一致性が影響することを示すものである.
著者
加藤 昂希 杉森 絵里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

Karremans,Claus,&Storoebe(2006)が行った実験によると,パソコン課題をしている被験者の画面に「LiptonIce」という文字を意識下では知覚できない程の短い時間繰り返し提示したところ,喉が渇いている被験者においてのみリプトンアイスティーを飲む人の割合が増えたという。この実験を受け,私は視覚的なサブリミナル効果だけでなく,聴覚的なサブリミナル効果でも同じ様に結果が出せるか否かを検証する事とした。具体的には,喉が渇いている被験者に,サブリミナル音声を忍ばせた音源を聞いてもらい,その後の選択行動に影響があるかどうかを検証した。結果として,サブリミナル効果は出なかったものの,音源をリラックスして聞いてもらった後に直感を頼りに選択してもらう場合において,サブリミナル効果が出やすくなる事が明らかになった。
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2017 (Released:2017-10-16)

本研究の目的は、県の形と県名の対連合学習において,奇異性・新奇性の高いと考えられる県の形のイラストの有効性を検討することであった。その結果,県の形と県名の対連合学習において、奇異性・新奇性の高い県の形のイラストは、県名の学習に効果的であるとはいえないどころか、逆効果であることがわかった。この結果は,都道府県の形のイラスト化によって県名の記憶の促進効果を見いだせなかった向居(2016,教心発表)と一致したものであった。
著者
板口 典弘 山田 千晴
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

本研究は,空書行動が漢字構成課題に及ぼす効果を検討した。空書が科学的に“発見”されてから30年が経ったが,そのメカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究では空書が認知処理に与える効果を再検討した。実験では,従来用いられてきた空書許可条件,不許可条件に加え,無関係な指運動を行う統制条件を設定した。実験1では,漢字構成パーツを同時に提示し,刺激提示時間を1秒,3秒,10秒とした。実験2では,漢字構成パーツを継時的に2秒ずつ提示した。実験3では,佐々木・渡辺(1983)と同じ刺激・提示方法・回答時間を設定し実験をおこなった。実験の結果,いずれの実験においても,空書許可条件が他の条件よりも正答数と反応時間において有意に上回ることはなかった。本実験結果は,少なくとも現代の若年者においては,空書行動が漢字構成課題に対して促進的な効果を及ぼさないことを示唆した。
著者
寺本 渉 松浦 雄斗 浅井 暢子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.7, 2012 (Released:2012-07-20)

本研究では,社会的サイモン効果を指標として,バーチャル・リアリティ(VR)空間に提示される他者を身近に感じる程度,すなわち,臨(隣)人感を計測した。被験者は,別室にいる実験協力者とともに,ヘッドマウントディスプレイを通じて共通のVR空間を観察した。被験者の課題は,決められた色の球が画面の左手前または右奥に呈示された瞬間にできるだけ速く,反応キーを押すことであった。この課題中には画面右奥に他者(実験協力者)のアバターを表示した。実験では課題前にVR空間内で他者とコミュニケーションを取らせるとともに,他者の実際の頭部位置をアバターに反映させる条件と,コミュニケーションをせず,静止アバターを呈示する条件を設けた。その結果,他者の存在が十分に認識できたと考えられる,前者の条件でのみ,社会的サイモン効果が生じた。これは,VR空間内において,他者があたかも隣にいるように感じられていたことを示す。
著者
山 祐嗣 川崎 弥生 足立 邦子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.100, 2007

後知恵バイアスとは、結果を知ったときに、それがあたかも最初から予想できていたかのように考えてしまう傾向である。本研究では、結果を知った場合と知らない場合の主観的生起確率の差として定義した。日韓英仏比較文化研究を行ったところ、東洋人は比較的後知恵バイアスが強い。これは、西洋人が分析的思考傾向であるのに対して、東洋人が全体的思考としての複雑なモデルを抱いているという仮説で説明可能である。
著者
吉田 拓哉 中川 敦子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.144, 2013

背景音楽の歌詞が文章課題の遂行を妨害することが報告されている。本研究は,この影響を実行注意の個人差から検討した。実行注意の効率を測定する尺度としてエフォートフル・コントロール(EC)尺度を用い,大学生をEC低群とEC高群に群分けした。そして両群ともに無音,音楽のみ,音楽・歌詞の3つの音楽環境条件で,文章課題と計算課題を行った。課題ごとに作業量を分析した結果,EC低群の音楽・歌詞条件で文章課題の作業量減少が認められたが,高群は両課題のどの条件でも差は認められなかった。よって課題遂行時の背景音楽の歌詞による妨害効果は,実行注意の働きで軽減される可能性が示された。また課題ごとに正答率を分析した結果,音楽のみ条件で正答率が低下した。この結果からは,音楽・歌詞条件では,より注意を喚起する歌詞に抵抗するために却って課題に集中した一方で,音楽のみ条件では,音楽によって弛緩状態に陥った可能性が考えられる。
著者
新村 知里 草野 萌 田中 章浩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

他者の顔を魅力的だと判断するとき、笑顔などの表情の魅力と、顔の形態的魅力のどちらが主要因となっているのだろうか。本研究では、モデルと実験参加者が女性同士の場合に、顔の形態と表情が魅力および印象の評価に及ぼす影響について検討した。笑顔の表出強度は2種類設定した。実験の結果、中立と微笑み表情では美人顔と中間顔の間に魅力に差が生じるが、喜び表情では魅力に差が見られなかった。ただし、微笑み表情のように表出強度が低いときは顔の形態の影響が強いことが示された。また、喜び表情と中立表情の魅力の違いと、中立表情時の顔の形態(美人顔と中間顔)による魅力の違いの効果量を比較した結果、喜び表情による魅力変化のほうが、顔の形態による魅力変化より大きいことが明らかとなった。本研究の結果は、女性同士の場合には顔の形態より表情の方が魅力評価に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
著者
重森 雅嘉 齋藤 友恵 館林 美月 水谷 文 増田 貴之 芳賀 繁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2009 (Released:2009-12-18)

作業時に対象を指差し確認内容を呼称すると、ヒューマンエラーが低減できる。これは指差呼称がいくつかのエラー防止機能を持つためといわれている。本研究では、指差の反応遅延による焦燥反応防止機能、呼称による記憶保持機能、指差による注意の焦点化機能を、ストループ様の数値比較課題(指差あり、なし、反応保留条件)、n-back課題(呼称あり、なし、構音抑制条件)、数値探索課題(指差あり、なし条件)を用いて検証した。その結果、数値とフォントの大小が拮抗するストループ様課題では、指差なし条件のエラー率が他より高く焦燥防止機能が確かめられた。n-back課題では、n=1とn=2において呼称あり条件のエラー率が他より低く記憶保持機能が確認されたが、n=3において呼称ありとなし条件のエラー率が逆転し、課題の難易度による効果の違いが示唆された。数値探索課題の条件によるエラー率の差は明確ではなく検討の余地を残した。