著者
安藤 花恵 三浦 佳世
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.130, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究では、質問紙調査により、演劇経験1年目、2年目、3・4年目、5年以上の俳優がどのような態度で演劇に取り組んでいるのかを検討した。目指す俳優像、脚本を読む際の態度、演技プランを立てる際の態度、演技中の態度について、それぞれ16~18の項目の評定をおこなった。その結果、経験1年目、2年目の俳優は、演技中になりきろうとしたり、役になりきることができる俳優を目指すなど、「なりきる」ということへの志向が強いことが明らかになった。経験2~4年目の俳優には、自分のセリフに線を引いたり、脚本を読む際にまず自分のセリフを探したり、自分の出るシーンを重点的に読むなど、自己中心的な傾向が見られた。経験が5年以上になると、そのようななりきることへの志向や自己中心的な傾向は消え、存在感のある俳優や華のある俳優を目指すなど、感性的に優れた俳優を目指すようになることが示された。
著者
川島 朋也 澁澤 柊花 林 正道 池田 尊司 田中 悟志
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.91-101, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
49

電気刺激や磁気刺激などの脳刺激技術を用いて脳活動と認知機能の因果関係を調べる試みが続けられている.本稿では,さまざまな脳刺激研究を概観することで認知心理学研究の展開を考えることを試みた.池田はtDCS(経頭蓋直流電気刺激)とワーキングメモリ変調の可能性について,澁澤はtACS(経頭蓋交流電気刺激)と知覚変調の可能性について,林はTMS(経頭蓋磁気刺激)と時間知覚変調の可能性について紹介する.これらの話題提供の後,田中による指定討論を受け,脳刺激研究の新たな視点と認知心理学における今後の展開について議論する.
著者
井関 龍太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.37, 2021

<p>昔話や民話では,同じようなエピソードがくり返し現れることがある。『三匹の子豚』や『山姥』など,典型的にはくり返しの回数は三回であることが多い。そのようなくり返しは,登場人物による目標達成のための試みのくり返しを表しているとされる。そのような観点から考えると,試みを実行する登場人物が変わる場合(三人の兄弟など)には,同じ人物が試み続ける場合よりも目標達成の試みが最終的には成功したり,あるいは,先行する人物のふるまいを厳密に踏襲しなかったために失敗したりすることが考えられる。口承民話を収集した『ハンガリー民話集』をこのような観点から分析したところ,くり返しに登場する人物の異同と最終的な成果の変化に明確な関連は見られなかった(井関, 2019, 日心大会)。しかし,この結果は分析対象が属する文化に依存する可能性も残る。本研究では『ラテンアメリカ民話集』を分析し同様の結論を得た。</p><p></p>
著者
喜入 暁 越智 啓太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.145, 2016 (Released:2016-10-17)

サイコパシーは,冷淡な感情や他者操作性などを主軸とする1次性サイコパシー(primary psychopathy: PP)と,衝動性や反社会性を主軸とする2次性サイコパシー(secondary psychopathy: SP)からなるパーソナリティ概念の1つである。特に,PPは反社会性パーソナリティ障害と決定的に異なる点であり,したがって,PPがサイコパシーを特徴づける側面であることが指摘されている。本研究では,サイコパシーが他者を道具的に捉え扱う傾向(PP)が,女性に対しての女性蔑視傾向として示されるかどうかを検討した。分析の結果,男性参加者において女性蔑視傾向とPPとの正の関連が示された(SPとは有意な関連は示されなかった)。一方で,女性参加者の場合にこの関連は示されなかった。まとめると,男性のサイコパシーは,女性は道具的に支配するものであるという信念を持つことが示唆された。
著者
浜田 寿美男
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.133-139, 2007
被引用文献数
1

わが国では刑事取調べにおいて無実の人が嘘の自白をする例が少なくない.この虚偽自白の典型例は強制下の迎合によるものである.身柄を拘束された被疑者に対して,取調官が被疑者は犯人に間違いないと確信して取り調べるが,それはしばしば証拠なき確信である.この状況のもとで,被疑者は一般に想像されるよりはるかに強い圧力をこうむる.被疑者は身近な人々から遮断され,生活を警察のコントロール下に置かれ,屈辱的なことばを投げつけられ,弁明しても聞き入れてはもらえない無力感にさいなまれる.しかもこの苦しみがいつまで続くかわからず,見通しを失ってしまう.そこでは有罪となったときに予想される刑罰が自白を押しとどめる歯止めにならない.取調べ下の苦しみはたったいま味わっているものであって,それを将来に予想される刑罰の可能性と比べることはできないからであり,また,無実の人にとっては予想されるはずの刑罰に現実感をもてないからである.虚偽自白の心理は,第三者の視点からではなく,まさに渦中の当事者の視点からしか理解できない.この渦中の視点からの心理学をどのように展開するかは,今後,刑事事件を超えた課題となりうるはずである.
著者
戸田 正直
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.205-215, 2006-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
9
被引用文献数
2

筆者が開発してきたアージ理論を,感情システムの基本構造と,感情システムが働くのに不可欠な認知システムの活動様式に話を絞って概観を試みる.この二つのシステムは心というソフトウエアの重要なサブシステムであって,一応別システムであるが,ともに協調しながら,心が動物から人間へ野生の環境の中で生き延びソフトウエアとして進化してくる間,重要な役割を演じてきた.本稿ではまず感情システムの基本構造を論じたうえで,感情を論じるうえで必須な認知システムの働き,特に思考とか想像とかと呼ばれる働きを概説する.そういう議論の間に,「今ここ」効果とか,アテンショントラップとか,認知による感情の制御とか,考えるための道具としてのダイナミックスキーマとか,想像とか,言語とか,その他,人間,動物を含めて,心というソフトウエアの働きを理解すために不可欠な諸概念もともに論じる.
著者
下村 智斉 横山 寛 箆伊 智充
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2019 (Released:2019-10-28)

本研究では,カフェインとGABAを蒸気化して吸引することによる認知機能の影響を検証した。実験では,主成分がそれら2種類である実験条件に加えて,主成分を水とするプラセボ統制条件を設定した。24名の被験者はいずれかの条件に二重盲検法の手続きに従って参加した。成分は液体を加熱し蒸気化させて口腔鼻腔より吸引された。一つのセッションは3つの課題と気分尺度(POMS2)から構成され,カード整列課題,文章の誤字検出課題,時間的注意課題でそれぞれ,4分,3分,6.5分(45試行),POMS2で2.5分の16分とした。吸引前にベースラインのセッションを実施した後,吸引後に2回のセッションを実施した。その結果,カード整列課題,誤字検出課題,POMS2に条件間での違いは認められなかったが,その一方で時間的注意課題においては,カフェインとGABAで異なる時間的注意課題の成績の向上が認められた。
著者
伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.140, 2016 (Released:2016-10-17)

外見や社会的地位だけでなく名前そのものが対人評価に影響することがある。例えば,名前の魅力や流暢性の高さが付加価値となり,社会的な評価場面において好意的な印象が形成される。本研究では,名前の奇抜さが見た目の社会性,特にリーダーシップ性に及ぼす影響を検証した。具体的に,名前の奇抜さ(奇抜な名前・一般的な名前)と元々の見た目のリーダーシップ性の程度(低群・中群・高群)を実験要因として,被験者は呈示される若年者の顔画像と名前から見た目のリーダーシップ性の程度を評価した。その結果,元々の見た目のリーダーシップ性の程度に関わらず,一般的な名前に比べて奇抜な名前が呈示されたとき,リーダーシップ性は低く評価された。またこの効果は,高齢者の顔画像が呈示されたとき強く生じた。これらの結果は,近年のいわゆるキラキラネームは社会性評価において付加価値とならず,外見に関わらず非好意的な印象を生むことを反映している。
著者
小林 正法
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.73, 2022 (Released:2022-04-20)

2つの選択肢から1つを選んで回答する二肢強制選択において回答に対して正答または誤答のいずれかをフィードバックとして与えた場合に,いずれのフィードバックもどの選択肢が正答か誤答かを示すという点で同等の情報量である。しかし,正答フィードバックを与えた場合よりも誤答フィードバックを与えた場合に学習効率が低いことが示されている(Eskreis-Winkler & Fishbach, 2019)。本研究では,古代文字を学習対象としていた先行研究の追試と人の顔を学習対象とした新たな検討を行い,フィードバックが学習効率に与える影響を検討した。事前登録を行った2つの実験の結果,先行研究同様に,正答フィードバックを与えた場合よりも誤答フィードバックを与えた場合に学習効率が低いことが一貫して示された。
著者
北神 慎司 菅 さやか KIM Heejung 米田 英嗣 宮本 百合
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第8回大会
巻号頁・発行日
pp.28, 2010 (Released:2010-09-01)

北神ら(2009, 認知心)では,日本人を対象として,ストループ様課題を用いて,トイレマークの認知に,色や形がどのような影響を及ぼすかを検討している.その結果,赤やピンクの男性マークや,青や黒の女性マークにおいてストループ様干渉が起こることが示された.つまり,日本人にとって,トイレのマークを認知する際,色情報が非常に重要であることが示唆されている.それでは,色によって,トイレの男女を区別する文化がない場合,ストループ様干渉は生じないのだろうか.本研究では,アメリカ人の大学生を対象として,ストループ様課題を用いて,トイレマークの認知に,色や形がどのような影響を及ぼすかを検討した.その結果,アメリカ人においても,ピンクで彩色された男性マークにおいて,ストループ様干渉が示された.先行研究の結果と併せて,これらの結果は,色のジェンダー・ステレオタイプという観点から考察された.
著者
伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

外見や社会的地位だけでなく名前そのものが対人評価に影響することがある。例えば,名前の魅力や流暢性の高さが付加価値となり,社会的な評価場面において好意的な印象が形成される。本研究では,名前の奇抜さが見た目の社会性,特にリーダーシップ性に及ぼす影響を検証した。具体的に,名前の奇抜さ(奇抜な名前・一般的な名前)と元々の見た目のリーダーシップ性の程度(低群・中群・高群)を実験要因として,被験者は呈示される若年者の顔画像と名前から見た目のリーダーシップ性の程度を評価した。その結果,元々の見た目のリーダーシップ性の程度に関わらず,一般的な名前に比べて奇抜な名前が呈示されたとき,リーダーシップ性は低く評価された。またこの効果は,高齢者の顔画像が呈示されたとき強く生じた。これらの結果は,近年のいわゆるキラキラネームは社会性評価において付加価値とならず,外見に関わらず非好意的な印象を生むことを反映している。
著者
楠見 孝 米田 英嗣
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.24, 2017 (Released:2017-10-16)

日本全国の18歳から79歳の800人に対象にweb調査で、作品舞台を旅する「聖地巡礼」行動における作品世界への没入感を検討した.質問項目としては、物語理解における没頭尺度,移入尺度を旅行行動に対応するように改良し、あわせて、懐かしさ傾向、旅行行動などを測定した.その結果、アニメの作品舞台の旅行者は、小説舞台の旅行者に比べて,場面既知感が高いこと,場面既知感と作品世界への没入は相関が高いことが明らかになった。
著者
Timothy T. ROGERS
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.55-62, 2018-02-28 (Released:2018-04-17)
参考文献数
11

What causes patterns of functional specialization in the human brain? Are such responses built into our genetic inheritance, or do they arise through learning and experience with environmental structure? The nature and extent of diversity in human cognition hinges upon answers to these questions. I will discuss new work suggesting that the functional profiles of different cortical regions are jointly constrained by their long-range anatomical connectivity and by learning and experience. At a coarse scale this arrangement produces homologies across individuals with little effect of experience, but at a finer scale, substantial individual variability can be observed. I will support these arguments with reference to new brain imaging, computational modeling, and patient studies of semantic memory—the form of memory that supports knowledge about the meanings of words and objects. The convergence of methods suggests a new account of semantic representation that reconciles long-standing theoretical disputes.
著者
齊藤 俊樹 元木 康介 高野 裕治
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.1, 2022 (Released:2022-04-20)

コロナウィルス感染対策により、マスク着用が世界的に普及している。これまで、マスクをした顔に対する感情認知は困難であることが示されているが、この影響が文化(国)によって異なるのかは明らかではない。本研究では、感情表出・認識に重要となる情報が文化によって異なるという表情認知の文化学習理論に基づき、マスクが感情認知に与える影響の文化差を検討した。日本人209名、アメリカ人203名の参加者は顔画像を見て、その顔の感情状態(感情カテゴリーと感情の強度)を判断した。顔画像は、表情が6種類(笑顔、怒り、悲しみ、恐怖、嫌悪、真顔)、マスク着用の有無が2種類の計12種類であった。その結果、笑顔表情の認知がマスクによって阻害され、その影響はアメリカ人でより大きいことが分かった。この結果は、表情認知の文化学習理論を支持するとともに、マスクによる表情認知への影響が感情や文化によって異なることを示すと考えられる。
著者
伊藤 友一 松本 昇 小林 正法 西山 慧 三好 清文 村山 航 川口 潤
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.43-56, 2022-08-31 (Released:2022-09-23)
参考文献数
76

エピソード記憶の想起は,過去の出来事を記述的に思い出すのではなく,過去の出来事を心的に再体験する感覚を伴う.すなわち,その記憶システムは,過去のエピソードに対するメンタルタイムトラベルを担っている.メンタルタイムトラベルは未来や反実仮想のエピソードへも可能であり,記憶システムはさまざまな時間軸でエピソードを(再)構成するものとして捉え直すことができる.この視点から,記憶システムがかかわる近年の研究を概観する.伊藤はエピソード的未来思考について,松本は自伝的エピソード記憶の詳細さについて,小林は外部記憶の利用によるcognitive offloadingについて,西山は記憶の意図的な制御と忘却について,三好は主観的メタ記憶の計算論とその反実仮想との関連性について紹介する.これら話題提供の後,村山と川口による指定討論を受け,記憶研究の新たな視点と今後の展開について議論する.
著者
大杉 尚之 小林 正法
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-15, 2021-08-31 (Released:2021-09-16)
参考文献数
41

lab.js Builderは無料のオープンソースソフトウェアで,オンラインとラボ内の両方のデータ収集の実験と調査を簡単に構築できる.視覚的インターフェースを使用することで,プログラミングなしで刺激を設計して実験や調査に統合でき,また,HTML, CSS, JavaScriptコードを使用してカスタマイズすることもできる.このソフトウェアは,多くの学生や科学者が自宅学習や在宅勤務をする必要がある状況下で,実験や調査を作成して実行するのに役立つと考えられる.本論文では,lab.js Builderの機能と使いやすさを紹介し,大学の授業で実践的な実験を構築・実施する方法を実演し,研究方法教育におけるツールの位置付けについて述べる.
著者
陳 雅 佐藤 浩一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.193-203, 2006-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

ある対象について思考を抑制しようとすると,かえって侵入的思考が増加するという,逆説的な効果が報告されている.本研究は,従来の研究よりも生態学的妥当性を高めた条件下で,逆説的効果を検討した.まず51名の参加者に「腫瘍問題」を解いてもらった.その後の抑制段階で,抑制群の参加者にはその内容を抑制するように,また非抑制群の参加者には自由に思考するように教示を与えた.続く自由思考段階では,単調作業をする群と静かに座っている群に分けられ,全員自由に思考するよう教示を与えた.各段階において参加者は腫瘍問題に関する思考が侵入する都度,用紙にチェックした.また各段階が終了した時点で,抑制対象の侵入と制御困難感を測定する項目に回答した.単調作業の有無にかかわらず,抑制教示を与えられた群は非抑制群に比べて侵入的思考を多く経験し,侵入と制御困難感の増加を示した.さらに約1週間後にも,抑制の効果は有意な傾向を示した.また腫瘍問題の偶発再生を求めたところ,抑制群の参加者は非抑制群の参加者と比べて成績が低い傾向が見られた.参加者の内観報告に基づいて,侵入的思考の多様性が論じられた.
著者
生駒 忍
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.113-131, 2005-08-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
175
被引用文献数
7 2

ある対象への反復接触がその対象への好意度を高めるという単純接触効果は古くから知られている現象である.単純接触効果は潜在記憶現象であり,実験変数,被験者変数,推計学的独立性において顕在記憶から乖離を示す.一方で,単純接触効果と直接プライミング効果との間には相違も見られる.知覚的流暢性誤帰属説の妥当性,古典的条件づけとの関係,構造的単純接触効果の位置づけ,個人差といった論点について概観し,今後の研究の方向性について論ずる.