著者
大森 いさみ 中橋 真穂
出版者
大阪大学COデザインセンター
雑誌
Co*Design (ISSN:24349593)
巻号頁・発行日
no.8, pp.33-47, 2020-08-31

多様化かつ複雑化する地域の課題に取り組むために、複数の大学が連携する事例が増えてきている。本稿は、武庫川女子大学と大阪大学大学院工学研究科の2大学の学生たちが協働した地域連携型プロジェクト・ベースド・ラーニング(以降、PBLと略称)のレポートである。実践の経緯をたどりながら、その内容と課題を整理したうえで、異なる大学で異なる専攻分野を学修してきた学生たちが、地域連携型PBLで協働することの教育的効果について明らかにすることを目的とする。本プロジェクトは、河内長野市と提携した産官学連携PBLでもある。学生たちは、河内長野市商工会などが主催する「奥河内フルーツラリー」に関するソーシャルネットワーキングサービス(以降、SNSと略記)を活用した広報活動と、河内長野市の農林業施設の観光資源としての可能性を検討するためのモニターツアーの企画運営を行った。本プロジェクトの成果と考察は「地方創生・政策アイデアコンテスト2018」(内閣府主催)大学生以上一般の部において、地方予選を通過し、全国審査に進む(応募総数604件のうち地方予選通過件数は21件)という評価を受けた。
著者
木俣 健 窪田 辰政 神藤 隆志 三橋 大輔
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
巻号頁・発行日
vol.71, 2021

<p>本研究の目的はテニスにおける世界の男子トッププロ選手(以下:上位群)と学生選手(以下:下位群)を対象に、サービスゲーム中のブレイクポイントをセーブした時の1stサーブの確率、ポイントの終わり方、ラリー数を比較しトッププロ選手の戦術選択を明らかにすることで、サービスゲームのキープ率向上に関する戦術指導の有益な情報を得ることであった。</p><p> 対象として、上位群をATPランキングが15位以内の選手20名が出場した男子プロテニス協会主催の大会14試合(2018年~2020年)の中から100ポイント、下位群を関東学生テニス連盟が主催する3つの主要な個人戦において本戦出場経験のない選手21名が行った学生の公式戦、対外試合や部内戦(2019年~2020年)の中から127ポイントを抽出した。さらにサーブの確率、ポイントの終わり方(Unforced Error、以下UE:自らに原因のあるエラー、Forced Error、以下FE:相手の良いショットに原因のあるエラー、Winner、以下W:ノータッチエース)、ラリー数の3項目に関して分析を行った。統計処理として、それぞれの結果についてχ<sup>2</sup>検定を行い、有意差の見られたデータは残差分析を行った。有意水準は5%未満とした。</p><p> 結果として、1stサーブの確率は上位群が有意に低かった(p<0.05)ことに加え、1stサーブが入った場合のポイントの終わり方については、上位群のFEの割合が有意に高かった(p<0.05)。これらより上位群は1stサービスにおいて、多少確率を下げてでも主導権を握り、相手からFEを引き出していることが考えられる。さらに上位群は、ポイントが終了するまでのラリー数が短い場合(5球以下)においてもFEの割合が高いことから(p<0.05)、上位群は1stサービスの確率が下がるリスクを冒してでもサーブを始めとする攻撃的な戦術選択を行っていると推察される。</p>
著者
衛藤 安奈
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 言語・文化・コミュニケーション (ISSN:09117229)
巻号頁・発行日
no.52, pp.31-54, 2020

1. 問題の所在2. ローレンツの動物学的知見 : 攻撃,連帯3. ウィルソンとイングルハートの文化的進化論 : 利他性4. カッシーラーの文化論的神話論・宗教論5. 「少年マンガ」の四つの類型 : 正統派,人情型,異邦人型,文明崩壊型6. 考察
著者
勝又 悠太朗 堀本 一樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2022年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.206, 2022 (Released:2022-03-28)

1.はじめに 発表者は,インドにおける新型コロナウイルス(COVID-19)感染の地域的特徴をGISによる地図化を通じて検討し,その結果を発表してきた(勝又・月森,2020;勝又ほか,2021;Katsumata et al.,2021など)。そこでは,主に州別・月別にみた感染者数のデータを使用し,感染動向の地域的特徴を明らかにしてきた。本発表も,その続報に位置づけられるが,今回は具体的なデータ分析の結果を提示するのではなく,研究の過程で浮き彫りとなったデータ分析に関わる課題を報告する。ここでは,①感染者データの入手に関する課題,②県別のデータ分析に関する課題,③他のデータとの併用に関する課題の3点を主に取り上げることにする。 2.感染者データの入手に関する課題 これまで分析には,covid19india.orgが収集し,ウェブサイトで公開しているデータを使用してきた。同組織は有志による活動のため,公的な組織ではないが,国や州などが発表する情報を中心に収集を行ってきた。公開されるデータには,インド全体の感染者のデータに加え,州(State)別,県(District)別に集計された地理情報を含んだデータもあり,時系列にデータを入手することができる。そして,これらのデータの学術研究への利用も進んでいる。しかし,同組織によるデータの収集と公開の活動が,2021年10月31日をもって終了したため,11月1日以降のデータを入手することが出来なくなり,以降のデータ分析を行うための大きな課題となっている。3.県別のデータ分析に関する課題 これまで発表者は,主として州別の感染者データを使用した分析を行ってきた。一方,州よりも小さな行政単位である県別の感染者データも公開されている。県別のデータ分析をすることで,感染の地域的特徴をより詳細に明らかにすることができると考える。しかし,県別のデータを使用した分析を実施するにあたっては,いくつかの課題も存在する。まず,covid19india.orgが収集したデータの中には,県別のデータが存在しない州もあることである。また,県の境界が変更されることがあるため,感染者のデータと結合する際にGISで使用する県の境界データの入手も課題となる。 4.他のデータとの併用に関する課題 最後の点は,上記の県別のデータ分析に関する課題とも関わるが,感染者のデータと他の統計データをGISで併用する際に生じる課題があげられる。例えば,人口あたりの感染者数を地図化する際には,州別や県別の人口数のデータを入手する必要がある。こうした人口データは,インドのセンサス(国勢調査)に含まれるが,2022年1月の時点で使用できる最新のものは2011年のセンサスに基づくデータとなる。2011年以降,州と県の中には境界の再編が生じたものもあり,現在の州・県の境界に合わせデータを再集計する必要がある。ただし,県の中には,境界が複雑に再編されたものもあり,データの再集計が困難な場合もある。センサスには社会・経済的な様々なデータが含まれるが,感染者のデータと併用する際には課題も多い。
著者
竹本 靖子
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.51-56, 2001
参考文献数
28
被引用文献数
1

私たちが研究の対象としている口腔の感染症のほとんどは, 常在菌やその他の病原性の弱い細菌による感染症である.また, ここ数年, 世間を騒がせている黄色ブドウ球菌による食中毒, 風呂の水から感染したレジオネラ症, MRSAやVREによる院内感染なども病原性の弱い細菌による感染症である.これら弱毒菌感染症の特徴は, まず, 原因微生物の病原性が弱いので, compromised hostに発症する日和見感染症であるということである.二番目として, 原因菌の特定が困難であること, 三番目として, 院内感染の場合, 原因菌が薬剤耐性化することにより, 病原性を発揮している点が挙げられる.弱毒菌が病原性を示すメカニズムは, 毒性の強い外毒素により病原性を示す強毒菌に比べると, 1つの病原因子だけでは説明できず, 多くの病原因子が関与している.口腔感染症では, う蝕, 歯周病, それ以外の歯性感染症が主なものであるが, その主要原因菌として, それぞれ, Streptococcus mutans, Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia/nigrescensが挙げられる.これらの細菌は, 宿主への付着および定着, 免疫系からの回避, 宿主細胞の破壊, 病巣の拡大などに関わるさまざまな病原因子を産生し, 病気を起こしていると考えられる.Compromised hostが増加していたり, 現代の日本のように, 環境の衛生状態がよいと, いままでは問題とならなかった弱毒菌による感染症はあなどれない.また, 薬剤耐性菌や腸管出血性大腸菌E. coli O 157:H7のように, 本来, 病原性の弱かったものが, 病原性を獲得して, 病原性を発揮する現象も見うけられる現代では, 弱毒菌感染症について, 注意を払わねばならない.
著者
平井 慶充 吉増 達也 内藤 古真 宮坂 美和子 岡村 吉隆 中村 靖司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.832-835, 2010

52歳男性,2002年に検診で胸部異常陰影を指摘された.近医を受診し,CTで右S1に1cmのすりガラス状陰影を認めたが,気管支鏡で診断がつかず経過観察とされていた.その後増大傾向を認めなかったが,2008年の胸部CTで,胸膜陥入像を伴う1.5cmの結節へと増大傾向を認めたため当科紹介となった.CTでは一部に充実成分を伴うすりガラス状陰影であり,PET-CTで同部位にSUV max 1.06の弱い集積を認めた.高分化型腺癌の可能性が高いとし手術を施行した.胸腔鏡下部分切除術を施行し,術中迅速病理診断でadenocarcinomaの診断であった為,右上葉切除術+縦隔リンパ節郭清を施行した.術後病理診断で,Noguchi B typeの腺癌の内部に一部充実成分を含み,免疫組織化学染色では,EMA(+/-),vimentin(+),PgR(+),またNCAM(+),synaptophysin(+/-),chromogranin A(-),CD34(-),&alpha;-SMA(-),factor VIII(-)であった.以上より同部位はminute pulmonary meningothelial-like nodules(MPMNs)と診断された.術後経過は良好であり,術後1週間で退院となった.【考察】MPMNsは剖検例や切除肺に偶然見つかる微小病変であり,報告例も少なく不明な点が多い.しかし近年画像診断の進歩に伴いGGOを呈する腺癌や腺癌の肺内転移との鑑別が問題になることがある.また肺悪性腫瘍,特に肺腺癌との合併やMPMNsのLOHの報告もあり,背景肺の変異の蓄積によるgenomic instabilityが腺癌発生と共通した要因である可能性がある.
著者
饗場 和彦
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.665(101)-686(122), 2002-01

はじめに1 NATO側の見解, 議論2 NATO空爆に否定的な側の説明, 議論3 国際法の観点からの議論4 コソボ空爆の実態と人道的介入おわりに小特集 : マス・キリングの社会史
著者
徳井 教孝 三成 由美
出版者
中村学園大学薬膳科学研究所
雑誌
中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要 = Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University (ISSN:18829384)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-54, 2012-09-01

(要旨)多くの日本人は便秘の症状を有しているが、便秘を定義することはむずかしいとされている。これまで内科学では便秘は週に3回未満の排便と定義されることが多かったが、臨床上、多くの便秘患者は排便頻度が正常であるにもかかわらず、排便時のいきみ、便の硬さ、下腹部膨満感、排便後の残便感などを訴えるため、排便回数だけで便秘を評価するのは不十分であるとされ、2000年に米国消化器学会のコンセンサス会議が開かれ便秘の診断基準が作成された。一方、中医学における便秘の概念は毎日便通がないこと、毎日便通はあるが排便の時間が長い、便の質が硬いなどで、毎日便通があることが基本的に重要であると考えられている。病態的には水分(津液)不足と腸管の蠕動運動減退が関与していると考え、6つの便秘の体質が分類されている。1989年、癌患者のケアーのために便秘の評価尺度が開発された。この尺度は開発後、健常人を対象にした調査でも使用されているが、今後は健常人の便秘の病態を評価できる尺度の開発が望まれる。
著者
小林 達治
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.35-47, 1971-12-27 (Released:2017-05-31)
被引用文献数
2
著者
吉田 はるみ
雑誌
表現文化
巻号頁・発行日
no.9, pp.68-87, 2015-03

1. はじめに 女性の映画 : 何をもって一本の映画を女性映画と呼ぶのか? 女性の映画を論考するにあたりまず定義すべきこの概念は一筋縄ではいかない。監督を含む制作スタッフとして女性が関わっている、女性を描いている、あるいは女性の受容者を意識して作られている――これらのいずれの場合にも、その作品を女性映画と呼ぶことが可能であり、こうした意味での女性映画は時代や映画文化を超え、ジャンルを超えて存在する。少なくとも過去二十年間の日本における新作公開外国映画を俯瞰してみると、上に述べたいずれの意味でも女性映画の様態が変化してきたことがわかる。……

1 0 0 0 OA 妄人妄語

著者
森鴎外 著
出版者
至誠堂書店
巻号頁・発行日
1915
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1043, pp.28-33, 2000-05-29

台湾出身のスター金城武を主役に据え日本と香港の合作で成功した「不夜城」、黒澤明遺稿作品「雨あがる」の製作、今年のアカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞した「サイダーハウス・ルール」の配給など、映画界で話題を振りまくアスミック・エースエンタテインメント。専務の椎名保は、現在48歳。
著者
細谷 宗令
出版者
千葉県暖地園芸試験場
雑誌
千葉県暖地園芸試験場研究報告 (ISSN:03887774)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-14, 2000-03

冷蔵促成栽培における冷蔵処理時の諸条件が,フリージア球茎の増殖に及ぼす影響を明らかにするために,'ブルーヘブン','エレガンス','ミラベル'の中・小球を用いて試験を行った。処理条件として冷蔵の有無では10℃5週間の冷蔵処理と無冷蔵処理の2処理区,冷蔵温度では7.5~12.5℃まで2.5℃間隔で3水準と無処理区,冷蔵期間では10℃で4~8週間まで2週間間隔で3水準と無処理区,冷蔵方法では湿冷,乾冷処理の2処理区,植付け期では10月3日~10月31日まで2週間間隔で3水準の処理区をそれぞれ設定した。1. 冷蔵処理によって子球の増殖は'ブルーヘブン','ミラベル'でみられたが,'エレガンス'ではほとんどみられなかった。木子の着生は冷蔵処理により多くみられ,特に'エレガンス'で多かった。合計の球根数は冷蔵処理することで3品種とも明らかに多く得られた。2. 冷蔵温度が高くなるにしたがって子球数の増加が'ミラベル'でみられたが,他の2品種では一定の傾向はみられなかった。木子の着生は'ブルーヘブン','ミラベル'の10℃処理区で最も多くみられたが,'エレガンス'では7.5℃区であった。合計の球根数は'ブルーヘブン','ミラベル'の10℃処理区,'エレガンス'では7.5℃区で多かった。3. 冷蔵処理期間が長くなるにしたがって子球数の増加が'ブルーヘブン','ミラベル'でみられたが, 'エレガンス'では一定の傾向はみられなかった。木子の着生は3品種とも冷蔵処理期間の影響はみられなかった。合計の球根数は'ブルーヘブン'では6,8週間処理区,'ミラベル'は8週間処理区でそれぞれ最も多く,'エレガンス'では一定の傾向はみられなかった。4. 湿冷処理することで乾冷処理よりも子球の増殖は'ブルーヘブン','ミラベル'で多かったが'エレガンス'では差はみられなかった。木子の着生は'ブルーヘブン'では湿冷処理区で明らかに多かったが,'エレガンス','ミラベル'では差はみられなかった。合計の球根数は'ブルーヘブン'では湿冷処理区で明らかに多かったが,他の2品種では差はみられなかった。5. 3品種とも植付け期による差は子球の増殖ではみられなかった。木子の着生は3品種とも傾向は異なっていた。合計の球根数は木子の着生と同傾向で,一定の傾向はみられなかった。6. 一連の試験の結果から,1月出荷を目指した冷蔵促成栽培において,球根増殖の点で最も有利と考えられる品種毎の冷蔵処理条件を明らかにした。