著者
中川 浩子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.145-167, 2009-09

The purpose of this paper is to examine the psychological processes of women making decisions about whether to continue to work or not. The study used the "Career Anchor Self-Analysis Form" developed by Edger Schein in 1978. Using the form, the author interviewed five women who had 15-38 years of continuous working experience.Five types of career anchor were found: post-tradition, relativity, dream/purpose, security/stability and lifestyle. Two major limits were also found: one was that women do not appear to have a consistent career anchor. Another was that women tend to respond to questions with self-criticism, which keeps them from exploring their career anchors fully. These limits can arise from problems in the interview methodology and the relationship between narrator and interviewer.In order to explain women's psychological processes in choosing whether to continue to work, this paper proposes a new interview framework the "Life-Career Anchor Search". The "Life-Career Anchor Search" has four characteristic features: ① It focuses not only on women's working careers but also on women's life-careers, ② It encourages women to find positive aspects of their past experience so that women become able to perceive their own abilities, values, motives and needs, ③ It finds specific types of middle-aged women's career anchors, and ④ It is future-oriented in asking women how they would like to live in the future congruent with their own life career anchors.本論の目的は女性たちの「働き続ける」、「辞めない」という選択がどのような心理的プロセスで行われるかを探索することである。方法として1978年にエドガー・シャインによって構築された「キャリア・アンカー自己分析表」の質問を用い、組織で15年から38年勤務した経験をもつ女性たちにインタビュー調査を行った。その結果、キャリア・アンカーとして脱伝統、関係性、夢・目標、保障・安定、ライフスタイルの5つが推測された。一方で、女性のキャリア・アンカーにはシャインが主張したような明確な一貫性が見られない、インタビューでは自己批判的な語りが多く女性たちのアンカーが十分に探索出来ない、という限界が明らかになった。これらの限界はインタビュー方法の問題、語り手と聞き手の関係性の問題に起因すると考えられた。女性たちの「働き続ける」という選択を説明するには新しいインタビュー方法が必要である。これを「ライフキャリア・アンカー調査」として提示する。「ライフキャリア・アンカー調査」は、①女性たちの働き方(キャリア)だけでなく、生き方(ライフキャリア)も聞く、②女性たちが肯定的に振り返り、自らの能力、価値、動機・ニーズに自覚的になることを重視する、③中年期女性特有の「ライフキャリア・アンカー」を発見する、④自らの「ライフキャリア・アンカー」をこれからの生き方にどう活かすかも聞く未来志向である、という特徴をもつ。
著者
泉 あかり 村木 美貴
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.584-591, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
28

近年、日本の地方自治体は、財政状況の悪化に直面し、限られた財源での公共施設の有効利用が必要とされている。特に、学校のスポーツ施設は一般開放が可能なため、官民連携による活用により、維持更新に係る財政負担の軽減と地域住民への公共サービスの向上が期待されている。しかし、学校スポーツ施設の効率的な活用に向けて、どのように官民連携を導入すべきかは明らかでない。本研究の目的は、学校スポーツ施設の活用に向けた官民連携のあり方を明らかにすることである。本研究では、学校プールの屋内化に合わせ、収益型の民間スポーツジムの一体整備を検討する。その結果、学校立地を考慮した民間との施設のタイムシェアは、学校プールの維持更新における公共の費用負担軽減に有効と明らかになった。
著者
平野 康之 夛田羅 勝義 川間 健之介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

<b>【はじめに,目的】</b>近年,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の需要が拡大する一方で,訪問リハ従事者が経験する事故や病状急変などの件数は増加傾向にある。このような現状からサービス提供における安全管理の徹底が求められるが,訪問リハ従事者におけるこれらのアセスメント能力(技術)の実態については明らかではない。本研究の目的は,訪問リハ従事者が実施する健康状態や病状把握のために用いるアセスメント項目の知識(技術)の程度や実施の程度,必要性の認識などについての実態を把握することである。<b>【方法】</b>対象は,全国の訪問リハ事業所(病院)に勤務する訪問リハ従事者である。方法は都道府県ごとにランダムに抽出した540施設に対して,以下に示す訪問リハビリテーションアセスメント(以下,vissiting rehabilitation assessment:VRA)に関する自己記入式質問紙を郵送した。VRAは利用者の健康状態や病状把握に必要と考えられる①心理・精神に関する項目,②生命・身体に関する項目,③生活に関する項目の3領域からなるアセスメント(全42項目)で構成され,回答にあたっては知識(技術)の程度(以下,知識度),アセスメント実施の程度(以下,実施度),訪問リハ実施時における必要性(以下,必要性)について5段階のリッカート尺度により回答を得た。解析は,まず知識度,実施度,必要性についてアセスメント項目ごとに記述統計を行い,その傾向を検討した。次に知識度,実施度,必要性の関連性についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。なお,質問紙の作成にあたっては信頼性,妥当性を確認し,統計学的有意水準は5%未満とした。<b>【倫理的配慮,説明と同意】</b>郵送時に本研究の主旨に関する説明書を同封し,質問紙の返送をもって同意とした。なお,本研究は徳島文理大学倫理委員会の承認を得た。<b>【結果】</b>質問紙の回答は63施設:120名(11月11日現在,回収率:12%)から得られた。回答者属性は,男性:62名,女性:58名,年齢は20歳代:45名,30歳代:53名,40歳代:16名,50歳代:6名であった。職種は理学療法士:81名,作業療法士:38名,言語聴覚士:1名であり,経験年数は10年未満:77名,10年以上:43名であった。VRAの結果より,知識度に関して"知っている"と回答した者が最も多かった項目は「バイタルサイン(以下,VS)」であり,次いで「意識レベル」,「転倒」,「経皮的酸素飽和度(以下,SpO2)」の順に多かった。実施度に関して"実施する"と回答した者が最も多かった項目は「VS」であり,次いで「意識レベル」,「視診」,「運動に伴うVSの変動」の順に多かった。必要性に関して"必要がある"と回答した者が最も多かった項目は「VS」であり,次いで「意識レベル」,「転倒」,「SpO2」の順に多かった。次に知識度,実施度,必要性の関連性については,「VS」,「内服薬」,「認知機能」の一部以外のすべてにおいて弱い,または中等度以上の相関を認めた。知識度と実施度の関連において,相関係数が0.6以上を示したのは「非がん性の痛み」,「心音聴取」,「がん性の痛み」など17項目であった。必要性と実施度の関連において相関係数が0.6以上を示したのは「非がん性の痛み」,「食事」,「SpO2」など12項目であり,「うつ」,「頸静脈怒張」,「心電図変化」,「胸部打診」は0.4未満であった。また,知識度と必要性の関連において相関係数が0.6以上を示した項目はなく,「VS」,「内服薬」,「認知機能」については相関を認めなかった。<b>【考察】</b>必要度の上位に位置した「VS」,「意識レベル」,「転倒」などは"必要である"と回答した者が約80%を超え,知識度や実施度においても知識を有し,いつも実施しているとの回答が得られていたことから,訪問リハサービスの提供において重要なアセスメント項目であると考える。また,知識度と実施度の関連が認められた「非がん性の痛み」,「心音聴取」,「がん性の痛み」など17項目については,知識量が多ければ多いほど実施度が高い傾向にある項目であると考える。また,必要性と実施度の関連が認められた「非がん性の痛み」,「食事」,「SpO2」などの12項目については,訪問リハの実践に必要であると認識しているほどよく実施している,またはよく実施しているほど訪問リハの実践に必要であると判断している項目であると考える。また,「うつ」,「頸静脈怒張」,「心電図変化」,「胸部打診」で相関係数が低かったことについては,訪問リハにおいて内部障害系のアセスメント項目の必要性や実施の程度に偏りや乖離がある可能性が示唆された。<b>【理学療法学研究としての意義】</b>本研究結果は訪問リハの教育カリキュラムや研修計画などの作成にあたっての有効な資料となり,訪問リハの質向上に寄与すると考える。
著者
武田 知樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>キャリアアンカー(career anchor)とは,個人が仕事をしていく上でそのやり甲斐(達成感)や意味の実感(有意義感)の拠り所となる中心的な価値観のことをいう。</p><p></p><p>本研究の目的は,臨床業務に従事する理学療法士のキャリアアンカーの特徴を明らかにして,キャリア支援のための基礎的知見を得ることである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は大分県内の医療機関に勤務する理学療法士142名(男性68名,女性74名,平均年齢26.6±4.7歳)であった。</p><p></p><p>調査方法は,県内で開催された研修会に参加した者に対して,E.H. Scheinにより開発された「キャリア指向質問票」を配布して無記名で回答を依頼した。この質問票は ①専門・職能別コンピタンス(TF),②全般管理コンピタンス(GM),③自律・独立(AU),④保障・安定(SE),⑤起業家的創造性(EC),⑥奉仕・社会貢献(SV),⑦純粋な挑戦(CH),⑧生活様式(LS)の8領域のキャリアアンカーで構成されている。</p><p></p><p>分析は各キャリアアンカー得点(5~30点)を性別および臨床経験年数別,職場規模別に比較して,キャリア意識の特性を明らかにすることを試みた。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p><b>1</b><b>)性別の比較</b></p><p></p><p>各キャリアアンカーを性別に比較したところ,キャリアアンカー8領域中6領域(TF,GM,AU,SE,EC,SV)で男性は女性に比べて有意に高値であった(Mann-Whitney U-test,p<0.05)。</p><p></p><p><b>2</b><b>)臨床経験年数別の比較</b></p><p></p><p>経験年数別(10年未満,10年以上)で比較すると,AUでは経験年数10年未満16.0±4.1点に対し10年以上は13.4±3.2点であり,経験年数10年以上の者が有意に低値であった(Mann-Whitney U-test,p<0.05)。</p><p></p><p><b>3</b><b>)職場規模別の比較</b></p><p></p><p>職場規模別に比較してみると,SVについて10名未満の職場では20.0±4.2点,10~29名では21.5±4.0点,30名以上は22.1±3.7点であった。30名以上の理学療法士が勤務する職場は10名未満に比べてSVが有意に高値であった(Kruskal Wallis test,p<0.01)。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>医療機関に勤務する理学療法士において,性差によるキャリア意識の違いが顕著であった。また,臨床経験年数別では10年以上の方が10年未満の者に比べて自律・独立に関するキャリアアンカーで低値であった。この事は,一定期間の就業経験を通してチーム医療が重要視される医療機関の組織風土に適応した結果であると考えられた。</p><p></p><p>さらに,職場規模については職員が多い職場の方が奉仕・社会貢献に関連するキャリアアンカーが高値であったことは,職場規模に応じた教育や研修体制の充実が影響したものと考えられた。</p><p></p><p>以上の事より,キャリア意識の性差や経験年数,さらには職場規模を踏まえたキャリア支援のあり方が議論され,それぞれのキャリアラダー構築に反映させる必要性が示唆された。</p>
著者
小檜山 希 KOBIYAMA Nozomi
出版者
お茶の水女子大学生活社会科学研究会
雑誌
生活社会科学研究 (ISSN:13410385)
巻号頁・発行日
no.19, pp.25-33, 2012-10

子育てへの時間配分が大きいと考えられる12歳以下の子どもを持つ25歳から45歳の有業有配偶女性を対象として収入と就業形態を分析し,特に無職経験が\あっても収入を高める要因を考察した.\無職経験をもつものは約8割が非正規であり,年収も7割弱が130万円以下であった.また,無職年数が増えるに従い,正社員割合,大学・大学院卒割合は減少していた.\年収関数の推計を行ったところ,正社員となることが年収を高める大きな効果となっていた.無職経験者を分析すると,無職期間の長期化は年収の引き下\げ効果を持っていた.また,勤続年数が長いことは年収を増加させる効果をもっていた.このため無職経験者の収入向上には,正社員として勤務すること.途切れた場合は無職期間を短くし勤続を伸ばすことが有効と考えられる.
著者
王 暁雨
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.771-782, 2017-03-31

While revising the process of making the modern Japan, it's hard to not noticing the important role of translation works in this era. As one of the most important translators in Bakumatsu-Meiji period, Fukuzawa Yukichi's translation greatly helped the understanding of Japanese toward the Western world. Especially the easy-reading feature helped to make his works famous and influential at the time. In this article, we will discuss why, what and how Fukuzawa derived his idea and translating style through historical analyzation, which could also help revealing his inner understandings of Western culture and vision of modern Japan.
著者
桐野 豊
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.5, pp.215-218, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

レギュラトリーサイエンス(RS)は1987年に内山 充 博士によって提唱されたが,その重要性は最近まで広く認識されるには至らなかった.しかしながら,21世紀に入って徐々に重要性が認識され,2011年にはRSは国の科学技術政策の中で最も重要な科学の一つと認められた.これは,科学と社会の関係に関する議論が深化したことに加えて,科学と社会の関係を最適に調整することこそが,新しい医薬品・医療機器の開発を推進する基盤であることが認識されたことによる.期せずして2010年に設立されたRS学会は,RSを実践する活動を開始したところである.RSの発展・推進に薬理学が貢献すべきところは多い.医薬品・医療機器の安全性の確保において極めて重要な「市販後調査」は,医薬関係者のみならず,全国民に関係する課題である.
著者
黒崎 佐仁子
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.181-196, 2010-10-20

This paper analyzes the study of kanji learned in elementary schools in Japan and China. Chinese kanzi (hanzi) taught in elementary schools in China include most Japanese kanji taught in Japanese elementary schools. This means that most Japanese kanji are equivalent to Chinese hanzi, though they may differ in form.
著者
小野里 香織 星川 里美 栗原 康哲 山岸 徹 神山 晴美 土田 秀 福田 利夫
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.73-76, 2020

<p><b>目的:</b>子宮頸がん撲滅を目指し,細胞検査士による予防・啓発活動を報告・考察する.</p><p><b>方法:</b>オリジナルグッズ製作,"ぐんまちゃん"着ぐるみの借用,地域FM放送の利用,配布時の工夫,大学生への配布,の5項目である.</p><p><b>結果:</b>啓発グッズ配布数が増加し,時間短縮,会員の負担減など効率化が図れた.</p><p><b>結論:</b>継続的に正確な情報を提供し,女性自身が正確な知識を持つことが重要である.特に若年者への健康教育を重視する必要がある.</p>