著者
金子 百合子
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

動的事象の推移において「限界」の概念はロシア語の言語的世界像を形成する意味的優勢素として提示されてきた(ペトルーヒナ)。事象の安定的側面を優勢的視座で記述する日本語と対照させることによって、日本語と比較した際のロシア語における「限界」の際立つ優位性を検証した。当概念の優位性は、終了限界性に基づくアスペクト的動詞分類、結果を修飾する動詞語形成手段の多さ、和訳における限界的解釈の希薄さ、アスペクトの文法範疇の主導的役割といった点に特徴的に現れる。
著者
山本 勝 武井 達哉 萩原 啓 堺 俊克 村上 由紀夫 後沢 瑞芳 山本 敏裕 村上 裕彦 三浦 治 平川 正明 中野 美尚 岡坂 謙介 浅見 佳司 金子 喜代三 佐々木 貴英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.594, pp.41-44, 2004-01-17
被引用文献数
3

陰極材料に炭素系材料であるグラファイトナノファイバー(GNF)を用いた電界放射ディスプレイ(FED)を検討している。今回、ガラスフリットを用いた窒素雰囲気中での封着プロセスによりパネル化し、動画像を表示して良好に動作することを確認した。また電子放出特性の測定も行い、次世代に向けた大画面・高精細・薄型ディスプレイとしての実現性を示した。
著者
得丸 公明
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.16, pp.1-8, 2011-05-09
被引用文献数
1

今日に至るまで,文法とは何か,文法のメカニズムはどうなっているのかということについて,十分に検討が行なわれたり,議論されたり,解明されることはなかった.デカルト派言語学を自認するチョムスキーが提起した難題「ヒトは状況に応じて新しい文を作ることができ,それをたった一度発話するだけで,聞き手がただちにそれを理解できるのはなぜか」を,生成文法論者を含めてまだ誰も解明できていない(1).チョムスキー自身は「この問題が人間の知的な能力の範囲内にはない」,「神の介在なしにはありえない」と述べている(2).だが,未解明の理由のひとつは,構造主義の「形態素」・「遺伝子型/表現型」概念と似て非なる「語形成素」・「深層構造/表層構造」という概念を用いるためではないか.また言語のメカニズムは社会科学でも自然科学でもなく,符号理論として取り扱うべきではないか.筆者は,ヒトの言語は脳内の自律的な神経細胞ネットワーク上で作動するデジタル通信システムであり,文法は情報源符号化と通信路符号化という二つのデジタル符号化メカニズムのシナジー(相乗)効果によって生み出された一連の機能を指し示す音響符号語であると考える.デカルトの結論に反して動物も論理装置や概念をもっており,ヒトのヒト以外の動物に対する質的相違は二重符号化文法に求められる.To this date, the mechanism of grammar has not yet been fully investigated, discussed or clarified. Why human can compose an appropriate new sentence in a particular situation, and, why, with hearing it only once, others can understand it immediately?(1) This Chomsky's conundrum has not yet been solved and explained by anybody including Chomsky himself. He, a Cartesian Linguist in his definition, indicated that this conundrum is "not within the range of human intellectual capacities" and "requiring divine intervention"(2). However the author surmises that the application of concepts such as "formatives" and "deep/surface structures" by Chomskians, which are alike but different from those of "morpheme" and "signifie/signifiant" in structuralism, are confusing and could be responsible for the failure. The author surmises that the human language is a digital communication system, operated by autonomous nerve cell networks inside brain, and that its grammar is a series of phonetic functional codes generated by a synergy of two digital coding mechanisms, namely the source coding and the channel coding. It seems that, despite the Cartesian conclusion, non-human animals have logical device, acquire concepts and establish concept system, and that the qualitative superiority of humans against non-human animals seems to be the double coding grammar.
著者
加藤 司 石原 武政 石井 淳蔵 崔 相鐵 高室 裕史 田村 晃二 横山 斉理 柳 到亨
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、商業者の利潤動機と社会的貢献の二側面を包摂する「商人精神」という観点から、(1) 関連する「家業」、「のれん」など過去の研究蓄積を整理し、(2) 国内において商 業者と地域コミュニティの関係を東日本大震災によって被災した商店街などのケース・スタディを通じて明らかにし、(3) 東アジアにおける韓国、中国を中心に商業者、商店街組織の実態について 比較調査を実施 した。その成果として、 商業者と地域社会ならびに政策とが複雑に絡み合う関係を明らかにする枠組みが構築された。
著者
野間 晴雄 朝治 啓三 北川 勝彦 小椋 純一 川島 昭夫 橘 セツ グルン ロシャン
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

イギリスのプラントハンター(プラントコレクター)といわれる人々は,植物学,園芸学の知識と実践を背景に,世界各地に拡大した植民地で稀少な植物・有用植物を収集し,それをイギリス本国や別の植民地に普及するのに重要な貢献をした。その中核となったのがキュー植物園で,J.バンクス卿やW.フッカーの努力によって収集・研究がすすめられるとともに,風景式庭園に対して栽植植物の多様化からの寄与も大きかった。南アフリカ,インド,中国,オセアニア等での植物採集に関わったプラントハンターたちは18世紀以降の大英帝国拡大の一翼を担い,本国・植民地の経済植物や温帯植物の普及によって大きな経済的利益をもたらした。
著者
井田 輝敏 Terutoshi Ida
出版者
松山大学学術研究会
雑誌
松山大学論集 (ISSN:09163298)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.432-390, 1998-02
著者
趙 英玉 田中 みなみ 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.208-209, 1999-10-15
被引用文献数
1

In the Q'ing dynasty, the Man ethnic was superior to Han ethnic, and became a ruler of China.The authors analyse the characteristic of motifs and meanings of the nobles' cloth ornaments in this dynasty expressed by the novel of "The Dream of the Red Chamber" and attempt to classify the symbolic order of the nobles of Han. The result can be outlined as follows : 1)The cloth ornaments for both male and female became similar in Q'ing dynasty. 2)The use of border decoration influenced from the nomadic Man ethnic became popular. 3)This dynasty saw the emergece stylistic change in decoration, from realistic to abstracts. The decorative styles of Han previously derived from Confucious thinking was altered by the styles of Man's nobles.
著者
新井
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.808, pp.65-72, 2001-11-05
被引用文献数
2

DVDの次世代を狙う光ディスクを製品化するときが迫っている。緊張感が増す中,装置や媒体メーカーは低コスト化技術の確立に心血を注ぎ始めた。その傾向は,2001年10月16日〜19日に台湾台北市で開催された光ディスクの国際会議「International Symposium on Optical Memory(ISOM)2001」注1)の講演にもはっきり表れた(表1)。
著者
松原 孝俊 有馬 学 松野 陽一 中野 三敏 入口 敦志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

2年間にわたる台湾大学総図書館所蔵日本語古典籍に対する書誌的調査を終えたが、同館所蔵・旧台北帝国大学所蔵本の総数は、約2万2百冊であると判明した。但し台湾大学の諸事情から、残念ながら漢籍の和刻本は未調査である。この漢籍和刻本も含めると、推計2万2千冊の所蔵量であるまいか。本研究プロジェクトは約2万2百冊の書誌的データの収納に努め、その棒目録を作成した。もっともこれら2万2百冊の残置本は、高温多湿な機構の中で放置されたので、破損や劣化が進み、早急な保存策を講ずる必要がある。本研究プロジェクトの進展の中で、台湾所存の日本語資料を研究調査対象としてきた各研究プロジェクトとの橋渡し役を果たし、各プロジェクト間のネットワークが構築できた。日本史・台湾史・日本文学・琉球史・東アジア文化交流史などの専門家による総合データベース作成の機運も生じ、実現の一歩を進めた。
著者
今井 玄哉 塩田 憲司 高岡 昌輝 大下 和徹 水野 忠雄 森澤 眞輔
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第21回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.192, 2010 (Released:2010-11-07)

本研究では廃棄物焼却炉から排出されるSPM、PM2.5の実態を明らかにすることを目的とし、実際に稼働している廃棄物焼却炉(4施設)における排ガス中のばいじんを集塵装置(バグフィルター)前と煙突前で粒径別に捕集してばいじん量の変化を測定し、また電気集塵機が使われていた同一施設における1998年の調査結果と今回の結果とを比較することで新旧集塵装置の評価を行った。4施設の煙突前の排ガス中ダスト濃度の平均値は1998年時点に比べ1/200以下に低減されていた。全粒径ダストの集塵効率はいずれの工場においても99.97%以上であり、設備更新前に比べ上昇した。PM2.5の集塵効率については99.93%以上であった。最新式の排ガス処理設備が導入された廃棄物焼却炉からは一次粒子としてのSPM、PM2.5の排出は極めて少ないと考えられ、また1998年の調査結果と比べダイオキシン類対策の効果が認められた。
著者
中村 匡
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.2-42, 2002-10-20

本稿は"電磁気学への応用を例とした微分形式の入門"であると同時に"微分形式を使った電磁気学の解説"となるのが目標である。われわれのよく知っているベクトル解析は,3次元空間の微積分をdivやrotなどの座標によらない演算子でシステマティックにあつかえるが,1920年頃に数学者のE.カルタンによって定式化された微分形式は,それをさらにすすめて一般の次元でも,特定の座標にずに見通しよく微積分演算をあつかうことを可能にする。従来,この理論は宇宙論や素粒子論の研究者には知られていたが,近年になってひろく他の物理の分野からも注目されるようになってきた。たとえばコンピューターの発展によって可能になった,複雑な曲線座標のもとでの計算機実験などに微分形式は威力を発揮する。本稿ではこの微分形式によって電磁気学を見直してみる。標準的な教科書にある電磁気学の微分形式による表現の他に,「もし3(空間)+1(時間)次元以外の物理があったら電磁気学はどうなるのか」という話題と,「時間と空間を平等にあつかう正準形式」という話題を紹介し,微分形式と電磁気学の両方に対する解説になることを目指した。
著者
河村 正二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR COMPARATIVE PHYSIOLOGY AND BIOCHEMISTRY
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.110-116, 2009-08-20
被引用文献数
1 1

近年様々な動物において色覚を担う光センサー(錐体オプシン)の解明が進み,動物によりその数や種類や発現パターンが異なることがわかってきた。明度が絶え間なく変動する浅瀬の水環境と森林環境は色覚進化の揺籃地であり,脊椎動物では特に魚類と霊長類が顕著な色覚多様性を示すことと符合する。例えば,魚類のゼブラフィッシュは8種類もの錐体視物質をもち,網膜の領域により発現する錐体オプシンの構成を違えることで,視線の方向によって色覚を違えていると考えられる。これを実現するためのオプシン遺伝子の制御メカニズムもわかってきた。また,中南米に生息する新世界ザルには1つの種内に6種類の異なる色覚型が存在するものが知られており,生息環境と色覚との密接な関連もわかってきている。本稿では魚類と霊長類の錐体オプシンの多様性とその生態学的意味についての最近の知見を紹介する。